わこつ
新鮮な配信だー!
浴衣姿prpr
荷物を置いて温泉へ直行し、軽く汗を流して浴衣に着替えた。
よく旅館とかホテルに置いてあるスタンダードなタイプの赤色の浴衣だ。
そして、まだ早い時間ということもあって、遊戯室が貸し切り状態だったので、ラケットとピンポン球を借りてきて勝負と相成った。
『ふふふ、温泉入ってこういうことするって何だか久しぶりみたいでテンション上がるっぽい!』
『負けないクマ!』
あれ? 温泉の配信は?
温泉入るとこから配信して
前回の作戦見てると、平和で安心するなぁ
『温泉なんて配信する訳が無いっぽい。そもそも貸し切りでも何でも無いから他のお客さんもいるっぽい?』
いなかったらやってくれるんですか?
泊地戻ってからやろう
もう一度球磨ちゃんの入浴シーンを!
『あ、あれは忘れるクマ!』
ふと、夕立は思い浮かんでしまった。
悪い顔をして、球磨を揶揄うようにその提案をする。
『それじゃあ、せっかく勝負なんだし負けた方が入渠配信するっぽい?』
『く、くまあああああああ!? ぜ、絶対に負けられない戦いになってしまったクマ……』
『あ、あれ本気っぽい? 冗談のつもりだったのに本気でやらなきゃいけないっぽい!?』
Exactly
当然だよなぁ
ほら、視聴者の期待には応えないと
これは紛うことなき神回
『か、簡単クマ! 要するに卓球で勝てば良いんだクマ。勝てば、あの恥ずかしさを夕立ちゃんにも体験して貰えるクマ……』
一度経験していることならば、恥ずかしさも半減。
と、球磨は自分を誤魔化しているが顔は真っ赤であり、これから運動をというのにその額には既に汗が浮かんでいた。
一方、特殊な生い立ちを持って生まれた夕立は、前世の経験から直接で無ければ見られてもそこまで反応を顕にする訳でも無く、まあ別になどと考えている。
恥ずかしさで言えば、球磨と共に温泉に入る方がよっぽど恥ずかしい。まあ、それもほとんど慣れてしまっているが。
結果として、早とちりで球磨が肯定してしまったことを皮切りに、本気でするつもりは無かった罰ゲームを背負うこととなってしまった。
夕立はまあいいかと軽く考え、球磨には特大のダメージ。
視聴者は何もせずとも、タイが釣れてホクホクという具合だった。
『大丈夫、負けなければ良いだけクマ……くま……』
お目目ぐるぐる球磨ちゃん
やる前から動揺で前見えてなさそう()
ほら、夕立ちゃんの柔肌のために頑張るんだよ!
私は球磨ちゃんもう一回でも一向に構わん! むしろそうして!
視聴者も盛り上がり、一度見せているからか球磨を応援する声の方がやや優勢か。
そして、球磨が第一投をコツンと打った。
卓球をまともにしたことが無い二人。
初心者らしくぽんぽんと放物線を描いて、ボールが夕立のコートへと移る。
それを夕立もまた、ラケットを上向きにして球磨へと返す。
コン。
コン。
コン。
お互いミスをしないラリーが続く。
勝負なのにくっそ和やかで草
ミスしないのは凄いけど、終わらねぇ
ほら、スマッシュするんだよ!
海の上ではカッコいいのに、卓球はすっごい緩やか
『そ、そう言われても素人だから難しいクマ! 勝つなら、これが一番だクマ!』
と、夕立の放ったボールが卓球台の角に当たる。
そのまま勢いを増して地面へと急加速したボールは、球磨のラケットによって大きな放物線を描いて、夕立のフィールドへ。
『いやいや、さっきのはフリっぽい!? こんなの打つしかないっぽい!』
ぽい! と力んで打ち付けたボールは見事に夕立のコートで跳ねてから明後日の方角へと飛んでいく。
球磨のポイントが一点加算された。
おおお、球磨ちゃんの動きはっや
これは良いスマッシュ()
よくやるやつ
こーれは、素人ですね
『今の球磨達は艤装背負ってなくても多少身体能力が上がっちゃっているから、これはミスした方が負けクマ!』
『せっかく角に当たっても見てから動けちゃうっぽい? これはスマッシュが入ったとしても簡単に返されるっぽい……』
『つまり、この一点は大きいクマ! 夕立ちゃんの入渠で決定クマ!』
見てから打ち返すの余裕でした
これはそもそも勝負……付くのか?
勝負が付かなかったらどうなる?
↑そりゃ視聴者の入浴シーンでしょ
↑男の入浴シーンとか誰得……
何でや! 女の子が見てるかもしれんだろ! あ、私は男です
『ふふふ、それはフラグってやつっぽい!』
『球磨には尊厳がかかっているから、夕立ちゃんみたいな無謀なことはしないクマ! 画面映えを意識してスマッシュを打っちゃう夕立ちゃんには負けないクマ!』
コン。
コン。
コン。
たまにミラクルショットで角に当たるものの、それも取られてしまう。
動体視力も優れているため、変な位置にボールが来ようと、打つ頃にはある程度打ちやすいように動けてしまう。
勝負は千日手の様相となってしまった。
『うーん、終わらないっぽい……。そろそろラケットとか返さなきゃいけない時間になっちゃうっぽい……』
『その時は点数の多い方が勝ちクマ!』
あれから、夕立が一度ミスをして球磨が二点。
夕立のミスに有頂天になった球磨が力んでしまったせいでホームランを打って、夕立に一点。
このまま終われば球磨の勝利だ。
いいぞ、球磨ちゃん!
そのままミスしないで繋ぐんだ!
お互い点数取ってないのに意外と良い勝負だ
声だけはアツイのに、終始和やかな音が響く……
『勝負を確実なものにするクマ! さあ、夕立ちゃん、打ってくると良いクマ!』
球磨がわざと大きく放物線を描くように球を打った。
絶好のスマッシュチャンス。
しかし、打ってもほぼ確実に返される、リスクしか無い球。
『でも、このままじゃどうせ負けるっぽい! なら最後くらい決めてみせるっぽい!』
『夕立ちゃんならそう来ると思ってたクマ!』
『ぽい!』
気合の入った掛け声と共にカッ! と子気味の良い音を立てボールが飛ぶ。
それは球磨のフィールドへと吸い込まれるように叩きこまれ、球磨によって打ち返された。
『なんて、それを待っていたっぽい!』
『クマ!?』
初心者がスマッシュを鋭い球で返せるはずが無い。
再び放物線を描いたボールは、ネットを飛び越える瞬間、予測してコートの側面にまで移動し飛び上がった夕立の目の前にあった。
『全力で、行くっぽい!』
『ちょ、ちょっとそれは拙いクマ!?』
かくして。
素人がジャンプスマッシュなんてものを上手く決められるという奇跡は起こったが。
艤装をしていないがために弱化しているとはいえ、艦娘の膂力にボールが耐えきれるはずも無く。
球磨のフィールドに叩きつけられたボールはそのまま破裂。
審議の結果、夕立の負けが決定した。
艦娘の力やべぇ
卓球でしてはいけない音が聞こえた……
破裂したのに、何故点になると思ったのか、これが分からない
そもそもルールが違う……
『で、でもちゃんとコートには入ったっぽい?』
『夕立ちゃん、諦めるクマ』
良い顔をしてサムズアップする球磨。
勝負に負けたことには悔しかったが、その笑顔を見てまあいいかと思えた。
『それじゃあ、泊地に戻ったらそのうち入渠しながらの配信するっぽい! まあいつやるかは言わないから、間違って配信中に誰かが入ってきちゃっても仕方がないっぽい?』
『ちょ、夕立ちゃんそれはズルいクマ! 絶対球磨が入った瞬間に配信開始するつもりクマ!』
『それはどうなるかお楽しみっぽい! それじゃあ、また明日も配信予定だから今日はこれくらいで終わるっぽい!』
負けてもタダでは終わらない夕立ちゃん
いつでも待ってる
球磨ちゃん以外も巻き込んでええんやで?
ああ、もう終わりか……
いかないで
『それじゃ、バイバイっぽい!』
『勝手に締めずにちゃんと時間を決めるくまああああああああああ』
他の小説書いたり、ゲームやったりでなかなか進まなかったっぽい……
まだまだ書く気はあるから、続けていくっぽい
島の名前はいろいろとありがとうっぽい!
独断と偏見で、『翠巒島』を採用させて頂くっぽい!
順次直していくけれど、このままだと読みにくいから、表記は『スイラン島』にさせて貰うっぽい!
改めて、アンケートに回答して頂いて本当にありがとうっぽい!