「おお、クレナイはヒトカゲにするのじゃな」
「はい、僕はこの子に決めました」
そして、僕に続いて二人は同時にそれぞれのポケモンを手に取った。
選んだのは先ほどそれぞれが止めたポケモンだ。
ロクは『ゼニガメ』。
アオは『フシギダネ』。
三人同時に初め手持ちのポケモンをモンスターボールから出す。
「キャーかわいい!」
「これから頼むぜ」
「さっきはよく頑張ったね」
三人は初めてのポケモンに挨拶。これから一緒に旅をする相棒だからだろうコミュニケーションをきちんととることで打ち解け合うようにしている。
「そうじゃお前さんたちポケモンたちにニックネームをつけるのはどうじゃ?」
「なにそれ採用!」
「オレは別にいいや」
ヒトカゲの脇を掴んで持ち上げ顔を合わせる。
ヒトカゲは不思議そうに顔をかしげて僕を見つめる。かわいい。
「よしこれから君はフシちゃんね!」
「フッシ!」
うーん、僕はどうしようか。
「クレナイはどうすんの?アオイみたく単純そうな名前にすんのか?」
「ミーちゃんどういうことー!?」
「あ、おいやめろアオイ!」
「ヒトカゲはどう思う?」
「カゲー?」
じゃれ始めた二人を放置して僕は思考する。
確かに僕だけの呼び方ってのは憧れるし、オリジナル感は大事だ。
初めての僕のポケモン。きっとこれから仲間は増えるだろう。
なら、ヒトカゲは僕のポケモンの中で唯一の存在となる。
「ある意味、王様みたいなものだね」
「は?」
「どういうこと?」
「カゲ?」
「これからはヒトカゲ、君のことはキングってよばせてもらうね」
我ながらかっこいい名前だ。
「カゲカゲ!」
「よろしくねキング」
ニックネームが決まれば後は旅に出発するだけ。
「キングって大仰な名前つけたなクレナイ」
「うーん、その子がキングって柄じゃないと思うけど」
「そう?」
僕としてはかなりぴったりな名前だと思ってるんだけど……。
「だって、そのヒトカゲさっきのケンカでもあたふたしてただけの奴じゃん」
「王様ってもっとどっしりしていそうな感じがしない?」
「あたふたしてたわけじゃないと思うけど」
「オレが見る限り、クレナイが選んだヒトカゲが」
ロクはなんと無しに思ったことを言葉にしただけなのだろう。悪気なんて一切無く、ただの感想みたいなもの。
けど、僕はれを聞いた瞬間。
「この中で一番そいつが
「―――は?」
今、ロクはなんて言った?
弱い?
誰が?
「どこが?」
「え?」
「どこがだよロク」
「いや、だからケンカにまともに混ざることも出来なくてあたふたしてただけのところがだろ」
「ば、ミーちゃん!!」
あたふたしていただけ、だと?
ゼニガメとフシギダネの争いをどうにか止めようとしていたキングが、その優しい強さのどこが弱いって言うんだ。
何より、抱えたキングが僕の服をくしゃくしゃになるほどの強さで握ってきている。
悔しくないわけが無い。
ついさっきこの子のトレーナーになったからか、キングを馬鹿にされるのは僕も悔しいし許せない。
「何だよアオイ、オレ間違ってること言ってるか?」
「違う!これクーちゃん完全にキレる感じのやつ!」
キングを抱き立ち上がる。
「その程度なのかよロク」
「あ?」
「お前の目は節穴だってことだよ」
「は、何言ってんだクレナイ」
「弱いっていうのを撤回させてやるよ」
賢い選択では無いだろう。
受け流したり、無視することだって出来たはずだ。
「戦ろうぜロク。お前のゼニガメと僕のキングどっちが強いのかは口先じゃなくバトルで」
「ハッ、いいぜクレナイ。オレとお前の差ってのを明確にしてやるよ」
でも。
それでも。
「証明してやるよ優しい王様―――キングの強さを」
「やれるもんならやってみろよ!」
僕の大事な仲間をけなされて黙ってられるほど僕は大人じゃ無いんだ。
キングが腕の中から飛び降りて目の前のトレーナーに向かい合う。
「雑魚がひねり潰す」
「示してやろうぜ、お前の存在を。僕の―――『俺』のキングが強いってことを!!」