IS 〜殺し屋奮闘記〜   作:黒鉄48号

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 遅れてすいません
 先日祖父が亡くなり、葬儀等で執筆時間が取れませんでした
 詳しくは活動報告に載せます


第五話 星降る日

 星が落ちた日(スターフォール)、その本当の悲劇——それは、()()()()()()I()S()()()()()()だ。

 経緯としては、件の実験でコアが砕け散った時にコアネットワークとやらに莫大な量の負の感情データが流入、それによってかなりの数のISが暴走した。

 しかも、その大半が専用機や量産機のカスタムタイプと言った()()()()()()使()()()()()()()コアだったこともあり、戦闘能力が極めて高かったそうだ。

 それ故、対応に当たった警察や軍人達の死者数はとんでもない数になったらしい。

 

 イギリスでは、さっきまで読んでいた記事のセシリア・オルコットの両親が死亡した『最新型列車脱線事故』の引き金となり、その後も国内外を問わずに混乱をもたらした。

 

 イタリアでは起動実験中だった最新鋭機——確か、テンペスタなんちゃらだった気がする——のコア以外にも軍部のいくつかのコアが暴走。

 大量の戦闘機が落とされた上に、テンペスタの最新鋭機は暴走中に不具合を起こして墜落。操縦していた二代目ブリュンヒルデ*1『アリーシャ・ジョセスターフ』は右腕と右目を失ったのだとか。

 

 後はフランスやらドイツやらでも色々とあったらしいが、そっちの方はそこまで大規模ではなかったのでこの話は終わり——いや、そういえば日本(今いる場所)でも同時期に妙なことが起こっていたな。

 

 

 日本では、外国と同じようにコアがいくつか暴走したが、その殆どはすぐに無力化され、篠ノ之束が開発した正常化プログラムを適用されて事なきを得ていた。——だが、その日を境にして奇妙な事件が起こり始めたのだ。

 

 最初の事件は、逃走中の殺人犯の男性の死体が山奥で発見されたことだった。時効ギリギリまで逃げ続けていたそいつが見つかった時点でかなりおかしいが、さらにおかしいのはそいつの遺体だった。

 男の遺体には、小さい物でゴルフボール、大きい物ではバスケットボールより一回り小さい程の穴がいくつも空いていて、しかも肉体から血が一切無くなっていたというのだ

 

 この時点で既に難解だが、警察に頭を抱えさせた謎は更に二つもあった。

 一つは犯行に使われた凶器が不明なこと。全身に空いた穴からは僅かに金属が検出されたらしいが、それでどうやって血を流させずに殺せるだろうか? いや、不可能だ。

 

 そしてもう一つにして最も難解な謎が——犯人の足跡が異様に少ないということだった。

 先述した通り、殺人現場は山奥だ。そこに行ったのなら、必ず犯人の足跡が残るはずである。しかし、足跡は遺体の近くに数個あっただけで、しかも足跡から靴や犯人の住んでいる場所等の手掛かり等は一切手に入らなかったというのだ。

 

 この怪事件がニュースで流れたことで、現実はもちろんのこと、SNSや匿名掲示板は大盛り上がり。犯人の特定やらなんやらでお祭り騒ぎになっていた。

 それから3日後、例の山から少々離れた街で、男と同じ状態の遺体が発見された。これにより、この事件は『ただの奇妙な事件』から『連続怪殺事件』として扱われるようになっていた。

 その後も、短い時には1日に一つ以上遺体は増え続け、最終的には一ヶ月でおよそ二十人が殺害されたのは強く記憶に残っている。

 

 そんな中注目されたのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()調()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことだ。

 このことから、ネットの一部では『裁きし者(ジャッジメンター)』なんて中二病みたいな呼び名がつけられたりもしていた……というか一部のネットニュースでは当たり前の様に使われてたぐらいである。

 

 こうして世間を騒がせた怪殺事件だが、事件の発生から一ヶ月半経った日に起こった殺人以降は全くの音沙汰無しであり、段々とメディアに取り上げられなくなってしまった。

 

 

 その理由を考えよう——とした瞬間、遠くの席から聞こえてきた騒がしい声で現実に引き戻される。

 声のした方向を見てみると、三人のJC(女子中学生)が互いのスマホを見せあいながら大声で話し合っていた。……周りに迷惑だと思わないのだろうか。

 僅かに残っていたミルクティーを飲み干して、この後どうするかを考える。

 

 頼みの綱だった新書ゾーンの本はまるで理解できなかった訳で、どうにかして代わりの物を探しあてなければならない。

 さっきの物より簡単な物となると……うーむ、なかなか思い浮かばない。自分の知識不足への苛立ちに、JC達の騒がしさが拍車をかける。あーもー! こういう時期なんだからもっと真面目に——いや、待てよ?

 さっきまでの悩みが嘘と思える程の名案が浮かんだオレは、テーブルから立ち上がって図書館に向かう。カフェとの境界線あたりのゴミ箱に容器を捨てて、注意されない程度に早足で歩来始めた。

 


 

 やってきたのは参考書・教科書ゾーン。他の場所とは違い、オレの目の前には数ミリ間隔で半導体カートリッジが収納されている棚がずらりと並んでいる。

 最近の教科書達はその大半がデータだけで作られている為にこうなっているらしい。オレが学生の頃は教科書の重さに苦労したものだが、それも今では昔のことになっているのだろう。

 昔の思い出に浸りながら、 目の前の端末を操作して目当ての物を探し当てる。

 

 『IS1』——小学校一年生が使っている教科書である。オレみたいな大人がこういう物に頼るのは少々恥ずかしいが、背に腹は変えられない……サンプルデータに目を通してみたら丁度いいぐらいだったし。

 端末を更に操作し、教科書のカートリッジがロボットアームで引き抜かれて自分の目の前に置かれる。館内にある読書ゾーンにこれを持って行って専用の端末に挿入して、一緒に置かれているタブレットで読めるらしい。

 

 こんなちっぽけな物に教科書のデータが入っている——USBを持ち上げて、昔との違いを痛感しながら眺めていると、隣の()()()ゾーンから微かに声が聞こえて来た。

 メガネの使い方を教えてもらった時に読んだルール表によれば、紙媒体は結構貴重な為、そのゾーンを利用していいのは一定期間図書館を利用していて、尚且つ一切の規則違反を起こしていない人だけらしい。

 ……だけど、それはあくまで本を借りたり読んだりする場合であって、入るだけなら問題ないだろう——そう自分に言い聞かせながら、オレは紙媒体ゾーンへと入った。

 

 

 さっきの場所の数倍程多い棚の間を歩いていくと、段々と件の声が大きくなって来て、意味のあるものとして聞き取れるぐらいになった。

 

「ふぬー! ……はぁ、やっぱり届かないな。この本、どうやって戻せば良いんだ……」

 

 ……もしや、上の段に届いていないのだろうか。疑問に思ったオレは、声のする方へ向かう。

 その先にいたのは、図書館に入る前にオレが不注意でぶつかったあの少年だった。一応脚立には乗っているが、本を戻すべき場所は棚の最上段の様で明らかに身長が足りていない。

 その低身長でどうやってあの本を取ったのか疑問だが、そんな事はどうでも良い。とりあえず手助けに向かって、声をかける。

 

「おーい? 大丈夫か?」

「ひゃ!? ……ってああ、今朝の人ですか。何か用ですか?」

「いや、本が戻せなくて困ってるみたいだから助けようかなぁ〜、って思ってな。今朝は迷惑かけちまったし」

 

 そこまで言ってオレは手を差し出す。意図を察した少年が手に持っていた本を渡してくる。『5教科完全復習』というタイトルの、分厚い参考書だった。

 彼が戻そうとしていた場所にこれを戻して、改めて彼をじっくりと見る。

 

「……あの、僕の顔になんかついてます?」

「…………君、小学生じゃないの——?」

違います!!

 

 オレの質問を遮って、少年は声を荒げた。どうやら地雷を踏み抜いてしまったようだ。

 

「小学生があんな分厚い参考書を読むわけ無いじゃないですか! これでもバリバリの受験生ですよ!? というか僕と同じぐらいの身長の人は同級生に結構いますし!」

「お、おぉ……すまんすまん、つい口が滑っちまった」

 

 プンスカと怒る少年にたじたじになりながら対応する。

 ……今気づいたが、この少年の顔()()()()()()()()()()()のだ。

 

「ところでなんだが、君の名前を教えてくれないか? あ、俺は佐藤巧。技巧の『巧』でたくみだ」

 

 数秒ほど迷ってから、少年は口を開いた。

 

「……織斑、『織斑(おりむら) 一夏(いちか)』です」

「へぇ〜、おりむらか! ——ん? おりむら、オリムラ…………織斑ぁ!?

 

 そう、オレが出会ったこの女々しい少年はあの『極東の白い悪魔』『TASさんを体現したヤベーやつ』『TDNチート』『終身名誉バグキャラ』と呼ばれている、()()初代ブリュンヒルデ——『織斑 千冬(ちふゆ)』の弟だった

*1
IS版オリンピック『モンドグロッソ』における総合優勝者の呼び名。部門優勝者はヴァルキリーと呼ばれる




・織斑一夏
 皆さんお馴染み原作主人公
 今作では少々背が低くなっているのが特徴
 某豆粒どチビとは違って牛乳は毎日飲んで小魚も食べていたが、一向に背が伸びる気配は無かった

 ご精読ありがとうございました。感想、誤字報告もよろしくお願いします
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