Vの者!~挨拶はこんばん山月!~   作:サニキ リオ

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【カラオケ組コラボ】Vトーーク! その1

「いやぁ、このメンバーで集まると安心しますよねぇ」

『ええ、私もこの集まりは心が休まります』

『みんな所属もバラバラなのにほっとするよね!』

『わ、私もこの集まりは好きです!』

『……心のオアシスですよ、ええ』

 

 レオは以前Vtuberカラオケ大会で共演したメンバー達とThiscodeを繋げて通話していた。

 今日は、個人勢である友世のチャンネルでのコラボ企画に参加する予定だったのだ。出演するのはレオを含めたカラオケ組の五人である。

 現在、五人は配信前にテストもかねて会話を楽しんでいたのだ。

 

「サタン君、大丈夫? 何かやつれてない」

『ちょっと最近、忙しくて……』

 

 声に覇気がないサタンを見かねて、レオは心配そうに声をかける。

 最近のサタンは多忙だった。

 プロゲーマーの集まる企画に参加したり、生放送の頻度が増えたり、サタンだけではなく魔王軍チャンネルのメンバー全員が多忙な状況にあった。

 魔王軍の中でも、注目度の高いサタンの駆り出される頻度は異常だったと言ってもいいだろう。

 

「最近深夜の生配信が多くて、そのままスタジオに泊まって朝帰りすること多いんだよね? 身体を壊したら元も子もないよ」

『あはは……姉さんから聞いたんですか?』

「まあ、間に白雪は挟んでるけどね」

 

 レオはまひるが毎日心配そうにサタンの様子を話してくる、という話を林檎から聞いていた。

 

『コミケに駆り出したり、ボイス収録や規模の大きい企画への参加……バーチャルリンクはあなた達に無理させ過ぎなのでは?』

 

 サタンの所属する事務所に不快感を覚えたようにイルカが呟く。それに対して、サタンはどこか諦めの混じった声音で言った。

 

『仕方ありませんよ。バチャリンで名が売れているのは僕達だけなんですから』

 

 バーチャルリンクでは魔王軍チャンネルが成功して、それに続くように他のVtuberもプロデュースしていったが、魔王軍チャンネルほどの人気は出ていなかった。

 しかし、これはバーチャルリンクだけではなく、他の事務所でも同じことが言える。

 大抵の人間は話題になっているVtuberだけを見て、所属している事務所の他のVtuberまで見たりはしないのだ。にじライブが特殊なのである。事務所から各ライバーを見にいく、という導線があるのは、にじライブがライバー同士の関係性を売りにしているからなのだ。

 実際、にじライブの視聴者達はカプ厨とまではいかなくとも、ライバー同士の絡みを好む〝関係性オタク〟が多くを占めているのだ。

 

「まあ、サタン君達はある意味、箱内コラボを一つのチャンネルで常にやっているようなものだからね」

『私も前にお邪魔させていただきましたけど、とっても楽しそうでしたものね。コラボの良さってこういうことなんだろうなぁ、って思いましたもの』

『あははっ、コラボ文化作った偉人が何言ってんの!』

『あなたも人のことは言えないでしょう』

 

 イルカはVtuberで初めてコラボ配信を行った存在であり、友世は個人勢であるにも関わらず多くの企業Vとコラボしている存在だ。

 どちらもVtuberのコラボ文化を語る上では欠かせない大きな存在なのだ。

 

『コラボと言えば、私も最近は皆さんのおかげで結構いろんなVの方と絡めるようになりました』

『和音ちゃんは今までずっとソロの歌枠メインだったもんね!』

『あはは……恥ずかしながら関りの浅い人と一緒にいるだけでも緊張しちゃいまして……』

「でも、だいぶ度胸つきましたよね。今や恒例ですもんね、凸待ちデュエット」

 

 和音はVtuberカラオケ大会を行う前は歌ってみた動画がメインで、企画系の配信はほとんどしていなかった。

 歌唱力の割には知名度が低い。そんな状況を打破することができたのは、カラオケ組という企業の枠を超えた仲間に出会えたからである。

 

『あっ、時間やばい!? みんなそろそろ配信始まっちゃうよ!』

『ちょ! もうそんな時間ですか!』

『あら、ちょっとのんびりしすぎましたね』

『わ、ど、どど、どうしましょう!』

「七色さん、落ち着いてください! まだ始まってないから大丈夫ですって!」

 

 こうしてバタバタしたままカラオケ組のコラボ配信が始まった。

 配信が開始され、画面の斜め下に上半身のみを映した友世は挨拶をするため、大きく息を吸い込んだ。

 

 

 

 

「友達のみんな、やっっほ――――! 今日もみんなに元気をお届け! みんなの友達! 但野友世だよ――――!」

 

 

 

 

[やっっほ――――!]

[やっっほ――――!]

[やっっほ――――!]

[安定の初手鼓膜破壊]

[まあ、音量調整してるんですけど]

[俺はあえてしてないぞ]

[この挨拶キメないとダメな体になってしまった ¥4,000円]

[さすが歩くモンエナ、中毒性が違うぜ ¥1,000円]

 

 恒例の耳を劈くような大声に、友世の視聴者である〝友達〟はすっかり慣れた様子だった。

 

『今日はカラオケ組コラボだよ! さあ、カモン!』

『友達のみなさん、キュッキュー! 板東イルカですわ。今日は宜しくお願い致します』

 

[キュッキュー! ¥2,000円]

[イルカちゃんきちゃ!]

[動画だけじゃなくて配信の頻度高くてたすかる ¥6,000円]

[一番気軽にコラボしてる四天王だな]

 

 イルカの登場により、コメント欄が一気に盛り上がる。その盛り上がり具合は、普段レオの配信でもなかなか見られないほどのコメントの量だった。

 

『ふっはっは! 友達の諸君! 久々の盟友達との語らいの時間を存分に楽しんでいってくれ!』

 

[はい、魔王様! ¥3,000円]

[最近、忙しそうだけど元気そうで安心した]

[この前のピースポのバトル良かったぞ!]

[配下の求めることを全うする魔王の鑑]

 

 疲れが溜まっていたサタンだったが、そこは彼もプロである。

 やつれている様子など微塵も感じさせずに、サタンはいつものように声を張って挨拶をした。

 

『み、みなさん! こんにちは! 七色和音、です! 今日はよろしくお願いしましゅ!』

 

[こんにちは!]

[カラオケ組だといつも以上に元気なのすこ]

[でも、ちょっと噛んでるの可愛い]

[元気な和音ちゃんたすかる ¥5,000円]

 

 和音はいつもの配信以上にリラックスした様子で挨拶をした。

 あがり症の彼女も、心から信頼できる数少ないカラオケ組のメンバーの前ではそこまで緊張せずに済んでいた。

 それでも、噛んでしまうのはご愛敬というやつである。

 最後にレオの番になったのだが、レオはニヤリと口元を歪めると、音量に気をつけながらライオンの鳴き真似をした。

 

「GRRRRRRRRRRRRRR!!!」

 

[!?]

[!?]

[!?]

 

[まーたやりやがったよwww]

[みんな爆笑してるwww]

 

 いきなり台本にないことをし始めたレオに他の四人は笑いを堪えることができなかった。

 

[その声は、わが友、李徴子ではないか?]

[その声は、わが友、李徴子ではないか?]

[その声は、わが友、李徴子ではないか?]

 

 コメント欄にお約束のコメントが現れたことで、レオは満足げに頷くと堂々と挨拶をした。

 

「如何にも自分はバーチャル隴西の李徴である……友達のみなさん! こんばん山月! 獅子島レオです!」

 

[こんばん山月!]

[にじライブ動物園から猛獣が脱走してるぞ]

[人間性はまともなのに行動はあたおかなんだよなぁ]

[咆哮たすかる ¥3,000円]

 

 何かしでかすとは思っていたが、いきなりライオンの鳴き真似からくるとは思っていなかったため、コメント欄は挨拶をしただけだというのに盛り上がっていた。

 

『イェーイ! レオ君の咆哮いただきました!』

『あなたはネタを挟まないと死んじゃう病にでもかかっているのでしょうか?』

「あはは、すみません。にじライブなもんで」

『あら、それはしょうがないですわね』

 

[四天王も認めるあたおか]

[それがにじライブ]

 

『というわけで立ち絵ドーン! 今日のゲストはカラオケ組のみんなだよ!』

「ちょ、友世さん! 俺の立ち絵ガチライオンになってますって!」

『あれ、違ったっけ?』

 

[ガチライオンで草]

[残当]

[完全に扱いをわかってる友ちんw]

 

 友世は事前に用意しておいた立ち絵を表示するが、そこに映っていたレオはライオンの姿だった。

 

『ごめんごめん! 冗談だよ! ほい!』

 

[レオ君のちゃんとした立ち絵が表示されると違和感がすごい]

[ガチライオンのインパクトが強すぎた]

[初回コラボから暴れるからそうなるんだよw]

 

 それから友世はレオ本来の立ち絵を表示し直し、台本通りの進行へと戻した。

 

『それじゃ早速始めよっか! 今日の企画はこれ!』

 

 友世は配信画面の中央に予め作成しておいたロゴを表示した。

 

『『『『「Vトーーク!」』』』』

 

 久々のカラオケ組のコラボ。

 各テーマに沿ったトークをしていく友世の企画に、視聴者達は心を躍らせていた。

 




カラオケ組の話は長くなりがち
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