戻ってくるいつもの日々。
変わりゆく時間は戻せないけど、悲しい事ばかりじゃない。
色んなことがあるけど、今日という日も過ぎて行く。
球磨は半妖だった。物を食べなくても生きていけるため、娯楽として食事をする私とは違い彼女は食事を必要とする。半分は夢を食べる妖怪、半分は人間なんだとか。
生活費が必要だったのでにとりに紹介したら快く働かせてくれた。初めは乗り気じゃなかったけど、機械を弄るのが好きと言う所が趣味にあったらしく上手くやっている。
ただ、商い面で不安な所がややある。あれこれやってみてはいるものの…。私も寺子屋でにとりの店について話したりして関心をもってもらえる様にしているものの、まだイマイチな所だ。
品質は確かなのだが、販売戦略と言う面の壁は大きい。
アリスは快調に向かってるようで、4日ほどで退院らしい。球磨と一緒に毎日見舞いに行ったりしている。怒ってもいいはずだがそれほど怒ってもいない様で、2度とやらない事と退院するまでは家周りの管理について頼まれたりした。
遅くなったが霊夢にも異変について報告した。魔理沙に先を越された事を特に気にしてる様子だった。
けーね先生は球磨の能力と、今後また悪さをしないか心配していたが球磨は夢の空間を作ったりイミテーションを作られるがそれを動かすにはアリスの力が必要なため1人で大きなことはできないと伝えた。
彼女を連れて来てからの日々は忙しくあっという間だった。
私は寺子屋で冊子を開いてぼーっとしていた。教室にけーね先生が入って来て荷物を置いている。それから私の姿を確認するとギョッとしていた。
「チルノ、やけに早いな」
「…球磨にあれこれ言う立場になってから自分がだらしないんじゃ示しがつかないって事で気が張ってるんだ」
「お前も大変だな。時間も余ってるし少し勉強の手伝いでもしてやろうか?」
「今必要なのは授業時間までの脳の休憩かな」
「そうか」
けーね先生は笑って教室を出て行った。後から大ちゃんがやってきて、私を見てぎょっとする。
「私より早く教室に来るだなんて、珍しいね」
「人に物を言う立場になると、自分がしっかりしてないと示しがつかないんだ」
さっきも言ったんだけど、これ人が来るたびに説明しなきゃいけなくなったりしないよね。そう思ってると次第に生徒たちが集まってくる。みすちーとリグルが教室に来ると私の姿を見て驚いていた。
「チルノ、早いじゃん」
「どうしたの急に」
「教え導く者は常に他人の手本とならなければならないというだけだ」
皆が席に座りだす。まだルーミアは来ない。こうして考えると私たちはかなり遅く来ていたんだなぁと思う。今は球磨がいるからこんなだけど、きっと精神的に余裕が出てきたらいつものように登校しようと思っている。
けーね先生が遠くに見える頃、ルーミアがようやく窓から入ってきた。
「おはよー。チルノ、私より先に来てたのか―」
「人に道を教え諭す者の正しい姿勢だ」
「同じ質問に違う受け答えをしてて偉いねチルノちゃん」
大ちゃんが笑って言った。ルーミアが最後だからこれ以上聞かれる事はないだろう。やがてけーね先生がやってきて点呼を取る。それからいつもの様に授業が始まった。
ちょっと退屈なぐらいがちょうどいい。今はそんな風に思いながら授業を受ける。外を見ると魔理沙が窓の向こうで手を振っている。
「チルノ、どこを見ているんだ。授業に集中しろ」
「あっと…、ごめん先生。ちょっと顔を洗って来る」
「そうか。行ってこい」
私は寺子屋を抜け出して魔理沙の所へ行った。
「ごめんごめん、さっき紅魔館に行ってたんだが伝言をもらってだな」
「何?」
「フランからだよ。『ぴえん』だって」
ああ…最近忙しくてすっかり忘れてたけど、球磨を連れて来てから部屋の隅に置いてそのままになってたんだった。今日は球磨はにとりの家に泊まってくるらしいし、会いに行こう。
それから魔理沙と別れ、寺子屋で授業を受ける。けーね先生は真面目に授業を教えてくれるし、リグルや私は途中途中で茶々をいれるし、時々ルーミアがおかしな事を言って先生に頭突きをされる。
放課後になると大ちゃんが本を取り出した。青緑の本だ。
「新作が完成したんだ。読めるようになった事だし、読んでみない?」
「うん、せっかくだし挑戦してみるよ」
けーね先生がこちらにやって来る。
「読み終わったら私も読ませてもらえないか?」
「え、先生が?」
あの日貸したあの青緑の本、割と好みだったらしくあれから何度か大ちゃんに頼んで借りてるらしい。
「別に最新作を急がなくても大ちゃんの家にある本は読破してないんじゃないの?」
「まあそうなんだが…。大ちゃんの本は1冊で完結してるんだが最後まで回収されない伏線や布石があるんだ。それが他の本にさらっと出てきたりすると驚いてだな。私が前に読んだ本の伏線回収がそっちにありそうなんだ」
「ふふふ。嬉しいです先生。でも、今作も作中で完結できなかった所があったりするので少し待ってから呼んだ方がいいかもです」
「なぁ、チルノが湖に投げた割れた鏡から出現したあの3つ目のカラスのアレが気になって仕方ない。そこだけちょっと教えてくれないか…」
「最新作のキーになってるので話せません☆」
「チルノ、早めに読んでくれ…頼む。気になって気になって…」
「しょうがないですね。実は射命丸さんの持ってた緋色の貝殻と関係してますよ」
「ああっ、予感が的中してた…。ええい、ますます気になる!」
けーね先生が悶えながらその場でぴょんぴょんと跳ねる。まだ教室に残ってた生徒の注目を浴びてる事に気づくと、顔を赤くして咳払いをする。
「おほん。それじゃ…できるだけ早く頼むぞ」
そういってせかせかと教室を出て行った。けーね先生凄く可愛い。そんなに面白いのかこの本…。私も気になって眠れなくなったりしないよね。そう思うと少し不安になってきた。
「大ちゃんも凄いね、そんな本を書けるだなんて」
「でも結構ぎりぎりなんだ。ばら撒き過ぎた伏線を回収できなかったり、後から読み返すと自身が誤解してる所があったり」
「でも、けーね先生をあれだけ唸らせてたじゃん」
「あれはね…この話の真相を作者が知ってるって読者に思わせる事で何とか興味を持たせられるんだ。書いてる私でさえ良く分からない事が多いんだよ」
「うーーん…。ごめん。ちょっと何言ってるかわからない」
だって、真相が分かってなければ伏線も布石もばら撒きようがない。それにそれを知ってる人物がいるとしたら作者だけのはずだ。それが分からないなんて…。どういう事なんだろう。
私は帰る支度をすると紅魔館に向かった。今日は門番が起きている。
「あ、チルノ。何か用?」
「うん。ちょっとフランに会いに。ここで待ってれば来ると思うんだけど」
「会うなら通してあげるよ。最近はお嬢様も前ほど妹様を危険視してなくて」
「うーん…それじゃあせっかくだし」
私は案内されてフランの部屋に向かう。パチュリーの図書館にやってきた。後は彼女に聞いて欲しいという事だったので私はパチュリーに話を聞く事にした。パチュリーは長机の前で伏していた。授業中のルーミアみたいだ。
寝ているようだ。起こしていいのか聞いたら「やっちゃえ」と言われた。
私は体を揺さぶると半開きの目が開いた。
「我が眠り妨げる愚か者はどこの誰ぞ…」
声で図書館が揺れる。振り返ると紅美鈴はすでにいなくなっていた。
「ち、チルノです」
「ほお…湖上の氷精か。私を眠りから覚ますとはよほどの用と見える。して、如何様で我を訪ねたか聞かせてもらおうか」
「フランに会いたいんですけども…」
「ほお、妹様に…」
前会った時こんな感じだったっけこの人…。そんな会話しているとフランの方から現れた。良かった。
次で最終話に…なるのかなぁ。
文字数が伸びて次が最終話と断定できなひ