地底恋愛録   作:あんみつ姫

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 書いていると本当にこんな体験ができたらいいのにって思いますよ。





歓迎会

 自己紹介から三日が経った。

 

 

 さとりに案内してもらい、自分の部屋や食堂、さとりの部屋から図書室・風呂場など色々な所を覚えた。基本的には横長であるため一度覚えてしまえばわけないのだが、まだ地霊殿のマップを完璧に覚えられているわけではない。

 

 

「とにかく、今はゆっくりした方が良いですよ」

 

 

 自分でも自覚していない、心の声を聞き取ったのだろうか。家の中であれば自由に過ごしても構わないということで、何もせずに生活をした。

 

 

 特に今までの生活と変わったことはなく、強いて言えば昼夜関係なく外の明るさは一定だということだ。また、地底というわりには窮屈さや圧迫感といったものは感じず、居心地の悪さは感じなかった。

 

 

 なんか、不思議な感じだな

 

 

 本当にそう思う。普通、地下で過ごしていたら何かしらの不快感を感じるものだと思っていたが。何かの力が働いているのかもしれない。

 

 

 そろそろ、何かするべきじゃないか

 

 

 そんな風に思い立った。居候させてもらう身。いつまでもお客様対応というわけにもいかないのだ。

 

 

「できることってない?」

 

 

「今までやってきたことのちょっとした延長ですし、足りていますよ」

 

 

 さとりに相談してもそのように返される。それでも「はいそうですか」と引き下がれない。

 

 

 本当にない?掃除とか、大丈夫?

 

 

「そこまで言うのでしたら。後で追って伝えます」

 

 

 粘った結果、なんとか何かしらの仕事の許可をもらい、一安心する。退屈な時間というのは案外人にとっては毒になるものだ。

 

 

「なんでしたら、私の遊び相手にでもなってみますか?」

 

 

 そのように、覚り妖怪の皮肉を交えた少し反応に困る問答を受ける。

 楽しそうに笑う顔は俺の顔から目線を外さない。

 

 

「冗談ですよ。誰も喜んで覚り妖怪の遊び相手になる人なんていません」

 

 

 俺は、試されているのだろうか。それとも、彼女の本音が出ているのだろうか。はたまた元々の性格がネガティブで自虐せずにはいられない性質なのだろうか。

 

 今の自分では笑顔のさとりの表情から何が正解なのか推し量ることはできない。ある人たちはこう思うはずだ。自虐なんてだるい。ネガティブ発言する人はちょっと。何か慰められる言葉はないか。……。

 

 

 俺は何を思っただろうか。少なくとも、彼女の今の発言から邪見に扱うことは絶対にしないことと心から楽しませたいと思ったことだけは確かだといえる。

 

 

「俺なんかで良かったらいくらでもなるよ」

 

 

「ふふっ、そうですか。期待せずに待っていますね」

 

 

 優しいのにどこか投げやりのようで諦めが少し入っていることが微かに感じられた。

 

 

 いつか心を動かしてやりたい。そう結論付ける会話だった。

 

 

「それで、今日は何かあるのか?」

 

 

「そうそう、今日は誠人の歓迎会をやることに決定しました。準備があるのでいつもより食事の時間が遅くなりますが、そのつもりでいてください」

 

 

 いつもなら要件が言い終わると去っていくさとりだったが、離れようとしなかったため聞いてみたところサプライズが用意されていた。

 

 

 まさか妖怪から歓迎されるとは

 

 

「そこまで驚かれることに驚きました。別に全ての人間に妖怪の姿を見せるってわけでもないですから。それに、地霊殿に人間が来るのは初めてのことですし」

 

 

 なるほど。説明してもらえるのはありがたいが、全く頭に入ってこない。話の内容が難しいわけではないのだが、理解ができない。

 

 

 だが、歓迎してもらえるのは素直に嬉しい。妖怪の歓迎会とは一体何をするのか。期待と不安が入り混じる。

 

 

 「ありがとうございます」

 

 

 「いえ、後はその場でということで。それでは、20:00ぐらいに」

 

 

 確かに伝えましたよ

 

 

 そのように言い、さとりは部屋から出て行った。

 

 

 さとりの出て行った後をぼんやりと眺め、今日の夜の出来事に想像を膨らませるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

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時間通りいけば机の上には色とりどりな料理が並んでいた。それはバイキングと見違えるほどの種類と量だった。とても一人では作れるものではない。

 

 座って待っていたさとりに顔を向ける。

 

 

 「これぐらい、できますよ。伊達にここの主をやっていませんから」

 

 

 誇らしげに話すさとり。

 

 

 すげぇ。まじかよ

 

 

 賞賛の言葉しかでない。食べることが好きで趣味と言うぐらい食に入れ込んでいる身だ。これだけの料理を揃えることがいかに規格外なのかが身に染みてわかる。

 

 

 「さ、早く席に着いてください。料理が冷めてしまうでしょう」

 

 

 「お、おう」

 

 

 お腹すいたと主張されたため速足で席に着く。俺とさとり以外にも二人座っていた。こちらに向けられる視線は好奇心が前面に押し出ている。

 

 

 人間は初めて、ということは彼女らも妖怪なのだろう。

 

 

 「地霊殿には私以外にも妖怪はいます。なのでお互いの顔合わせとしてこの場を作りました。もう待てないみたいですし、食べながら話しましょうか」

 

 

 その合図を機にさとりが料理に手を付け、残りの二人が待ってましたと言わんばかりにがっつく。

 

 

 静かに綺麗に食べるさとりと音はあまり立てていないのだが騒々しい食べ方をしている二人。あまりにも対照的な風景に少し気圧される。

 

 

「ほら、食べて下さいよ」

 

 

「い、いただきます」

 

 

 箸を手に持ち、手前からあるものを食べ始める。

 

 

 お、おいしい。しかも出来立てのように温かい

 

 

「お燐、お空。彼が人間の誠人です。覚えてください」

 

 

「「はーい」」

 

 

「誠人。左の猫のような耳と尻尾があるのが火焔猫燐、右の黒い翼があるのが霊烏路空です。普段の地霊殿で人型なのはこのメンバーで全員です」

 

 

「えーっと、東雲誠です。よろしくお願いします」

 

 

「お燐って呼んでよ、兄さん」 「お空だよー!」

 

 

「「よろしくねー」」

 

 

 二人とも気難しい性格ではなく、気さくで明るい妖怪で安心した。

 

 

 最初のつかみは無事うまいこといくことができ、気まずい雰囲気になることはなかった。

 

 

「兄さんはどこからきたの?」

 

 

「えーっと誠人だっけ。本当に只の人間ー?」

 

 

「さとりが言うには外の世界から来たらしい。どうやってここまで来れたのかは説明できないんだ」

 

 

「そうなんだ」

 

 

「それで次の質問だけど、只の人間だ。能力も何も持ち合わせてないよ」

 

 

「へぇー」

 

 

 そうなのだ。明らかに何か能力がありますって見た目の二人とは違い、正真正銘何も持っていない人間なのだ。小さいころ、どれだけ能力の開発に勤しんだことか。

 

 

 

 

 

 その後もやいのやいの二人からの質問があり、それに答える形で会話が進む。

 

 

 この会話で今後の生活がどうなるか変わってくることぐらいわかる。どれだけ大事なのかわかっている。が、食べることが好きな自分にとって目の前の料理を全力で楽しめないことに少しげんなりとしていた。

 

 

「お燐、お空。珍しいのはわかりますが少し落ち着きなさい」

 

 

 心を読んで気を利かせてくれたのか、さとりが助け舟を出してくれた。

 

 

 ありがとう!

 

 

 さとりの言葉に頷いた二人はお互いで話は始めた。普段からあんな感じなのだろうなーってわかるぐらいに二人とも自然体で過ごしていた。

 

 

 俺は俺で折角の好意。ありがたく料理を食べることに専念することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから二人の話声と食器を動かす音しかしなくなった。かといって雰囲気は悪いことなく、むしろ良いとさえ思える。

 

 

 うーん、なるほど。ここにこの調味料を入れているのか。だからこんな味になるのだろう。

 

 

 私が作った料理と真剣に向き合い、一つ一つに評価のような感想を必ず言う。誠人と出会ってから一番心の動きが早く、多いのではないだろうか。

 それほどまでに意識を割いている。

 

 

 これは初めて食べた味だ。すごい、こっちの味付けの方が断然おいしい。

 

 

 長く過ごすことはそれだけ時間があるということ。料理に時間を費やしたことだって勿論ある。普段一緒に食べる二人には悪いが、なんでもおいしいと食べる所に残念な面があった。

 

 

 

 いや、別にそれがダメってわけではないですが。二人に喜んでもらえるのは嬉しいですが、毎回同じ反応だと作り甲斐がないんですよね

 

 

 

 それに比べて、味の評価をちゃんとしながらおいしいと食べる声は作る側として、一番心に響くのだ。

 

 

 自分の舌だけではなく、他人からの評価があることで自信にもつながるというものだ。

 

 

 

 お、これは唐揚げか。どれどれ

 

 うーん、醤油だけの味付けか?いや、日本酒は付けたっぽい?ちょっと味が辛いな

 

 

 

 自分の中ではこれで良いと思っていても、他人からしてみれば違うこともある。

 

 

 

 では、どのような味付けが良いのでしょうか。聞いてみましょう。

 

 

 

「料理は口に合いましたか?」

 

 

「さとり様の作るご飯はいつも美味しいですよ」「おいしいですー」

 

 

 さとりの質問に素早く元気に答えてくれるのはいつもの二人。それはわかりきっていたことである。

 

 

「誠人はどうですか」

 

 

「おいしいですよ」

 

 

「おや、覚り妖怪にお世辞を言うとは、随分と面白い度胸がありますね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 口元を手で隠すような仕草で訪ねてくるさとり。これは完全に隠すつもりなどなく、からかわれているのだと一発で分かった。

 

 

「人間の世界って、複雑なんですよ」

 

 

「それもそうですか。ですが、それはそれ、ここはここです。それに、私は覚り妖怪ですよ?今までの料理の評価は全て聞こえていますからね」

 

 

「なら、おいしいというのは本当だとわかっててやってるよね」

 

 

「はい。言いたくなったのです」

 

 

 そんな風にさとりと話すのだが、そんな姿を意外そうな目で見つめているお燐とお空がいた。

 

 

「さとり様、なんだかいつもと違うね」

 

 

「うーん、これは良いかもしれない」

 

 

「何の話をしてるんだ?」

 

 

「いや、なんでもないさ」

 

 

 小声で何かを話しているようで、聞き取りづらい。かとって、教えてくれるわけではないようだ。

 

 

「誠人の意見を聞かせてもらえますか。おいしいものを食べたいと思うのは誰にでもあることです」

 

 

「わかりました。といっても、人によって好みはありますが」

 

 

「構いません。知らなければそれすらもわかりませんから」

 

 

 では、まずこの味付けについてなのですが……。

 

 

 

 

 

 

 

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「そろそろ解散にしましょうか」

 

 

 全員がお腹いっぱい食べ、話すことも話し、お茶を飲んでゆっくりとしていた。これは一応俺の歓迎会となる。頃合いを見計らい、さとりから自由にして良いと伝えてくれた。

 

 

「じゃ、私たちは戻るとしようか」「またねー!」

 

 

 最初に出て行ったのはお燐とお空。片付けもしないでほったらかしで行ってしまった。

 

 

「いつものことですよ」

 

 

 そういうさとりは既に食器をまとめていた。

 

 

「あ、流石に一人だとしんどいだろ」

 

 

「今回は良いですよ。趣旨を忘れてませんか」

 

 

「いや、でも」

 

 

「最初に言いましたよ、これぐらいできるって」

 

 

 これ以上引き下がっても空気が悪くなるだけだろう。そう感じた俺は心の中で感謝と謝罪をして部屋を後にする。

 

 

「さとり」

 

 

「はい、なんですか」

 

 

「ご馳走様!本当においしかったよ!ありがとう!!」

 

 

「……。はい」

 

 

 しばしこちらの顔を見た後、ふわりと嬉しそうに笑うさとり。

 

 

 その笑顔を見届け、今度こそ部屋を出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さとりって笑うとかわいいなぁ」

 

 

 

 

 

 聞こえていますよ

 

 

 

 

 

 





 うーん、さとりかわいい。


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