「空軍の偵察機が撮ってきた写真だ」
スクリーンに写真を映すと坂本少佐は言った。
「ノイズしか写っていないようだが」
バルクホルンが訝しげに尋ねた。
「これが今回現れたネウロイの本体だ。全体を捉えようとしたら、こうなった。全長は30000メートルを超こえると推測される」
「30000!?高さ30キロって事か!」
バルクホルンが息を呑んだ。
「えっと、それって富士山の…」
宮藤は指を折って数え始めた。ちなみに30000メートルは富士山の約8倍である。
「これが毎時およそ10キロという低速でローマ方面に向け移動している。それより厄介なのはこいつのコアの位置……ここだ」
「てっぺん?」
バルクホルンが素っ頓狂な声を上げた。
「ああ。私がこの眼で確認した」
坂本少佐は魔眼を指差しながら言った。
「ですが私達のストライカーユニットの限界高度はせいぜい10000メートル…」
「だからこいつを使う」
坂本少佐の合図で変わり何かの設計図が映し出された。
「ロケットブースターだ」
「これがあればコアがあるところまで飛べるんですか?」
宮藤が尋ねた。
「いや。そんな簡単な話ではないはずだ」
バルクホルンが宮藤の言葉を否定した。
「ええ。ブースターは強力だけど魔法力を大量に消費するから短時間しか飛ぶことはできないわ」
ミーナ中佐が言った。
「だったら私たち皆んなで誰かを途中まで運べばいい」
「そういう事だ」
シャーリーの言葉に坂本少佐が同意した。
「しっかし、30000メートルも上空てことは空気もないな」
「えっ!空気ないの?」
シャーリーの言葉にルッキーニは目を見開いて驚いた。
「じゃあしゃべっても聞こえないね」
「おっ!かもな!」
ハルトマンの言葉にどこか楽しそうにシャーリーが同意した。
「ええ!聞こえないの!?」
「30000メートルの超高高度は人間の限界を超えた未知の領域よ」
「だが我々はウィッチだ。ウィッチに不可能はない。そこで瞬間的かつ広範囲にわたる攻撃力を備えるものとして…サーニャ。コアへの攻撃はお前に頼みたい。この作戦にはお前のフリーガーハマーによる攻撃力が不可欠だ」
空気がないということは弾丸に空気抵抗がかからないという事でもある。普段は少なからず空気のある状態で武器を使うが全くないとなるとどんなウィッチでも多少命中率に不安が残る。
その点広範囲に爆発が起こるフリーガーハマーなら多少目標から逸れたとしても攻撃が届く事からサーニャが攻撃役となるのは当然と言えた。
「今回の作戦はブースターを使用する上に極限状態での生命維持、そして攻撃ととても多くの魔法力を消耗するわ」
「となればサーニャには自分の身を守る余裕はない。だからもう一人、サーニャの盾となり守るものが必要となる」
「当然だな。で、護衛役は誰にするんだ?」
大きく頷きながらエイラは言った。
「宮藤、お前がやれ」
「は、はい!…え?」
「最も強力なシールドが張れるお前なら適任だ」
坂本少佐が言った。
「…いやいや!それは一番ダメだろ!」
エイラは椅子から立ち上がると坂本少佐に詰め寄った。
「何故だ?今回の作戦に必要なのはサーニャの護衛役だ、適任だろう」
「そうね。少なくとも宮藤さんが一番ダメということはないわ」
ミーナ中佐も坂本少佐に同意した。
「よく考えろ!今回のネウロイはどうやって見つかったと思ってるんだ?」
「どうやって見つかった?それはロマーニャの監視網にネウロイが引っかかって」
「違う!」
エイラが否定した。
「違わないだろう。我々はロマーニャからの要請で出撃してあのネウロイを見つけたんだ。何も違わないだろう」
「そうじゃなくて」
「そういやそのデカいネウロイは親機を探していて見つけたんだったよな」
シャーリーが言った。
「そう!そうなんだよ!」
勢いよくシャーリーの方に振り向きシャーリーを指差し言った。
「このバカみたいな高さのネウロイはただのネウロイじゃない。コアを持たない複数のネウロイを従える親機なんだ。そのことを念頭に置いて作戦は立てる必要があるだろ」
「まさかコアの近くにも子機がいると言うことか!?」
バルクホルンが言った。
「だが私が見た限りそんな物はいなかったぞ」
「ブリタニアであったキューブ型のネウロイを覚えているか?あんな感じで分裂する可能性もあるしなんなら生み出す可能性も考える必要があるだろ」
「…たしかにそうだな」
対象以外のネウロイが全くいないならともかく子機がいる可能性がある以上は宮藤を護衛につける理由はなかった。
「そうなるとまず単純な実力から宮藤、それと精度はともかく射撃速度の遅い対物ライフルを使うリーネは除外すべきだろ」
「ならブランクがあった事を考えてペリーヌも外すべきだな」
「残りのメンバーから選ぶ事になるけど誰がいいかしら」
ミーナ中佐がエイラに尋ねた。
「経験値から考えてシャーリーとルッキーニも外すべきだな」
「そうだな。誰も到達したことはないとは言え飛行経験が多いに越したことはないからな」
「普段の戦闘スタイルが接近戦寄りな事を考えてバルクホルンとハルトマンも外そう」
「なら同行するのミーナということになるな」
「わたしもいるぞ」
「エイラは足に問題があるだろ」
ため息をつきながら坂本少佐が言った。
「一体いつの話をしてるんだよ。一年前だぞ。多少魔法力の消費は多くなったけど実力は戻してる」
そう言ってエイラは胸を張った。
「何よりわたしの固有魔法は不測の事態に強い。わたしほどの適任はいないぞ」
「…時にエイラ。お前、シールドを張った事はあるか?」
「シールド?一年くらい前に張ったぞ」
「質問を変えよう。ネウロイとの実戦ではどうだ?」
その出来事に心当たりのあった坂本少佐は聞き直した。
「自慢じゃないけどわたしは実戦でシールドを張ったことなんて一度もないんだ」
「なら止めるべきだろう」
「そうだな」
深く頷いてエイラが同意した。
「…え゛?」
が、それはエイラにとって予想外の返答であり思わず変な声が出てた。
「そうね。エイラさんの実力はともかく普段シールドを使わない人が100パーセントのパフォーマンスのシールドを張れると考えるのは危険じゃないかしら」
「わ、わたしはシールドを張れないわけじゃないぞ!第一、飛行学校ではシールド含め評価は全部一番良かったんだぞ!」
「だが実戦で使ったことはない」
「その通りだ!」
何故かエイラは自慢げだ。
「根拠がなく言ってるわけじゃないから一度話を聞いてくれよ」
「…聞くだけ聞こう」
「ここ最近、というかスオムスで訓練するときはシールドに関する訓練を中心にやってたんだよ。それを発揮する機会こそなかったけどそこいらのウィッチに負けないくらいにシールドの扱いも上達してるぞ」
自信満々といった様子でエイラは言った。
「サーニャ、どうなんだ?」
そんなエイラを無視するように一緒にスオムスにいたサーニャに尋ねた。
「はい。エイラの言うとおりシールドは前と比べて格段に上手くなっていると思います」
「なら後は実戦経験だけね」
シールドのことを除けばエイラが適任ではある。しかしシールドが一番のネックである事がエイラを護衛役にできなくしていた。
「なんなら明日シールドを使った模擬空戦でもやるか?」
「…そうするか」
ロケットブースターの用意やネウロイの速度からまだまだ時間もあるため結論をだすのは翌日に持ち越すこととなるのだった。
あのネウロイ、親機である以上子機を出す可能性って結構高いはずなんですよね。その可能性を考えると下手したらあの二人が戦死するなんて未来もあったんじゃないのかなって思います。宮藤さん丸腰でしたしフリーガーハマーは数が限られているしで危なすぎるんですよね。
そもそもあのネウロイって戦闘方法が子機をメインに使っているからビームより子機の方が警戒対象になりそうなもんですけどね。コアの近くこそビーム撃ってきましたけど海軍との戦いもビーム撃ってなかったですしコア付近に子機がいるって考える方が現実的な気もします。
ただ坂本少佐が魔眼持ちで魔眼にそう言ったものが映らなかったことがその考えに思い当たらなかった原因かなと思っています。
ていうかネウロイってどうやって生み出されたんだ…。