Vの者!~挨拶はこんばん山月!~   作:サニキ リオ

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すみません、めっちゃお待たせしてしまいました!


【3D化配信】奥行きのあるあたしを楽しめ! その2

 それから夢美は夏らしくスイカ割りなど、目隠しで動きが映える企画に挑戦し続けた。

 そして、とうとう目隠しで食べたものを当てる企画が始まった。

 

「さて、一発目はこれ!」

[チョコレートケーキか]

[まさか、どこの店まで当てるとか?]

[それは鬼畜すぎ]

 

 食べ物までモデリングはしていなかったため、配信画面上には何も映っていない。

 そのため、事前に撮っておいた写真が画面に表示された。

 配信画面に表示されたのはガトーショコラだった。

 

「〝Myosotis〟の豆腐のガトーショコラ!」

「まあ、これはわかるか」

「いや、普通はわからないでしょー……」

 

[何でわかるのwww]

[バラギ甘い物苦手じゃなかったっけ]

[だからわかったんだろ]

 

 一口食べただけで答えを当てた夢美に林檎やコメント欄は驚いているが、これは当然の結果である。

 何せこのフォンダンショコラはレオと夢美の幼馴染である真礼の店のケーキだ。

 豆腐を使用した砂糖不使用の独特の味わい。甘さ控えめのスイーツであるそれは、甘いものが苦手な夢美にとって好物の一つとなっていた。

 

「甘いものが苦手な夢美が好きな甘さ控えめなケーキだぞ? わかるだろ」

「前に食べてから気に入っちゃってね」

「今度私も連れてってよー」

 

「「もちろん」」

 

[目隠しで食べたもの当てるゲームでてぇてぇするとは恐れ入った]

[やっぱこの三人だな……]

[三期生てぇてぇ]

 

 レオと夢美は林檎を真礼の店に連れていく約束をした。

 それは妖精達からすればおいしいケーキ屋に連れていく約束をしただけに見えただろう。だが、実際は違う。

 レオと夢美は紹介したかったのだ――自分達の自慢の幼馴染を大切な仲間である林檎に。

 それからポテトチップスやプリンなど普通のものを一通り当てたり外したりを繰り返し、最後のバッタを食べる時間がやってきた。

 

「夢美……すまん」

「何何何!? 謝られると怖いんだけど!?」

 

[バッタwwwww]

[かわいいイラストでごまかそうとするな]

[女性ライバーにバッタを食わせる3D化配信があるらしい]

[安 定 の に じ ラ イ ブ]

 

 レオの反応から次にゲテモノが来ると理解した夢美は大声で喚き散らし始める。

 そんな夢美のリアクションに、何を食べさせるか理解しているコメント欄も盛り上がりはじめた。

 

「あっ、これカンナがおいしいって言ってたやつだ」

「絶対虫じゃん!」

 

[草]

[カリューのおいしい=虫なの笑う]

[さりげなくかりゅりんをぶっこんできやがった]

[雑談枠でも言ってたなw]

 

 林檎はカリューと出かけたときの話などを定期的に雑談配信で話すようにしていた。

 小人達を含めた視聴者達は、二十万人記念コラボ配信がきっかけだと思っているが、実際のところは元からの親友である。

 今後の関係性を考え、林檎はうっかり口を滑らせても大丈夫なように下準備をしていたのだった。

 

「まあ、落ち着けってちゃんと食えるものだから」

「食用ってだけやろがい!」

 

 バタバタと暴れ始めた夢美に苦笑しつつも、レオは箸で摘まんだバッタを眺めて感慨深そうに呟く。

 

「俺もアイドルとして落ちぶれたときに食わされたなぁ」

「もう絶対虫じゃん!」

 

[レオ君も経験済みだったかw]

[さりげなく闇を感じさせるのやめろ]

[レオ君も苦労したんだなぁ]

 

 レオもこういった企画はアイドル時代に経験済みだった。

 体を張った企画であり、あまり乗り気ではなかったが、人気のなくなり始めた頃だったこともあり、仕事を選ぶことはできなかったのだ。

 ちなみに、レオがバッタを食べたときはリアクションが微妙でお蔵入りになってしまった。悲しくも芸能界の厳しい現実である。

 

「ほら、あーん」

「っ! 急にイケボ出すな!」

 

[3D化配信でいちゃつくライバーがいるらしい]

[バッタでてぇてぇできるライバーはバラレオくらい]

[レオ君のイケボあーんボイス待ってます]

 

 レオの声に動揺しつつも、夢美は意を決して口を開いた。

 そんな目隠しをして口を開けた状態の夢美にレオは小声で囁いた。

 

「口に入れたらすぐに吐き出すんだ」

「えっ」

 

 驚きつつも夢美はバッタを口に含む。普段から虫を食べなれていない夢美は、感触だけで一気に吐き気を覚えた。

 

「ヴォエェェェェェェェ!」

「本当に食べちゃったよー……」

「ほら、バケツだ」

 

[ガチ嘔吐で草]

[たすかる]

[3D化配信でバッタを食った女]

 

 レオは倒れ込む夢美へとあらかじめ用意していたバケツを差し出したが、他ならぬ夢美がそれを拒否した。

 

「待って、いける! いけるから! さすがに吐くのはダメ!」

「いや、無理すんなって」

「気合じゃあぁぁぁ!」

「えっ、マジで飲み込んだの!?」

 

[食べ物を粗末にしないライバーの鑑]

[無茶しやがって…… ¥30,000円]

[バッタ食べられてえらい]

[バッタを食べて好感度爆上がりする女]

[頑張ったね…… ¥10,000円]

 

 レオと林檎の予定では夢美が吐き出したあと、食べさせたレオにお返しとばかりに食べさせる流れを作るつもりだった。

 まさか、夢美がここまでするとは思わなかったのだ。

 

「……おえっ、水、水ちょうだい……」

「ほれ、大丈夫か?」

「普通、あの状態から噛んで飲み込めるかなー?」

 

 口の中に残る気持ち悪さを水で無理矢理流し込むと、夢美は目隠しを外してカメラ外のスタッフへと叫ぶ。

 

「何笑ってるんすか! バッタでしょこれ!」

「えー、今スタッフの人達が大爆笑しております」

「てか、よくわかったねー」

 

[正解してて草]

[何でわかるんだよwww]

[スタッフにも食わそうぜ]

[正解おめでとう! ¥10,000円]

 

 夢美が正解したことで、クイズ番組などで流れる正解のSEが流れる。

 ここまで体を張った企画をやったことで、妖精達は夢美を労りの気持ちを込めて高額のスーパーチャットを笑いながら送った。

 中には無言で限度額を投げる者もいるくらいだった。

 

「にじライブの事務所にイナゴとかはあったから消去法でわかったわ」

「あー、前にかぐや先輩が食べてたな」

 

[バンチョーwww]

[そういやあの人も雑談枠で昔虫食べたときの話してたな]

[よし、レオ君も食べよう]

 

 レオは自分にバッタを食べて欲しいと書いてあるコメントを見付けてニヤリと笑った。

 

「俺も食うの? たぶんリアクション薄いけどいいのか?」

「カンナがおいしいって言ってたし、私も食べようかなー」

 

[二人共平気そうで草]

[レオ君は経験済み、白雪はカリューへの信頼感か]

[三期生、全員でバッタを食す]

 

 林檎は平気そうな声を出しているが、その実虫は苦手だったため、顔を青ざめさせていた。

 レオはスナック菓子を摘まむ感覚で、林檎は夢美と同様意を決した様子でバッタを口に放り込んだ。

 

「おっ、意外といけ――けほっ、おえっ……」

「おー、エビの殻っぽ――うえぇぇぇ……」

 

[ダメじゃねぇか!]

[最初はいけそうな雰囲気だったのにw]

[これは責任もってスタッフが食べなきゃなぁ!]

 

 レオは本当は平気だったが、あえて気持ち悪そうにしている演技をした。そうでなければ夢美のリアクションが安っぽくなってしまうからだ。林檎はむしろ逆で、面白さを出すために最初は我慢して平気そうにしていたのだ。

 目に涙を浮かべながらバッタを咀嚼する林檎へと夢美は水を渡す。レオの方は一通り演技したら、そのまま普通に飲み込んでいた。

 レオはスタッフもバッタ食べるように促すコメントがあったことを見逃さずに、四谷へとアイコンタクトを送った。

 四谷はニヤリと笑って頷くと、配信画面に「※バッタはスタッフがおいしくいただきます」というテロップを表示させた。

 

「ちょっと夢美のマネさん、バッタ持ってきてくれますか?」

「レオ?」

 

 台本にはない流れが始まったことで夢美は怪訝な表情を浮かべる。

 四谷がバッタの袋を持ってカメラ内に来たタイミングで、今度は林檎がしゃべり出した。

 

「はーい、今ここにバラギのマネちゃんがいまーす」

 

[出たバンチョー一押しのマネちゃん]

[コミケでは神対応だったな]

[バラギに日本酒を渡した張本人かw]

 

 普段からまめに話題に出るため、四谷の存在は妖精達も知ってはいた。

 妖精達の認識では、四谷は〝ライバーに負けず劣らず頭のおかしい有能マネージャー〟という評価をされていたのだ。

 

「さて、まだまだバッタは余ってるわけだけど」

「食べ物を残すのはよくないよねー」

 

[これは食わされる流れw]

[ライバーが体張ったんだから当然だよなぁ?]

 

 レオと林檎の振りに頷くと、四谷は袋のバッタを鷲掴みにして一気に口に放り込んだ。

 

「おおっと、バラギのマネちゃんがバッタを鷲掴みにして口の中に放り込んだよ!」

「ちょ!? マジで何してんの!?」

「うぷっ………………っん!」

「はい、たった今夢美のマネさんがバッタを飲み込みました!」

 

[マネちゃんぶっ飛んでて草]

[あたおかのマネちゃんはあたおかだったか……]

[バッタ鷲掴みで頬張るのはやばすぎる]

[それでこそにじライブだ]

[にじライブってやっぱ社員も頭おかしいんだな……]

 

 吐き気を堪えてバッタを咀嚼して飲み込んだ四谷は不快感から涙を流しながらも、笑顔を浮かべて夢美へとピースサインを浮かべた。

 そこでようやく夢美は四谷やレオ、林檎の思惑を理解した。

 

「Wow! It’s so crazy!」

 

 ちなみに、スタジオの隅で彼らのやり取りを見ていたミコは目を輝かせていた。

 

「いやぁ、マネちゃんがここまで体張るとは思わなかったなぁ」

「さすが夢美のマネさんだな」

「どういう意味じゃい!」

「それで、他のスタッフさんはどうするのー? 私達はみんな吐かずにバッタ飲み込んだけど?」

 

 意地の悪い林檎の笑みを見た企画部のスタッフ三人は、一転して表情を凍り付かせた。

 まさか自分達に飛び火するとは思ってもいなかったのである。

 一度、食べて安全性を確認しているとはいえ、わざわざもう一度食べたいものではない。

 固まっている企画部の三人を前へ押し出したのは、カメラマンや他の技術スタッフ達だった。

 彼らもライバーを軽視する三人に思うところはあったのだ。

 

「まあ、スタッフさんも一度食べてるとはいえ、抵抗があるとは思う」

「だからあたし達が全力で応援してあげるね!」

「魔法の呪文だよー」

 

 三人は笑い合うと、三人のスタッフを囲んでぐるぐると回りだした。

 

「「「ハクナ! マタタ! ハクナ! マタタ! ハクナ! マタタ!」」」

 

[草]

[そういえば、あの三人組も虫食ってたなwww]

[前に三人で歌ってみた動画出してたのはこのため……?]

[ハクナ・マタタハラスメントやめろ]

[ハクハラという新たな単語]

[ハクハラは草]

 

 残りのバッタを全て食べる以外に選択肢がなくなった企画部の三人。

 彼らは半分以上残ったバッタを三等分にして食べ始めた。

 配信上に声があまり乗らないように声を抑えてバッタを飲み込んだ三人は、急いで水を飲み始めた。

 バッタの袋が空になったことで、レオ、夢美、林檎の三人は笑顔を浮かべると、嬉しそうに声を上げた。

 

「はい、よくできました!」

「すっげ、マジで全部食べたじゃん」

「というわけで、バッタはスタッフがおいしくいただきましたー」

 

[食べ物を粗末にしないスタッフの鑑]

[こんな内容なのに一ミリも炎上しなさそうw]

[バラギというか三期生だから成り立つ企画]

[にじライブを象徴する伝説の配信だわ]

 

 ライバーだけに無茶をさせずにしっかりとバッタを平らげたことで、にじライブ自体の評価も上がる。

 特に夢美のマネージャーである四谷への評価は鰻登りだった。

 

「あ、ちなみに、元々打ち合わせの段階でどのラインまで大丈夫って一覧はスタッフに渡してあるから心配しないでね」

 

 もちろん、夢美はそこまでしてはいないが、これはあくまでもにじライブへの批判を抑えるための方便である。

 

「いやいや、さすがに嫌がってるのに食わせるようなバカはいないでしょー」

「芸能界にはいたけどな……」

 

[まあ、さすがにな]

[お労しやレオ君……]

[芸能界の闇を感じる]

 

 こうして無事に目隠しで食べたものを当てる企画は終了した。

 

「いやぁ、それにしてもバッタは懐かしいな。ほら、お前小学校のときニワトリ小屋でバッタをニワトリに食わせてただろ?」

「飼育委員のときの話? そんなこともあったような……」

 

[思い出話たすかる]

[因 果 応 報]

[いや、因果応報だとバラギがニワトリに食われることになるぞw]

[てぇてぇかと思ったらエグイ話だった]

[子供の頃の無邪気さは残酷]

[いや、まだギリギリてぇてぇだ!]

 

 さりげなくレオは夢美との過去話を挟む。レオは隙あらばこうして自分達の関係性をどんどん出していくつもりだった。

 

「さて一通り企画も終わりました。お手伝いのレオ、林檎ちゃんありがとね!」

「どういたしまして」

「こっちも楽しかったよー」

 

 二人に礼を述べたあと、夢美はみんなに言いたいことがあると前置きして真剣な声音で語り始めた。

 

「今日見にきてくれた妖精のみんな。本当にありがとね。こうしてあたしがレオや林檎ちゃんと笑って楽しくライバーやれてるのもみんなのおかげだよ」

 

[突然かわいくなるな]

[やめて泣いちゃう……]

[はあ? お礼を言いたのはこっちだけど(半ギレ)]

 

 突然、夢美から礼を告げられた妖精達は照れたように、茶化したようなコメントを打ち込んだ。妖精はツンデレなのである。

 そんな妖精達の様子を見てくすりと笑うと、夢美は言葉を続けた。

 

「あたし気づいたんだ。やっぱりさ、あたしが笑顔になれないようじゃみんなも笑顔になれないと思うんだ。自分が幸せになれなきゃ人を幸せにできないって言うしね」

 

 そこで言葉を切ると、夢美は満面の笑みを浮かべて言った。

 

 

 

 

「だからみんなあたしを幸せにして! はい、どーぞ!」

 

 

 

 

「「台無しだよ!」」

 

[スパチャ催促してて草]

[かつてないほどいい笑顔でクソみたいなこと言いやがったwww]

[おらァ受け取れ! ¥50,000円]

 

 そこからはコメント欄が高額なスーパーチャットで埋め尽くされた。

 途切れることのないスーパーチャットの奔流。それにスタッフも目を見開いた。

 元々収益化配信の流れや、普段からお金好きな面がある夢美の配信ではスーパーチャットが飛び交うことは珍しい光景ではなかった。

 しかし、ここまで絶えず高額なスーパーチャットが流れる光景は初めてのことだったのだ。

 

「みんなありがと――――! それじゃあちょっと準備するから待っててね!」

 

 夢美は満足げに頷くと、レオと林檎を連れてこの後の準備に入った。

 そして準備が整うと、配信画面が豪華な装飾のされた大広間のような場所へと切り替わった。

 ライオンの姿のレオと夢美は向かい合うようにその中心に立ち、林檎は隅の方でピアノと共に映っていた。

 

[ファッ!?]

[これはもしや!]

[美女と野獣か!]

[なお中身]

 

 妖精達の予想通り、レオと夢美がこれから歌うのは美女と野獣である。

 これはレオがリアルなライオンのモデルを使用していることを活かせないか、と夢美が悩んだ末に思いついた案だった。

 林檎がピアノを弾き始める。

 レオのエスコートにより腕を組んだ夢美は、レオと共に中央に向かって歩き出し、練習通りに二人は踊りだす。

 

 そして、最初の女性パートをレオが英語かつ――女声で歌い始めた。

 

「~~~♪ ~~~♪」

 

[!?]

[まさかのメスライオンwww]

[てか、英語版かよ!]

[あれ、誰の3D配信だったっけ?]

 

「~~~♪ ~~~♪」

 

[バラギの低音どちゃクソカッコいい]

[これは王子様]

[王子様を待てず王子様になった女再び]

[美女と野獣の入れ替わり]

[私達……入れ替わってる!?]

 

 レオが女性パート、夢美が男性パートを歌う。

 それは純粋に二人で歌って踊るよりも面白さに走っているはずだった。

 しかし、笑顔で見つめ合い優雅に踊る二人を見れば笑えるのは最初だけである。現に林檎はピアノを弾きながらも声を上げたくなるのを唇を噛んで堪えており、四谷に至っては五体投地して顔だけを二人の方に向けている始末だ。

 

「「~~~♪ ~~~♪」」

 

[あ゛(尊死)]

[ネタに走ってるのに溢れるてぇてぇ]

[お客様! 困ります! あーっ! いけません! あーっ!]

[この二人が付き合っていないという衝撃の事実]

 

 コメント欄には尊死が続出していたが、それはコメント欄だけの話ではなかった。

 スタジオにいるスタッフですら、彼らの生み出す〝てぇてぇ〟空間に呑まれていた。仮にカプ厨ではない亀戸がこの光景を見ていたとしても〝てぇてぇ〟と呟くことだろう。

 バラレオ――いや、三期生の絆が生み出した光景。それにスタジオの隅にいたミコは心を奪われていた。

 

「oh……てぇてぇ……」

 

 英語版の方を歌ったことも手伝い、英語圏の人間であるミコはとにかく感動していた。

 レオや夢美、林檎の三人が力を合わせて生み出した光景。

 そこにいずれ自分も関わっていくのだと思うと胸が弾まずにはいられなかったのだ。

 

「「~~~♪ ~~~♪」」

 

[8888888888]

[8888888888]

[8888888888]

 

 林檎の演奏が終わるのと同時に、レオと夢美が優雅に一礼する。

 コメント欄は拍手喝采とスーパーチャットの嵐だった。

 これにより、夢美はVtuberのスーパーチャット合計額ランキングで一位になるという偉業を成し遂げることになった。

 

「「「みなさん、ご清聴ありがとうございました!」」」

 

[尊さは時に凶器になる。気をつけろ]

[お前達俺らをどうしたいんだ!]

[ああ、いい物を見た……]

 

 すっかりコメント欄は余韻に浸っていた。

 それほどまでに、この〝美女と野獣で美女と野獣を歌って踊ってみた〟に感動していたのだ。

 そして、そのまま配信画面には垂れ幕が降りてきて、まるで演劇のように夢美の3D化配信は文字通り幕を閉じた。

 配信が終わると、夢美は一気に力を抜いてその場に座り込んだ。

 

「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛、疲れたぁぁぁ……」

「お疲れ様」

 

 レオは座り込んだ夢美を労うように声をかけた。

 

「は――――っ! てぇてぇ! てぇてぇよ――――!」

 

 林檎はピアノから離れてジタバタと暴れていた。

 そんな林檎を見て二人揃って苦笑していると、四谷がやってきた。

 

「夢美ちゃん、獅子島さん、お疲れ様」

「四谷さん、お疲れ様です」

「よっちん。今日はありがとね」

「ううん、私こそごめんね? あの三バカは後でしばかれるから安心して?」

 

 四谷はそう言うと、社内で運用している連絡アプリである人物へと連絡した画面を夢美へと見せる。

 

「あはは……あの人達終わったじゃん」

「ま、今後のためにも人材は有効に活かさないといけないだろうし、これが妥当かもな」

 

 企画部の三人がどうなるか、概ね予想できたレオと夢美は苦笑した。

 

「さて、白雪さん。打ち合わせ通りに」

「にひひっ、もちろん! ついでに歌ってあげるよー」

 

 四谷の言葉に笑顔で答えると、林檎は再びピアノの元へと戻っていった。

 

「ささ、二人共位置についてください」

「はえ?」

「ホア?」

 

 四谷と林檎の意図が分からずに困惑していると、四谷と林檎はニヤニヤしながら告げた。

 

「私だって頑張ってバッタを食べたんですから、ご褒美をください。さあ、もう一度踊ってください!」

「私もご褒美欲しいなー! ほら、伴奏と歌は私がやるから、二人の世界に集中してねー!」

 

「「こんの厄介カプ厨め!」」

 

 そう叫びつつも満更でもないレオと夢美なのであった。

 林檎の伴奏の下、再び踊りだした二人の姿を見て、先程バッタを完食させられた企画部の三人はほっこりとしていた。

 

「はぁ……いいなぁ」

「これがてぇてぇってやつか……」

「ああ、これはいいもんだな」

 

「なぁに浸っとるんや?」

「あらあら、マネージャーへの相談もなしに昆虫食企画を強行したおバカさん達はあなた達かしら?」

 

 穏やかな笑顔を浮かべて二人を眺めていた三人だったが、その肩に置かれた手に体が硬直した。当然、手の主は四谷の連絡を受けてスタジオにやってきたかぐやと内海である。

 

「連絡をくれた四谷には感謝やな」

「人事異動の処理は任せてね」

 

「「「ひえっ」」」

 

 このあと、彼らの所属がマネジメント部になり、厳しい上司の下で業務を学ぶことになるのはまた別のお話である。

 




というわけで、夢美の3D配信回でした!
レオのガチライオンを思いついたときから美女と野獣はずっとやろうと思っていたの満足です!
時間はかかってしまいましたが、そろそろ三章の掲示板のラストの方に行きますので、今後ともよろしくお願いいたします!

レオ&夢美&林檎「面白いと思った方はお気に入り登録、高評価お願いしまーす!」

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