ブリタニアに到着した2人は飛行機から降りると休む間もなくそれぞれ別々の車に押し込まれることとなった。
エイラが軍や政府の高官、各界の重鎮などによる歓迎パーティーに、サーニャがブリタニアにいるウィッチ達と交流するというふうに役割を分けられていたからだ。
もっとも歓迎パーティーと聞けば聞こえはいいが実際はそんなにいいものでもなかった。
「お会いできて光栄です。ガリアに続いてオラーシャの巣まで破壊したと聞きましたがよろしければネウロイの巣を破壊するための作戦を立てるコツなどあれば是非とも教えていただきたいものですな」
軍の高官と言ってもピンキリでありエイラがどのような活躍をしたのか正確な情報を持っていないものもいる。そう言った者達は自らの出世のためにネウロイの巣に関する情報を書き出そうとしてくるがエイラが中心となって作戦を立てたわけでもないためそう言った人達は曖昧に笑って誤魔化すことでやり過ごした。
「ユーティライネン中佐はあのマンネルヘイム元帥の薫陶を受けていると聞いている。戦後は政界進出なども考えているのですかな?
その時は良い関係を気付きたいものですな」
軍の高官だけでなく政府の人間もエイラに注目していた。
大戦前のスオムスならいざ知らず、現在のスオムスの力は大国にとっても無視できないものとなりつつあった。戦後の国際社会がどうなるにせよオラーシャと国境を接しカールスラントとは海を挟んだ向こう側という関係上戦略的に重要な国になることは疑いようがなくガリア解放という偉業により戦後が現実的になったことによってスオムスに対する注目は日に日に高まっていた。
特にネウロイの危機がほとんどなくなり戦後を考え始めているブリタニアなどからすると少なくとも軍事面においては戦後スオムスの中心人物の一人となるであろうエイラは是非も繋がりを持っておきたい人材だった。
オラーシャと強い結びつきの強いスオムスの情勢を考えるとそれに対しても曖昧に笑って誤魔化すしかなかった。
次から次へと挨拶に訪れる軍や政府の高官に内心辟易としながらも笑顔を絶やす事なく対応していくエイラだったが後半になると挨拶の相手の毛色は段々と変わり始めていた。
「いやー、貴女があのユーティライネン中佐ですか!お会いできて光栄です。私大学でウィッチの固有魔法について研究しているのですがなんでも噂ではユーティライネン中佐は未来予知が固有魔法だとか。是非ともその詳細を教えていただからと私の研究に役に立つのですが」
エイラと直接的な関係がある軍や政府関係者と違って数は少ないが、少なからずウィッチに関係のある研究者が招かれていてこの人物もその一人だった。
こう言った研究はすぐに影響があるわけではないがこれにはエイラも少し興味があった。
「実はわたしもよくわかってないんです。魔法力を発現させることで数秒先の未来を映像として知ることができるんです。
単純な攻撃力などでは電撃によって攻撃する固有魔法などと比べて劣るんですけど燃費は驚くほどいいんですよ。規模はともかくやっていること自体はおそらく固有魔法の中でもトップクラスにおかしいんですけどね」
「なるほど。知ることのできる未来の最長はどれくらいですか?」
「それは先であればあるほど魔法力の消費は大きくなりますけどわたし自身が限界まで先を知ろうとしたことがないのでなんとも言えませんね」
エイラ自身限界に挑戦したことが無く普段使う分には数秒先が知れるだけで事足りるため確認しようとしたことすらなかった。
「なるほどそれは興味深い!もし無限に魔法力が供給されるのなら年単位で知ることができるのでは!?そうなるとまずやるべきは貯蓄した魔法力を…」
一人でブツブツと何か言い続けているその研究者が怖くなりそっとエイラはその場を離れた。
最後の方になってやっとまともな相手との話が実現した。ブリタニアの名門オックスフォード大学などの学生が数人このパーティーに参加していた。歳も近く比較的この会話は和やかに進むことになった。
「なるほど魔法力を化学に利用することて別の物質を生み出すなんて事も化学なのか。錬金術みたいだな」
「そもそも化学は錬金術から発展したものですからね。固有魔法には風や電気を操るものがあると聞きますし魔法力を別の物に変えことを考えると不可能ではないと思っています」
そう話すのはオックスフォード大学で化学を学んでいるエイラの3つ年上のメアリー・サッチャーだ。
「そう言う固有魔法はわたしも知ってるけどあれって生み出してるんじゃなくて元々あるものを操っているだけとも考えられるんじゃないか?」
ハルトマンのシュトゥルムなどは風を生み出しているとも捉えられるが空気を操っていると考えることもできる。同じようにペリーヌのトネールも人が持つ微弱な静電気を利用していると考えると必ずしも生み出しているとは限らない。
「そうなんですね。なら火を生み出すような固有魔法などはあるのでしょうか。それなら生み出すと証明されると思うのですが」
「ある可能性は否定できないけどそもそも固有魔法持ちが珍しいんだ、見つけるのは難しいだろうな」
501部隊は全員が固有魔法を持っていたがそんな部隊は稀だ。もちろん余程ウィッチが少ない国でもない限り固有魔法持ちのウィッチだけで部隊を作ることはできる。しかし固有魔法を持っているものがウィッチとして必ずしも優秀とは限らないため一つの部隊に纏めても練度の差で部隊の連携が乱れることなどを考えるとあえて固有魔法を持っているものだけの部隊を作るメリットが薄いことからエイラの知っている限りではそんな部隊存在しなかった。
「そうなんですか。残念です」
「何も全くないって決まったわけじゃないけどな。昔のウィッチはわたし達よりも強力な魔法を使えたなんて話もあるし錬金術そのものはもしかしたら大昔のウィッチの固有魔法だったのかもしれないな」
「そうですか。それを聞くと私がウィッチではないことが残念でなりません」
「ウィッチなんかなるもんじゃないさ。特に今みたいな時代だとな」
その言葉の意味を彼女はよく理解していないようだった。
※
「疲れたぁ〜」
「お疲れエイラ。パーティーは楽しかった?」
先に宿泊先に着いていたサーニャがエイラにそう言った。
「全然。息が詰まりそうだったよ。サーニャの方はどうだった?」
「楽しかったわ。通信でしか喋ったことのない子たちとも会えたし」
通信というのはナイトウィッチが夜間哨戒で魔導針を利用して行うもののことだ。
「わたしもそっちが良かったな」
「エイラはパーティーて美味しいもの食べたんでしょ。そっちの方がいいと思うわ」
「そんないいもんじゃないよ。よく知らない奴が立て続けに挨拶してきてご馳走を食べる暇なんかこれっぽっちもなかったよ」
そう言ったエイラはとても疲れた顔をしていた。
「…もしかしてお腹空いてるの?」
「ペコペコだよ」
「厨房を借りて何か作ってくるわ」
「やった!ありがとうサーニャ!!」
アニメ三期7話の土偶?みたいなのとかを考えると昔のウィッチの方が強力な魔法を使えてそうな気がしますけどどうなんですかね?