二時間目の授業が終わって、これで通算三回目の休み時間。
相変わらず専門用語がイマイチ理解できてない僕は、スマホを起動させて電子書籍として保存してある教科書を読む。
……うん、やっぱり難しい。そりゃ倍率一万倍にもなるよね。
さっきの授業中に周りを見渡したけど、殆どの人は特に迷ってなかったのはきっと、今まで一杯勉強してきたからなんだろうね。
……まぁ、なんか箒はキツそうにしてたけど。昔の頃から頭を使うのはそこまで得意じゃなかったし、そのせいかも。
頭の片隅にそんなことを思い浮かべながら、周囲を眺めてみる。
すると、どうやらみんな同じ方向を見ているようなので、それに釣られて僕もそっちを向く。
そこにいたのは、透明なサングラス────つまり『電脳メガネ』をかけながら虚空で指を動かす宇野さんだった。
あー…………確かに、普通の人から見たら理解不能な行動だよね、アレは。電脳メガネ自体まだ一般販売は始まってないし。
にしても、随分と細かく動かしてる様だ。
僕自身使用経験があるので一応判別できるけど、何かを検索しては戻って再検索して、ってのをびっくりするぐらい早く
あんなに急いでるの、今まで見たこと無いや。
一旦区切りをつけて、スマホに目線を戻す。この後の授業についていけるように頑張らないとなぁ……。
キーンコーンカーンコーン。
三時間目開始のチャイムが鳴り、みんなが席について黒板の方を向く。
「それではこの時間は、実践で使用する各種装備の特性について説明する」
一、二時間目と違って、山田先生じゃなくて千冬姉さんが教壇に立っている。かなり大事なことなのか、山田先生もタブレットを手に持っていた。
「あぁ、その前に来月行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないとな」
ふと、思い出したように姉さんは呟く。
「クラス代表者とはそのままの意味だ。今回の対抗戦だけでなく、生徒会の開く会議や委員会への出席……まぁ、いわば学級代表だ」
姉さんはスラスラと言葉を紡ぎ、それを僕らは静かに聞き続ける。
「ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力を測るものだ。今の時点ではたいした差はないが……GPのように、競争は向上心を生むからな。後、一度決まったら一年間変更は無いからな。きちんと考えておけ」
説明が終わって、ざわざわと教室が色めき立つ。こんなに大きい学校だし、色々と仕事は多そうだ。なる人には感謝しないとね。
「はいっ! 織斑君を推薦します! 」
……聞き間違えだよね?
「私もそれが良いと思いますー!」
「織斑君ってば、入試で先生倒したらしいもんね!」
……聞き間違えかな? 後なんでそのこと知ってるのかな?
「では候補者は織斑一夏……他にはいないのか? 自他推薦は問わんぞ」
……聞き間違えじゃないみたいだね──って馬鹿じゃないの!?
「ぼ、僕ですか!?」
つい立ち上がってしまうと同時に、視線の一斉射撃。周りを確認しなくても分かる、これは『彼なら喜んでやってくれる』って感じの無責任極まりない眼差しだ。
「織斑、席に着け、気持ちはわかるが邪魔だ。さて、他にはいないのか? いないならそのまま当選だぞ」
「ちょ、ちょっと待ってよ姉さん! 僕はそんなの──」
「自他推薦は問わないと言っただろうが。他薦された者には拒否権はない。選ばれた以上、腹をくくれ」
……あぁ、どうすればいいのだろうか。どうにかして他の人に擦り付け────
「セシリア・オルコットさんを推薦します」
その声がクラス全体に響き渡ると同時に、嫌な静けさが訪れる。
声のした方を振り向くと…………宇野さんが、真っ直ぐと手を挙げていた。
彼の表情は……そう、まるで、『獲物を見つけたヘビ』のようだった。
女子の間での噂の伝達速度をなめてはいけない。(戒め)
感想、誤字報告宜しくおねがいします。