チルノの学校生活   作:ヤングコーン

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風邪を引いたチルノは寺子屋を休むことになった。
急にやってきたにとりからリフォームの相談を持ち掛けられ、
終わるまで妖怪の山にあるにとりの実家で過ごす事になる。

チルノを妖怪の山まで送ってくれた魔理沙は意味深長な言葉を残して去り、後から連絡が来たフランからはとんでもない悩み相談が…。


13話 山吹く風、稲穂揺らして

朝からにとりから電話がかかってきた。今は忙しくてバイトはできないと断った。残念そうだったがまた時間がある時に連絡して欲しいといって切った。ここ最近はとにかく目が回るほど色々あった気がする。

 

一つ一つ解決して行かなければならない。一度家をでて思い切り背伸びをする。遠くに体操をしている大ちゃんが見えたので手を振ったら向こうも手を振り返した。

 

「ここ最近なんてめっきりゲームなんてしてないよ本当…」

 

おかげでカッパコインの借金とかも殆どせずに済んでるんだけど。

 

えっと、今日は寺子屋に行ってリグルと幻想郷の海の調査。明日はみすちーのライブか。

 

「けほっ」

 

頭が痛い。頭も少しぼーっとする。良くない、風邪をひいてしまったかもしれない。そう言えば寺子屋には電話があるんだったか。私は電話をした。事務担当の人に事情を話すと伝えておくとの事だった。今日は夕方からリグルと一緒に出掛けなきゃいけない。それまでには体調を整えておく必要がある。

 

私はため息をついて敷布団の上で横になった。

 

…コンコン。

 

「はい」

 

「おはようチルノ。良かった、まだ寺子屋には行ってなかったんだな」

 

にとりだった。

 

「バイトなら断ったでしょ」

 

「違うって。いつもの店、ちょっと物の置き場に困って来ちゃってね。売り捌くのも手間だから今回はタダで配るんだ。店のいらないものを一気に処分できて、まだ見ぬ客層には必要な物が届く!そしてそれが販売促進になってますます繁盛する!」

 

「営業トークならまた今度にしてよ」

 

「分かってないな、チルノにもそれを譲ると言っているんだよ。…それにしても殺風景だなぁ。どれ、いい感じに見繕ってやろうか」

 

「…お願いしたいけど今日はいい。気分が悪いんだ。家の中をドタバタされたら病状が悪化する」

 

にとりは腕を組んで辺りを見渡す。

 

「とはいえ、こんな環境じゃ治りも遅くなるよ。うーん…、そうだな妖怪の山のの私の実家で休むとかどう?ちゃんと説明もする設備も悪くない。君が治るころにはここは生まれ変わっている。いいでしょ?」

 

妖怪の山…。にとりからの公認があればいざあの場所に潜入していても有効な言い逃れができるかもしれない。ゆっくりしたい気持ちはあったがここはにとりにお願いする事にした。丁寧にも、妖怪の山まで送ってくれる人がいるらしい。

 

さすがに私一人で行くのも辛いし、にとりからの公認だと言っても伝わるか自信が無かった。一応、簡易的な許可書ももらった。それで、誰が来るんだろう。

 

しばらく待っているとその人物が現れた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「呼ばれて飛んで来たぜ。それで、届ける荷物ってのはそこのドライアイスか?」

 

「護送に霊柩車とは斬新なサービスだ。行き先は本当に妖怪の山なんだろうね」

 

「何で二人ともそんなに喧嘩腰なんだ」

 

「お前の実家まで送り届ければいいんだろ?」

 

「ああ。頼むよ。チルノも異論はない?」

 

魔理沙と話しておきたい事がある。私はうなずいた。会話を終えると魔理沙の箒に跨った。一緒に空を飛んで妖怪の山へ向かう。私は余所を向いて軽く咳をした。風が気持ちいい。人の肌には少し冷たすぎるだろうか。そんな事を考える。

 

「風邪か?」

 

「馬鹿は風邪を引かないっていいたいのか?」

 

「そう邪険にするなよ。ただ珍しいって思っただけだ」

 

妖怪の山まではまだまだ遠い。前に会った時はもっと早いスピードで飛んでいたが、今日は割とゆっくり進んでいる。必要なければ急ぐ事もないし。私はしばらく黙って掴まっていた。

 

時間があるなら少し話を聞いた方がいいかもしれない。まともな答えは返ってこないかもしれないが、確認はしておきたい。

 

「最後に会ってからしばらく経ったね。元気にしてた?」

 

「何だ急に。そうだな。大方いつも通りだ」

 

「どうしてにとりのバイトなんか」

 

「野暮用があってね」

 

「…ここ最近、霊夢が胸騒ぎを覚えて辺りを調査しているらしい」

 

「へえ。知らなかった」

 

「魔理沙はこの異変の事、どう思う?」

 

「異変?霊夢がそう言ったのか?」

 

ミスリードで何とか何かを聞き出せないか試してみたが看破されてしまった。やはりまともに答えるつもりはないか。私は彼女に掴まる手を少しだけきつくした。魔理沙はため息をついた。それからこちらを向いて何かを言う。

 

「霧雨魔法店に水着とシュノーケルがある。貸そうか?」

 

「…魔理沙、それってどういう」

 

質問をしようとすると急降下を始めた。私は振り落とされない様に必死にしがみつく。低空飛行で妖怪の山を飛んで行く。ここまでの速度であらゆる障害物にぶつかる事なく正確に回避していく。許可証を見せずに向かった事もあって追手がやって来る。

 

余りに予測不能な動きに追っ手はついていけない。木々が立ち並ぶ林の中さえスピードを落とさない。目の前に巨木が立ちはだかる。私は今度こそ衝突してしまうと目をつむった。

 

しばらくしてもぶつかった感覚がない。急にふわりと風の抵抗が止んだ。私は目を開けると、魔理沙が飛んで逃げる後姿が見えた。許可証は私の手に握らされている。

 

何なんだ…。

 

 

 

なんやかんやあってにとりの家に着いた。ここがそうなのか。それにしても…大きい。店があんなに狭苦しいだけにまさか実家がこんな風だとは。本人から許可をもらっているので中に入った。しばらく帰っていないのか僅かに埃かぶっている。

 

私は近くにあったタオルをマスクの代わりに巻いて軽く掃除をして敷布団に横になった。

 

そのままうつらうつらとしていると持っていた金貨がわずかに熱を放ち光っている。私は手に握った。

 

「あろー。暇過ぎてやる事ない」

 

「そっか。こっちは風邪を引いちゃったよ」

 

「え、本当?加減したつもりだったけどなぁ…。ごめん」

 

「何で謝られてるの私」

 

フランドール・スカーレット。紅魔館の主のレミリアの妹。私がつい最近まで紅魔館勤めのメイドと思っていた、ジェーン・ドゥ。まともに聞いていたことがないので記憶は朧気だけれど、宴会でレミリアの言う事は少しずつ変わってたので幽閉されていた、引きこもっていた、とか実際の所どういう扱いなのか分からない。

 

少なくとも私と会っている間は自由に紅魔館を出歩いている様子だったが、聞けば外には殆ど出られないと言っている。不明な事も多いが、私の事を気に入っているのは確かだ。じっくり話せる今の機会に得られる情報は聞いておきたい。

 

「ねえ、幻想郷の海って聞いた事ある?」

 

「ない」

 

…しばらく間が空いた。どうやら本当に知らないらしい。

 

「私の友達が言うには妖怪の山にあるらしい」

 

「山の中に?あなた騙されてんじゃないの?」

 

「どうも魔理沙も知ってるみたいなんだ」

 

「………ふうん」

 

「今、理由があって妖怪の山にいるんだ。知人のカッパの許可付きで。それで今日は調査しようと思う」

 

「いいなあ。私も見てみたい」

 

「この間みたいに抜け出せないの?紅魔館の外でならいつでも会ってるじゃない」

 

「あなたと会ってる時の大半は自分の部屋からあなたと話してるけどね。キスした日以外は」

 

私と話している時に自分の部屋にいるなら、私が話している時に目の前にいたフランは何なんだ。

 

 

「ところで、いつもキスをすると不機嫌になるの何なの」

 

「あのね、恋人の様な関係になったりもしていない相手からいきなり口づけされるのは嬉しい事じゃないんだよ」

 

「じゃあ恋人になろうよ。そうしたら喜んでキスさせてくれるでしょ?」

 

何だか頭が痛くなって来た。このままだと病気が悪化しそうだ。

 

「そんなの、不純じゃないか」

 

「どうして?相手を好きになる動機がプラトニックでなければならないなんて誰かが言ったの?」

 

「それは…。いや、待ってよ。フランは私の事を好きじゃないんでしょ?」

 

「恋愛相手として意識はしてないけど、恋人にならないとキスの度に不機嫌になるんでしょ?」

 

「あまりトンチンカンな事言わないでよ。君はいつもそうやっておかしな事ばかり言って私を困らせる」

 

「ねえ、チルノ。私が外界に興味を持ったのはとても最近。分からない事が多いの。あなたの言う普通が、どんなものなのか私に教えて欲しい。誰も私に普通を教えてくれないんだもの」

 

「…ごめん、今しばらく時間が欲しい」

 

「わかった。…またね」

 

私は金貨を置いて布団の中に潜った。

 

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