ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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ストライクウィッチーズ3期が放送されたのってもう一年前なんですね。
時が経つのは早いですね。


帰還

ヘルシンキに帰還したエイラが真っ先に行ったのはマンシュタイン元帥に対してサーニャを502から取り返すために話をつけることだった。

 

「リトヴャク中尉はできる限り早く君の元に戻そう」

 

「ありがとうございます」

 

想像していたよりも随分とあっさりサーニャが戻ってくることが決まりエイラは内心胸を撫で下ろした。

 

「しかしこれは都合がいいな」

 

「都合がいい…ですか?」

 

サーニャ一人が502に増えたところでやれる事は限られているため一体マンシュタイン元帥が何をするつもりなのかエイラにはわからなかった。

 

「502からもペトロザヴォーツク奪還のために部隊を出させようと思う」

 

「その程度の戦力増強で奪還できるほどあそこにいるネウロイの数は少なくありませんが…」

 

合計して500を超えるネウロイを相手にするには502の部隊が追加された程度ではあまりにも少なすぎた。

 

「北方のウィッチは優秀だな」

 

「当然です。いくら地形に恵まれているとはいえ小国であるスオムスが今まで生き残るには優秀なウィッチがいたからこそですから。それが何か?」

 

「グリゴーリ近くに配置されていたウィッチ隊が独自に判断してかなり敵戦力を削ってくれていた」

 

「被害はどれくらい出ていますか?」

 

現地の部隊では明らかに戦力不足であり多大な被害が出ていると思ったエイラは思わず眉を顰めて尋ねた。

 

「ストライカーユニットが数機大破しているが人的被害はゼロ。敵戦力の3割から4割を撃破したそうだ」

 

「本当ですか?いくらスオムスにあるウィッチが優秀とはいえそれほどまでの戦果を上げられる部隊は24戦隊くらいのはずですが…」

 

「マンネルヘイム元帥が防衛力強化のためカウハバ基地にいた義勇独立中隊を一時的に送ってくれていた」

 

「あの部隊にまだそれほどの力が残っていたんですね」

 

統合戦闘航空団のモデルケースと言えるスオムス義勇独立中隊はその初期においては扶桑陸軍のエース、穴拭智子を筆頭に幾人かのエースを保有しており、多大な戦果を挙げていた。

しかしカウハバ基地へ移動してからは目立った戦果をあげておらず創設から所属している者もたった一人となり半ば忘れられた存在となりつつあった。

 

「最近君の元同僚、ハンナ・ウィンド少佐が隊長に就任して戦力が少し強化されたようだ」

 

「ウィンド少佐が隊長なら多少なりとも戦線に影響が出るほどの戦果が上がることには納得できますがそれでもこの戦果大きすぎますね」

 

ハッセの実力はエイラもよく知っているが100以上のネウロイを一週間足らずで撃破できるはずがなかった。

 

「報告書によるとどうやら小型ネウロイの殆どが子機であったため本体である中型ネウロイを数機撃破するだけでかなりの小型ネウロイが四散したようだな」

 

「張りぼてだったと言うわけですか」

 

「そのようだ。どうやら我々は敵を過大評価していたらしい」

 

「そうなると今後は子機かどうかの判断を行うために威力偵察の重要性が上がりますね」

 

今後も似たような状況になる可能性は高くそうなった時、その威力偵察を行うのは間違いなくウィッチになるためますます人手が不足することになり厄介なことこの上なかった。

 

「全くだ。グリゴーリ攻略に関しても一度ウィッチ隊での威力偵察をした方がいいのではないかとの声も上がっている」

 

「気持ちはわかりますがそれをしては攻略そのものに支障をきたし兼ねませんよ」

 

「分かっている。だが敵戦力を一撃で大きく削ることができるかもしれないと言うのは誰にとっても魅力的なものじゃないか?」

 

「お気持ちはわかりますが仮に本体が存在しなかった時、あるいは巣そのものが本体としての機能を持っていた場合威力偵察による被害は意味のないものとなってしまいませんか?」

 

情報を持ち帰ると言う点で全く意味がないわけではないが作戦そのものに与える影響が全く言っていいほどなく悪戯に戦力を減らす結果になりかねなかった。

 

「全くもってその通りだ。そもそも子機を持つネウロイ自体が全体で見ると少数な上それが偶然グリゴーリの護衛をしているなどと言う都合のいい事態がそうそう起こるはずもないな」

 

そう言ってマンシュタイン元帥はため息を吐いた。

 

「暫くの間一人で業務を回すことになるが問題があるか?あるようなら人手をそちらに回すが」

 

「いえ、問題ありません」

 

大変ではあるが一人でもギリギリ回される仕事量であることからマンシュタイン元帥の申し出をエイラは断った。もっとも、それだけが理由ではなくもしここでサポートのための人員を受け入れたらそれを口実にサーニャが502に留まる事になるのではないかと言う懸念もあった。

 

「そうか。それと近々グリゴーリ攻略に使う秘密兵器がノイエカールスラントよりムルマンスクに届くことになっている。それを受領しに行ってくれるか」

 

「秘密兵器というと例の列車砲ですか」

 

「ああ。レール規格を合わせるのに随分と手間だったようだがやっとそれが終わった。後はこちらに運んで細かい調整と組み立てを行うだけだ」

 

「そうですか…」 

 

「何か懸念があるのかね?」

 

エイラの表情が一瞬曇ったことに気付いたマンシュタイン元帥が尋ねた。

 

「懸念、というほどではないのですが…」

 

「構わない言ってくれ」

 

「2発目まで列車砲を使う必要があるのかと思いまして」

 

「必要ないということか?」

 

「いえ、不測の事態に備えるなら必要でしょうが予備を考えるなら対空砲弾にも魔法力を込めて撃てるようにしてもいいのではないでしょうか」

 

超大型の列車砲の攻撃は確かに高い攻撃力があるがコアを破壊するだけならそこまでの威力は要らないのではないかと考えていた。それなら寧ろその分の魔法力を対空砲弾に入れ数を揃えて確実にコアに当てられるようにするべきなのではないか思ったのだ?

 

「それでは威力が足りないのではないか?」

 

「わかりません。ただこれまで戦ってきたネウロイは外殻の硬さに差はあれどコアの硬さには殆ど差がなかったんです。ネウロイの巣が特別硬い可能性はあります。けど予備を含めて2発なんていう少ない数ではなく数を揃えて飽和攻撃により確実にコアに対して攻撃を与えるようにするべきなんじゃないかと思ったんです」

 

「コアの強度は外殻の強度と比例しないというのか?」

 

「あくまで経験則であってきちんと検証したわけではありませんが」

 

活動状態にあるネウロイを捕らえて研究することが殆ど不可能であるためネウロイ研究の殆どが報告書を元にした推測に過ぎず元々前線で戦っていたエイラの言葉であればマンシュタイン元帥も一考せざるを得なかった。

 

「しかし今更そんなものを用意できる余裕はない。今回は諦めざるを得んだろう」

 

リベリオンのような工業大国であればともかくスオムスにそんなものを即座に用意するだけの余裕があるはずもなく、他国に要請してもお役所仕事である以上ある程度の時間がかかる事は間違いなく今回に限っては見送るしかなかった。

 

「はい。ですので今後もし同じような状況になった時、閣下の作戦立案の一助になれば幸いです」

 

そんな事はエイラも承知していたため情報共有の一環として話してみた、という程度のものだった。

 

エイラが普段行っている事はグリゴーリ攻略に際するウィッチ隊の配置草案作成やウィッチ達の補給といったペテルブルク軍集団に所属するウィッチに関する事全ての管理だった。もちろんそれには502部隊も含まれていた。

 

「わたしを怒らせたことを後悔させてやるぞ」

 

ラル少佐にとってはサーニャをエイラから奪い自らの指揮下に置いた事は自分の部隊を強化するために今まで他部隊に対しても行ってきた言うなれば当たり前とも言える作業だった。

しかし今回ばかりは相手が悪かった。今まではどんなに酷くても譴責程度の処分で済んでいた。基本的には同格以下の部隊か命令系統の異なる部隊から奪ってきていたため直接制裁を加えられる事などなかった。

エイラは直接的な命令権そのものは保有していないがもっとも重要な補給を握っていた。

 

「今補給を削るとサーニャまで苦しむことになるからな。むしろ今は潤沢な補給を与えてやる。けどサーニャが帰ってきたら…ふふふ」

 

ある意味でラル少佐はエイラのことを信頼していたのかもしれない。自らの私怨で職権を濫用する事はないと。もしこれがサーニャ以外の人間であったならエイラも復讐をしようなどと考えなかっただろう。

しかしラル少佐はよりにもよってサーニャをエイラから奪ってしまった。そのツケをラル少佐が、ひいては第502統合航空戦闘団が払うのはそう遠くはないだろう。




最近代用食品について考えてたんですけどファンタって元々コーラの代用品なわけですけどこのストライクウィッチーズの世界線ってリベリオンとカールスラントが戦争しないからファンタが作られないんじゃないかという疑惑が出てきました。
まぁカールスラント皇帝がコーラに変わるカールスラントの炭酸飲料を開発せよ!とかって命令してれば話は別ですが。
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