ロマーニャに現れた超高高度にコアを持ったネウロイは第501戦闘航空団によって撃破された。
前線のウィッチやロマーニャ国民達はこの一文を持って事態は収束したとみなしたが南方方面軍司令部を含む軍上層部にとっては始まりにすぎなかった。
「もしもまた同じネウロイが現れたら対処は可能か?ユーティライネン中佐」
各国から集められた軍のトップ達は今回のネウロイ討伐の当事者の一人であるエイラからの説明を聞き誰からともなく尋ねた。
「状況次第としか言いようがありません。高度30000メートルで冷静に、正確にコアを打ち抜けるだけの技量を持ったウィッチがいれば破壊そのものはできるでしょう」
「報告書には子機がいる可能性があるとして護衛は武器を携行したとあるが子機がいたとしても破壊は可能なのか?」
そう尋ねたのはブリタニア王国海軍第一海軍卿アントニー・カニンガム元帥だ。
「同じ状況なら成功率は50%くらいだと思います。フリーガーハマーの弾の速度はそこまで速くないですから子機が無理矢理間に入ってくる可能性もありますのでどう頑張ってもこれくらいかと思います」
「ならば複数のウィッチを同時にロケットブースターで飛ばし多方面から攻撃を仕掛けるのはどうだ?」
カールスラント空軍総司令官ヘルムート・ゲーリング元帥が尋ねた。
「それだけの数の精鋭ウィッチを揃えられるなら破壊できると思いますけど半分は失うと覚悟してください」
「それは許容できん。だいいち2人飛ばすだけで一個中隊規模のウィッチが動けなくなるとなれば防空に支障をきたす。現実的ではないぞ」
オラーシャ陸軍参謀総長グレゴリー・ジューコフ元帥が反論した。
「だが高度30000メートルともなると迎撃手段が限られる。飛行機に高射砲でも載せでもしなければ通常の高射砲では届かないだろう」
リベリオン空軍元帥ハリー・アーノルドが言った。
「貴国や扶桑がもう少しウィッチを送ってくれればそれも可能になるだろう」
「無茶を言うな。我が国とてギリギリなのだ。それより噂ではカールスラントがロケットブースターを利用した新兵器を開発していると聞いたがそれはどうなのだ?」
扶桑皇国海軍大臣、米内光英が言った。
「…V2のことか」
「さて、名前までは。ただそのような兵器があると噂を聞いただけだ」
「たしかにV2なら高度30000メートルにも届くだろう。だがあれは信頼性に欠けるうえに本来は超長距離からネウロイの巣を攻撃することを目的として作られている。上空のネウロイを迎撃するとなるともう少し改良を加えなければ難しい。それに発射場を作らなければならないから発見して即発射できるとも限らない」
「現状でも届きはするのでしょう?そのようなものがあるのなら是非ともロマーニャに設置してほしいものですな」
ロマーニャ陸軍元帥エルヴィーノ・バスティコが言った。
「正式採用しているならともかくそうではないのだ。もうしばらく待ってもらいたい。元帥も無辜の市民の上に爆弾が降ってくるのは望まんだろう」
「…それは困るな」
「ならば西方方面軍で試験をすればいい。パリやガリア南部はともかくカールスラント国境付近はまだ人もあまり戻っていない。被害も少ないだろう」
アーノルド元帥が言った。
「我が国としても実験ができるのはありがたいことだ。しかそれをアイゼンハワー元帥が許可するかな」
「場所を選べば問題はないだろう。ベルギガや、ガリア東部からカールスラントにある巣を目指して撃てばいい」
「…一応我々としては自国領を撃つことになるからできれば遠慮したいものなのだが」
複雑な表情でそう言った。
「カールスラントもネウロイに占拠されて久しい。人が住んでいるわけでもなくまともな建物もない。今更躊躇う必要もないだろう」
アーノルド元帥の言うことはもっともだが心情的に自国を撃つ事に躊躇いを覚えるのは無理もなかった。
「だがその方法では奪還したての場所ではこのネウロイに対して無防備になる。やはり簡単に使用できる手段が欲しいな。アーノルド元帥、飛行機に高射砲を取り付けられないのか?」
ジューコフ元帥が言った。
「本気か?できない事はないと思うが航空機には揺れがある。地上から撃つほどの命中率は期待できない。仮に当たったとしても通常弾ではネウロイの装甲を破壊できるかわからないことを考えると特殊な弾を用意する必要もある。使われる局面が限定的すぎて開発するコストに見合わなない。そんなものを開発するのなら高射砲の攻撃可能高度を上げることを考えるべきだろう」
「だが同じようなネウロイが現れると今度こそ戦線が崩壊するやもしれん。開発に時間をかけるよりは既存の兵器の改良で済むのならそれで済ませたい」
「ならば貴国でやればいいだろう」
「貴国のB17、いや高射砲を乗せるとなるとB29がいいな。B29のような大型の爆撃機が我が国にはないからそれは困難だろうな」
困ったような表情でジューコフ元帥が言った。
「…一度持ち帰って上と話をつけよう」
「よろしく頼む」
ジューコフ元帥がにこやかに言った。
「ところでユーティライネン中佐。ここまで話していてなんだがウィッチの視点から何か有効な対策はないかね?」
カニンガム元帥が尋ねた。
「いえ、皆さんが話されたこと以上のことはありません」
「よろしい。では我が国としては是非ともカールスラントのV2の開発を急いでもらいたい。そのための援助は惜しまない」
「ありがたい。だがいうだけならばいくらでも言える。具体的には何をしてくれるのか教えていただきたい」
「資金援助、それと技術者も送ろう」
まるで事前に決めていたかのように迷うことなくカニンガム元帥は言った。
「資金援助はありがたく受け取る。だが技術者は遠慮しておこう。
もう既に完成間近なものにわざわざ貴重な技術者を送っていただく必要はない」
「遠慮する必要はないぞ。ガリアからネウロイが駆逐されて我が国も余裕ができたからな。いくらでも技術者は送れるぞ」
「その件にはリベリオンからも資金を送らせてもらおう」
「待て待て、扶桑も援助させてくれ。ブリタニアなどよりより多くの資金を援助できるぞ。そのかわり完成品は我が国が一番に買わせてほしい。もちろん、カールスラントに配備された後にだが」
ここにきてエイラもようやく理解することが出来た。つまりブリタニア、リベリオン、扶桑は新型ネウロイに対する対策と言いながらこのカールスラントの新兵器が欲しかったのだ。
それに期待からだろうか、ジューコフ元帥もまた口を開いた。
「御三方ともそうがっつくな。その技術には非常に興味があるのは理解できるが結局配備先はネウロイと直接地続きになっている国、つまり我がオラーシャのような国が」
「「「最初は西部方面軍に配備するとさっき言っただろ」」」
「ぬぅ…」
悔しげな顔をしながらながらチラリとジューコフ元帥はチラリと何か訴えるようにエイラの方に視線を向けた。
「…コーカサス方面については膠着状態ですしそちらにV2を配備する余裕くらいはありませんか?
それに実験するのなら様々な気候のもとで試した方がよろしいのではないでしょうか」
「…ユーティライネン中佐の言うことも一理あるな。後になって気候によっては使用不可などと言うことになってはたまったものではない」
ゲーリング元帥がそう言うと他の3人もその可能性に顔を顰めたがその意見にも一理あると考えたのか渋々同意した。
「ではV2の実地試験実施場所は西部方面軍メインにしつつ少数だがオラーシャでも行うということでいいな」
アーノルド元帥が決を採ると全員が賛成の意を示しこの会議は終了した。
アニメ本編ではめでたしめでたしで終わるこのネウロイ、おそらく、と言うか絶対にそれでは終わらないです。
一度出現した以上は対策を考えざるを得ないですし毎回毎回二期6話みたいな方法で倒されるとも限らない。
多分これがストライクウィッチーズ世界における地対空ミサイルの開発が加速する原因になるんじゃないかなぁと思ってこんな話を書いてみました。