ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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ラル少佐書くの楽しい。


ペテルブルク大戦略 後編

12月31日

 

「少佐、ちょうどよかった」

 

サーニャを探して廊下を歩いていたエイラにラル少佐が声をかけた。

 

「なんだ?」

 

「少佐の目からみて雁渕はどうだった」

 

間も無くエイラがスオムスに帰る事になるため当初の目的の一つであった雁渕ひかりの実力について判断がなされているだろうと考えその評価を尋ねた。

 

「体力は十分すぎるくらいあるけど魔法力があまりにも少ないな。

けど実戦に出始めて三ヶ月程度であれなら才能は十分。並の部隊だったら上位に入る実力があるんじゃないかな」

 

「意外と評価が高いな」

 

「そうか?まぁ最前線で戦うこの部隊に配置できるかと言われたらギリギリ、及第点って言わざるを得ないけどな」

 

エイラの目から見てひかりは実戦に出て三ヶ月程度しか立っていないとは思えないほどに魔法力の扱いも飛行技術も高かった。ただ致命的なまでに低い魔法力のせいで継戦能力が低くこの評価になっていた。

 

「少し甘いんじゃないか?」

 

「そうか?接触魔眼の事を考えたらこんなもんだろ」

 

「だが接触魔眼は文字通りネウロイと接触しなければ使えない。雁渕は実力的にネウロイと接触するほど近づくことは危険すぎてできない。ならばないものとして扱う方がいいのではないか」

 

「そうかもしれないけど使えないわけじゃないだろ。どんなに危険でも使わなきゃいけない時は使う事になるんだから考慮に入れていいだろ」

 

「私が許可を出さん」

 

「現場判断で勝手に使うんじゃないか」

 

二人の言うことはどちらにも一理あった。基本的には上官であるラル少佐が使用許可を出していない以上使われることはないが結局のところそれは実戦指揮の担当者の判断によって覆る可能性がありその命令の拘束力には疑問があった。

 

「サーシャが戦闘指揮をしている間は命令を破ることはない」

 

「…そうか。ならわたしもその判断に従ってあいつがこの部隊にいるには不相応の実力だと上層部に報告すればいいか?」

 

「それとこれとは話が別だ。確かに実力不足と言わざるを得ないがそれでも雁渕一人がいなくなるだけで他の連中の負担が増える」

 

「実力不足って分かっていながら使うとかひかりを殺す気か?」

 

ラル少佐の言わんとすることは理解できるが思わず眉を顰めて言った。

 

「そうならないように万全のサポート体制とエディータによる訓練をしている。そう遠くない未来に固有魔法なしでも十分な実力に達するだろう」

 

「そこまでして手元に置いておく価値があるのか?」

 

「エディータが訓練するだけの価値はあるとみなしている。私にとってはそれで十分だ」

 

「そうか。ならわたしがこれ以上なにか言うことはないな。上層部にも前線で使えるって伝えるよ」

 

「よろしく頼む」

 

ちょうどそのタイミングに食堂についたエイラ達はそこから見えるキッチンに5、6人の人影がある事に気づいた。その中にはエイラが探していたサーニャの姿があった。

その人影の一人、ロスマンがポケットから缶詰を取り出したのを見て音もなく一人の人物、クルピンスキーが近づくとサッと缶の蓋を開け一口食べると言った。

 

「やっぱりキャビアって塩っぱいだけだなぁ」

 

「美味い」

 

いつの間にやら缶詰を手に持っていたラル少佐も短くそう感想を述べた。

 

「あぁ!!!なにやってるの偽伯爵!!!!」

 

「隊長も、どさくさに紛れてつまみ食いしないでください」

 

つまみ食いに気付いたポクルイーシキンがそう言ってラル少佐から缶詰とスプーンを取り上げた。

 

「やっぱり502は泥棒がいっぱいいるんだな」

 

思わずエイラがそう呟いた。

 

「こんなのと一緒にしないでください!」

 

それを聞いたポクルイーシキンがエイラを睨みつけ、ラル少佐を指差して言った。

 

「泥棒するのなんてせいぜい隊長とクルピンスキーさんくらいです!」

 

「…菅野もたまに私の棚から勝手に酒を持っていく」

 

「部隊の三分の一じゃないか」

 

呆れたと言わんばかりの口調で言った。

 

「サーシャも私が他所の部隊から物資を持ってくるのを黙認しているから共犯みたいなものだ」

 

さらに追い打ちと言わんばかりにそう言った。

 

「なっ!あれは隊長が既にとってきた以上返そうにも返せないからであって…」

 

502全体が犯罪者気質なものが多い事にため息を吐きニパがこれに染まっていない事を願わずにいられなかった。

 

その日の夜、年越しのためのサーニャと下原により供された豪華なディナーを楽しんでいた時、突然ネウロイの来襲を知らせる警報が鳴り響きエイラ、サーニャ、下原、ロスマン、ひかりの5人が迎撃の為出撃し中型ネウロイ一機を撃墜した。

 

「十分動けるじゃないか」

 

エイラから戦闘の詳細を聞いたラル少佐がエイラに向かってそう言った。

 

「一機程度なら前くらいの動きはできるさ」

 

当然と言わんばかりにエイラが言った。

 

「戦闘スタイルを変えたと言っていただろう。昔と変わっていないんじゃないか?」

 

「相手が一機だったからな。流石に複数相手だと昔みたいな近接戦闘は厳しいけどあの程度のネウロイに遅れをとるほどわたしは弱くない」

 

「頼もしいな」

 

「だからといってあてにされても困るけどな。後進が育たなくなる」

 

もっとも、スオムスは最前線に近い為新人にも適度に実践経験を積ませている為世界的に見ても練度の高い部隊を未だに保有していた。

 

「全くもってその通りだな。我が国でもそれが問題になりつつあるようだ」

 

「そうなのか?」

 

「ああ。私より2、3下の世代までは本国からの撤退を経験している者も多いがそれより下は撤退後にウィッチになった者も多い。撤退後は本国での訓練がメインとなり実戦経験が全くないウィッチも少なからずいる」

 

「西方方面軍にウィッチを送ればいいんじゃないか。あそこなら比較的安全だろ」

 

「上層部が及び腰になっている。ただでさえ初期にかなりの数のウィッチを失ったからな。戦後のことも考えると多くのウィッチを失う可能性のある戦線は避けたいようだ」

 

「たしかに西部も安全とは言い難いけどそこまで警戒しなくてもいいだろ。北方方面軍とか東部方面軍と比べたら遥かに安全なんだからさ」

 

強力なネウロイが出現する北方、多数のネウロイによる人海戦術を受ける東方、それらと比べれば程々の強さのネウロイが程々の数現れるだけの西方は随分と優しかった。

 

「まさしくその通りだ。全く本国は何を考えているのか」

 

前線には前線の、後方には後方の悩みがあるとはいえ命に直結する分前線の悩みを解決するのを優先して欲しいと思わざるを得なかった。

 

1月1日

 

「もうちょっとこっちにいたらいいのに」

 

ストライカーユニットの前に立つエイラにニパが言った。

 

「わたしもそうしたいところだけど対グリゴーリ戦の為にも報告しないといけないことが多いからな。そろそろ帰らないと」

 

「そっか…。次はいつ会えるかな」

 

「グリゴーリ攻略前とかだろうな。そんな先の話じゃないからそう寂しがんなよ」

 

「べ、別に寂しくなんかない!」

 

「なんだよ。ちょっとぐらい寂しがれよ」

 

そう言いながらエイラが魔法力を発現しストライカーユニットを履きサーニャもそれに続こうとした時、ラル少佐が待ったをかけた。

 

「リトヴャク中尉はユニットを履いてどこに行く気だ?」

 

「スオムスですけど…。あの、それが何か?」

 

サーニャは現在書類上エイラの部下であり当然その任地はスオムスの首都、ヘルシンキだった。

 

「おかしな事を言うな。リトヴャク中尉は502の所属だ、スオムスに行く必要などないだろう」

 

「はぁ?何言ってんだお前」

 

おかしなラル少佐の言動に嫌な予感を感じながらエイラがいった。

 

「この書類を見ろ」

 

そう言って見せてきた書類はサーニャがエイラの下から502へと移籍した事を示すものだった。

 

「お、お前…!」

 

あまりの事に二の句が継げないでいるエイラを無視してサーニャに向かって口を開いた。

 

「と言う事でリトヴャク中尉はこれから私の下で働いてくれ。なぁに、やることは501の時と大して変わらんさ」

 

「お前なんか…」

 

やっと落ち着いた様子のエイラにラル少佐が視線を戻した。

 

「うん?」

 

「お前なんか大っ嫌いだぁ!!!!」

 

涙目になりながらエイラはストライカーユニットを起動しハンガーから飛び去っていった。

 

「友人に嫌われるのは悲しいな」

 

唖然としているサーニャとニパに向かってラル少佐が全くそう思っていなそうな顔でそう言った。




多分アニメの方はエイラ達が来るのわかってなかったと思うんですけど事前に分かってたらどっちか一人は持ってくと思うんですよね。じゃないとラルっぽくない。
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