今年もよろしくお願いします。
今年はアニメ三期の初めまで終わればいいなぁって思ってます。
さて新年1発目ですがいつも通りのストーリーとなっています。ただちょっと重たい感じの話となっています。
雁渕孝美の負傷によりコアを見つける役目がひかりに変わった事と列車砲が二門とも失われたがグリゴーリ破壊に関わる作戦は全て滞りなく終わった。表向きは。
彼女、アレクサンドラ・イワーノブナ・ポクルイーシキン大尉がそれに気付いたのは偶然ではなかった。それが彼女のスオムスにおける任務の一つだったからだ。
しかしそのような事実を知って行動に移したのは初めてだった。
機嫌の悪さを主張しているかのようにツカツカと大きな音を上げながら廊下を歩き、ある扉の前にたどり着くとノックもなしに扉を開け放った。
中にいた二人の人物のうちオラーシャ軍の軍服を着たウィッチが立ち上がって何か言おうとしたがそれよりも早くもう一人のウィッチに近づきその胸ぐらを掴むとその頬を思いっきり殴り飛ばした。
突然の事態に対応しきれなかったその人物は机の上にあった書類などを巻き込みながら床に倒た。
「なんのつもりだ」
殴られた頬を抑えながら起き上がった彼女、エイラは言った。
「なんのつもり?よくそんなことが言えますね」
「お前に殴られるような理由ならいくつか心当たりはある。けど今っていうのが分からない」
「もしそれが何年も前のことを指して言っているのであればそれは間違いです」
「ならなにが理由だ」
「ひかりさんの事、と言えば分かりますか?」
そう問いかけられたエイラは眉を顰めると少し考えるようなしぐを見せた後に言った。
「サーニャ、扉を閉めて鍵をかけてくれないか」
「エイラ、先に手当を…」
「このくらい大丈夫だ」
頑なな様子のエイラを見てサーニャは説得を諦めると少し開いていた扉を閉め内側から鍵をかけた。
それを確認してからエイラは再び口を開いた。
「サーニャの夜の通信相手はお前か」
「…それが今関係ありますか?」
「サーシャさん!」
サーニャが声を上げた。
「怒ることはないぞサーニャ。そうじゃないかとは思ったいたんだ。ラル少佐が義足のことを全く知らなかったのに大尉は知っていたみたいだからな。501関係者から漏れているだろうとは思っていた」
「今はそんなことはどうでもいいんです。質問に答えてください」
「…あるかないかで言えばあるだろう。
つまるところ大尉はブリタニアと北欧における情報の記録係だったというわけだな。
紙で機密情報を残すよりは一度見たものを忘れない大尉に記録させた方が機密保持は容易だしもしバレてもウィッチだからそう簡単には情報を漏洩するような状況にはならないだろうから本人の裏切りの可能性を除けばこれほど理にかなったものもないな」
エイラの言葉にポクルイーシキンはなにも答えなかった。
「沈黙は肯定とみなすぞ」
「…お好きなように」
それは認めたも同然だった。
「どれだけの期間その役割をしているのか知らないけどこう言うことが今回が初めてだとは考えにくい。
今更なにを怒る必要がある」
「話を逸らさないでください」
事実だった。しかしそれを認めるわけにもいかないためそう言って自分の質問に答えるよう促した。
「そらしてなんかない。
他の件に対してはただひたすらにに記録係としての任務を全うしてきたんだろう。そうでなきゃ今もその任務についているわけがないからな。
なのに今回わたしに抗議しにきた。なぜだ?」
「少佐、今は私が質問をしているんです。貴女ではありません」
ポクルイーシキンの言葉を無視してエイラはさらに続けた。
「対象がウィッチだったからか?それとも自分の部下だったからか?」
「…私も多少なりとも機密に関わっている立場です。本国が魔眼持ちを欲しがっていたことは知っています。恐らくそれが非人道的な研究のためだろうと言うことも察しはついています」
言葉を区切ったポクルイーシキンにエイラは無言で続きを促した。
「私が見た報告書によると貴女はオラーシャ政府からの要請により雁渕姉妹のうちどちらか一方を次の任地に向かう列車内で睡眠薬を紛れ込ませたお菓子により眠らせ拉致。そのままムルマンスク港より秘密裏にオラーシャ本国に移送する作戦を計画した。もちろんそのまま連れ出したらいずれバレますから移動中にネウロイに襲われてひかりさんは死亡した事にするつもりだったようですけど」
無言を貫くエイラにポクルイーシキンはさらに続ける。
「もし何かあった際は持っていた無線機、もしもひかりさんが暴れるなどして無線機が壊れた際の通信手段としてサーニャさんが同行した。違いますか?」
「否定はしない。それで、お前はこの計画のなにが気に入らなくてわたしのところに来たんだ?
ウィッチを拉致しようとしたことか?それともお前の嫌いなわたしがこの件に関わっていたことか?」
その問いかけに一度ぎゅと目を瞑ると絞り出すようにポクルイーシキンは言葉を紡いだ。
「そもそも国家が他国のウィッチを拉致するなんて言う犯罪行為に手を染めている事自体が気に入りません。
しかしこれが成功していたら、私は貴女を軽蔑すれどこんな行動には出なかったでしょう」
「お前はその事に怒っているんだと思っていたんだけど」
「ウィッチも所詮軍人です。それがどんなに非人道的なものでも上からの命令には逆らえません。
それが既に過去のものであれば実行犯に文句を言ったところで変わるわけではありませんから。それならどうやったらひかりさんを救出できるか、それを考える方がまだ建設的でしょう」
もっとも、オラーシャ本国に連れ去られている時点でそれが絶望的な事はポクルイーシキンも理解していた。
「尚更分からないな。ならどうして失敗した作戦についてわざわざ文句を言いに来たんだ」
「失敗したのはオラーシャ政府から見た視点でしょう。いえ、もしかしたらスオムス政府からしても失敗だったのかもしれませんがそれはどうでもいいんです。
問題は貴女にとってこの作戦が成功したと言う点です」
「随分とおかしなことを言うんだな。どっからどう見ても失敗だろう」
自嘲するかのように笑みを浮かべながら言った。
「サーニャさん、貴女はどう思いますか?」
「え!?」
まさか自分に話を振られるとは思っていなかったサーニャは驚いた。
「貴女から見てもこの作戦は失敗ですか?」
少し考えるとサーニャは口を開いた。
「わたしは作戦の詳細は聞いていなかったんです。ただマンネルヘイム元帥にエイラの作戦に協力するようにと言われてついていっただけで詳細を聞いたのも全て終わった後に失敗したってエイラから伝えられただけ…」
「知っています。けどこれが本当に失敗だと思いますか?
もし私だったら睡眠薬を仕込むものをサルミアッキにはしません」
「まさかサルミアッキが吐き出されるなんてわたしも思ってなかったよ」
心底驚いたと言わんばかりにエイラがそう言った。
「ニパさんでさえサルミアッキがスオムス以外の人の口に合わないことは知っています。貴女が知らないはずがないでしょう」
「初耳だな」
「嘘は結構です。ニパさんが誰の部下だと思っているんですか?手紙の検閲は私の役目ですよ。ニパさんが502に赴任してすぐの頃、貴女にサルミアッキの事を手紙で伝えていそれに対して貴女がブリタニアでも同様だった事を伝えたことをちゃんと記録しています」
ポクルイーシキンの言葉を聞いたエイラは大きな溜息を吐いて降参と言わんばかりに手を上げた。
「そこまで言われちゃこれ以上の反論は無駄だろうな」
「認めるんですね」
「ああ、けど尚更分からないな。どうしてそう怒る必要がある。
わたしはひかりを逃したんだぞ。どこにも怒る要素はないだろう」
「……私もどうしてこんなに怒っているのか分からなかったんです」
「理由もなく殴られたのか」
思わずエイラが呟いた。
「すみません。
けどようやく理由が分かりました。
多分私は貴女に頼って欲しかったんだと思います。一人で危険を犯すのではなく共有してほしかった。恩返しをしたかったんです」
「お前がわたしを恨むことはあれど恩を感じるようなことはなかったと記憶しているけど…」
少なくともエイラには彼女に恩を売った記憶はなかった。
「貴女は……。貴女はあの件について随分と気に病んでいるようですがそれは間違っています。
あの時貴女のことを許さないとも言いましたし命令を無視して助けに行こうともしました。けどその貴女の判断によって、私と私の部下の命が救われたのもまた事実です」
「…あの判断で救えたかもしれない命が失われたのもまた事実だ。大尉が恩を感じる必要はない」
当時のエイラに迷いがなかったと言えば嘘になる。あの時ポクルイーシキンと共に最前線の部隊の撤退を援護したらと考えたことがないわけでもない。けどそれらは全て過去の出来事で変えようのない事実だった。
「貴女がどう思うかは関係ありません。問題なのは私がどう思っているかです」
強い意志のこもった瞳だった。エイラが何を言ってもその意見を曲げないことは明白だった。
「もっと早くこれを伝えるべきだったのに意固地になっていたみたいです。申し訳ありませんでした」
そう言うとポクルイーシキンは頭を下げた。
「頭を上げてくれ。その気持ちが知れただけでわたしは満足だから」
「貴女は人に頼ると言うことを知るべきです。
貴女から知されていればひかりさんが安全に私たちと合流できるようこちらで手を回すことも出来ました」
下げていた頭を上げるとポクルイーシキンはそう言った。
「バレる可能性が高まる。そんなことはできない」
「そうかもしれません。けどサーニャさんにまで伝えなかったのはなぜですか?」
「サーニャを巻き込むわけにはいかないだろ。ある意味これはわたしの我儘なんだから」
「その我儘に付き合いたい人だっているんです。サーニャさんはどうですか?」
「…頼って欲しかったです。エイラには助けられてばかりだから」
エイラの影響力は大きい。それこそ階級が上のミーナ中佐ができない事でもエイラならできる、なんて事もあるくらいには上層部とのコネもありそれで助けられたウィッチも多い。サーニャなどはその際たる例だった。他にもポクルイーシキンのような戦場で助けられた者も多くエイラが考える以上に慕うものは多い。
「もしも何か有れば次は絶対に声をかけてください」
「考えとく」
明らかに伝える気のない返事に思いっきり睨みつけると言った。
「もし言ってくれなかったら次は反対の頬を殴ります」
その言葉にエイラは苦笑いを浮かべ渋々と了承の意を示すのだった。
ようやくとこの話に辿り着けました。
書き始めた当初からひかりの事とサーシャの事はずっと書こうとしていました。
作戦直前にわざわざ前線から一人ウィッチを引き上げるのなら合理的な理由が必要になります。それもわざわざオラーシャ領からカウハバに向かうのは違和感しかありません。そうなると向かう先はカウハバではなく別の場所。有力なのはムルマンスクになり非合法的な作戦だったと考えるのが自然です。ていう事で希少な魔眼持ちウィッチの研究のためひかりを拉致する作戦があったのかなっていう結論です。
サーシャはなんか固有魔法がUSBメモリーみたいだなぁって思ったところから軍上層部がウィッチを信用できるのならこういうのも有りかなって思ったからです。