あと最近艦これ二次を書いたのでよろしければどうぞ。
「はぁ」
「どうしたんですか隊長。ため息なんかついて」
憂鬱そうにため息を吐くラル少佐を物珍しげに見ながらポクルイーシキンは尋ねた。
「明日2人の来客がある」
「それが何か?」
「1人はユーティライネンだ」
その名前にポクルイーシキンには思い当たることがあった。
「サーニャさんの件で怒られると思っているのなら自業自得ですよ」
「怒られることなど気にしていない」
たしかにグンドュラ・ラルという人間がいまさらその程度の事でため息をつくなど天地がひっくり返ってもあり得ない事だった。
「じゃあなんでため息なんか吐いてたんですか?」
「あと一週間遅ければリトヴャクをウチのものにできる書類が用意できたから残念に思ってな」
「クルピンスキーさんみたいに殺されるとは言いませんが、いい加減にしないとそろそろ何か仕返しされるんじゃ無いですか」
戦力が増えるのはポクルイーシキンとしても大歓迎だったが巻き添えにされるのは避けたかった。
「それはないな。少なくとも私がここでウィッチとして任務についている間はせいぜい小言を言うくらいしかしないはずだ」
「どうしてそう言い切れるんですか?」
「ユーティライネンはウィッチの上官としてある種理想的と言える。
現場の人手不足を正確に理解しているから多少現場部隊の指揮官が無理をして人材を獲得しても小言は言うがそれ以上何かする事はなく、それどころかフォローしてくれる。リトヴャク中尉の件も小言は言われるだろうがそれだけだ」
エイラがペテルブルク軍集団に配属されてからしばらくして、スオムスから連絡があった。曰く扶桑に帰還しているのは雁渕孝美であると。その際問題となったのは502にいるのは一体誰なのかと言う事だった。
その際スオムスとの折衝を担当したのがエイラだった。
「ひかりさんの件でしたら次はないと釘を刺されていたと記憶していますが?」
ラル自身これまで何度も他所の部隊からウィッチを強引に奪ってきているがそれらはあくまでも周到な根回しと正式な手続きに則っていた。
しかしひかりの件は完全に偶発的なもので本来ならばカウハバ基地に返さなければならないところをエイラの尽力により502部隊に留め置くことに成功していた。
「あれは国が相手の場合のことだろう。今回は身内が相手だ、問題ないさ」
「そういう意味では無いと思いますが…」
「ユーティライネンも私のやり方はよく知っているはずだ。そういう意味以外に何がある」
全く表情を変えずに言われると本当にそう思っているのかそれとも冗談なのかポクルイーシキンにはわからなかった。
「どうでしょうか。あの人は自分の仲間は結構大切にする人なので意外と激怒しているかもしれませんよ」
「よく知っているな」
「ニパさんが色々と話してくれました」
エイラとポクルイーシキンが不仲であること、またその理由も知っていたニパは少しでもエイラの印象をよくしようと度々エイラの話をしていた。
「そうか」
「もう一人は誰なんですか?」
もう一人いるはずだと思い尋ねた。
「雁渕孝美だ」
「治ったんですか?」
長い間意識不明の状態で通常の医療で治らないかもしれないと聞いていた。
「501の坂本が治癒魔法を使える腕のいいウィッチを紹介したそうだ」
「そういうウィッチは扶桑みたいな後方ではなく前線にこそ必要なんですけどね」
治癒魔法を使えるウィッチは貴重だ。ましてや強力な治癒魔法が使えるとなるともっと少ない。もともと雁渕孝美も複数の医療ウィッチから治癒魔法をかけられていたがそれらが匙を投げるくらいの傷を負っていた。
それを治すことができるウィッチとなると世界でも一握りなのは疑いようがなかった。
「私もそう思って引き抜こうとしたんだが…」
「またですか」
ラル少佐の悪癖に思わずため息をつきながらそう言った。
「そんなウィッチはいないと言われた」
「随分と嫌われたんですね」
「バカなことを言うな。先方とはいい付き合いをさせてもらっている。どうやら本当に知らんらしい」
「じゃあどうして隠されたんですか」
「おそらく民間のウィッチだろうな」
「そんなことあり得るんですか?」
ポクルイーシキン、というよりヨーロッパの常識ではあり得ないことだった。ウィッチを徴兵することは禁じられているとはいえヨーロッパではスカウトという名の半ば強制的な志願が横行しており民間にいるウィッチは年齢的に問題があるか自覚がない、あるいは隠している者くらいでありほとんど存在しないと言ってよかった。
「扶桑ならありえん話じゃないだろう。あそこは今直接ネウロイに攻撃されているわけではないからな。ヨーロッパのように何がなんでもウィッチが必要と言うわけじゃないだろう」
「なるほどそういうことですか」
「流石に軍に所属していない人間は引き入れることはできないから諦めた」
心底残念そうにいった。
「ところで少佐はどういう理由でここに来るんですか?」
まさかサーニャを取り返すためだけに来るほど暇ではないだろうと思い尋ねた。
「次の作戦が決まったらしい。詳しいことは私も知らんが相当大掛かりなようだ」
「グリゴーリ攻略ですか?」
「可能性は高いだろうな」
グリゴーリ攻略に必要なものは一通り揃ったと言う話が噂程度ではあるが聞いていた。
「ですが孝美さんが来たからすぐに十全の力を発揮できる訳ではありません。連携や彼女が寝たきりだったことを考えると最低でも一ヶ月は欲しいところですが…」
「最近どうも上の連中が慌ただしい。そこまでの時間があるかは分からんな」
「そうですか…」
大規模な作戦があるのは喜ばしい事ではあるが準備時間が短いとなると部隊を指揮している身からすると歓迎しがたかった。
「それと孝美とひかり、そのいずれかはカウハバに引き渡さねばならん」
「せめて作戦まではウチに置いとけませんか?できればサーニャさんも」
大きな作戦が近いのに戦力を減らす事を嬉しく思うものがあるはずがなかった。
「次に補充があれば一人向こうに返す約束だったからな。せめてリトヴャクの方だけでもと思ってごねたんだがダメだった」
「そうですか」
ポクルイーシキンは違和感を感じていた。
エイラ・イルマタル・ユーティライネンと言う人間の頭は硬くなかったはずだった。いくら勝手に持っていかれたとはいえ少なくともこの重大な作戦の前に前線から戦力を減らすような愚行を許すような思考は持ち合わせていないはずだった。
「どうしてこのタイミングなんでしょうか」
「作戦のことか?」
「いえ、サーニャさんの事です。別に今じゃなくてもよかったんじゃないでしょうか」
「そうかもしれんな。だがユーティライネンはいなくてもなんとかなると判断したから引き抜くことにしたんだろうしそれをしなければならない事情があったんだろう。いい加減諦めればいいものを」
いくら前線と後方の見えている景色が違うとはいえ大規模な作戦に戦力を出し惜しむような者が司令部にいるとも考え難く微かな違和感を抱くのだった。
坂本少佐の魔眼ってなんなんですかね。単純に雁渕姉妹の上位互換なのかそれとも下位互換なのか、つまり新コアを見抜けるのか見抜けないのか比較される機会がなかったからいまいちよくわかりませんが個人的には上位互換であって欲しいかな〜って思います。