ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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何個か考えて頭の中にストックしてるのに前書きに書く物を忘れて投稿してから気付くと言うのを最近繰り返してます。まだボケるような年齢じゃないんですけどねぇ。


私のロマーニャ

「…以上がヴェネツィアの巣攻略作戦の概要になります。何か質問はございますか?」

 

ロマーニャ軍の作戦参謀が問いかけるとスッと手が上がった。

 

「ユーティライネン中佐」

 

「巣を破壊するのは扶桑の戦艦とありますけど戦艦の砲撃にそこまでの精密狙撃が可能なんですか?」

 

エイラの少ない知識によると陸と海では火砲の命中精度は大きく異なる。

陸と違い海の上は波などの影響から常に揺れていて精密射撃というものができない。そのため当てるために数を撃つというのが基本戦術となっているが強力なネウロイのビームの前ではいくら戦艦でも有効打を与えられるまで踏みとどまる事ができないと言うのがエイラの知っている戦艦だった。

 

「扶桑は問題ないと言っています。ロマーニャのような陸軍国家と違い何か海ならではの技術革新があったのでしょう」

 

なんとも他人任せな話だが海洋国家の扶桑が言うことであれば門外漢のエイラやロマーニャが口出しできることではなかった。

 

「であれば扶桑皇国の者がその新技術について説明しに来るべきではありませんか?」

 

「機密故に本国に着いてからの説明になるそうです」

 

その言葉に一部の将官が眉を顰めそのうちの一人が手を挙げると言った。

 

「そのような不確実な兵器、本気で信じているのか!?」

 

「友軍が可能と言う以上信じるしかありません」

 

「ふざけるな!現状ヴェネツィアの巣は大きな動きはないがだからと言って放置していいわけではない。殆ど無制限とも言えるネウロイ生産能力のあるネウロイと資源に限りのある我らでは一度の失敗の大きさが違う!

そこに使えるかどうかも分からん兵器を用いて攻略を行うだと!貴様それでも参謀か!」

 

これを言ったのは最近までロマーニャ王国アフリカ派遣軍で指揮を取っていたジェラルド・メッセ元帥だ。

 

「メッセ元帥、貴官は最近までアフリカにいたから知らないのだろうが我が国には巣を破壊できる兵器がなく…」

 

「そんな事は言われなくても分かっている。私が聞きたいのはなぜ詳細も分からない兵器を使うのかを聞きたいのだ!我が国の事情ではない!」

 

庇うように話し始めたバスティコ元帥の言葉を遮って詰問した。

 

「そこまで分かっているのならわかるだろう。我が国には選択権がないのだ」

 

「それならば政治家連中が交渉なりなんなりで情報を入手すべきだろう。前線で我らが命を張るんだ。当然の義務だろう」

 

メッセ元帥の言う事は正しかった。しかし正しい事が必ずしも通るとは限らないのが政治の世界だった。

 

「何を交渉材料に情報を引き出すと言うのだ。金か?我が国の通貨の価値などヴェネツィアが落ちた時点で紙屑同然だし外貨と言えばそんなことではなく民の生活を少しでも豊かに保つために使うだろう。一体何を使うと言うのだ?」

 

「そんな事は政治家連中が考える事だ。私の知ったことではない!」

 

「無理なものは無理なのだ。第一友軍を信用しないでどうすると言うのだ」

 

バスティコ元帥が宥めようとするがメッセ元帥は止まらない。

 

「友軍?友軍だと!?それならば何故我らに詳細を隠す!向こうが友軍だと思っていないことの証左ではないか!」

 

この作戦においてロマーニャ方面から陸軍を指揮してヴェネツィアを奪還する部隊を指揮するメッセ元帥からすればヴェネツィアの巣が破壊できるのかどうかは部下の生死にも関わる。この点にこだわるのは当然のことだった。

 

「貴様がなんと言おうが無理なものは無理なのだ!諦めろ」

 

この言葉にメッセ元帥が反論しようとした時だった、ドンドンと会議室の扉がノックされロマーニャ軍の軍人が入ってきた。

 

「今は会議中だぞ。一体なんだ!」

 

しょうもない事であればただではおかないと言う凄みがバスティコ元帥の声にはあった。

 

「ま、マリア皇女が行方不明になられました!」

 

その言葉に一瞬会議室から音が消えた。次の瞬間

 

「バカな!護衛は何をしていた!」

 

メッセ元帥の叱責が飛んだ。

 

「そ、それが通りすがった子供に邪魔をされて…」

 

「それで先方はなんと言ってきているのだ」

 

叱責を飛ばそうとするメッセ元帥を手を上げて制するとバスティコ元帥が尋ねた。

 

「軍には殿下を探す協力をしてほしいとのことです」

 

予想していたのだろうバスティコ元帥の答えは早かった。

 

「30分後に捜索隊を出すとお答えしておけ」

 

「何を言っているバスティコ元帥!殿下が行方不明なのだぞ!」

 

「メッセ元帥、今ローマには各所を守る最低限の守備隊しかおらん。非番の兵を呼び出すとしても30分は見るべきだろう」

 

「そんな悠長なことを言っていられるか!重要度の低い場所から兵を引き抜き…」

 

「そもそも殿下は公務に出られたこともないから国民にお顔が知られておらん。まずは写真などを配ってお顔を周知させる必要がある」

 

協力を要請されてもできる事は限られていた。

 

「だからと言って何もせぬわけには……。そうだ、ウィッチに上空から探させればいいではないか!それなら必要な写真も少なく済む!」

 

「残念だがローマ周辺にはウィッチがいない。元々ローマ周辺に配置していたウィッチはヴェネツィア失陥の影響でカールスラント方面とヴェネツィア方面に派遣しているからな」

 

「ならばユーティライネン中佐、協力してくれないか!?」

 

ローマにいるおそらく唯一であろうウィッチ、エイラに問いかけた。

 

「申し訳ありませんがストライカーユニットがないので協力できそうにありません」

 

そもそもいくら一国の王族とはいえたった一人の人間を探すのに貴重なウィッチを使うなど平時ならともかく戦時ではそうそう許される事でもなかった。

 

「メッセ元帥、我々軍人は戦うのが本分だ。人探しは専門家に任せるべきだ」

 

「警察に任せろと?優秀なものは皆徴兵なり志願なりしてほとんど存在しないのにか?」

 

その問いかけにバスティコ元帥が答えようとした時、あたりに甲高いサイレンの音が鳴り響いた。

 

「何事だ!」

 

「何事だも何もこのサイレンはネウロイが襲撃してきた時になるものでしょう」

 

誰かの問いかけに事も無げにエイラが言った。

 

「そんな馬鹿な!一体何重の防空網が敷かれていると思っているんだ!」

 

これを言ったのはメッセ元帥だ。

 

「……元帥、ヴェネツィア陥落前と比べると今の防空網はかなり貧弱なものになっている。特にアドリア海方面は現在501しかウィッチ隊はいないしヴェネツィア陥落の際にレーダーも破壊されてレーダー網は相当貧弱だ。すり抜けてきても不思議では無い」

 

エイラの一言で平静を取り戻したバスティコ元帥が冷静にそう言った。

 

「なんと言う事だ…。いや待て、そうなると殿下が危ない」

 

「その通りだ。しかし我々には撃退するための戦力がない。せいぜいが市外にある高射砲陣地にネウロイを誘い込むくらいだろう」

 

もっとも、そんな事をしてもほとんど意味がない事をこの場にいる全員がわかっていた。

小型ネウロイならともかく中型以上のネウロイでは高射砲による射撃程度では撃ち落とす事が不可能に近く足止めにもなりはしないと言う事はもはや常識となっていたからだ。さらに誘い込むと言っても車程度では簡単に追いつかれることからできれば航空機が望ましい。しかしそれらの殆どは最前線へと送られていて訓練用の旧式の機体くらいしか付近にはなかった。

 

「最速でローマに来れるのは501だな。ユーティライネン中佐、どれくらいの時間でここまで来れる?」

 

「およそ20分と言ったところではないでしょうか」

 

「それでは間に合わん!」

 

「しかし事実として…うん?」

 

ストライカーユニットらしきエンジン音が聞こえてきた事に気付いたエイラは立ち上がり窓を開けると身を乗り出してその音を聞こうとした。

 

「どうした中佐」

 

「…どうやらわたし達は随分と運に恵まれているようですよ。どこの部隊かはわかりませんがウィッチです」

 

そう言っている間にもエイラの視線の先では一人のウィッチが急上昇して既に上空を飛んでいた二人のウィッチと合流するのが見えた。

 

「たった三人でどうにかなるのか?」

 

「なるでしょうね。エンジン音に聞き覚えがあります。おそらくあれは扶桑とリベリオン、それとロマーニャのウィッチだと思います。この付近でそれらの国のウィッチがいる部隊といえば501か504ですからそのいずれかと考えるべきでしょう」

 

その言葉に会議室から安堵の声が漏れ出た。501はもちろん、ヴェネツィア陥落の際に被害を出したとはいえ504も精鋭揃いだ。たかが中型ネウロイ一機くらいであれば簡単に倒せるとこの場にいる全員が理解していた。

 

「皆安心するのはいいが念のため地下に避難するぞ。呑気に戦いを見物していたら流れ弾に当たって司令部全滅などとなったら洒落にもならんからな」

 

バスティコ元帥の言葉を聞くとエイラ以外は必要最低限のものだけを持って地下の防空壕と移動を開始した。

 

「ユーティライネン中佐も早く」

 

バスティコ元帥が声をかけた。

 

「わたしは大丈夫ですよ。シールドがありますし」

 

それもそうだと頷くと元帥は地下に避難していった。

 

「…けどなんでシャーリー達はローマにいたんだ?」

 

たった一人になった会議室でエイラはそんな言葉を呟くのだった。




ヴェネツィア陥落の影響って実は相当大きかったんだと思います。
じゃないとそう簡単に首都までネウロイが来たことの説明がつきませんからね。(ロマーニャ軍がそこまで貧弱ではないと言う願望込みですけど)
ローマ周辺に配置していた首都防衛用の兵力とヘタをすればシチリアあたりからも引き抜いているのかもしれませんね。アフリカとの距離を考えるとシチリアに部隊がいるかは微妙なラインではありますけどマルタが襲撃を受けた事を考えるとおそらくいたと考えていいでしょう。バルカン半島とかへの補給線も通っているでしょうし。
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