Fate/kaleid Apocrypha プリズマ☆イリヤ 作:超高校級の切望
ジークが本来魔術を無効化するという「概念」を纏っていた敵を怯ませた。その光景に固まっていた凛は、しかし聞こえてきた高笑いに顔をしかめる。
「無様ですわね、遠坂凛! まずは一枚! カードはいただきましたわ!」
その声にジークに駆け寄ったイリヤが振り返る。そこには金髪をドリルのように巻いた外国人。
「な、なんかすっごい派手な人まで出て来たんですけど!」
《相変わらず肺活量の大きい人ですねー》
どうやら凛やルビーの知り合いらしいが、あの槍を使っていた少女が持っているステッキ、どう見てもルビーと同じ類にしか見えない。
「ここしかないというタイミングで如何にして必殺の一撃を入れるか。その一瞬の判断こそが勝負を分けるのですわ。だというのに、恐れをなして逃げ惑うなど笑止千万! とんだ道化ですわね遠坂凛!」
「やっかましいぃーっ!」
「ホウッ!?」
高笑いしていた女性に、凛が蹴りを放った。本気で、首に。
「レ、レディの延髄に良くもマジ蹴りを! これだから知性の足りない野蛮人は!」
「何を偉そうに! 後ろからの不意打ちのくせにいい気になってんじゃないわよ!」
が、相手もピンピンした様子で暴力に暴力を持って応える。
突如始まった乱闘にアワアワ震えるイリヤに対して、ルビーはその光景を呆れたようにため息を吐くのだった。
《成長しませんね〜、この人達……》
「っ………う………」
「っ! ジーク君!? ど、どうしよルビー! なんかないの、回復魔法とか!?」
《落ち着いてくださいイリヤさん………とりあえず、今は周りを見たほうがいいですよ?》
「周り?」
ルビーの言葉にジークを抱えたまま周囲を見回すイリヤ。と、地面や空に亀裂が走っていくのか見えた。
《
ルビーが声をかけるが、聞いてないなあれは。炎を幻視するほどの闘志を漲らせ睨み合ってる。
「サファイア……」
《はいマスター》
と、どうやら一番の働き者が決まったようだ。英霊を倒し、さらには帰還まで一手に担ってくれるのは黒髪の魔法少女。
《半径6メートルで反射路形成、通常界に戻ります》
「で、でか!?」
この場の全員を飲み込むほど巨大な魔法陣が浮かび上がり、グルリと世界が反転した。ジークが爆発させた地面も雷で焼いた地面も元通り、いや、そもそもこちらでは何も起きていないのだろう。
「って、そうだ! ジーク君、しっかり! 今病院に──!」
「不要だ、アインツベルンの娘」
「え?」
イリヤがジークを病院に連れて行こうとしたが、不意に聞こえる声に固まる。腕の中が軽くなる。ジークが、消えた。
「え? あれ………え?」
「私が連れて帰る」
と、その声に振り返るとジークを抱えた女性、何処かジークに似た、ジークと同じ髪と瞳の色をした女性が居た。
「トゥールさん!?」
「知り合いなの、イリヤ?」
ムジーク家の女帝の登場に驚くイリヤ。何故ここに、と思ったが、そういえばジークは魔術師だったらしい。なら、その家の彼女も?
困惑するイリヤと違い警戒した様子の凛達にトゥールは視線を向けることなく歩き出す。
「ま、待ちなさい! その子の保護者? さっきの力は、一体何?」
「……………」
「魔術が効かないはずのあれに、どうしてダメージを」
「なんですって? それは、わたくしも気になりますわね」
「応える義理はない」
「「なっ!?」」
凛とルヴィアに対して、バッサリ切り捨てるトゥール。歴史ある魔術師の一族であり主席候補の二人のプライドがその態度に怒りを覚える。
「そも他家の事情に干渉しようなど、それこそ我々に果たす義理はない」
「うっ、そ、それは………」
「っ! だ、だけどそれを言うなら、彼だってこの事件に関わってきて……」
「お前達の不始末だろう。この街に住むものとして、関わりもする。どうにかするための道具がないからと子供に押し付け、代理戦まがいを強要し、協力する相手に手の内を見せず手の内を見せろと喚く。魔術師というのは得てしてそういうものではあるが、魔術師として優れていても人としては下の下だな」
毒舌だが、正論。まあ、魔術師に人間性を求める時点で本来なら間違いなのだが彼女達は魔術師達の中でも人が出来ている方で、その自覚もある。だけどグサグサ言われだいぶ心に来ている。
「ここは既に
「「「───ッ!!」」」
ゾワリ、と。悪寒が走る。先程の女の怪物とは比べ物にならない威圧感。一魔術師が発していいものでは、断じてない。
「…………警告はした。こいつを悪意を持って利用しようとしなければ、例え死にかけたとしても文句は言わん」
放任主義なのか過保護なのか、良く解らない。でも、きっと彼女もジークが心配だったのだろう、だからこんなに早く来れたのだ。
「くっ……まあ良いわ、あの子がまだ付き合うなら知る機会はあるし、そうじゃないにしても関わらないならそれでいいし」
凛はそう言って、今回は諦める事にした。
「お帰りなさいトゥール。ジークは?」
「眠っているだけだ。明日には目を覚ます」
家に帰り、出迎えたアルツィアは心配そうにジークを見る。少し顔が青い。
「魔力を消費し過ぎたなら、分けますか?」
「不要だろう。そもそも、こいつが
「…………アインツベルンが関わる、英霊に関係する何か。大丈夫でしょうか、アルツィアは心配です」
勿論イリヤが良い子だということは分かってる。アインツベルンが滅び、かの家の両親も『あの戦争』を行う気が無いことも。
だけど世界各地で『偽物の戦争』を止めるために奮闘し、そのうちの一つに関わりのあるジークは……
「例え今一度あの戦争が起きたとしても、続いたとしても、そうはならん………
「………はい」
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ヒロインは誰?
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