地底恋愛録   作:あんみつ姫

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 リスペクト作品はいっぱいありますよね




共に日々を過ごす中で

 

 今日も今日とて同じような日々を過ごす。ただ、ハンバーグを作った日から少し変化があった。

 

 

「今日はご飯はどうしますか?」

 

 

 そう、さとりがメニューを俺に相談するようになったのだ。

 

 

 あれ以来、ハンバーグは特に元動物の妖怪二人に受けが良く、一週間に一回程度はお願いされるぐらいまでである。

 

 

 最初は嬉しくて言われるがままにうきうきで作っていたのだが、これが続くと流石に精神的に辛くなってくる。しかも作り置きをしてこのペースなのだから困ったものだ。ひそかにハンバーグの事が嫌いになりつつある。

 

 

 そんな中で助け舟を出してくれたのがさとりだった。

 

 

「私も作りましょうか」

 

 

 俺が料理する際に必ず隣にいるのがさとり。何も言わなくても持ち前の力で俺がちょっと苦しんでいることを汲み取ってくれた。

 

 

「この前手伝ってもらったときは不評だったけどな」

 

 

「慣れ、というやつですよ。それに、手伝って欲しいのでしょう?」

 

 

「それはそうだけど。人に嫌な思いをさせてまで何かをしてもらうのはこっちも気分が悪くなるからさ」

 

 

「その言葉、そっくりそのままお返しします。誠人は今、嫌という気持ちがゼロだと言い切れますか?」

 

 

「うーん、降参で。お手伝いお願い」

 

 

「それで良いのですよ。それに、誠人からまだ美味しいという感想を引き出せていませんし」

 

 

 毎回ハンバーグを作るときはさとりのアシストを頼んでいるのだが、実はさとりが作ったハンバーグと俺が作ったハンバーグでは味に差があるのだ。

 

 

 もちろん、俺が作るほうが美味しい。それはそうだ、得意料理なのだから俺の方が美味しくて当然なのだ。

 

 

 料理に関心があるさとりは少しでも美味しいものを作ろうと頑張っている。俺の手元の動きを見て、心の中のイメージを見て、実践する。

 

 

 ハンバーグというものは完成するまでその味がわからない。だからぶっつけ本番なのだ。失敗するときは失敗するし、成功するときは成功する。

 

 

 それに加え、ハンバーグの味の決めつけは何と言ってもタレである。いくら本体が上手に出来上がってもタレの匙加減によって善し悪しが変わってしまうなんてこともある。

 たくさんの種類があるのに一回作った味を二度と作ることはほぼ不可能に近いというものだ。

 

 

 さとりはここに特に力を入れており、毎回味を変えて作っている。だが、今のところ、俺が作るタレが合っている。

 

 

 俺のタレでもう良いんじゃないか

 

 

 そう思っていたが、何か思うところがあったらしい。俺の味の上を行こうとしている。もうそこまで行ったら、個人の味覚の問題じゃないだろうか。そう考えなくもないのだが、それはさとりに悪いし胸の中でしまっておくことにする。

 

 

 

 

 

 

 

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「ご馳走様」

 

 

「今日も納得のいく味は出せませんでしたか」

 

 

 研究のし甲斐があるものです、とでも言いたそうな顔をして皿を見つめている。ここまでくると一層応援の気持ちが強くなる。

 

 

 ぜひ、もっと美味しいものを食べたいものだ

 

 

「それはそうと、さとりって確か本を読むことが好きなんだっけ?」

 

 

「はい。現実では常にその人の心の声を聴いて過ごしていますが、本はその限りではないですから。文字によってしかその人の心を理解することができない、というのは覚り妖怪にとって刺激的なものになります」

 

 

 この地霊殿には図書室があるのだが、その数はそこら辺の現代の図書館よりも多い。長い年月をかけて集めているみたいで中には明らかに古文に分類されるような物も普通においてある。現代であれば貴重品として文化財に認定されるのではなかろうか。

 

 

 時代に合わせて言葉が変わっていくが、さとりは流行をばっちり掴んでいる。なぜなら日本語英語も使えるし現代人の俺が違和感なく話せるのだから。

 

 

 

「なるほどねー。それであんなにたくさんの本があるのか」

 

 

「全部ではないですが、もうほとんど読み終えていますね。ここ最近新しい本が手に入らないので困っています」

 

 

「あの量を読んだってまじかよ。んー、じゃあさとりってライトノベルって知ってる?」

 

 

「いえ、知りませんね。新しいジャンルですか?」

 

 

「そうだな。今、外の世界の若者を中心に人気がある分野になるかな」

 

 

「なるほど、それはぜひ読みたいですね」

 

 

「こっちの世界に来る時に持ってたカバンの中に一作品だけ入ってたんだよ。それ、読んで欲しい。俺が人に勧めるならまずはこれって決めてるぐらいの神作品」

 

 

「そこまで言いますか。では、後で私の部屋まで持ってきてくれますか」

 

 

「オッケー。絶対面白いから」

 

 

 そう言って部屋を後にする。

 

 

 こっちの世界に来た時に手に持っていたスマホはどこかへ行ってしまったが、カバンの中に入っていた物はきちんと残っていた。その中に普段から持ち歩いていた合計6巻分(途中までで更新待ち)のラノベがあったのだ。

 

 

 早く共有したいし、急いで持っていくか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さとり、いるかー」

 

 

「いますよ」

 

 

 さとりが中にいることを確認し、部屋に入る。

 

 

「ほい。6冊ね。これ全部繋がってるから」

 

 

「ありがとうございます。題名は……」

 

 

「色んな略し方があるけど、そのタイトルは『人生はゲームによって成り立っている』と解釈している」

 

 

「直訳せずに、誠人はそう捉えるのですね。私も考えてみます」

 

 

「あんまりここにいてもネタバレになるから、行くわ。感想はちゃんと聞くからな」

 

 

 人によってはネタバレ厳禁の人もいる。さとりがどのタイプかは知らないけど、俺が既に持っている作品へのイメージをあまり見て欲しくない。まっさらの状態で読んで欲しいのだ。

 

 

 その上で、どこに惹かれたのかを聞きたい。

 

 

 さとりは読んでくれるのだろうか。気が向いたらとかまた後で読んでおくとか言って放置しないことを願うのみ

 

 

 

 

 

 

 

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「読み終わりましたよ、誠人」

 

 

「えっ、はや」

 

 

 本を紹介してからまだ一日しか経っていないはずだ。なのに、読み終えたっておかしい。

 

 

「とりあえず、1巻を読み終えたのか?」

 

 

「いえ、貸していただいた全部ですよ。続きはないのですか?」

 

 

「さすがにやばい。残念ながらそれが今のところ最新刊なんだよね」

 

 

「うーん、そうですか。きりが良いと言えば良いところです、か」

 

 

「一気に読んだってことは、面白かった?」

 

 

「はい、とても面白かったです。覚り妖怪にとって、主人公の二人はとてもまぶしく感じました」

 

 

 以心伝心、一心同体という言葉を完全に再現している関係だ。ずっと全ての存在に嫌われてきたさとりにとってそれは太陽のようなものなのだろう。

 

 

 明るく、鮮烈で、けれど決して手の届かない強い光。時にその光が暗い影を落とすようで。

 

 

「なら、俺となってみる?二人の関係のように」

 

 

「私は能力でできたとしても、誠人には不可能でしょう。いえ、私ができるからこそ、無理なのですか」

 

 

「やってみなきゃ、わかんないって」

 

 

「……。誠人、あなたはもしかして」

 

 

「ん、何だ?」

 

 

「すみません、勘違いでした」

 

 

 俺の疑問形には首を振ることで返事をされる。

 

 

 最近はこんな感じではぐらかされる。さとりと仲良くなろうとしても、一定のところからは逃げるのだ。最初のころは笑っていたし、受け入れてくれていたと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。

 

 

「この作品に出てくるチェスを遊んだことはありますか?」

 

 

「ごめん。教えられるほど遊んだことない。かわりじゃないけど、オセロならできる」

 

 

「おせろ……。それはチェスと同じゲームですか」

 

 

「あぁ。二人零和有限確定完全情報ゲームだ」

 

 

「難しい言葉で表現して。使いたいだけだと聞こえてますよ」

 

 

「言ってみたかったんだよ、しょーがないじゃん!」

 

 

「まぁ、格好はつきますからね。私の能力の前では意味ありませんが」

 

 

「うるせー」

 

 

 オセロをやると決まったので駒と盤を作らなければならない。といっても駒は囲碁の黒白があるのでそれを代替で使う。盤は紙に線を引けばいい。

 

 

「ルールはいたって簡単。相手の駒を自分の駒で挟めば自分の駒にひっくり返せる。んで、駒を交互に置いていって最後により多く駒がある方が勝ちってわけ」

 

 

「大丈夫ですよ。わざわざ実演までしていただいて」

 

 

「そこら辺便利だな、その目。こっちも簡単に説明するだけだから助かる」

 

 

「それにしても、良かったのですか?覚り妖怪に運の介在しないゲームで勝負なんて」

 

 

 なんか随分調子のいい煽りが耳を掠めた。

 

 

「煽りではなく、事実を言ったまでです」

 

 

 ふーん、へぇ?

 

 

「なら、言ってやるよ。能力で圧倒的優位だからといってもう勝った気でいるとは、おつむが弱いなぁ」

 

 

「ふふっ、その言葉ちゃんと覚えておいてくださいね」

 

 

「じゃあ、正々堂々と勝負だ」

 

 

「先攻後攻。好きなほうをどうぞ」

 

 

「後悔するなよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くはは!これが結果だよ、さとり!」

 

 

 記念すべき第一戦目は俺の大勝利で終わった。考えてみれば誰にでもわかる話だ。戦略を知っていて使いこなせる自分とただただ知識として現在進行形で学んでいるさとりとは土俵が違う。

 

 

「当たり前の事でしょう!私は初めてなのですから」

 

 

「おいおい、あれだけ威勢のいい宣言をしておいてその言い訳は苦しいぜ」

 

 

「覚り妖怪って滅多に煽られることがなかったので不思議でしたが、なるほど確かにこれは腹が立ちますね」

 

 

「なんとでも言えばいいさ。所詮は敗者の言葉」

 

 

「しかも口調まで一丁前に変えてますし」

 

 

 鼻を明かすことができて舞い上がっている自分とは対照的に真顔で盤面を見つめているさとり。腹が立っているって言う割には全然雰囲気が変わっていないし、さっきの試合を振り返っているようである。

 

 

「私って、案外沸点が低いのかもしれません」

 

 

「怒っているようには見えないけど」

 

 

「怒ることだけが沸点の高い低いを決めるわけではないです。誠人に見事に煽られて悔しいと、言い返してやりたいと、対戦相手のペースに乗っているのですから」

 

 

 とても良い笑顔で次の対戦をしましょう、と誘ってくるさとり。これは完璧に負かされるまで続くのだろうと察するところがあった。

 

 

「気持ちよく勝てたし、俺は戻ることにするわ」

 

 

 いずれ負けることは日の目を見るよりも確実だ。今日のところは撤退しようと部屋から出ようとする。

 

 

「逃げるのですか?初心者相手に」

 

 

「わかってて言うなよ。俺は今の気分に浸っていたいんだ」

 

 

「弱虫ですね。負けるのが怖いのですか」

 

 

「あぁ怖いよ。なんたって、俺はか弱い人間だからな」

 

 

 むきにならず、相手の言葉を避け続ければいい。それだけだ。

 

 

「はぁ、仕方ありませんね。よいしょっと」

 

 

 唐突に立ったかと思うと、驚くようなスピードで目の前まできた。

 

 

「……。もう一戦しませんか?」

 

 

 ずいっと詰め寄るように近づき、圧力をかけてくる。

 

 

「本当に?」

 

 

 両手を第三の目に携え、さらに圧力が増す。

 

 

「……」

 

 

 冷や汗が流れ始めるのがわかる。他人ならともかく、目の前にいるのは世話になっている人であって妖怪でもある。仲良くなったと自信を持って言えるが、果たしてどの程度なのか。

 

 

 もしかして、追放とかある?

 

 

 音がない世界というのは思考を加速させる。最悪の展開になってしまえば、俺の命なんてない。

 

 

 いや、これがさとりの狙いか?これで俺が折れるのを待っているのかもしれない

 

 

 強気に出て断ればいいのだが、それでどうなるかが予測ができない。

 

 

 両手を挙げて首を振る。

 

 

「最初からそうしてください。余計な手間をかけさせてくれたものです」

 

 

「勘弁してくれよ、それは卑怯だって」

 

 

「これが普通ですよ。……さて、今度は五回勝負といきましょう。その中で一回でも誠人が勝てば、一つ望むことをできる限り叶えましょう。その代わり、私が五回勝った場合はこちらのお願いを一つ聞いてもらいましょうか」

 

 

 これはまた思い切ったことを言ってくれたものだ。よっぽどの自信があるように見える。

 

 

「俺が言うのも何だが、いいのか?」

 

 

「はい。次からは全部勝てますからね」

 

 

「へ、へぇ」

 

 

 あまりにも自然と発言するものだから一瞬暗い未来が頭に思い浮かぶ。けど、流石にまだ一回しかやっていない。勝ち筋はまだあるだろう。

 

 

「よし、そこまで言うんだ。見せてくれよ、ストレート勝ちを」

 

 

「経験と能力は、時に知識程度簡単に超えていくことを証明してみせます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一戦目 敗北

 

 二戦目 敗北

 

 三戦目 敗北

 

 四戦目 敗北

 

 五戦目 敗北

 

 

「ふぅ、これが結果ですよ、誠人」

 

 

「ば、ばかな」

 

 

 一戦目はぎりぎり負けた。この反省を活かして次勝とうと色々と戦略を練ってみたのだが、それがダメだったのかもしれない。

 

 三戦目からはもう手が出せない状態にまでさとりが成長してしまい、途中から負けることを確信するレベルでわからされた。

 

 

「言い訳は充分聞きましたし、何をしてもらいましょうか」

 

 

「危険じゃないことでお願い致します」

 

 

「といっても、もう決めてあるので言いますね。楽しませてください、私を」

 

 

「それでいいなら。何でもオッケー?」

 

 

「どうぞ。あ、ちゃんと心の声も聞いているので、そこもお忘れなく」

 

 

 それって、かなりハードルが高くないか。でも、やるしかない。

 

 

 

 

 

 

==============================

 

 

 

 

 

 

「歌ですか。私と誠人では知っているものは絶対違うと思いますよ」

 

 

 悩みに悩んだが、今この場でできることといったらこれしかなかった。

 

 

「そこは不安だけど、歌って初めて聞いても響く人には響くし、いけるでしょ」

 

 

「あまり馴染みがない分野ですが、実際に体験してみないとわかりませんね。音楽はありませんが、やってみてください」

 

 

「了解。とりあえず、三曲歌ってみるか。ちゃん聞いといてくれよ」

 

 

「自分が言い出したことですし、そこは心配しないでいいです」

 

 

「それじゃあ早速一曲目いくぞ」

 

 

 

 

 

「蒼い 時描く軌跡辿り

 

 答え探す 同じ空見上げながら

 

 胸に 秘めた想い溢れ出し

 

 空を翔けて 銀色の矢に変わる

 

 ………

 

 ……

 

 …              」

 

 

 

 

 

「ぁ……」

 

(心の声と実際の声が一致している)

 

 

 人は誰しも実際に相手に伝える言葉と心の言葉は違うことが多い。一致するときもあるが、大体そういう時は己にとって相手が敵の時だ。

 

 

 そういう経験しかしてこなかったため、とても物珍しく聞き入ってしまう。

 

 

「たとえ躓いても たとえ傷ついても

 

 飛び立とう 風翼にして

 

 

 たとえ苦しめても たとえ傷ついても

 

 離さない 結んだ絆は」

 

 

(ッ……!そんなこと、あるわけない!)

 

 

 ただ歌っているだけ。それだけのはず、なのに

 

 

(なんでこんなにも揺さぶられるのですか!)

 

 

 彼の言葉だけでなく、頭の中にある歌詞の解釈やイメージまで一緒に伝わってくる。

 

 

 歌が特別上手いわけではない。万人を魅了する声を出せているわけでもない。それでも、誠人は必死に、精一杯に歌い、思いを乗せてさとりただ一人のために歌っている。

 

 

 それは冷たくなってしまっていたさとりの心に響いてしまった。響かせてしまった。

 

 

「空に描く いのちの軌跡を

 

 

 ……ふぅ。どうだった?結構いけたと思うんだけど」

 

 

 気が付けば一曲目が終わっていた。人前で歌うのが慣れているのか、声が変に震えたり高くなったりすることはなかった。

 

 

「選曲の理由を聞いてもいいですか?」

 

 

「んー、そうだな。歌ってどの単語をとっても絶対に意味が込められていると思ってる。だからその中で今さとりに伝えたいなって思ったものをね」

 

 

 そういって肩をすくめる誠人。彼が私のためだと言うのであれば、残りの歌はきちんと聞くことが筋なのでしょう。

 

 

「そう、ですか。歌の善し悪しはわかりませんが、伝えたいことはちゃんと届いていましたよ」

 

 

「お、そうか。それは良かった。それじゃ、続けて二曲目にいくか」

 

 

 

 

 

「僕らはいつも 悩みながら

 

 刹那の希望 探している

 

 白と黒とが 交わるとき

 

 きっときっと 果てなく

 

 ………

 

 ……

 

 …              」 

 

 

 

 

 

(刹那の希望、ですか。なるほど、私は誠人にそれを探しているのかもしれませんね)

 

 

 自分の置かれている立場と今の状態。その言葉を吟味すると、もしかしたらそうなのではないかと思えてしまう。

 

 

(期待はしないつもりでしたが、ここまで絆されていましたか)

 

 

 けど、それを拒絶せず受け入れている自分もいる。

 

 

「おどける 道化たちのように

 

 涙隠し 笑顔を見せる」

 

 

(あはは……。私のことを言っているのですか?誠人は、そんな風に見えているのですか?)

 

 

「光の先に 見える道を

 

 二人で歩く 幻影を見たよ

 

 愛しさ それは 忘れていた

 

 きみへの約束 二人の約束」

 

 

(あなたは、私と一緒に歩いてくれるのでしょうか。人と妖怪との約束なんて、あってないようなもの)

 

 

「のってきたし、このまま三曲目にいくぜ!」

 

 

 

 

 

「迷子の足音 消えた

 

 代わりに 祈りの唄を

 

 そこで炎に なるのだろう

 

 続く者の 灯に

 

 ………

 

 ……

 

 …              」 

 

 

 

 

 

(死んだ人を忘れてしまう世界。一体、どのような思いで生きているのでしょう。前を向いて生きていくためとはいえ)

 

 

「怖かったら 叫んで欲しい

 

 すぐ隣にいたんだと 知らせて欲しい

 

 震えた体で抱き合って 一人じゃないんだと教えて欲しい」

 

 

(……)

 

 

「終わりまであなたといたい それ以外確かな思いが無い

 

 ここでしか息が出来ない 何と引き換えても 守り抜かなきゃ」

 

 

(人間が、能力も持たない者が、人妖共に嫌われている覚り妖怪を、守ってくれるわけがない。終わりまで傍にいてくれる存在なんて、私たち家族以外にいるわけないでしょう?)

 

 

 

 

 

 

 歌っている途中からさとりの意識が別のところにあるのは気付いていた。暗い顔をして時々俯いていた。いつもの会話で伝えられないことを、歌で伝わればと思って今回は歌うことを選んだのだが。

 

 

 成功と言えば、成功なんだけど

 

 

 さとりの経験が余計に感じさせてしまったのだろう。歌い終わった後も、心の整理がつくまで待つしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「とても、良かったですよ。成り行きでやってもらったとはいえ、ありがとうございました」

 

 

「いや、全然問題ない。こっちも久しぶりに歌えてストレス発散できた」

 

 

「……。また、お願いしても良いですか?」

 

 

「あぁ!毎日でもいいぞ」

 

 

「それは多すぎます。定期的でお願いします」

 

 

「わかった。それじゃ、今度こそ俺は行くぞ」

 

 

 ゲームを終えやるべきことも終わったため、今日の掃除のために道具を取りに行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まだ引き返せる位置です、が。一体何をしたいのでしょうね、私は。

 

 

 




 
 知る人ぞ知る三つの曲。

 特に一つ目と二つ目にすぐにピンときた方は

 かなりコアな方ではないでしょうか。


 まぁ、自分もそうですけど
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