小説全然書けてなくて申し訳ない(´・ω・`)。
『初期艦選抜試験結果
第一位 響
第二位 夕立
第三位 島風
第四位 吹雪
第五位 電
以上五名、各新任提督ノ初期艦ニ命ズル』
「……………………落ちた」
駆逐艦寮の掲示板に貼り出された紙を見て、私の頭の中は真っ白になりました。
小さい頃、といっても今もまだ自分は幼い身ですが。小学校入学時に行われる艦娘適性検査で駆逐艦『朝潮』としての適性があると判明する数日前。両親に連れて行ってもらった映画の内容を今でも鮮明に覚えています。
1人の若き提督と1人の駆逐艦娘の少女。2人が他に誰もいない辺境の鎮守府に着任してからケッコンカッコカリするまでの戦いとラブロマンスを描いた、ちょっと大人向けの映画。両親には「すぐ眠くなっちゃうよ?」「つまらないんじゃないかな」と言われましたが、人並み以上に艦娘という存在に憧れがあった私は、この映画にすごく、それはものすごく感動しました。
そして、こう思ったんです。
「私も艦娘になって、初期艦になって提督とラブロマンスをします!」
なぜか両親からは変な子扱いをされましたが。でも、それが幼い私の夢だったのです。
そこに巡ってきた艦娘適性検査。私に与えられたのは初期艦になることができる駆逐艦の才能。運命だと思いました。
私は、まだ顔も知らない提督の初期艦になるために生まれてきたんだと。夢はきっと現実になるんだと。神さまありがとうって。そう思いました。
艦娘養成学校に入学してから知ったのは『初期艦になれるのは最終試験で上位五名のみ』という事実。同期の駆逐艦娘は100名前後。わずか5%の狭き門ですが、それで私の心が折れることはありませんでした。
座学でも演習でも、とにかく手を抜かない。他の子たちが月に数回の外出許可日にお出かけしている時も、図書館に籠って勉強漬けの毎日でした。朝潮型一番艦として、姉妹艦たちとの関係も良好でした。一人っ子だったのに急に8人も妹ができたのにはビックリしましたが。
座学では何度か1番になったこともありました。私より勉強が得意な子も多かったので、必死に勉強した成果が出た時は嬉しかったです。
演習で1番になれたのはたった1回だけ。私より才能溢れる艦娘はこれだけいるのだと思い知らされました。常に誰かの後ろを追う立場。それでも初期艦になりたい。その一心で、夜遅くまで自主鍛錬を欠かしたことはありませんでした。
「どうしてそんなに初期艦になりたいのよ」
呆れ顔で『霞』から言われたこともありました。
「それが夢だから」
ただ憧れたから。そこに深い理由はありませんでした。そうなりたいと思うだけで、私が頑張る理由には十分だったのです。
他の子たちが初期艦を目指す理由は色々でした。他の子よりも多い給与手当のため。エリートである新任提督の1番になることで将来の地位を盤石にしたいから。ただ強くありたいから。そういう好敵手たちとしのぎを削って競い合うことで、たしかに自分が成長していると、必ず初期艦の座を得られると、そう思っていました。
選抜試験も、自分では満足いく成果を挙げられました。なにより演習で初めて1番通過できた時は合格を確信したほどでした。
「あ、朝潮お姉ちゃん。大丈夫ですか……?」
「……うん。大丈夫よ」
自室の椅子に座ってここに来てからの6年間を思い出していると、同室の大潮が恐る恐るといった具合で声をかけてきました。いつも元気いっぱい笑顔の妹に不安そうな表情を浮かべさせてしまったことに罪悪感と自己嫌悪を抱きます。
「……そろそろ、部屋も片付けないとね」
初期艦が決定してから2週間が経ちました。もう2週間経てば、養成学校で学んだ艦娘たち全員に配属先が通達されます。6年間過ごしたこの部屋とお別れだと考えれば、少し寂しい気持ちになります。
「……片付けは苦手ですねー」
「なんでもかんでも買ってくるからよ」
外出許可日の度に色んなものを買っては捨てずに取っておく大潮の机やベッドは物で溢れかえってしまっています。
少しでも珍しい物があるとすぐ買ってきて、引き籠り勉強ばかりしている私にあれやこれやと見せてくれる大潮には、本当に困ってしまいます。
…………いえ、違いますね。本当はすごく嬉しかったんです。眉間にしわを寄せている私と妹たちの距離は最初、かなり離れてしまっていましたから。大潮が積極的に話しかけてくれて。色んな面白い品物を見せてくれて。それが丁度いい勉強の息抜きになっていて。いつしか私もそれが楽しみになっていて。気付けば妹たちとも笑顔で楽しく話せるようになっていて。
「朝潮お姉ちゃん。これいりますか? なーんて……」
自分の荷物を物色していた大潮がオズオズと差し出してきたのは、なんの変哲もないただの箱。ではなく、開けたら紙製のおばけ人形が飛び出してくるビックリ箱。悪ふざけしているのか、それとも落ち込んでいる私の為なのか。
「……そうね。もらおうかしら」
「え…………」
大潮の手からビックリ箱を取ります。驚いた顔をしている大潮に、不器用だと思いますが笑い顔を向けます。
「大(だい)ちゃん、6年間ありがとう」
「……朝(あさ)ちゃん?」
「自分のことで精一杯で、情けない一番艦だったけど」
ふと零れてしまった感謝。なかなか口に出して言えなかった言葉が、勝手にポロポロと溢れてきます。
「こんな私を気遣ってくれて。こんな私の妹でいてくれて」
いつも隣にいてくれた。愚痴や文句をこぼしても笑って聞いていてくれた。いつもそばにいて励ましてくれた。妹でもあり大親友でもある大ちゃんに、精一杯の感謝を伝えようと。
「本当に、一緒にいてくれてありがとう」
「……………………(ズビッ)」
「…………大ちゃん?」
「あ゛さ゛ち゛ゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ん゛! !」
「うぇえ!?」
なぜか号泣しながら抱きついてきた妹と一緒にベッドへ倒れこみます。
「大潮もね! 朝ちゃんと一緒にいれてね! 本当に楽しかったです!」
「……うん」
「勉強苦手な大潮にいつも教えてくれてね! いつも妹の大潮たちのこと気にかけてくれてね!」
「…………うん」
「自分の夢に向かって一生懸命なのカッコよくてね! まっすぐ素直なの尊敬しててね!」
「………………うん」
「大潮の隣にいてくれて、こっちこそありがとう!」
「う゛ん゛…………!!」
そこからはもう、訳が分からなくて。
2人で抱き合って、とにかく滅茶苦茶に泣きました。
夢が叶わなくて悲しいとか。大ちゃんと別れるのが寂しいとか。言われると思ってなかった感謝をもらえて嬉しいとか。とにかくいろんな感情がゴチャ混ぜになって。
「ちょっと、ノックしても返事ないとかどういう――何!? どうしたの!?」
「あらあら~」
隣室の満潮と荒潮が訪ねてくるまで、ずっと泣き腫らしていました。
海軍省人事局。そう書かれた看板の前に、私は立っていました。
満潮と荒潮が訪ねてきた理由。それが大本営からの呼び出しでした。慌てて行こうとする私を押し留めて、皴のできてしまった制服をアイロンがけして腫れた目を隠すようにお化粧してくれた3人には感謝です。
「頑張ってね~」と手を振る荒潮の後ろで満潮が大潮になにか耳打ちをしていましたが、何だったんでしょうか。とても驚いた様子でしたが。
とにかく、用件を済ませてしまいましょう。ノックして中に入り所属と艦名を伝えると、応接室に通されます。出されたお茶をチビチビ飲みながら待っていると、メガネをかけた男性が入ってきました。立ち上がって敬礼しようとしましたが、手で制されました。
「君が朝潮か」
「はい! 駆逐艦朝潮です!」
「単刀直入に言う。君の配属先が決定した。よって今ここで伝える」
「はい? 配属先の通達はまだ先ではありませんか?」
「今回は特例だからな」
2週間後の通達を待たない程の特例……? 突然の話に嫌な予感が頭をよぎります。
『解体』される可能性。昔、素行があまりにも悪い艦娘候補生を解体処分したという噂を聞いたことがあります。それを思い出しました。
ですが、私が解体されるほどの何かをしたでしょうか? まったく身に覚えがありません。でも、そうでないとしたら一体どんな通達が待って――
「駆逐艦朝潮」
「は、はい!」
「初期艦選抜試験第六位の成績を考慮し、貴艦をトラック泊地新任提督『吉井十郎』の
「……………………はい?」
「ついては明日一二○○、トラック島に出発する輸送船へ乗船するように」
「は、はい!」
どうしましょう、お父さんお母さん。
私、初期艦になっちゃいました。
「「「朝潮姉さん、初期艦おめでとー!!!!」」」
呆然としながら部屋に戻ると、妹たちとクラッカーからの祝福が待っていました。
「バンザーイ! バンザーイ! バンザーイ!」
「ちょっと大潮姉さんテンション高すぎ! 霞、抑えるの手伝って!」
「ああもう見てらんないったら! ほらこの紐で縛っちゃいなさい!」
「どうしてあっちゃんとやまちゃんはサンタさんの格好してるんですか?」
「い、いやこれは山雲が……騙したわね!?」
「朝潮姉さんめでたいわ~。朝雲姉は可愛いわ~」
「…………んちゃ」
「あ、ありがとう」
霰から受け取った紙皿と紙コップを持ちながら、隣で「あらあら」と笑う荒潮を見ます。
「……荒潮、知ってたの?」
「あらあら、何がかしらぁ?」
すっとぼけた様子の荒潮と、目の前でワチャワチャしている妹たちを見ていると、ふと笑みが零れました。
「――みんな、ありがとう」
「「「……………………」」」
あ、あれ? 急に黙り込んでどうしたんでしょう? 私、変なこと言っちゃったでしょうか?
「「「朝潮姉さんがデレたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」
「ちょ、ちょっと!? そんなんじゃないからー!!」
そこからはもう、寮母さんが来るまで散々に騒いで食べて飲んで。
ああ、本当に楽しいなって。この子たちが妹で本当に良かったって。そう思ったのでした。
トラック島に降りると、馴染みのない匂いがしました。
それだけでもう、ここが自分の生まれ育った地から遠く離れた場所なんだって実感が湧いてきます。
辺りを見回せば、遠くに白い軍服を着た男性が立っているのが分かります。
「はじめまして。ボクがトラック泊地の提督を務めることになった吉井十郎です」
「はい! 駆逐艦朝潮です!」
私の夢は叶い――いいえ、まだ途中ですね。まだ、ラブロマンスを経験していませんから! まだスタートラインに立ったばかりです!
「たった2人きりの鎮守府になるけど、これから一緒に頑張ろう」
「はい! 精一杯がんばります!」
本土でお別れした妹たちを思い出しながら。これからの未来に胸を期待で膨らませながら。
「よろしくお願いします、司令官!」
ここから2人のラブロマンスを書こうかと思ったけど砂糖吐いてタヒにそうだから無理。