うまくいけば本作にもちょっと絡めることができるかも?
「ふぁ〜」
「眠い?」
大きく口を開けて欠伸をするエイラにサーニャが尋ねた。
「ちょっとだけ」
「やっぱり先に寝てる?」
心配そうな顔でサーニャが尋ねた。
「大丈夫。飛んでるうちに眠気も吹き飛ぶよ」
いくら眠たくても久しぶりにサーニャと夜間哨戒に出る機会をエイラが逃すはずがなかった。
「それにそろそろヴェネツィアの巣を破壊するための作戦も行われるみたいだし本番までに感覚を取り戻しとかないと」
そんな話をしながらハンガーに入るとウィッチが魔法力を発現する際に出る光が見えた。
「誰だ?」
「あれ?芳佳ちゃん」
そこには箒にまたがった宮藤の姿があった。
「宮藤か。何やってんだ?」
「へ!?あ、あのこれはその…」
慌てた宮藤を落ち着かせエイラ達は事情を聞くことになった。
「へー、箒で訓練か。そういえば昔家の近所に箒で飛ぶ婆ちゃんがいたな」
「でも、どうしてこんな時間に?」
サーニャの問いかけに少し逡巡した後口を開いた。
「あのね、サーニャちゃんとエイラさんは急に飛べなくなった事ってある?」
「芳佳ちゃん飛べなくなったの!?」
宮藤の口ぶりからなんとなくその内容を悟ったサーニャが先手を打って尋ねた。
「え?そうなのか宮藤!?」
「うううん!飛べないわけじゃないけど…」
その時カツン、と物音が聞こえエイラは近くにあったバケツを手に取ると投げつけた。
「誰だ!?」
「きゃっ!」
ゴン!とバケツが何かに当たった音と共に悲鳴が聞こえペリーヌが物陰からのそりと現れた。
「ちょっと!何なさるんですの!」
「ペリーヌさん!?」
「べ、別になんでもありません。お手洗い…」
頬を赤らめ恥ずかしそうにペリーヌが言った。
「たんこぶ…」
サーニャがペリーヌの頭を指差した。
「あはははははは」
「貴女のせいでしょっ!!!!」
ペリーヌを指差しながら笑い声を上げるエイラに顔を真っ赤にして怒りの声を上げた。
「おー、治った治った」
ペリーヌのたんこぶに手をかざし治癒魔法を発動する宮藤を見てエイラは安心したように言った。
「魔法力は大丈夫みたいね」
「よかったな、宮藤」
「貴女達!人の頭で実験しないでくださる!?」
治癒魔法が宮藤しかいないとはいえ実験のような行為をされるのはあまり気持ちのいいものではなかった。
「じゃあなんでうまく飛べないんだろ」
「ちょっと休んだ方がいいのかも」
「そうそう。きっと疲れが溜まってんだよ。寝て起きたら治ってんじゃないか」
「とにかく、今日はもう寝なさい」
「…うん」
どこか釈然としないような表情をしながらも宮藤は頷いた。
※
「芳佳ちゃんの事、どう思う?」
夜間哨戒に出発して暫くするとおもむろにサーニャが尋ねた。
「なんとなく原因がわからないわけじゃないけど…」
「そうなの?言ってあげればよかったのに」
予想外のエイラの言葉にサーニャは非難するような視線を向けた。
その視線を受けてエイラは確証があるわけじゃないけどと前置きすると言った。
「宮藤は飛べなくなったんであって魔法が使えなくなったわけじゃないだろ。消去法になるけど原因はユニットって考えるのが自然じゃないかな」
「けど整備班の人達は異常はないって言ってたみたいよ?」
「急に飛べれなくなるとしたら年で上りを迎えるくらいだけど宮藤はそうじゃない。なら考えられるのはどこか整備班の気がつかないような部分で不具合があるって考えるべきじゃないかな」
「そんな事ってあるの?」
サーニャは懐疑的だ。
「どんなに長く使われていて信頼があるものでも限定的な条件では不具合が発生するっていうのはよくある話だろ。
最近は改善されたけど、例えば精巧な作りで性能の良い事で有名なカールスラントの武器もオラーシャとかスオムスみたいな寒い地域ではそれが仇になって使えなくなるだろ?」
「そんな話聞いた事ないわ」
月明かりしかない中サーニャの顔はよく見えないが明らかに困惑しているようだった。
「あれ、知らないのか?オラーシャもカールスラントの武器は使ったことあるはずなんだけど…」
「フリーガーハマーもカールスラントが作った物だけどスオムスでも普通に使えたわ」
「だってフリーガーハマーは結構新しいし。
元となった武器の開発者がスオムスと縁のあるウィッチだったからその辺も考えて作ってるんだろ」
「…新しい?」
「あ〜。わたしがウィッチになった頃はまだなかったからな。ほら、ポクルイーシキンがDP28を使ってるだろ?あれくらいの年代に作られた武器を使ってる国が多かったんだよ。スオムスだと1931年、カールスラントなんかも1934とかに作られた武器だったな。それと比べたらフリーガーハマーとかこのMG42とかは随分と新しいよ」
サーニャがウィッチに志願したのが、黒海沿岸にネウロイが現れた頃であり、訓練中は古い武器を使っていたが、配属後はウィッチなだけあり優先して最新の武器を与えられていたこともあってエイラとは武器の新旧に関してギャップが生まれていた。
これはカールスラントの三人と坂本少佐以外も同じ感覚を共有していて、この辺の感覚を持っているかどうかが、この大戦での古参ウィッチとそうでないウィッチの違いともいえた。
「とにかく、いくら長く使っていても不具合ってのは急に現れるもんだ。一度宮藤のユニットを他のやつに履かして試す必要があるだろうな。それで問題が有れば同じくらいのロットのユニットで同じ事をして宮藤のユニット固有の問題かどうかを調べるんだ」
「もしそれで芳佳ちゃんの時だけ飛べなかったらどうするの?」
「そん時はユニット自体を別の種類のものに変えて試せば良い。それで飛べなくてやっと宮藤固有の問題って事になる」
「エイラはユニットに問題があると思うの?」
「上りを迎えた訳でもないんだから宮藤よりはユニットに問題があるって考えた方が自然じゃないか?」
※
「結局、宮藤が飛べなくなったのはあいつ自身の魔法力が強くなりすぎたせいだったって訳か」
「宮藤さんの魔法力が強すぎてストライカーユニットのリミッターが働いたみたいね」
翌日、目を覚ましたエイラは扶桑から戦艦大和を中核とする扶桑艦隊が到着した事、そしてその艦隊がネウロイの襲撃を受けた事、それと宮藤の不調の原因をミーナ中佐から知らされたエイラはため息を吐きながら言った。
「古いストライカーユニットだとリミッターがないし必要な魔法力も少なかったから時々エンジンが過回転を起こしたりしていたが、最近のユニットじゃあそこまでの魔法力を注げるウィッチはそうはいないからな。
整備班もすぐに気付かないのは無理はない」
坂本少佐がそう付け加えた。
「普通のウィッチなら必要以上の魔法力を注ぐなんて事しないけどな。必要最低限に留めて継戦能力を維持できるように調整するのが普通だろ」
呆れたような口調でエイラが言った。
「宮藤さんの強大な魔法力ならそんな事を考える必要もなかったでしょうからね」
「それもあるが宮藤は正規の訓練は受けさせていないからな。
宮藤が来た頃には戦線そのものは安定していて余裕があったから継戦能力を考えて戦う必要はなかったとはいえ、もう少し魔法力の扱いついても学ばせるべきだったな」
坂本少佐が申し訳なさそうに言った。
「原因もわかったし今後、宮藤には魔法力の扱い方を中心に訓練させていけば良いさ」
この事件後、アニメ三期で宮藤さんが紫電とかを普通に履いてるのを考えたら単なる訓練不足もあったのかなぁなんて思います。