艦これ世界で配信者   作:井戸ノイア

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久しぶりに艦これアーケードをやって来たっぽい。
すっごく楽しかったっぽい!
そして、駆逐艦と軽巡洋艦だけでの重巡洋艦や軽空母への無力さも知ったっぽい……




近海海域攻略作戦Ⅴ

「なるほど……な」

 

 画面の向こうの卯ノ木提督は顎に手をやり、少しだけ考えるような仕草をした。

 こちらの艦娘の反応は様々。

 元よりそういった話をしていた球磨はやる気に満ちているようで、切り替えが早いというかなんというか。

 卯月は特に反応が無く、画面をじっと見つめている。

 電と那珂は突然の話に驚きながらも、ひそひそと二人で話し始めた。

 

「確かに、そこに何かがある。それだけでも見つけられれば十分な進歩だ。それに俺個人の意見としてもこの海には何かがあるとは思っている。が、それは本当に今必要なことなのか? 夕立君が、球磨君が死にかけたように今はどの泊地、鎮守府でも戦力が足りているとは言い難い状態だ。戦力が整ってからでも、遅くは無いのではないか?」

 

 意見としては真っ当だ。

 ここには五人の艦娘がいるといえど、駆逐艦が三人と軽巡洋艦が二人。

 決して戦力として多いとは言えない。

 

「それは少し考えたっぽい。今がチャンスっていうのも、夕立達の島と本土の行き来を楽にしたいっていう(よこしま)な思考も入っているっぽい。でも、『今』を先延ばしにして戦況が変わると思うっぽい? 今でさえ徴兵や、海に出られないこと、輸入が出来ずに資源が減る一方なことへの批判だってあるのに、ずっと我慢出来ると思うっぽい? 夕立は敵は深海棲艦だけじゃないと思うっぽい」

 

 夕立は無視をするため気にしていないが、配信やツイッチーでも批判、アンチなどはたくさん存在する。

 ちなみに球磨はたまに憤慨している。

 それでも配信を続けるのは、それによって艦娘への理解を深めて欲しいこと。

 そして、艦娘となるということを不幸と思わせないため。

 

 という思いも少しばかりある。

 大半は、何か残したいという意思であるが、既に達成してしまったがために、より良い方向で残したくなっていた。

 なにせ夕立は今、歴史の転換点に立っている。

 ならば、より頑張れば教科書レベルで残せる可能性もあるとか思ってしまっている。

 

「だから、仕掛けるなら今だと思うっぽい。もし失敗しても後には何かを残せるっぽい。背水の陣になる前に行動を起こせるとすれば今だけなんじゃないかな」

「ふむ、相分かった。確かに言う通りだし、戦う本人がやる気とあれば止めることも難しい。宿毛湾泊地提督として、その意見には賛同しよう。ただし、こちらの艦隊が本当に行くかは卯月達の意思で決めて欲しい。チャンスといえど、五分五分の賭けだ。死地かもしれない場所へ行けなどという命令は間違っても俺には下せない」

「大丈夫っぽい。いざとなれば球磨ちゃんと二人だけでも行ってくるっぽい! その時に泊地の防衛だけでもしてくれていたら後顧の憂いも無いっぽい!」

「はっ、全く羨ましいもんだ。提督なのに、艦娘と共に戦いに行けるだなんて。それじゃ、また何かあったら連絡してくれ。指揮系統はそちらに委任する。じゃあ、またな」

 

 通話が切れた。

 場に小さな静寂が訪れる。

 卯ノ木提督は軽い口調で話していたが、自分の判断で死地へ送り出すなど元一般人たる彼には酷なことだろう。

 その点、夕立は恵まれていた。

 提督としての判断と同時に、艦娘としての、艦としての護国の気持ちを理解出来るのだから。

 

「球磨はやってやるクマよ! 夕立ちゃんの考えも前から聞いているし覚悟もバッチリクマ!」

 

 球磨が先陣を切って話し始める。

 場の空気が戻って行く。

 

「夕立も、まだまだやれるっぽい! 無理強いはしない。けれど、もし協力してくれるなら来て欲しいっぽい!」

「うーちゃんも行くかなー。何だか夕立ちゃんと球磨ちゃんだけじゃ、突撃しちゃいそうだぴょん。ペースメーカーが必要だと思うぴょん!」

 

 夕立はもちろん、卯月も行くことを表明した。

 それが分かっていたからこそ、卯ノ木提督は早々に通話を切ったのかもしれない。

 

「その、那珂ちゃん達も……行きたい、と思うかなぁ」

「電も何だか怖いという気持ちと、戦いたいという気持ちが混ざっていて不思議な気分なのです」

 

 艦としての意思が護国を訴える。人としての意思が死地へ向かうことを拒否する。

 艦娘の胸中では常に二つの意思が渦巻いている。

 それらは時として判断を鈍らせる。

 

「曖昧な気持ちならここで待っていた方が良いと思うっぽい。いざという時に、動けなくなってしまうかもしれないっぽい」

 

 意思がちぐはぐということは、何かの切っ掛けで、どちらかに傾いてしまう可能性も孕んでいる。

 死が迫った時、人としての意思が『怖い』と強く思ってしまえば、身体が震えて動けなくなるかもしれない。

 戦場でそうなった場合、待ち受けるのは避けようの無い死だ。

 

「うーちゃんもそう思うぴょん。だからこそ、司令官は私たちの意思に任せるって言っていたぴょん」

 

 二人は押し黙ってしまう。

 自分の意思を確かめようと深く考えているのだろう。

 夕立は提督としてやることがあると席を立った。

 

 作戦開始時刻は約一時間後。

 一五三〇だ。

 


 

 

 夕立がいなくなった後の食堂はまた静かになっていた。

 那珂と電が考え込んでしまっているため、球磨と卯月も下手に声をかけない方が良いと重油を飲みながら考え事をしていた。

 

 少しだけ沈黙の時間が流れ、那珂が声を出した。

 

「その、色々と考えたんだけれど分からなくなっちゃって……。球磨ちゃんと卯月ちゃんは何で戦おうって思えるの?」

 

 その質問に興味があると言わんばかりに、電も顔を上げた。

 戦いたい、けれど自分を納得させるだけの理由が分からずにいたのは電も同じだった。

 

「うーちゃんは単純だぴょん。兄貴の負担を少しでも減らすためぴょん! いつも胃を擦り減らして予定だったり、なるべく安全なルートを考えているような兄貴だぴょん。うーちゃんが、勝って勝って勝ち続ければ兄貴の心労も少しは減らせると思うぴょん。だから、こんな日々を少しでも早く終わらせるために、うーちゃんは頑張っちゃうんだぴょん!」

「え、卯月ちゃんのお兄さんって提督か何かクマ?」

「球磨さん、さっきの卯ノ木提督なのです」

「えっ、それって余計心労を掛けるだけなんじゃクマ……?」

「球磨ちゃん! しーっ!」

 

 那珂の必至の遮りで卯月には聞こえなかったようだ。

 卯月は兄の一番の心労が、積極的に戦闘をする自身のことであることには気づいていなかった。

 兄を心配し、深海棲艦を一日でも早く殲滅しようとする卯月は、あまり考えることは得意では無かった。

 

「そ、それじゃあ球磨ちゃんは?」

 

 那珂が慌てて方向転換した。

 

「んー球磨は……何でクマね? 強いて言うなら夕立ちゃんを置いていきたくないからクマ? 何て言うか、一人で突っ走っていっちゃいそうな感じがするクマ。友達だけれど、目の離せない妹みたいな感じもして、うーん、とにかく付いて行かないとって思うんだクマ!」

「さっきも沈みかけていたのに、戦闘に残ろうとしていたのです。そういうところなのです?」

「そうそう! 危なっかしくて、球磨がちゃんと見ていなきゃって思うんだクマ!」

 

 球磨に、戦闘を行う大それた理由は無い。

 ただ、友達が危険な目に遭うのなら、それを助けたいと思う。

 そんな友人思いな人間だった。

 

「わっすれものーわっすれものー♪」

 

 と話していると夕立が戻って来る。

 テーブルの上にはノートパソコンが置かれたままになっており、取りに戻ってきたようだ。

 

「あ、ちょうど良いクマ! 夕立ちゃんの戦う理由って何クマ? 那珂ちゃんと電ちゃんの参考になればと話していたんだクマ!」

「え、夕立の戦う目的っぽい? うーん、そこに敵がいるからっぽい? 無理をするつもりは無いっぽいけど、勝算があるなら戦うっぽい」

「それは、先ほど沈みかけていたのに、なのです?」

 

「夕立はやらなくて後悔だけはしたくないっぽい。ここで逃げたから、ここで戦わなかったから、って後悔するのは嫌だから『今』行動を起こすっぽい!」

 

 それじゃあ、もうちょっとやることあるっぽい!

 と言って夕立は食堂を再び去っていった。

 






感想返しが遅れてて申し訳無いっぽい。
ちゃんと全ての感想に返信はするから、もうちょっと待って欲しいっぽい!
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