Fate/kaleid Apocrypha プリズマ☆イリヤ 作:超高校級の切望
午前零時一分前。
橋の麓に集まった一同。凛とルヴィアはギスギスしていた。ルヴィアに至ってはドサクサに紛れて凛を葬るように言う。断られてたが。
「そろそろ時間だ」
「そうね………後3、2、1…!」
《限定次元反射炉形成!》
《境界回廊一部反転!》
「「
そして、世界が裏返る。
5分後。
あちらこちら焦げたイリヤ達が項垂れていた。
《いやー、ものの見事に完敗でしたね。 歴史に残る大敗ですよ!》
「な、何だったのよあの敵は…」
ルビーの言うとおり、イリヤ達は負けた。尻尾を巻いて逃げたおかげで生き残れたが。
「ちょっとどういうことですの!? カレイドの魔法少女は無敵ではなかったのではなくて!!」
《私に当たるのはおやめくださいルヴィア様》
「サファイアの言うとおりだ。ものに………
サファイアの円に指を引っ掛け引っ張るルヴィアをジークが嗜める。小学生に正論を言われてしまえば、ルヴィアも大人しく引き下がる。
《助かりました、ジーク様》
「いや、見るに耐えなかったのでな」
悪意はないのだろうがルヴィアの胸にグサッと来た。
《ま、魔法少女が無敵なんて慢心もいいところです。勝手に勘違いしておいて私達に当たられてもね〜》
「ごめん、私も無敵だとちょっと思ってた」
ルビーの言葉を落ち込みながら返すイリヤ。
まあ彼女の魔法少女のイメージの根幹たるアニメでは最終的には勝つからだろう。因みにジークもイリヤのために勉強した結果3話にて先輩魔法少女が食われる作品や、いじめられっ子が寿命を削る魔法の杖を渡されたりとか、軍属の魔法少女とか色々見つけた。
イメージの参考になればと思ったがアルツィアが無言で首を横に振っていたのでやめた。
《大抵の相手なら圧倒できるだけの性能はありますが、それでも相性というものがあります》
「で、その相性が最悪なのが、あれってわけ…………」
鏡面界に入ると、空には格子状の空間の区切りまで無数の魔法陣に覆われており、その中央に浮かぶは一人の女性。
待ち構えられていたのだ。しかも放たれる一撃一撃がイリヤ達の魔術障壁を突破する程の一撃で、美遊が反撃に放った一撃は魔力指向制御平面なる防御壁で散らされた。そして逃げ場をなくす竜巻に囲まれ、砲撃が来る前に慌てて引き換えしてきたのだ。
「まるで要塞でしたわ。あんなの反則ではなくて」
《魔術の粋を超えてましたね。そりゃ障壁で相殺しきれないわけですよね》
「痛かったよ…」
曰く、現存するどの魔術とも異なる呪文と魔法陣。失われし神代の魔術とのことだ。魔術とは神秘、世界の理が明かされぬからこそ力を持つ。故に科学が発展していく現代よりも、人が無知であった過去に遡るほど魔術の効果は増す。神がいた時代など、世の理は神が決めたとして解明されてすらいないのだ。その時代の魔術は今の魔術とは比べるのも烏滸がましい。
「あの魔力反射平面も厄介ね。あれがある限りこっちの攻撃は届かないもの」
《攻撃陣も反射平面も固定型のようですので、魔法陣の上まで飛んでいければ戦えると思います》
そうしなければ上から延々と砲撃の雨を浴びるだけ。少しなら致命傷にならずとも、向こうが本気なら押し切られるかもしれない。そうでなくても、いずれ質量に押しつぶされるだろう。
「……と言ってもねえ。練習もなしに飛ぶなんて──」
「あ、そっか。飛んじゃえばいいんだ」
「…………………」
「え、な………なに?」
そう簡単に飛べたら苦労しない、そんなニュアンスの凛の言葉だったがイリヤはあっさり浮かび上がった。その光景に固まる凛にイリヤは困惑した。
「ちょっと! なんでいきなり飛べるのよ!?」
《凄いですイリヤさん。高度な飛行をこんなにあっさりと》
「そ、そんなに凄いことなのこれ?」
凛やルヴィアも丸一日練習してようやく飛べるようになったらしい。イメージを実現できるだけの魔力や力を与えるカレイドスコープといえど、強固で具体的なイメージを必要とするらしい。それをあっさり行ったイリヤはとりあえず凄いのだろうとジークが拍手を送りイリヤはえへへ、と照れくさそうに頭をかいた。
「どうしてこんな簡単に!」
「え、どうしてって……………魔法少女って飛ぶものでしょ? 違うの?」
その頼もしい思い込みに凛とルヴィアはショックを受ける。
「くっ! 負けていられませんわよミユ! 貴方も今すぐ飛んでみせなさい!」
と、ルヴィアは凛の代理魔法少女に出来たことを己の代理魔法少女にもやるよう催促する。
「美遊!」
それに対して、美遊は…………
「人は、飛べません」
なんとも夢のない言葉を返した。
「そんな考えだから飛べないのですわ! 来なさい! 明日まで飛べるように特訓ですわ!」
「あぅ……」
「覚えておきなさい、遠坂凛!!」
ルヴィアは美遊の首根っこを掴むと何故か凛に捨て台詞を吐いて立ち去った。
その翌日。
林の中で飛行の練習をするイリヤ。ジークは付き添いだ。
ルビー曰く、カレイドの所有者は無制限の魔力貯槽を得るが一度に引き出せる量は個人差がある。より少ない魔力で飛行し攻撃を行えるようにするのが訓練内容だ。
その際、攻撃手段としてアーチャーのクラスカードを
「はあ、地道に特訓するしかないか〜」
「今回俺が手伝えることはなさそうだ。君の力になりたいと言っておいて、早速応援するしかできない…………すまない」
「う、ううん! 気にしないで、ジーク君! そ、それよりさ。ミユさんはどんな修行してるんだろうね?」
そして美遊はというと。
「無理です」
「美遊。貴方が飛べないとはその頭の固さのせいですわ」
「……………不可能です」
「最初からそう決めつけていては何も成せません!」
「っ……………ですがっ!」
冬木市上空。ヘリの扉を開け、地面を見ながら美遊は顔を伏せる。
《おやめくださいルヴィア様。パラシュートなしでのスカイダイビングなど単なる自殺行為です》
「こうでもしないと飛べるようにならないでしょう! 体が浮かぶ感覚を実体験でおぼえるのです!」
美遊はなまじ頭が良い分、物理の常識に縛られている。魔法少女の力は空想の力、常識を破らねば先に進めない。
《付き合う必要はありません美遊様。拾っていただいた恩はあれどこの命令は度が過ぎています》
遥か下に広がる大地に震える美遊をサファイアが安心させようと、そういう。
「さあ一歩を踏み出しなさい! 貴方なら必ず飛べます。出来ると信じれば不可能などなにもないのですわ!」
「…………………いえ、やはりどう考えても無理で──」
す、を言い終わる前に美遊の小さな体がルヴィアによってヘリの外に蹴り出された。
悲鳴を上げながら落ちていく美遊に、ルヴィアは一滴の涙を流した。
「獅子は千尋の谷に我が子を突き落とすといいますわ…………見事這い上がってきなさい、美遊」
因みにライオンはオスが別のオスに殺されるまで、メス達がしっかり面倒を見る。
「ん?」
「どうしたの、ジーク君」
「空から………」
高い所から見るジーク君も新鮮だな〜とジークを眺めていたイリヤより先に、イリヤを見つめていたジークが空の異変に気づく。イリヤもその視線を追うように空を見上げ………
「何か……降ってき………たああああああああ!?」
何かが勢いよく地面に当たる。その衝撃に土が舞い上がりジークは一瞬で土まみれに。土煙が晴れると青い顔でカタカタと小刻みに震える美遊が居た。
《全魔力を物理保護に変換しました。お怪我はありませんか、美遊様》
「なんとか……」
「美遊さん………なんで空から?」
「………あ」
美遊はごく当たり前に飛んでいるイリヤを見る。つい先日、あなたは戦わなくていいなどといった相手。しかし間違いなく飛行に関しては自分より上の相手。
《美遊様、ここはやはり……》
「………………昨日の今日で言えたことじゃないけど」
「え?」
「空を飛べないと戦えない。その……教えてほしい、飛び方」
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