「ミキプルーンの人って名前に中イキが入ってるからメスですわよね」
「久しぶりにすべてがわからない発言来たね。どうしたの?」
「いえ、苗木トークンとかあったなあと*1」
「……ああ、うん、MTGの話につながるんだ。つながってほしくなかったな、そこは」
「あのペースト黒いですし、ゴルガリ苗木とか考えたのですけれど、現環境で苗木使うのは難しそうですわね」
「なんでそこから真面目な声が出せるの?」
「わたくしはアクメ中でも『市民ケーン』の解説ができましてよ」
「……コメントが出てこないレベルのキモさだよ」
新カードセットであるゼンディカーの夜明けについての情報が公式からも発信されはじめ、いよいよ新環境への準備をしたい状況で、この深夜にドリルは生のプルーンを食べていた。ほどよい酸味と甘味が意識をはっきりさせてくれる。ドライプルーンもおいしいが、ドリルは生食プルーンのほうが好きだ。歯触りがいい。
夜食に果物を食べるのはヘルシーだと思い込んでいたが、「果糖って知ってる?」とモノポリーに指摘されたため、最近は夜食を食べてよいのか不安になっている。それはそれとして酒は飲むしつまみも食べる。
「コントロール組んだって言ってなかったっけ」
「一応組みはしたのですけど、シナジーのあるフィニッシャーが思いつかないんですの。《夢さらい》みたいなデッキコンセプトの活きているパワーカードがいまいち。カードリストと睨めっこする日々ですわ。向こうが変顔してくれないので毎秒自分のブスを晒すだけなのですけれど」
「なるほどね」
「うーんツッコミがない。自虐ネタってツッコミがないと死ぬって意味では自殺ショーだから嫌いなのですけれど、手軽すぎて気を抜くと使ってしまうのですわ。……自殺ショー。ああ、なるほど」
MTGで残虐なショーと言えばラクドス教団だろう。赤と黒、堕落と血、利己と快楽の集団だが、ラヴニカ次元の鉄鋼産業とサービス業を回していたりもする。ドリルは彼らが(カード性能に関しては)好きで、しばしばラクドスカラーのデッキを組む。
しかし、今はコントロールを考えたい。赤黒でコントロールを組むには優れた発想力と豊富なカード資産が要求され、悔しいことに今のドリルにはどちらも備わっていない。
では、同じラヴニカ次元のギルドで考えてみてはどうか。ドリルが行きついたのはそこだ。
「んー、たまにはライブラリーを触るタイプのデッキを組みましょうか」
「お、青?」
「そうですわね、青。青単には資産が足りないですし、やっぱり黒もほしいですから、青黒を」
「ディミーアかあ、嫌な動きするしドリルちゃんには合いそう」
「お、喧嘩売られてます? 最高値で買いますことよ? 見てらっしゃい、10分後にあなたは返り血でびしょびしょですわ!」
「完膚なきまでに負けてるじゃん」
手早くカードリストを確認し、手持ちのカードで手早く原型を組み、現環境で好成績を残しているデッキのリストを参考に調整。仮組みだが、ひとまず完成だ。あとは回しながら調整するのが妥当だろうと判断して、ドリルはモノポリーに対戦を申し込んだ。
「できましたわ、回し方のわかんねえデッキが。回し方のわかんねえコピーデッキ使いはただの雑魚ですけれど、今のわたくしはそいつらにすら劣りますわよ」
「自分で組んで回し方がわからないなんてことある?」
「勝ち筋は考えてあるんですの。でも、個々のカードが並んだ時にどの動きを優先するのかなんも考えてねえんですわ。スパイ経済で制覇勝利するのはわかっててもテクノロジーツリーとか生産とかわからない感じですわね」
「なるほど、なんもわからない。対よろー」
「対よろですわ!」
ドリルの手札は《思考繋ぎの幻》*2が2枚、《眩惑の光》*3、《名声の対価》*4、《陰鬱な僻地》*5、《沼》が2枚だ。
「キープですわ」
「キープ!」
「では、こちらの先攻」
1ターン目先手。マリガンするほどの手札ではないが、実は手札に《島》がないため、1ターン目に青の動きができない。やむなくドリルは《陰鬱な僻地》をタップインし、ライフを1点得てターンエンドした。
後手、モノポリーは《森》を置き、《ラノワールのエルフ》*6を唱えた。
「ラノエルはどうして帰ってきてしまいましたの? 引きこもってレンバス食ってりゃいいんですわ、糞自然派陰キャがよ……」
「エルフへのヘイト高すぎない?」
「種族単位で美貌と長寿と有能を約束されてるのが妬ましいんですの。人魚のノリでエルフの肉食いたいですわね」
「こわ」
2ターン目先手。ドリルのドローは《詭謀/奇策》*7 。《沼》を置き、《思考繋ぎの幻》を唱えた。
「あー、ディミーア諜報って感じ」
「よく考えると素出しするカードではないですわね。赤相手なら今ごろ焼かれてましたわ*8」
「ほら、ブロッカー出したと思えば、ね?」
「フィニッシャーでチャンプブロックするデッキがあるそうですわね。まあわたくしが組んでわたくしが使っているんですけれど」
後手。モノポリーは2枚目の《森》を出し、《第1回イロアス競技会》*9を唱えた。
「ほらすぐそういうことなさる。ラノエルを奴隷労働させて開いたオリンピックで食う飯はおいしいですかしら」
「おいしい!」
「こいつ、屋敷しもべ妖精に平気で暴力振るうタイプですわ……」
さっそく《第1回イロアス競技会》の能力で白1/1の兵士・クリーチャー・トークンが出る。次のターンにはこれが4/4になるわけだ。ターンがかかるとはいえ、3マナでしていい動きではない。ドリルは苛立ち紛れに冷めかけのマカロニチーズをフォークで穴だらけにした。
「今日は何食べてるの?」
「マカロニチーズ。確かモノポリーってアメリカの出ですわよね、馴染み深いのではなくて?」
「うわ、懐かしい。いつもダイナーでマカロニチーズつつきながら近所のお兄さんたちが紙でプレイしてるの見てたんだよね。楽しそうでワクワクして、混ぜてもらいたくなったからレモネード売ったお金でカードショップ行ったの」
「シンプルに世界がキラキラしてますわね。前から思ってましたけど、モノポリーネキって聖母ですの? 野郎に股開かずにガキ産みましたの?」
「私にだって彼氏くらい……彼氏くらい……ッ!」
モノポリーの悲哀に満ちた呻き声で満たされながら、ドリルは改めてここからの勝ち筋を頭の中で確認した。《思考繋ぎの幻》をサイズアップさせて殴る。それだけのシンプルなデッキ。これはもしやコントロールではなくビートダウンなのではないかという疑念が鎌首をもたげるが、ドリルはひとまずそれを忘れることにした。
3ターン目先手、ドリルのドローは《破滅を囁くもの》*10だ。2枚目の《沼》を置き、2体目の《思考繋ぎの幻》を唱える。これで諜報を何度か打てば攻めはじめることができるだろう。
本当は《島》に来てほしい。青マナの出せる土地が立っていれば、それだけでカウンターを警戒させることができる。モノポリーは比較的経験の豊富なプレイヤーであり、動くべきところでは確実に動いてくる。裏を返せば、カウンターを撃たれる可能性がある状況で必要のない雑な動きをしたがらない。その制限をつけられるだけでも幾分プレイが楽だ。
後手、《イロアス競技会》の能力で兵士に+1/+1カウンターが3つ乗る。そして《ラノワールのエルフ》を含めた3マナで《結晶の巨人》*11を唱えた。
「うわあ、きらきらですわあ」
「ドリルちゃんが幼児退行しちゃった」
「きらきらの結晶でできた成長するゴーレム、普通にほしいですわ。美少女が肩に乗っていたら完璧な画ですわね」
「あー、それはいいかも」
「透明……美少女……スカート……」
「邪悪な思考が漏れてる」
「美少女お散歩おもらしプレイとか、なかなかモノポリーネキも玄人ですわね」
「友達やめようかな……」
ドリルは早急に《結晶の巨人》を盤面から排除しつつ、育ってしまった兵士にも対応しなくてはならない。しかし、それらに対処しているうちに土地やマナクリーチャーが出れば、後々もっと厄介な大型クリーチャーを唱えてくるだろう。
ドリルの読みが正しければ、このデッキは相性が悪い。
「私にはデッキデザイナーのセンスがない……来世はゴブリン・クリーチャー・トークンです……」
「急にネガティヴ入るじゃん」
「もうMTGのすべてがわかりませんの。コントロール組もうとしたのに何もコントロールできてないし*12、緑なのに動きが早いし*13、挙句の果てに《島》は来ない! なんでMTGアリーナって積み込みできませんの?」
「公式のゲームだからだよ。多色土地どれくらい入れた?」
「ライフゲインランドは4枚あったのですべてぶち込みましたわ。ギルド門が2枚、ショックランドが1枚ですわね。青マナの出る土地は合計で17枚。数字にすると普通にしんどいですわね。嘔吐音流してもよろしいかしら」
「ブロック安定。うーん、普通に運がきてないね」
モノポリーは《寓話の小道》*14から3枚目の《森》を出した。そして戦闘に入り、《結晶の巨人》にトークンが乗る。
「到達引け到達引け到達引け*15」
「お、サイズアップした」
「10%の確率でそこ引いてきますの!? 城之内くん、ラヴァ・ゴーレムの檻に帰ろう!」
乗ったのは+1/+1カウンターだ。これで《結晶の巨人》は4/4になった。
戦闘。兵士の攻撃をブロックせずにドリルのライフは17点。
4ターン目先手、ドリルのドローは《ディミーアのギルド門》*16。青マナを出せるのは嬉しいが、タップイン。すぐには動けない。ともかく《ディミーアのギルド門》を置き、何も動けないためターンエンドだ。
後手、モノポリーは《第1回イロアス競技会》の能力で2枚ドローし、《原初の飢え、ガルタ》*17を唱えた。
ドリルの手札にカウンターカードはない。3マナ12/12トランプルの巨大な恐竜が堂々の着地。
「は?」
「強いよね、このカード。下の環境でも十分やっていけそう」
「はあ?」
「3マナ12/12でトランプル。できれば速攻と警戒もほしいなあ。それこそ《結晶の巨人》と《オゾリス》*18が並ぶとすごいよね」
「は、はあ?」
「もしもし? 壊れちゃった?」
「壊れてるのはそのカードですわよ!? なに、え、なに? 最近の恐竜ってこんな頭悪いカードになってますの? やっぱり絶滅して然るべき種族でしたのね……糞トカゲ風情がでかい面しやがって……こやし玉投げるぞ……」
「ゲームが違うんだよね」
まだ残っている2マナでモノポリーは《枝葉族のドルイド》*19を唱えた。これで次のターンからは最低7マナ出る計算になる。
戦闘。《結晶の巨人》に乗ったのは警戒カウンターだ。《結晶の巨人》と《原初の飢え、ガルタ》を除去しなければ話にならないが、ドリルは完全に焦っていた。
「読めない……カードテキストが読めないですわ……」
「カードゲーマーはテキストを読まない的なあれ?」
「普通に解像度が低くてゲーム内のテキストが潰れて読めないんですの!」
「あー。どのカード?」
「いや手札の! 手札のカード!」
ドリルは《名声の対価》を撃とうとしている。ゲーム内の表示は2マナになっており、これが除去カードであることは覚えているからだ。しかし、表示が2マナになったのが伝説のクリーチャーである《原初の飢え、ガルタ》が出ているからであること、《結晶の巨人》に撃とうとすれば当然本来のコストである4マナを支払わねばならないこと、そして今ドリルの土地から出るマナは3マナであること、そのあたりの理解が全く追いついていない。
「唱えられない? 本当に? 本当に唱えられないか? 頑張ったら唱えられたりしないか? あとは気合じゃないのか?」
「そういうゲームじゃないからこれ!」
「その発言した格ゲーマーってこの情勢下でも同じ名前で活動してらっしゃるのかしら。あれ人権活動家に見つかったらリンチされますわよ。小Kしてる場合じゃないですわ」
現実逃避しながらひとまずゲームを進め、モノポリーが兵士と《結晶の巨人》で攻撃したタイミングでドリルは《眩惑の光》を《結晶の巨人》に唱え、1/4にサイズ修整を行った。諜報2、ドリルのデッキトップは《沼》と《島》。《沼》を墓地に送った。これで次のドローは《島》が確定する。
そして諜報を行ったことで《思考繋ぎの幻》がサイズアップ。3/3が2体並ぶ。
1/4のクリーチャーはダメージを1点しか与えない。3/3のクリーチャーでブロックすれば死なない。ここまで考えてドリルは思考停止し、《結晶の巨人》を《思考繋ぎの幻》1体でブロックした。兵士から4点ダメージをもらい、残り13点だ。
「え、なんで2体でブロックしなかったの……?」
「あ、え、は?」
「いや、なんもないの?」
「ええ、ああ、そうですわね、うん。……なぜ? わたくしはなぜ1体でブロックを?」
「この規模のプレミは久しぶりに見たなあ、うん」
「ゲロシャブですわ。プレミ罪でゲロシャブの刑。一生ゲロでしゃぶしゃぶした温野菜しか食べられない」
「想定しうる最悪の刑罰を超えてきたねこれ」
ターン終了時、ようやくドリルは《名声の対価》が伝説のクリーチャーを対象にしたときコストダウンすると理解した。《原初の飢え、ガルタ》を退場させ、諜報2。《沼》を墓地に送り、トップは《島》のままだ。そして《思考繋ぎの幻》2体がサイズアップ、4/4になる。
「あっ、やられた」
「なんとか急場は凌ぎましたわね……いや全然凌いでない気がしますわね……マナクリ2体残ってる時点でお察しって感じですわ」
「ふふ、どうかなー?」
「調子乗りやがって、おぎゃるぞ。あーうー、だっだー!」
「うわあ」
5ターン目先手、ドリルのドローは諜報で整えた通り《島》。そのまま《島》を置き、《破滅を囁くもの》を唱えた。
「演出がキモいことを除けばいいカードですわね、これ*20」
「だめでしょ、こういうの刷っちゃ! 5マナで6/6は許されないよ!」
「あなたつい先ほど3マナで12/12出してませんでした?」
ドリルはターン終了のボタンを押し、そして悲鳴を上げた。
「ンギォ!」
「今どうやって発音した?」
「《破滅を囁くもの》の能力で諜報して《思考繋ぎの幻》で殴る、どうしてその程度のことができませんの、わたくしには……!」
そう、《破滅を囁くもの》の能力で諜報をすれば、《思考繋ぎの幻》は5/5になり、防衛を失って攻撃できるようになる。次のターンで《結晶の巨人》が攻撃してきても《破滅を囁くもの》でブロックすれば止まるのだ。勝負の決定打となりうるプレイミスだった。
後手、《第1回イロアス競技会》の能力でモノポリーの盤面に金トークンが出る。そしてモノポリーは《殺戮の暴君》*21を唱えた。当然対応もなく、入場だ。
さらにモノポリーは《培養ドルイド》*22を唱え、マナ加速を進める。
「死んだんじゃないの~? あのマナ、分けてくれないかな~?」
「急にオレンジ色のコックじゃん」
「最近急にTwitterでアダルトコンテンツになりましたけど、冷静に考えて元から名前が下ネタ要素満載なんですわよね。cock、皮、先」
「あそこの法務部強いんでしょ、ばいばいドリルちゃん。次のカードセット来るまで忘れないよ」
「もう目前ですわよそれ」
戦闘。《結晶の巨人》に先制攻撃カウンターが乗った。ドリルが《破滅を囁くもの》の能力を起動すればブロックですべての攻撃が失敗に終わるため、警戒したのか攻撃はなし。ターンが終了する。
ターン終了時、ドリルは《破滅を囁くもの》の能力を起動、ドローを操作するために諜報を行った。2点支払い、残りは11点。トップは《名声の対価》と《島》だったが、ドリルの考えではマナは足りており、今は除去がほしい盤面だ。《名声の対価》を残し、《島》を墓地に送った。そして《思考繋ぎの幻》がサイズアップ、5/5に育つ。
6ターン目先手、ドリルのドローは先ほど操作した《名声の対価》。
ドリルの頭はすっかり煮えていて、今しがたドローした《名声の対価》を撃つことすら忘れている。そして、手札にある《詭謀+奇策》で墓地からクリーチャーを持ってくることを考えはじめた。しかし、ドリルの墓地にはクリーチャーが落ちていない。そこで《破滅を囁くもの》を起動し、諜報2で《ディミーアの偵察虫》*23を墓地に落とした。
ここまでの動きで《思考繋ぎの幻》が6/6まで成長しているため、十分に動けるはずなのだが、なぜかここで墓地のカードも触らず、攻撃もせず、ターンを終えた。この時ドリルは敗北の予感に視界が暗くなり始めており、こうなると何をやっても失敗するのだ。
「え、絶対なんかあるじゃん。青黒で合計5マナ立ってるのか……こわ……」
「なんもないですわよ」
「えっ」
「なんもないですわ。なんか動かなきゃって思いながら考えていたはずなのに気づいたらターン終了押してましたわね。引退したい……」
「ま、まあ、そういうこともあるって!」
後手、モノポリーは《スコフォスの迷宮》*24を置き、《無効皮のフェロックス》*25を唱えた。そして戦闘、《結晶の巨人》にトランプルカウンターが乗り、4/4警戒先制攻撃トランプルになる。攻撃クリーチャーは《殺戮の暴君》のみ。ドリルはこれを《思考繋ぎの幻》でブロックし、両者はともに死亡した。ドリルは1点ダメージを受け、残り8点だ。
7ターン目先手、ドリルのドローは《虚報活動》*26だが、これを撃って間に合う盤面かどうかはもうわからない。何かが来ることを祈って撃つ。引いたのは《思考消去》*27 。先ほどの《虚報活動》でモノポリーの手札はなくなっている。ほぼ意味がない。
「やることなすこと裏目ってますわね。メンコやってんじゃないんですから裏返らなくても結構でしてよ! 誰に文句つければこの不具合は修正されるのかしら」
「自分に言い聞かせるしかないと思う」
「やっぱ神ですわよ、神。6日で世界突貫工事してラスト1日でデバッグしないでいびきかいてるからこういうバグが残りますのよ? 締切もないのにデスマーチするやつはイキリたいだけの馬鹿ですし、それでできたものに責任とれないならもうクリエーターやめちまえって感じですわ」
「めっちゃ多方面に喧嘩売っていくじゃん。金髪ドリルツインテの遺影がニュースで流れても納得しちゃうなあ」
もう盤面としては負けているが、なぜかここであきらめの悪さを発揮したドリルは投了せずにターンを終了した。勝ち筋が見えているわけではない。ライブラリーに状況を打破するカードが眠っているわけでもない。投了を押す思考すら機能していなかっただけである。
後手、モノポリーは《培養ドルイド》の順応能力を起動し、+1/+1カウンターを3つ乗せた。これで《培養ドルイド》は3/5になる。
「そのカードのエフェクト、グラフィックもサウンドもきったねえですわね。小学生のころ駄菓子屋で売ってた謎のくっせえ緑スライムをこぼしたみたいな見た目と色と音ですわ。そこそこいいスピーカーとモニターで見てるせいで最悪の気分がもっと最悪になりましたわよ。今なら同じ色のゲボ吐けそう」
「写真送ってね」
「えっ、推定美少女にゲボの写真送っていいんですの!? 興奮してきましたわ!」
「早まったな……」
戦闘。《結晶の巨人》に飛行カウンターが乗った。ドリルはライフを2点支払って《破滅を囁くもの》を起動し、トップに《囁く工作員》*28を残して《島》を墓地へ。《虚報活動》が手札に戻り、《思考繋ぎの幻》が7/7にサイズアップした。たくさん動いたが、ほとんど意味がない。
攻撃クリーチャーは兵士、《結晶の巨人》、《無効皮のフェロックス》の3体。飛行を持つ《結晶の巨人》は同じく飛行を持つ《破滅を囁くもの》でブロックし、6/6の《無効皮のフェロックス》は7/7の《思考繋ぎの幻》でブロックする。これでもライフは4点減り、残り2点。
まだ足りないとばかりにモノポリーは《スコフォスの迷宮》を起動し、《思考繋ぎの幻》を戦闘から除外した。すでにブロックしているため攻撃自体は止まるが、《無効皮のフェロックス》は死亡しない。
さらに《秘紋のアルマサウルス》*29を唱え、ターンを終えた。
「Well, well, well、どうしたものかしらね」
「ここから勝ちがあったらすごいと思う」
「じゃあ、勝ったらわたくしと結婚してくださる?」
「それは《否認》*30かなあ」
「後生ですから……ちゃんと避妊しますから……!」
「最悪の親父ギャグだよ!」
実際、ここから勝ちはほぼないのだが、《詭謀》を撃って《秘紋のアルマサウルス》を奪うなどしてみる。
「随分と尻軽ですのね。秘紋というより淫紋なのでは?」
「アルマサウルスくんが!」
「あんまり寝取りって興奮しないんですわよね……」
ターンエンド。ドリルの盤面には7/7の《思考繋ぎの幻》、6/6飛行の《破滅を囁くもの》、2/5の《秘紋のアルマサウルス》がいる。とはいえ2点食らったら負けである。相手の盤面にクリーチャーが並んでいるのに殴る余裕はない。
後手。
「よーし、そろそろ終わりにするかな」
モノポリーは無慈悲な宣告とともに《無効皮のフェロックス》を起動、2マナ支払ってデメリットを消した。《秘紋のアルマサウルス》が誘発してドリルは1ドロー。引いてきたのは《夜帳のスプライト》*31だ。来るのが遅い。ドリルは舌打ちした。
そしてモノポリーが唱えたのは《野生語りの帰還》*32、選んだ効果は+3/+3修整。当然ドリルは爆発四散した。
「アバーッ! 爆発四散! 対ありですわ。ちょっとグッドゲームではないですけれど」
「うん、対あり。ちょっとねえ、プレミ多すぎじゃない?」
「勝負になってなかったですわね……ぐやじい」
「ちょっとガチで泣きかけじゃん。いったん寝たら?」
「そうしますわ……」
「寝落ち通話してあげよっか」
「える知ってるか、オタクは寝落ち通話に付き合ってくれた相手に恋する習性を持つ」
「うわあ。おやすみ」
「はい、おやすみなさい」