チルノの学校生活   作:ヤングコーン

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ライブが始まる!でも幽谷響子がまだ来ない!
〝リグル!リグルを呼んで!〟
響子が来るまでの間、リグルと組んで歌って欲しいと響子は頼む。
「突然歌えと言われても…」
困惑のリグル。みすちーはステージに上がってライブ中止の宣言をしようとする。リグルはステージを駆け上がり…
「私、歌います!」


20話 鳥蟲文楽

「チルノ、チルノ!大丈夫か?!」

 

「けーね先生…」

 

「ここは職員室だ。私がうっかり開いてしまった青緑の本をチルノは見てしまったらしい。それで、どこまで覚えてる?」

 

「……確か偽リグルの出現と、幻想郷の海について話したはず」

 

「何だ、ちゃんと覚えるんじゃないか」

 

変だ。今までならあの本を読んだら少し前までの記憶をなくしていたのに。今回はしっかり覚えてる。

 

「こんな事、今までなかったのに…」

 

「まぁ、今しばらくはこの本を読むのはやめておこう。借りても大丈夫か?」

 

「大ちゃんには私から説明する」

 

小説に関する事で言えば、大ちゃんの関心は常に過去作より最新作だ。断りもなく又貸ししてしまうのは良くない事だけど今はそう言っていられない。

 

異変解決の兆しになるかもしれない事と、内容についても具体的に知る事ができるかもしれない。

 

「この異変の事、既にイミテーションが作られている魔理沙とリグルと私の3人で動くべきだと思う。けーね先生には別方面での協力をお願いしたい」

 

「そうだな…。下手に動いて私のイミテーションまで増えては事だ。幻想郷の海、球磨の調査は任せる。私はイミテーションの撃破を手伝おう。どうだ」

 

「先生、戦えるの?」

 

「他人の姿を借りた紛い物には負けはせん」

 

よく分からないがもの凄い説得力だ。

 

「分かった。でも、本物と偽物はどう区別すればいいんだろう」

 

「露骨に他人を幻想郷の海に連れて行きたがったり悪さをしてたら分かりやすいが、素振りを見せなきゃ見分けるのは難しそうだな。うーん…合言葉なんてどうだ?クリックアンドクラックとか」

 

なるほど、合言葉か。イミテーションが私達の記憶を引き継ぐのか、共有するのかとかそういった事は分からないが有効かもしれない。リグルや魔理沙とも話しておこう。

 

それにしても、合言葉か…。

 

「RIP…?」

 

私はけーね先生に首を傾げてに尋ねた。先生は机を叩きながら勢いよく立ち上がった。

 

「AND TEAR!!」

 

ハッと正気に戻ると顔を赤くするけーね先生。帽子で顔を隠した。

 

「決まりですね、先生」

 

「今のは忘れてくれ。頼む」

 

「何で顔を隠すんですか、可愛いですよ先生」

 

「可愛い言うな!ばーか!ばーか!」

 

拗ねた先生の機嫌と威厳を取り戻すのには時間がかかったが、謝罪と誠意の水羊羹でなんとかなった。みすちーのライブまで後1時間。時間に余裕を持って行きたいけど、アリスの言っていた事が気になって仕方がない。

 

飛んで我が家に戻る。思えばまだにとりにお礼も言ってなかった。家のポストには手紙が3件と小包が1つあった。それらを持って家の中に入る。

 

魔法の森にでかけたあの日はじっくりと見なかったけど、かなり快適な空間になってるようだ。早く枕を高くして眠れる日が来ればいいのにと思う。

 

そしてアリスはやはりどこにもいなかった。今はここにいない事だけ確認すればそれでいいはず。私は手紙を確認した。1通目はにとりからだ。

 

〝いつまでも帰って来ないから先に帰るよ。家の鍵はゲームの筐体の裏。わからない事があったら聞いて。それと、仕事は山積みだから時間があったらかけて〟

 

あの日の帰りは夜だった。いつまで家で待っててくれたかわからないけど少し申し訳ない気持ちだ。また今度しっかりとお礼を言いたい。2通目は…射命丸からだ。

 

〝聞き忘れた電話番号はにとりに聞きましたが、家にかけても出ないし訪問してもいない。このままだと困るので、携帯電話を小包に入れておきました。これに折り返し連絡をお願いします。あまり連絡がない様でしたら、あなたに密着取材します。追記:にとりさん、弁当を作って販売する事を考えてるらしいんですが上げ底作戦に出るみたいです。止めてくれませんか〟

 

カメラを貸してくれたり、新聞をタダでくれたり、それで私にドロンされたんじゃたまったもんじゃないよね。

 

それにしても、まさか携帯電話が手に入るとは思わなかった。電話でさえ殆ど見かけないと言うのに。とは言え、いつでも射命丸やにとりからかかって来る様になるんじゃないかと思うと憂鬱でもある。

 

3通目を開いた。差出人は書いてない。

 

〝チルノ、逆立ちしたヒポポタマスはなんて呼ばれてるか知ってるか?〟

 

間違いなくルーミアだ。返事は明日、本人に伝えよう。

 

そろそろ向かわないとライブに間に合わない。私は急いでライブ会場に向かった。

 

猛ダッシュで行くと何とか間に合った。会場には大ちゃんもいて、私を見つけるとこちらに駆け寄って来た。それから一緒に舞台裏に来ると何やら不穏な空気が漂っていた。

 

「何、どうしたの?」

 

「それが…幽谷さんが遅刻するらしくて…」

 

「このままじゃライブ時間に間に合わないよ…どうしよう…」

 

みすちーが弱気になって塞ぎ込む。

 

「ソロライブで間を取らせれば…」

 

「鳥獣伎楽は2人で1つのユニットなんだ!ソロでは歌えないよ…」

 

その時、控室に電話がかかって来た。みすちーが受話器を取る。

 

「響子!まだ来れないの?!皆、待ってるよ!」

 

〝まだしばらくかかりそうなんだ!リグル、リグルを呼んで!〟

 

「あり得ないよ!あの子は私の友達だけど、私達の音楽を馬鹿にしたんだ!」

 

〝意固地なだけだよ。みすちーと喧嘩した事について相談しに来たり、私達の音楽についてに理解を深めようと聞いたり歌ったりしてたんだ〟

 

「でも…」

 

受話器から漏れる声を聞いて、自分が動かなきゃいけないと確信した。

 

もう時間がない。私は控室を飛び出してリグルを迎えに行く。リグルがいそうな場所…。そうだ、あの辺りなら…。このライブ会場を遠くから見られるいい場所がある。

 

もしリグルが本当に意固地になってるのなら、そこに必ずいる。私は飛ぶ。あの崖の向こう…。

 

「弾幕?!」

 

崖の上には確かにリグルがいた。しかし、2人。こんな時にイミテーションが復活しているとは!

 

「「チルノ?!」」

 

「こんな忙しい時に増えてんじゃないよ!」

 

「「そんな滅茶苦茶な…」」

 

瞬時に見分けなきゃならない。イミテーションの魔理沙とあった時、口調は似ていても性格は違っていた。もし、イミテーションのコピーが完全でないとしたら先入観から勘違いする事もあるはず。

 

「はーいお二人さん、本物はどっちかなー?!」

 

「私だよチルノ!」

 

「ボクだよチルノ!」

 

私はボク、と答えた方の足元をアイスバーンで凍らせ滑らせる。そして羽の一つを抜き取り長く鋭利な氷の刃に変える。そしてイミテーションの背中が地面に落ちるより早く鳩尾に刺突した。

 

リグルがボクっ娘だったなら詰んでいた。私はボクっ娘のリグルもいいと思うけどね!

 

「い、今のは一体…」

 

「説明は後、ついて来て!」

 

私はリグルの手を半ば無理矢理に引っ張った。リグルは特に抵抗する事もなく私に付いてくる。そしてみすちーのいる控え室まで向かった。

 

「チルノ、もうライブは始まってる時間じゃ…」

 

「幽谷って人が来ないらしいんだ」

 

「ええっ?!」

 

私達は部屋に入った。

 

「駄目だ…やっぱり中止にしよう…」

 

〝みすちー!あと30分ですぐに行けるんだ、頼むよ!〟

 

「リグル?何でここにリグルが…」

 

半べそのみすちーがリグルに気付いて目元を擦る。

 

〝リグル?!そこにいるの??代わって!〟

 

みすちーは受話器をリグルに渡す。リグルは耳元に受話器をあてた。

 

「何?」

 

〝少しの間だけライブで歌ってよ!歌詞も曲もちゃんと教えたし大丈夫!〟

 

「い、いや無理だよそんな突然…ちゃんと教えたって、たった2回聞いただけじゃないか」

 

〝バァーッと歌ってガァーッと歌えばいいんだ!リズムじゃない、ハートで歌うんだ!〟

 

「わからん…」

 

ステージから声が聞こえる。みすちーだ。

 

「せっかく集まってもらったけど皆…今日は…」

 

リグルは受話器を戻して猛ダッシュでステージに駆け上がって行った。観客の注目がリグルに向いた。みすちーも何事かと目を白黒させている。

 

「私、歌います!」

 

「ええっ?!」

 

会場がざわめいている。しかし、覚悟を決めたみすちーがギターを鳴らし出した。リグルはマイクをオンにして音色に合わせて体でリズムを整え、ギターが一度鳴り終えると同時にリグルが叫ぶ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

凄まじい声量が会場に響く。その声と同時に会場から歓声が上がる。リグルはマイクをオフにしてちょっと咳き込んだ。

 

「リグルの音域に合わせるから無理はしないで」

 

「分かった。幽谷が来るまでに声は枯らさない様にしないと…」

 

そうして即席ユニット、鳥蟲文楽のライブの幕が開けた。




最近、前書きで本編のネタバレしてる事に気付いた。次から気を付けよ
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