チルノの学校生活   作:ヤングコーン

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「そんなぁ!こんなのって無いよぉ!」

悲痛の言葉が給湯室で響く。さながらメイド長と再会を果たしたチルノは再び彼女と対峙することになる。このまま引き下がるわけにはいかない。意を決したチルノはある作戦を決行する。


6話 秒針に愛を込めて

羽の形を調整した。これで遠目にはバレまい。しかし近づかれればアウトだ。私は早速とジェーンの言っていた道へ向かう。

 

雑用係の妖精は私の事を気にもかけない。潜入は順調だ。そう思っていると誰からか肩を掴まれた。

 

「そこの妖精さん、ちょっといいですか?」

 

「な、何?」

 

妖精…ではない。どちらかと言うとレミリアと近くにいる時の様なこの感覚、悪魔?

 

「お嬢様が咲夜さんを探してるみたいなの。どこかで見なかった?」

 

「どうだったかな。あっちで見たかも」

 

「そっか…。ところで見ない顔だね。新人さん?」

 

「まあそんな所かな」

 

「パチュリー様にお茶を持って行って貰ってもいいかな。給湯室はあっちなんだけど…」

 

「分かった」

 

パチュリー…。宴会の時ひょっこり現れたかと思うといつの間にかいなくなってる魔女だ。かなりの引きこもりらしい。

 

そう言えばジェーンは宛先人の事を知らないのかと私に聞いていたが…。

 

「パチュリー様、今日届く荷物の事とか言ってなかった?」

 

「え?ああ、忘れてた。その事も咲夜さん伝えなきゃいけないんだった。でも、そな話誰に聞いたの?」

 

「さっき咲夜さんに摘み出されていた野良妖精が、そんな事を騒いでたなって」

 

「げげっ!急がないと…」

 

走って行った。これだけ広いと常に移動する人物の場所を把握するのは難しいものだ。この後、私とあの子のどちらが遭遇するのが早いかは運次第だ。

 

宛先人の正体がパチュリーだと言う事が分かった。部屋に入ってしまえば私の勝ちだ。ここからならそう遠くないはず。

 

部屋を向かっていると部屋の向こうからあのメイド長が見えた。やむを得ず給湯室に入ってやり過ごす事にした。

 

続いて彼女も入って来た。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「そんなぁ!こんなのって無いよぉ!」

 

「はい?」

 

あんまりな不幸に思わず叫んでしまうと、困惑する咲夜。あ、そうだった。今の私はメイドに変装してるんだった。

 

落ち着け、落ち着け私。まだバレてないんだ。

 

…私は近くに置いてあったメモ用紙を千切って近くのペンで書き殴って逃げる。

 

「まさか、サボりに来たんじゃないわよね」

 

ジト目で彼女は呆れた。

 

「あははー、仕事に戻りまーす!」

 

「全く…」

 

私は彼女の隣を通り抜けて部屋を出ようとする。しかし、彼女の手に肩を掴まれてしまった。

 

「…あなた、担当と名前は?」

 

「配達、湖上の氷精チルノ」

 

私はそう言って彼女の手を振り払って給湯室を飛び出した。まだ困惑してる咲夜に人差し指を向けて叫ぶ。

 

「十六夜咲夜、私はあなたに決闘を申し込む!」

 

「何でそうなるの?」

 

氷符「コールドエッジ」

 

弾速の早い氷の弾を波状にばら撒く。発射台を2つ設置して弾速がそこそこ遅い氷塊を中に忍ばせ射出する。

 

弾速の遅い弾の辺りは氷の弾は手薄だ。咲夜は氷塊をナイフで撃ち落としての接近を試みる。氷塊は瞬く間に割れ、破片となって襲う。

 

「こんなにも仕事を増やして…。しばらく住み込みで働いてもらおうかしら」

 

咲夜は弾幕の濃い所へ飛び込んだ。予想していなかった動きで目を疑う。時間停止はしていないはずがない。なのにリアルタイムで回避している。

 

ヒュン、と言う音が聞こえた。私は上半身を後ろに倒した。ナイフの一つがデコの上をかすり僅かに血が流れる。壁に複数のナイフが刺さった。あの密度の弾幕をストレートで回避するばかりか反撃して来るなんて…。

 

私は後退しながら弾幕を張り続ける。ダメだ、もう持たない…。

 

遂に弾幕を抜けてきた咲夜が懐まで迫って来た。こうなったら一か八かやるしかない。大ぶりの斬撃、おそらく回避させた上で追撃するための一撃。回避しなければ肌がナイフで割かれる直前、私は自ら咲夜の方へ飛び込んでナイフを持つ拳に当たりに行く。

 

「!?」

 

咲夜は予想外の動きに驚いている。私は攻撃を受けて大げさに吹き飛んでみせる。この際、自然不自然はどうでもいい。そして壁にわざとぶつかってその場に倒れる。

 

「あなたの負けね」

 

「やーらーれーたー!」

 

大声で叫んで降参する。私の不審な動きに警戒しながらナイフを向ける咲夜。やる事はやった。

 

「…ねえ、何の騒ぎ?」

 

部屋からのそのそとゆったりした服を着た女性が現れた。間違いない、パチュリーだ。やった、ついにやったぞ!!私は思わずその場で涙のガッツポーズを取った。

 

「荷物を届けに来たんだ、でもこの通り捕まっちゃって…」

 

「嘘をおっしゃい、荷物なんてどこにも…」

 

パチュリーが部屋に入って何かを持って来た。私がにとりに頼まれた荷物だ。どうやら処分されたりせずに無事に見付けてくれたらしい。

 

「これ?」

 

私はうなずいた。

 

「咲夜、離してあげて。にとりの代わりに持って来たみたい」

 

私はやっと下された。咲夜は納得がいかない表情をしていた。改めてパチュリーの図書館に入って紅魔館に潜入するまでの経緯を説明する。結局、パチュリーもジェーンを知らないと言っていた。

 

私は出されたお茶を飲んだ。香りが良く後味あっさりしているハーブティーだ。その後、ようやくやって来た悪魔のあの子が咲夜と話をしている。

 

あまり長居はできないな。私は席を立った。

 

「もしまたジェーンって子に会ったら遊んであげて欲しい」

 

「命がいくつあっても足りないよ。何考えてるか分からないし」

 

「寂しいだけよ」

 

私は返事をせずに図書館を出た。窓を開けると、そこから紅魔館の門まで飛ぶ。行きと違って堂々とできていいもんだ。

 

門の外、まだ門番は寝ている。

 

その場で待っているとジェーンが現れた。その手には私の服と水筒が握られている。私はメイド服を脱ぐと彼女に手渡した。

 

「試合に負けて勝負に勝つ。上手くやったわね」

 

「それでも勝負に負けたんだ。ちっとも嬉しくないよ」

 

消耗が激しい。家に帰って寝よう。私は自宅に向かって歩き出した。にとりには自宅から連絡しよう。

 

「チルノ」

 

振り返ると金貨が飛んで来た。受け取る様に投げた速度には思えず思わず顔を腕で庇うとちょうど手の中に金貨が入り込んでくる。

 

「それあげる。もし私に会いたくなったらここに来てよ」

 

「だから私は!」

 

ここへは戻って来ないと言い終える前に姿を消してしまった。私はため息をついて家へ向かった。

 

 

 

…その夜無事ににとりから報酬をもらった私は明日までに仕上げなきゃいけない読書感想文の事を思い出して紅魔館に走り、彼女に頼んで図書館から本を一つ借りるのだった。

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