IS 〜殺し屋奮闘記〜   作:黒鉄48号

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 やっとこさ冬休みなので初投稿です
 課外多い……


第十二話 キチとの遭遇

 普段より少し遅い時間に目が覚める。あぁ、なんとなくモヤがかかった様な感じで頭が回らない。昨晩飲んだ酔い止めのせいだろうか。

 

 鼻根を軽く揉みながら両目を擦っていると、キッチンの方から音が聞こえてきた。——その瞬間、眠気が吹き飛んで思考が早くなり始める。

 昨日の夜、私は確実に玄関のドアを閉めたはずだ。ワンドアツーロックかつチェーン付きのそれを、どうやって外側から開けることができようか。

 

 不法侵入の手段を推察しながら、近くの机のペン立てに入れてあったシャープペンシルを手に取り、音を立てずにゆっくりとドアを開ける。

 気配を殺しながらキッチンまで歩いていくと、()()()がいた。周りには肘から先だけの腕を模した奇怪な機械が四つ浮かんでいて、それぞれが別の料理を作っている。

 

 それらを操ってるであろう侵入者の格好も、これまた奇妙なものだ。

 継ぎ接ぎだらけのくたびれた茶色のズボン、ライオンの立髪を彷彿とさせる装飾の付いた服、水色リボン付きの三つ編みお下げに、ブリキ色の漏斗っぽい被り物、そして最後に緑のサングラス————あぁ、間違いない。

 昔、仲間内で宴会をした時に酔っ払ったアンジーさんがいきなり上映し始めた映画『オズの魔法使い』……アイツの服は、あの映画に出てきたキャラクター達の要素をごちゃ混ぜにした物だ。

 

 服装に疑問を抱きながらも、ゆっくりゆっくり近寄っていく。まだだ、まだ早い。そうだ、相手の意識が他の何かに向いた瞬間に——今だ!

 

動くな

「え、ちょ、何々なに!?」

 

 相手の女性の右肘を掴んでこちらに引き寄せてから、左腕を首に回す。混乱している様だが、そんなことは関係無い。

 

不審な行動はするな。勝手に喋るな。話を長くするな。——OK?

「いや良くないよ!? と言うか君私が誰だか分かっt——グヘッ!!

 

 シャーペンのノック部分で喉仏を突く。死にはしないだろうが、相当痛いし苦しいのか何度も咳き込んでいる。これで少しは喋ってくれる様になるだろう。

 

質問を質問で返すなという言葉を知らないのか? だとしても、話の流れからしてその返答はおかしい物だと気づける筈だが? ……まぁ良い。 改めて質問させてもらおうか」

 

 女性の首元へ軽くペン先を押し付けながらそう言う。先程の一撃がよほど応えたのか、彼女はただコクコクと頷くだけだった。

 

「最初の質問だ。お前はどうやってこの家に侵入した? 仮に鍵を開けられたとしても、どうやってチェーンを外から外した?」

「そんなの簡単だよ! この移動型ラボ吾輩は猫である(名前はまだ無い)を使って内側から開けただけよ〜」

 

 そう言いながら例の浮遊する腕達が目の前に飛んできて、私に向かってピースサインを見せてからアルプス一万尺を披露し始めた。腕なのにラボというのも気になるが、それよりも目を見張るべきはその動作の素早さだ。

 最初に手を合わせてから腕を伸ばし、その二の腕にもう片方の拳を添えるまでの動作をワンセットとしよう。目の前の腕達は、それを一秒間に二回行っているのだ。

 無線操作……にしてはコントローラーらしき物が見当たらない。そもそも片腕を使えないからあそこまで高度な動きをそれで行うのは無理だろう。つまりこの腕は——

 

「これ以外にも、凡そ数百種類の工具をしまってるんだよ! そしてしかも——」

「「脳波コントロールできる」」

 

 私と彼女のセリフがピッタリ被り、数秒間部屋が静寂に包まれる。僅かに聞こえるのは、彼女の心臓が早鐘を打つ音と外で吹き荒ぶ風音だけだ。

 

「……な、なんでそのセリフ知ってるのかな〜?」

「……? いや、普通にカロッゾ・ロナのセリフの中でもかなり有名な物な筈だが? 私自身F91は好きな作品なんでね」

 

 そう答えるが、実を言うとこれは完璧に正しいという訳ではない。

 正確に言うならば、『技術力のある変人達(私の身内)が熱心に布教してきた作品の中で』が最初に付く。ちなみに昨日会話したK博士が好きなのがF91及びクロボンである。

 

 閑話休題。私の応えを聞いた瞬間、彼女の表情が明るくなる。まるでオタクが偶然同士を見つけた時の様だ。

 

「わーい! 同士が増えたよ! やったぜくーちゃん!!」

「おい馬鹿止めろ。 ……話が逸れてしまったな。それじゃ改めて、二つ目の質問だ————どうして料理を作っていた?」

「え、それ?」

 

 意外なことを聞かれたのか、彼女は呆れた表情でこちらを伺ってきた。

 確かに、この女性にとってはあまり重要では無いのだろう。しかし、私にとっては死活問題の一つである。

 

「何せ、私はあまり買い物をしないのでね。仮に貴方が食材を使い切っていた場合、今日の予定を変更する必要があるんでね。……で、何故わざわざ私に何もせずに料理を?」

「あ〜……うん、これ食べさせながら会話すれば警戒心を抱かせずに済むよね〜、と思ってたんだよね。それがさぁ、まさかのご覧の有り様だよ!」

 

 やけにテンション高いなこの人。というか本当に誰なんだこの人は。少なくとも私の知り合いにこんなにテンションが乱高下する人は……居なくはないが少ない。

 

「……今頃になってしまうが、貴方の名前は?」

——はぁっ!? え知らないの? と言うか気づいてないのこの『()()()』のことを!? ……ショックだなぁ

 

 一瞬叫んだかと思いきや、瞬きするよりも早く萎れた女性。……高度な技術力、予想のつかない奇天烈な言動の数々、そして彼女のいった『束』という名前————

 

「……ま、まさかとは思うが…………あんた、『篠ノ之(しののの)(たばね)』か? あのISを開発s——」

「そのとーーり!!」

 

 思わず耳を抑えたくなるほどの声高く叫んだ彼女は、左腕を掴んでいた私をいとも容易く振り払ってその場で一回転してこちらを向き、やけにカッコいい無駄のない無駄な動きをしながら話す。

 

「私こそ! ISを生み出して! 世界を変えた大天()! 束さんなのさぁ!! ……ふふ、驚いたかな〜?」

 

 右手を顔の手前に出し、中指と薬指以外を立てたポーズをしながら、彼女はこちらに微笑んできた。それに返答しようとした瞬間——

 グゥウゥ〜……と同時に私と彼女の腹の虫が鳴き、彼女の顔に朱が注がれた。よくよく考えれば、私は昨日その場しのぎでささっと食べた寿司以外はまだ何も口にしていないし、彼女も飲み物ぐらいしか口にしていないだろう。

 たかが一食と思ってはいけない。朝食を抜くと集中力やらなんやらが低下するのは先人達が山程結果を残しているし、その上私は一般人よりも多く食べなければならない体質なのだ。……昨夜のアレは目眩が酷かった為であるが。

 

「ふむ、とりあえず……朝食にしましょうか

「そうだよ! もう料理できてるし!」

 

 私たちの意見は一致し、今までのあれやこれやを水に流す流れとなった。

 ————この先、何度も彼女と顔を合わせることになるとは、この時私は微塵も思っていなかった。




 束さんの服装はオリジナルです。原作でも月によって服変えてたらしいし、多少はね?

ご精読ありがとうございました。感想、誤字報告よろしくお願いします。
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