IS 〜殺し屋奮闘記〜   作:黒鉄48号

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ハーメルンよ、私は帰ってきたぁ!(一ヶ月ぶり)


第三話 凄ェ図書館

 バイクに跨って家から十数分かけて図書館までやってきたオレは、駐車場に停めてヘルメットを外し、空を見上げる。

 時刻は午前九時半過ぎ、海原の様に雲一つない青空には太陽だけが昇っていて、己の存在をこれでもかとアピールする様に陽光を放っている。

 しかし、今はまだ二月の上旬だ。空から照りつける太陽が幻ではないのかと疑ってしまう程に気温が低く、強めの風も吹いていてオレの栗色の髪を崩してくる。

 ライダースジャケットの下に普通の服とヒートテックの二枚重ねで着ているが、それでもかなり肌寒い。これならカイロを背中に貼っておけば良かったかもしれない。

 

 周りを見渡せば、ニット帽に毛糸のマフラーと厚手の手袋、そしてジャンバーを着てボンレスハムみたいな見た目になった家族や、中学生のグループがかなり多い。

 今は丁度受験前の最後の追い込みの時期だし、家で勉強できない学生が友達と一緒に来た——と言う感じなのだろうか。

 

 彼らを一通り見てから、改めてこの建物——『私立藍越図書館』を眺める。

 普通の公共施設とは違う、真っ白な建材が使われていて、曲線と直線が混ざった独特なデザインとテラスや屋上に盛られている土。

 窓やガラスから見える館内の様子も合わさり、どこかの美術館に置いてあったジオラマがそのまま飛び出てきた様な感じだ。

 

「おぉ、凄ェデザインだな! さーて、どんな本があるのかね——ってうわ!? すまねぇ、大丈夫か!?」

「痛てて……一応大丈夫ですけど、ちゃんと周りに気を配ってくれませんか?」

 

 デザインに身惚れていたせいか、人とぶつかってしまった。

 ぶつかった相手は、白いウィンドブレーカーを着ている青みがかった黒髪の少年。今の表情は険しいが、人付き合いが上手そうな人懐っこい顔つきをしている。

 

「……そういえば、見たことない人ですね? どこから来たんですか?」

「隣町からだな。丁度今日が休みなんで試しにここに来てみたんさ。にしても、この建物は随分とオシャレだよなぁ……まるで美術館か博物館みたいでついつい見惚れちまってさ。それでぶつかっちまったんだ」

「なるほど。確かに、ここってお洒落な感じですよね」

 

 少年はそこまで言うと、図書館入口へと歩いて行った。

 俺は更に数分建物を眺めてから入館した。

 


 

 館内は外側と違い、黒色をベースにしたどこか安心感のあるデザインになっていた。 受付カウンターまで行き、係の女性に声をかける

 

「すいません、図書カードを作りたいのですが」

「はい。保険証や免許証といった物はお手元にありますか?」

「えぇ、持ってきました。確か、これがないといけないんですよね?」

 

 そう言って財布から免許証を取り出し、受付の女性の方から見て正位置になる様に机に置く。彼女はそれを手に取って、顔写真とオレの顔を何度か交互に見て、オレが本人であることを確信した様だ。

 

「本人であることが確認出来ました。それでは、あちらの機械でデータを入力してください」

「へぇ、自分で紙に書いて渡す感じじゃないんですね。普通のとこだと郵便番号やら職業やらも必要だって聞いてたんですけど」

「最近の図書館はこの方式が主流ですね。人件費を抑えられますし、紙に書く場合は修正に手間がかかりますので」

「なるほど」

 

 オレの質問に、女性はこちらをしっかり見て答えてくれた。

 その答えに納得できた俺は、彼女にお礼を言ってから機械の置いてある机まで向かう。機械に接続された読み取り装置に免許証を置き、暗証番号を入力する。

 読み込まれたデータが表示されると同時に、画面に絵が表示された。

 

「えーっと……顔認証? なるほど、写真と同じ人物が判断する為か」

 

 オレは少々危ない組織に所属しているけど、犯罪歴はないから登録しても大丈夫だろう。そう考えて、機械のカメラで顔認証を行う。瞬きするより早い時間で認証され、終わりの合図らしき電子音が聞こえた。

 

『これで登録は完了です。どうか、あなたの本が見つかりますように』

 

 画面に文字が表示されながら女性っぽい合成音声が流れると、パソコンに接続されていた機械から図書カードが出てきた。

 それを受け取ってカウンターの方へ向かう。

 

「登録できたんで、パンフレットとか貰えますか? 試しに軽く一周してみたいので」

「えぇ、こちらをどうぞ。……あ、()()を忘れていましたね。少々お待ちください」

 

 パンフレットも受け取り、いざ出発——と言う所で女性が俺にストップをかける。疑問に思いながらも十数秒程待っていると、彼女は不思議な物を持ってきた。

 それは一見すると普通のワンレンズ型サングラスの様だが、何故かレンズ部分が透明になっている。あとクソデカい。

 耳にかけるあの部分を持ちながら暫く眺めていると、女性がそれをかけるように促してきた。

 

「あら、どうしてかけないんですか?」

「いや、いきなりメガネ渡されても困るだけですよ……こう見えてオレ両眼とも視力1.5ありますし」

「それはすごいですね! ……って、そうじゃ無くて。それをかけて貰わないと少々問題がありましてね。ですから、早くかけてもらえますか?」

 

 随分と熱心に勧めるな——そう思いながらメガネを掛ける。

 その瞬間、()()()()()()()

 

 少々物が少ないと感じていたエントランスホールだが、このメガネを通して見てみると様々な物が写っていた。

 今週入荷された新刊一覧、借りられている本のランキング、ジャンル別オススメ作品及びシリーズ、etc……目に映る範囲だとこれぐらいだが、それ以外にも様々な物が映っていた。

 

「うぉおー!? すげー、すげーよ! 何これ何これ!!」

「ね、言ったでしょう?」

 

 いつの間にかメガネをかけていた受付の女性が自慢げにオレに話しかける。何気にメガネのデザインが普通の眼鏡と同じ感じの特別仕様になっている。

 

「なるほど、道理でこれを勧めてきた訳ですね……というかこれ、結構値段高い代物じゃ?」

「あぁ、そこは大丈夫ですよ。実はこのメガネ、藍越グループの企業が四月に販売する新商品で、今渡したのはそれの試作品なんですよ。ここを利用している人達にレンタルして、運用したデータを元に最終調整をするらしいんですよ」

「はえ〜。流石は天下の藍越グループ、やることなすこと格が違いますね……」

 

 俺はそう納得する。何せ、この図書館を経営している藍越グループは、子供も大人も誰もが知ってる大手企業グループなのだ。

 小さい物では100円ショップの商品から、大きい物では車や飛行機、そして最近はIS産業にまで進出しているらしい。

 しかも学校法人もグループに存在しているらしいので、藍越グループが関わっていない界隈は国内に存在しないと世間で言われている程である。

 

 そんな大企業が販売する新商品を一足先に使っている——そんなちょっとした優越感に浸りながら暫くエントランスホールを眺めていると、女性が声をかけてくる。

 

「そのメガネ……名前は『電脳メガネ』ってやつなんですけど、まずは使い方を教えましょう」

「あ……ありがとうございます。で、どんな感じに使うんですか?——」

 

 そうして、オレは十数分かけて電脳メガネの使い方を女性に教えてもらった。

 そしてどうやら、この電脳メガネは四月からのサービス開始の時に一旦回収されてしまうが、レンタルしてた人たちは特別価格で購入可能らしい。一足先にこれを使える——その喜びを噛み締めながら、改めてオレは図書館を巡り始めた。




・藍越グループ
 この世界の日本において、生まれたばかりの赤ちゃん以外なら誰もが知ってる大規模企業グループ。中核企業は「藍越ホールディングス」であり、元は繊維製品を作る会社であった。
 現在は様々な事業に手を出しており、その全てが黒字を叩き出している。

 その理由は、多くの従業員が企業内高等学校である『藍越学園』の卒業生であり、在学中にノウハウを徹底的に叩き込んでいるからである。

 名前の由来は、このグループの創設者が元は藍染を作っていた一族の出身であり、それを越える為にこの企業名となった。
 キャッチフレーズは『スプーンから重機まで』。
・電脳メガネ
 某NHKアニメの物と名前は同じだが、レンズの大きさが保護メガネぐらいになっているのが特徴。
 佐藤に渡された物はいくつかの改良を重ねた最新版であり、受付さんの物は比較的古い型である
 眉間辺りに小型カメラが仕込まれていて、手の動きと座標を確認する。

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——追記
 最近発表された『Oppo AR Glasses 2021』が電脳メガネとほぼ同じことができるらしいので驚愕。やっぱ、人類って凄いねんな……。
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