ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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予想以上に長くなってしまった…


モゾモゾするの 前編

その日エイラは突然の衝撃によって目が覚めた。

 

「…サーニャ?」

 

一年ほど前から度々エイラのベッドに侵入しているサーニャだった。

さほど驚くことなくエイラはシーツを手に取るとしょうがないなぁなどと言いながら風邪をひかないようにシーツをかけてあげるのだった。

そんないつもと変わらない平凡な一日で終わるはずだった。ネウロイさえ来なければ。

 

「本日の通達です。先日来の施設班の頑張りにより、お風呂が完成しました。本日正午より、利用可能になります」

 

ミーナ中佐がミーティングルームに集まった面々にそう告げた。

 

「やった〜っ!」

 

「お風呂、お風呂!」

 

宮藤とルッキーニが歓声を上げた。

 

「アドリア海が一望できる野外に作ってもらったのよ」

 

「露天風呂か」

 

「サーニャも喜びそうだな」

 

ミーナ中佐の言葉に坂本少佐とエイラが嬉しそうに言った。

 

「では各自今日は自由行動です。他の人にも教えてあげてね」

 

「「「はーい」」」

 

「よかったね芳佳ちゃん」

 

「うん。一緒に入ろうね。ペリーヌさんも」

 

「へ!?まあ、汗をかいた後にスッキリするのはいいことですわ」

 

「お風呂、お風呂あたしがいちば〜ん」

 

「聞いてなかったのか?風呂が使えるのは正午からだ」

 

早速とばかりにお風呂に向かって駆け出したルッキーニを坂本少佐が首根っこを掴んで引き止めた。

 

「え〜まだダメなの〜」

 

「風呂に入れるまでまだ時間がある。という訳で、風呂に楽しく入る方法があるんだが」

 

「えぇ!?なんなんですか坂本さん!」

 

「訓練で汗をかけ!全員、基地の周りをランニングだ!」

 

「う゛ぇぇえ」

 

「でも訓練だったらいつでも…」

 

「つべこべ言わずに…走れ!」

 

「は、はい!」

 

坂本少佐が怒鳴り声を上げると宮藤達は慌ててミーティングルームを出て行った。

 

「頑張れよー」

 

そんな宮藤達を他所にエイラは呑気に手を振った。

 

「ちょうどいい。エイラも走ってきたらどうだ?」

 

「わたしは遠慮しとく」

 

元々訓練自体あまり好きではなく、また階級的にも訓練をするよりもそれを指揮監督する立場になりつつあるエイラは必要最低限以上の訓練をする真面目さを持ち合わせていなかった。

 

「…この間の作戦、サーニャと比べて随分と息が上がっていたように見えたぞ。体力が落ちているんじゃないか?」

 

「高度30000メートルも上がれば多少は息も切れるよ」

 

スッと坂本少佐から目を逸らすとそう言った。

 

「私が記憶している限りこの基地にきてから一度も訓練をしていないと思うのだが…。ミーナ、どうだ?」

 

「そうね。ストライカーユニットで飛ぶことはあってもこういう基礎体力に関することは一度もないわね」

 

「なら丁度いいな。あいつらがちゃんと訓練をするか監視するついでに走ってきたらどうだ」

 

「疲れるから嫌だ」

 

「じゃあ隊長命令よ。貴女も一緒に走ってきなさい」

 

「は〜い」

 

ミーナ中佐にそう言われ、エイラは渋々部屋から出て行った。

 

「虫?どんな?」

 

基地の周りをランニングしている宮藤はルッキーニから今朝発見した珍しい虫の話をきいていた。

 

「んとね、こんくらいでね、すっごくキラキラしてんの!」

 

ルッキーニは指で大きさを示した。

 

「あとで芳佳にも見せてあげる!」

 

「うわ〜、楽しみ!」

 

さて、そんなルッキーニの虫が置かれている部屋では同室のシャーリーが鼻歌を歌いながら機械を弄っていた。

 

「ふふんふ〜ん」

 

机に置かれた瓶にはルッキーニが捕まえた虫達が入っていた。その蓋がひとりでに開いたかと思うと中の虫が一匹、ブーンと音を立てて飛び立つと電線にとまった。次の瞬間突然部屋の電気が消えた。

 

「停電か?」

 

「よし、時間だ。入っていいぞ」

 

懐中時計を見て坂本少佐が告げるとルッキーニを先頭にして脱衣所へと突入した。

 

「どうしたペリーヌ。入らないのか?」

 

「あの、しょ少佐は…」

 

「ああ、私は朝練の後に行水をしたからな。今日はもういい」

 

「そ、そうですか…」

 

しょんぼりとしながら脱衣所に入るペリーヌを坂本少佐は不思議そうに見送った。

 

 

「いっちばーん!」

 

「にっばーん!」

 

大きな声と共にルッキーニと宮藤が風呂へと飛び込んだ。

それにリーネに肩をかりたエイラが続いた。

 

「何恥ずかしがってんだ?…えい!」

 

エイラに貸した肩とは反対の手で胸の前にタオルを持っているリーネからエイラは勢いよくタオルをとりあげた。

 

「きゃあ!」

 

この行動は軽率と言わざるを得なかった。エイラからタオルを取り返そうとしたリーネと軽くぶつかったことによりエイラはバランスを崩してそのまま湯船へと沈んでいった。

 

「あ!ご、ごめんなさい!」

 

慌ててリーネが助け起こそうとするが、そこはエイラ、転んでもただでは起きない。助け起こそうと手を伸ばしたリーネの手を取ると逆に湯船に沈めそのまま背後を取った。

 

「お、リーネ。前よりもデカくなったんじゃないか?」

 

「や、やめてくださ〜い!」

 

そんなエイラを口を大きく開けて羨ましそうに見ている宮藤の背後からルッキーニが抱きついた。

 

「うわぁ!」

 

「やっぱり残念」

 

その胸はリーネと比べて、と言うより501部隊全体から見ても小さい部類に入った。

 

「残念?残念ってなに!」

 

「な、なんて下品な!」

 

遅れて到着してその光景を見たペリーヌは絶句した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブーンと音を立てながら一匹の虫が「ゆ」と書かれた暖簾をくぐりリーネの衣服の上にピタッと引っ付いた。それと同時にガラッと音を立てて扉が開き宮藤達が風呂から戻ってきた。

 

「はー気持ちよかったぁ」

 

「後でシャーリーともう一回来よっと!」

 

「早くサーニャ起きてこないかな」

 

「まったく!どうして貴女方はマナーよく入れないんですの!」

 

プリプリとペリーヌが怒った。お風呂文化の根強い扶桑人の宮藤ではなくガリア人のペリーヌが湯船の浸かり方について文句を言う不思議な現象起こっているがそんなことに突っ込む人物は一人もおらず、そもそもマナーについてとやかく言うような性格の人物がいないせいでペリーヌの文句は無視された。

 

「…ん?」

 

リーネがズボンを履くと何やらお尻でモゾモゾと動くモノがあることに気がついた。

 

「いやー!!!」

 

叫び声を上げて履いていたズボンを勢いよく下ろした。

 

「ど、どうしたの!?」

 

叫び声を上げたリーネなら全員の視線が集中し思わずリーネはズボンを履き直した。

 

「ず、ズボンの中に何かいるの」

 

「何これ?虫?」

 

リーネのズボンの中で動く物体を見つけ宮藤が言った。

 

「虫!?…。い、いやー!!!!!」

 

虫をズボンの中に入れ続けるなどと言うことをできるはずもなくいち早く取り出そうと再びズボンを下ろした。

 

「出てきた!」

 

「どったの?」

 

「な、なんて悍ましい」

 

「なんだよ虫ぐらいで騒ぐ…な」

 

「エイラさん?」

 

唐突に言葉に詰まったエイラに視線が集まった。

 

「ず、ズボンの中に…何かが!?」

 

「それって…」

 

「きっと虫です!」

 

「虫!?」

 

「見せて!」

 

「く、来るな!

 

危機感を露わにするリーネと対照的に何故か興奮した様子を見せるルッキーニと宮藤に虫とは違った危機感を抱いたエイラは即座にズボンを下ろすことで対応した。

 

「お、悍ましい」

 

心底嫌そうな表情をペリーヌが浮かべた。

 

「あ!あの虫!」

 

何やらルッキーニはその虫に心当たりがあるようだった。

 

「まったく。ズボンの中に虫が入るだなんて、普段からだらしない生活をしているからきゃー!!!」

 

「ペリーヌさんの所に行った!」

 

「あたしの虫!」

 

「そ、そんなズボンの中に虫だなんて」

 

生活がだらしないなどと人に言った手前自分にも虫が入ったなどとプライドの高いペリーヌがいえるわけもなく誤魔化し始めた。

もちろんそんな事で誤魔化されるわけがなくルッキーニと宮藤によって拘束されたペリーヌは無理矢理ズボンを下ろされた。

 

「ペリーヌ…」

 

「あ、坂本さん?」

 

「しょ、少佐…」

 

不幸なことにペリーヌの尊敬する坂本少佐が風呂桶を持って入ってきた。

 

「出た!」

 

ペリーヌのお尻からブーンと音を立てて虫が飛び立ち天井の配線にとまった次の瞬間、風呂場の電気が一斉に消えた。

 

「停電か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、何かと思ったらたかが虫か」

 

「うぅぅ」

 

メソメソと泣きペリーヌが泣きじゃくるのを他所に坂本少佐が呆れたようなため息を吐くと言った。

 

「けどさ、ズボンの中にその虫が入ってモゾモゾって」

 

「そうですわ!あの性悪虫のせいで私がこんな目に!絶対に許しませんわよ!」

 

「あたしの虫だかんね!」

 

「よし!みんなで捕まえよう!」

 

「ええー!」

 

恨み骨髄と言わんばかりのペリーヌと対照的に明らかに虫を見たい捕まえたいと言う欲を隠さないルッキーニと宮藤にリーネは関わりたくないとばかりに悲鳴をあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっち行った!」

 

「虫ー!!!」

 

「もう止めようよ〜!」

 

「おのれどこにっ!」

 

「本当にこっちか〜?」

 

ドタバタと大きな音を立てながら虫を探しているとガチャリと扉が開いてバルクホルンが出てきた。

 

「何を騒いでいるんだ!」

 

「あ!いた!」

 

「虫!」

 

「虫?虫がどうしたんだ。大体中佐がいながらどうしてこんなあぁ!?!?」

 

「あ、バルクホルンのズボンに入ったな」

 

「バルクホルンさん!」

 

宮藤が心配そうに声をかけた。

 

「静まれ!」

 

そういうとズボンに手をかけた。

 

「こう言う時は…こうだ!」

 

ズボンに虫が入ったのならば脱げばいいとサッとズボンを下ろした。

 

「えぇ!!!」

 

宮藤がその大胆な行動に驚きの声を上げた。

 

「もらった!!!!」

 

そう言って大きく腕を振りかぶったハルトマンがそのお尻に手を叩きつけた。

 

「ぎゃあ!!」

 

「あ、失敗」

 

バルクホルンの犠牲も虚しくその手はただお尻を叩くだけにとどまった。

 

「あ、逃げた!」

 

「虫〜!!!」

 

「待ちなさい!」

 

「こら〜待て〜」

 

バルクホルンのお尻を労うこともなく大きな音を立てて宮藤達は走り去った。

 

「お、お前たちは…」

 

この場に止まって労えとまでは言わないまでも一人くらい心配してくれてもいいのにとバルクホルンは思わずにはいられなかった。




B29のような戦略爆撃機について少し書きます。
ネウロイに対して通常兵器が有効ではないため発展していないと考えていたんですけど一概にそうとも言い切れないと最近思いました。
理由としてはネウロイに対して有効的ではないとは言え火力が上がれば通常兵器でも効果が出るのではないかと考えるのではないか?と思ったからです。
対ネウロイ用気化爆弾や魔道徹甲弾だとか色々出ていますけど最初から専用の兵器を作ろうとしていたと考えるよりは通常兵器を発展させることによりネウロイを倒そうとする勢力の方がおそらく多数派だったと思います。
ラーテや列車砲などを見ても兵器が大型化し火力を上げる傾向が作中では見受けられ元々専用兵器の運用前提で有れば大型化させる必要はそこまで大きくないはずではないでしょうか。ある程度の大きさで止め有効的な兵器を開発すればいいものを全て大型化させています。このことから当初は単純に火力を上げることによりネウロイを倒そうとしたのではないかと考えました。
B29がなぜできたのかと言うと大型の爆弾を運び投下するために開発していたのではないかと考えられます。
あるいは将来的にはネウロイに対して有効な兵器ができた時にその弾を機銃に込めて有効な爆弾を高高度から大量に降らす。そのためのユニットとしても使えると考えたのかもしれませんしもしかしたら人対人の戦争の際に役に立つと考えたのかもしれません。どんな理由にせよB29は史実ほどの数は作られてはいないでしょう。B17もです。なぜなら戦略爆撃はネウロイに対してあまり有効では無かったからです。何よりする対象が味方の領土ですし積極的には行えないでしょうしね。
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