IS 〜殺し屋奮闘記〜   作:黒鉄48号

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 新年あけましておめでとうございます
 感謝を込めての初投稿です


第十三話 兎とご飯と舌戦と

 目の前で黙々とお茶碗に山の様に盛られたご飯とおかずを一緒に食べる青年を私はじっと観察する。最初は少しずつしか食べてなかったのに、もうおかわり三回目に突入しちゃったよ。

 この私——人々から天災と呼ばれて久しい束さんにとっても、この青年は不思議な人物としか思えないなぁ。

 

 宇野誠一——SNSで呟かれていた情報や図書館の監視カメラをハッキングして見た情報に基づけば、ありきたりな本好きの好青年らしい————()()()()()、ね。

 

 まず最初に、戸籍データがとてもきな臭い。偶に私にちょっかいを出してくるお馬鹿さん達を脅す為に、しばしば個人情報やら組織の極秘情報を盗むことがあるんだけど……彼の戸籍は、どことなく作られた(偽造された)物に思えちゃうんだよね。

 次に、極めて高い身体能力を誇っていることだ。監視カメラの映像だけでも、ちょっとおかしい速度で移動したり本を両手に山程積んだ状態で走ったりしてたけど、特筆すべきはその筋力だね。

 

 自慢じゃないけど、私は細胞レベルでオーバースペックだという自負心がある。重量挙げの男性用のバーは片手で振り回せるし、チョップで真っ二つにする事だって可能なのだ。

 後は……そうそう、親友のちーちゃん(織斑千冬)の、ラジオを握りすぶすアイアンクローや鋼板もぶち抜く拳骨も平気なぐらい体が頑丈なんだよね。

 

 なのにさ、彼はそんな私を一時的にとは言え会話を出来なくしちゃった訳さ。しかも、そこいら辺で売ってるシャーペンだけでだよ?

 いやー、参った参った。あそこまでヤバいんだねペンって。そりゃジョン・ウィックも武器にしちゃう訳だよ! ……まぁアレは鉛筆だったけどね。

 

 閑話休題(話を戻して)、ともかく色々規格外な彼だけど、私が態々訪れたのにはちゃんとした理由があるんさ。それを話し合いたいんだけど…………この子まだ食べてるんだよね。フードファイターかな?

 

「ねーねー、確かに朝食にしようとは言ったけどさぁ、いくらなんでも食べ過ぎじゃない? 太るよ? 後、箸の持ち方おかしくない?」

「…………ん? あぁ、すまないすまない。他人の手作りの料理を食べるのは久しぶりなんでな。あと箸の持ち方は癖だ。何回やっても矯正出来なくてね……美味いなこの味噌汁。赤味噌ベースは新鮮だな」

 

 気の無い返事をしながら、彼はご飯を食べ続ける。いやまぁ、警戒して一口も食べてくれないよりかは嬉しいけどさぁ……流石にこうなると困っちゃうなぁ。

しょうがないし、ここは一つ切り札使っちゃうか!

 

「ねぇ、()()()()()()()()()

グホァッ!? 鼻に、鼻に米と味噌汁がぁ……。おいおい、誰がボス級原生生物だって?」

 

 軽くむせながらも、彼はジョークで返してきた。けど、今はそういう気分じゃないんだよなぁ束さん。

 

「昨日の夜のこと、覚えてる?」

「はて……あぁ、月が綺麗な夜でしたね。写真で撮っておきたかったけど、何せ月は光ってるからなぁ……これが写真写りが悪いのなんの————」

「茶髪と一緒にいっくんを助けてくれた仮面の男、あれって君でしょ?」

 

 とぼけ続ける彼に、あえて爆弾を投げつけてみる。しばらく固まった後、さっきまでの饒舌さが嘘の様に静かになってしまった。少し時間が経ち、やっと口を開く。

 

「……いっくんってのは、誰のことだ?」

「あぁ〜そっか〜、君は知らないんだったね。いっくんってのは織斑一夏くんのことさ。ほら、君の図書館に通ってる背のちっちゃい可愛い男の子だよ」

「なるほど、彼か。……で、さっきの悪趣味な冗談はどういう意図で言ったんだい? そいつは仮面をしてたんだろ? それがどうして私に繋がるのか、ロジックがまるで分からない」

「ははは! あくまで白を切るつもりなんだね! ……君の方こそ、随分と嘘が下手だねぇ」

 

 食べ終わったカ○メの袋をテーブルに置き、彼の横に移動して座る。訝しげにこちらを眺めてきたから、束さんも彼の目をじっと見ながら話しかける。

 

「昨日のアレをさぁ、人工衛星をハッキングしてリアルタイムで見てんだよ。何せ束さんは天災だからね!」

「…………ほう?」

「いや〜ほんと、いっくんが攫われかけた時は大慌てさ。出来ることなら私自身で助けたかったけど、生憎()()()()()()()()()()()。指咥えて見ていることしか出来ない歯痒さで、頭がどうにかなっちゃいそうだったよ」

「意外だな。世間じゃぁあんたの評価は『自分以外の人間の大半を石ころとしか認識してない』やら『狡猾な羊』やらなんだが。そんなあんたが態々一人の少年に起こった出来事で慌てるなんて」

「心外だなぁ、も〜。一応最近は他の有象無象も『人間』だって認識できる様になったんだよ?」

 

 そう言うと、彼は声にならない声で愚痴った。唇の動きからして、『やっぱり天才ってどこかしらズレるんだな』って言ったみたい。まぁ、それはどうでもいいや。

 

「だからさ、茶髪くんが間一髪で来てくれた時は嬉しかったんだ。でも、一番驚いたのはヘビカラスが出てきた時だねやっぱ! いや〜まさか、何もない筈の座標にいきなり現れるなんてねぇ!」

「テレポートでもしてきたんじゃないか?」

「あ、それは無理だね。今研究されてる装置の原理だと、どうしても生きてる生物の転送は難しいんだよ。仮に転送できても、テセウスの船状態になっちゃうしね」

「ほう。……じゃあ、あんたはその仮面野郎がどうやって現れたと思ってるんだ?」

「そうだね〜……多分、元々あの場所にいたんじゃないのかなぁ? なんらかの技術で隠れてただけで————ってまた話が脱線しちゃったね。あーやだやだ」

「ははっ、まぁ良いじゃないか。時間はたっぷりあるから」

 

 調子が戻ってきたのか、彼はこっちをにんまりと眺めてきた。……というかいつの間にか料理全部食べ終わってるじゃん……軽く3人前はあったのに。

 

「でまぁ、結局のところ————その仮面の男の髪色と背格好が君そっくりだった訳だよ! そんで持って高い身体能力持ち! これもう君以外いないよね! ね!?

「…………はぁ。そこまで言うなら、答え合わせといきましょうか」

 

 やれやれ、といった感じで宇野誠一が立ち上がる。改めて、やっぱり大っきいねぇこの人。ちーちゃんより頭一つ分ぐらい背が高いし、何より足が長い! まるで、『あしながおじさん』ならぬ足長お兄さんだよ。

 

「篠ノ之束博士の言う通り、私こそが蛇鴉————————じゃないんだなぁ、これが!

「……へ?」

 

 予想が外れたことにショックを受けて、思考が止まる。……多分この時の束さんの顔はそれはそれは酷いものだったんだろうなぁ。




キリが良いので今話はここまで。次回、割と重要なことが説明されますのでお見逃しなく!
……あと、束さん視点は難しい、はっきりわかんだね

ご精読ありがとうございました!感想、誤字報告もよろしくお願いします
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