某原作に辿り着くやつを除けば、多分一番時間かかったんじゃないかなぁ(白目)
第二十話
「全員揃ってますねー。それじゃあ
電子黒板の前で山田先生がにっこりと微笑む。
僕らと最初に出会った時はISスーツだったから私服を見るのは初めてだけど……サイズが一回り大きいのか、先生がより小さく見える。
なんというか、『子供が無理して大人の服を着てます』的な背伸び感がするけど、そう思うのは僕だけかな。
「それでは皆さん、一年間よろしくお願いしますね
「…………」
だけれども、教室の中は妙な緊張感に包まれていて、誰からも反応がない。
「……じゃ、じゃあ自己紹介をお願いします。えっと、出席番号順で」
狼狽える先生がかわいそうなので、せめて僕くらいは反応しておいた方が良いとは思うけど、如何せんそんな余裕はない。
その理由は単純明快——だからこそ面倒臭い——で、僕ともう一人の男性操縦者……すなわち
いくつかの視線は宇野さんの方に向かっているとはいえ、大半は僕に注がれているので大変きつい。
そもそも、なんで最前列かつほぼ真ん中の席なんだろうか。宇野さんは背が高すぎるから一番後ろに座ってるのは良いとして、僕より背の低い人もいるのに……。
最初は宇野さんに助けを求めようと思ったけど、席が離れている上に絶賛参考書確認中だったので無理と判断した。というか、電話帳二冊分ぐらいの厚みあるって凄いねアレ……。
しょうがないので、チラリと窓側の方に目をやる。
向けられている中で一番熱い視線がある方向で、そこにいたのは……僕の幼馴染の
一瞬目が合った気がしたけど、すぐに彼女はふいっと窓の方に顔をそらしてしまった。……
「さて、それじゃ……宇野
「……あぁ、了解です。やはり携帯するには向いてないなこれ……」
順番が回ってきたらしく、宇野さんが参考書を机に置いて立ち上がる。今が『う』で僕は『お』だから、この後すぐ自己紹介することになるだろうし、参考にするために聞いておこう。
「さて、皆さん初めまして。宇野誠一と申します。趣味は読書と食事で、好きな作者はロアルド・ダール。ISについての知識はまだ不足気味ですが、皆さんに追いつけるように努力するつもりです。これから一年間、よろしくお願いします」
そこまで言って、宇野さんはお辞儀をする。普段から読み聞かせをしているからか、こういうのは得意みたいだ。周りの子たちも拍手をしている。
……ただ、それにしても背が高いなぁ宇野さんは。山田先生と見比べよう物なら、どっちが大人で子供なのか頭がこんがらがるぐらいだ。
「えっとこの次は……織斑一夏君ですね」
「ウェ!?」
あるぇえ……? まさか『え』の人いないの?
……って言っても、このまま待たせるのもあれだもんね。ええい、ままよ!
「お、おお織斑一夏です! よろしくお願いします!」
「…………」
やっぱり無理だよこれぇ!? みんなジーッと見つめてくるからプレッシャーも凄いし!
どうしよう……まだ趣味とか何にも思いついてないよ……。
埒が明かないから、思い切って口にする
「………………以上です」
がたたっ、と何人かの女子がずっこける。ついでに箒と宇野さんまでずっこけてる……何かアドバイスしてくださいよ…………。
「あ、あの〜……」
山田先生の涙声に申し訳なさを感じていると、ふと右肩が軽く叩かれた。
振り返った瞬間、眉間に軽い衝撃が走る。
「あ痛っ! ……て、姉さん?」
「……ここでは織斑先生だ」
姉さんは僕にもう一回デコピンをしてから、山田先生の方に向き直る。
「あ、織斑先生。もう会議は終わられたんですか?」
「ええ、山田
姉さんはキリッとした表情で——だけど優しい声でそう言う。……テレビでしか見たことない表情だけど、やっぱりかっこいいなぁ。
「い、いえっ。副担任ですから、これくらいはしないと……」
さっきまでの涙声はどこへやら、山田先生は若干熱っぽいくらいの声と視線で姉さん——いや、織斑先生へと応えた。
壇上に上がった姉さんはクラスを見渡し、一回目を瞑って呼吸してから喋り始めた。
「諸君、初めましてだな。私がこのクラスの担任になる織斑
凛とした通る声で、姉さんは自己紹介を終えた。
……なんだか妙に教室が静かに————
「キャーーーーー! 千冬様、本物の千冬様よ!」
「ずっとファンでした!」
「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです! 北九州から!」
「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」
「私、お姉様の為なら死ねます!」
「うるさい!……一体どこからこんな声を出してるんだ?」
「ヴァー……ふぅ、衝撃波への対処法を知らなければ即死だった。ありがとうアンジーさん」
————うん、すっごい爆音。耳がキーンってなって宇野さんと箒らしき声聞き取れなかったよ。
「…………山田先生、なんか例年以上に多くないですか?」
「しょうがないですよ、織斑さんって同性でも惚れる人いるぐらいカッコいいんですし。学生の頃とか、下駄箱にラブレターが週二で入ってたとか以前言ってましたよね」
「そうでしたけど、流石にここまでとは……」
先生達はこそこそと話し合ってから、姉さんが二、三度手を叩いたことで教室は再び静かになった。
「あー……そうだ、最後に一言だけ。
「「「……ええええぇええ!?」」」
想定外のカミングアウトにより、教室はにわかに騒がしくなる。
そんな中、一人がスッと手を挙げた。左耳に青いイヤーカフスを着けた、金髪の少女……あ、例の試験の時の子だ!
「先生方、質問よろしいでしょうか?」
「えぇっと……セシリア・オルコットか。いいぞ」
「ありがとうございます。失礼ですが山田先生、具体的には何歳ほどですか?」
「あ、もしかして信じてないんですか? これでも歴とした二十六歳ですよ!」
「「「嘘だぁ!?」」」
……この後、クラス全体を落ち着かせるまで時間がかかりすぎて、自己紹介がかなり駆け足になったのは言うまでもないだろう。
今作では山田先生と千冬さんの先輩、後輩としての関係性が逆転しています。
それでも千冬さんが担任で山田先生が副担任のままなのは、学園上層部及びIS委員会の意向です。
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