夜更に目が覚めるも、寝付けない。
夜風に当りに空を飛んでいると、何かにぶつかりそうになる。
その正体は…
(2連休に尺を割き過ぎて学校生活が始まらない…orz)
三話 夜更けの胸騒ぎ
どこまでも広がる霧。ここはどこなんだろう。見渡せど一寸先も見えない濃霧だ。きっと地平線の向こうまでこうなんだろう。
踏み締める地面は柔い。足元を眺めると素足が見えたが地面は真っ白。一歩踏み出して前に進むと、足の先はまたふわりと柔い何かに触れた様に僅かに沈む。
歩行の様な移動はできるものの、どちらかと言うと足の動きは水の中を掻く動作に近い。飛ぶ感覚にはなれてても、この浮遊感は慣れない。
行くあてもなくただ前へ進む。やがて宙に浮く本が見えた。これはどこかで見た様な…。私はそれを開いてみる。
本は真っ白。何も書いてない。
誰かが呼ぶ声がする。
〝…ちゃん。チルノちゃん〟
「…はっ!」
起きた。何だ今の。
目をパチパチさせて周りを見る。私の家だ。おかしいな、確かさっきまで大ちゃんの家の前に…。時計は23時を指していた。
手を開いたり閉じたりしてみる。感覚は普通だ。
どうも記憶が抜け落ちている。そもそも私は本当に大ちゃんの家に行ったっけ。
外に出て空を見上げる。暗い夜空にはダイヤモンドをちりばめた様に輝いている。
「こんな時間帯に起きてもなぁ」
知ってる本屋も図書館も閉まっている。ゲームもやる気が起きない。かと言ってまた眠れそうにもない。少し夜風に当たって来よう。
外に出て、ぐっと足に力を込めると空まで飛んだ。帰りの体力なんて考えなくていい。今はどこまでも全力で空を駆け抜けたい気分だった。
森を抜けてしばらくすると、前方に何か気配を感じた。向こうはこちらに気が付いていない。
「どいたどいた!」
「は?」
勢いを付けて飛んでいたので回避が難しかった。あっちもギリギリで回避するとこちらを追ってくる。
「待ちなさいよ!」
お札が飛んで来る。よりにもよって赤い通り魔じゃないか…。
「お札を飛ばすんじゃ止まるに止まれない!」
「あんたが止まればお札は飛ばさない!」
手加減はしてあっても下手に止まれば当たる。とは言え、いずれ追い付かれる。近くに池を確認すると低空飛行して近くの森に隠れた。
霊夢が遅れてやって来る。池の真ん中で私を探している。私は池の中に作った私のダミーを池から浮かび上がらせた。霊夢はとっさにお札を手に持って止まる。
しばらくしてお札をしまったのを確認すると木陰から出た。
「さっきぶつかりそうになったのは謝るけど、何もお札を飛ばす事ないじゃないか」
「こんな夜中に妖精が猛スピードで飛んでるもんだから、また悪戯でもしたのかと思ったのよ」
私も他の妖精が今さっきの私みたいに飛んでたら悪戯を疑うので、その事については何も言い返せなかった。
悔しいので、また今度何か悪戯しておこうと心に誓った。
「真夜中にパトロールだなんて、急に善行を積んでどうしたの」
「何か胸騒ぎがするのよ。異変の前触れの様な…」
「それって、怪異?」
「分からない。だからこうして探索してたのよ」
「何も感じないけどなぁ」
霊夢が穏やかな表情でにっこり笑う。
「チルノは何か感じなかった?何か変わった事とか」
「物騒な巫女が夜間パトロールしてた」
「補導対象時間よ。帰りなさい」
そう言うとため息をついて帰って行った。それにしても怪異か…。思う所はあったけどもう遅いし、明日は早く本を見つけなきゃいけないそろそろ帰ろう。
池の近くに息を潜めながらこちらを伺う小さな気配を感じたが、気付かないフリをしてそのまま飛んだ。
家に帰るとヘトヘトになってベッドに戻った。でもこれならちゃんと寝付ける。私はふかふかな枕に顔を埋めて眠りについた。
翌日、目が覚めた。外に出ると日光を浴びながら大きく背伸びをする。遠くで屈伸をする大ちゃんが見えた。手を振るとあっちも手を振った。
まだ図書館は空いてないかもしれない。二度寝しようかな。そう思ってると電話がかかってきた。私は受話器を握って耳に当てた。
「おはよう、チルノ起きてる?」
「…今から寝る所」
「ごめん、外せない急用ができてさ。他に仕事を頼める人がいないんだよ。ただお届け物をするだけ!助けると思ってお願い!」
「…カッパコイン3枚」
「前借りカッパコインをチャラ、加えて3枚。ね、ね、頼むよー!」
「すぐに行く」
カッパコイン、相場が分からない。でもこんなに気前のいいバイトは引き受けない手はない。それにしてもどこに届けるんだろう。
私はさっさと支度をした。今日は少し暑くなりそうだ。水筒に水を入れてにとりの家に向かった。
家に到着するとドアをノックする前に開いて扉がデコにぶつかった。
「ご、ごめん!早かったね、ちょうど良かった」
よほど急いでいる様でほぼ一方的に私に荷物を渡すと、僅かに浮いているキックボードに乗って文字通り飛んで行った。
商魂逞しいと言うのも良し悪しだな。そんな風に思いながら宛先を見ると面食らった。この荷物、紅魔館宛てじゃないか…。
いや、でも考えればあの門番に手渡せばいいんだ。メイドに会う事もないだろうし何の危険もない。私は覚悟を決めると紅魔館に向かって飛んだ。