Vの者!~挨拶はこんばん山月!~   作:サニキ リオ

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【一日目】河口湖へ出発!

 山梨へ出発する当日、レオは雑談枠で配信を行っていた。

 三日配信を休むということもあり、ギリギリまで袁傪達と話したかったのだ。

 

「告知なんですけど、俺達三期生と魔王軍チャンネルの皆さんとのコラボが決まりました!」

 

[うおおおおお!]

[ついにレオ君達も異世界召喚されるときが……!]

[あのカオスなミニアニメに三期生ぶっこむのか]

[闇鍋やめろ]

 

 レオ達三期生は山梨からの帰還後にサタン達魔王軍チャンネルとのコラボを控えていた。

 魔王軍チャンネルとのコラボでは、先にミニアニメの収録後、ゲームでのコラボを予定している。

 サタン以外の魔王軍のメンバー、サラ・マンドラ、フィア・シルル、ウェンディ・ネーブル、ノーム・アースディとは初対面であるため、これからのコラボの幅が増えるとレオは喜んでいた。

 

「いやぁ、三期生も無事全員3D化したし楽しみだなぁ。サタン君との絡みも久しぶりだし、マジで楽しみだわ」

 

[レオ君、ウッキウキやん]

[四天王の子達との絡みも楽しみ]

[サラちゃん素は結構まともな子だから手加減してあげてね……]

 

 魔王軍チャンネルとのコラボの告知を終えたレオは、次に自分の予定を告知した。

 

「それともう一つ連絡なんですけど、ちょっと最近忙しく三日ほどお休みをいただこうと思ってます」

 

[最近めっちゃ忙しそうだったもんね]

[ゆっくり休んでもろて]

[ようやく休むと聞いて安心したわ]

[のんびり待ってるよ!]

 

 レオの配信を休む旨の告知に関しては、袁傪全員が納得していた。

 むしろ、ほぼメジャーデビューが決まって案件も増えているというのに、毎日配信を継続しているレオには休んで欲しいとみんなが思っていたくらいであった。

 

「一応ツウィッターは普通に動いてるから、気軽に絡んでくれると嬉しいです」

 

[寂しい思いはさせないぜ!]

[いや、マジで無理しないでな?]

[まあ、気軽に休んでもろて]

 

「みんな、ありがとう! 英気を養って帰ってくるから待っててな! サタン君達とのコラボもお楽しみに! それでは、おつ山月!」

 

[おつ山月!]

[おつ山月!]

[おつ山月!]

 

 配信を切ると、レオは事前にまとめていた荷物を確認し始めた。

 アイドル時代、西へ東へ飛び回っていたこともあり、レオは旅慣れていた。

 一通り荷物の確認を終えたレオはふと、夢美の準備が心配になった。

 夢美のズボラさを把握しているレオとしては、彼女が事前に準備をしっかり終えているとは思えなかったのだ。

 現在夢美はレッスンを終えて自室に戻っている頃だ。

 試しに[準備、大丈夫か?]と連絡をしてみれば[たすてけ]という四文字が返ってきた。

 ため息をつきながらも、レオは腰を上げて夢美の部屋へと向かおうとした。

 

「あれ、ケイティ?」

「あっ、お疲れ様デース!」

 

 扉を開けると、ちょうどエレベーターホールからミコが歩いてきた。

 よくマンションの廊下で会うな、と苦笑しつつもレオはミコに話しかけた。

 

「授業終わりか?」

「Yes! 今日は一限から四限まであったので疲れマシター……必修科目は融通が利かなくて困りマスネー」

「お、おう、大変だな……」

 

 本当に疲れているのだろう。

 ミコはいつもよりも流暢な日本語で愚痴を零すと自室の鍵を取り出した。

 部屋のドアを開けると、思い出したようにミコはスマートフォンを取り出した。

 

「あっ、司馬サン! RINE教えてクダサイ!」

「もちろんだ。困ったことがあったらいつでも連絡してくれ」

 

 レオはミコとラインを交換し、笑顔を浮かべてそう言うと夢美の部屋へと向かった。

 合鍵でドアを開けて中に入ると案の定、床に服などの荷物が散乱した状態で夢美が泣きそうな表情を浮かべていた。

 

「レオ~……」

「ったく、だから昨日のうちに声かけろって言っただろ」

「だって、いけると思ったんだよ!」

「その根拠のない自信はどこから湧いてくるんだ……まあいいや、強引に手伝わなかった俺も悪いし、さっさと終わらせて事務所行くぞ!」

 

 こうして、集合時間ギリギリまで準備に時間をとられたレオと夢美は集合時間に遅刻するはめになった。

 

「「すみません、遅れました!」」

 

「まったく、何しとるんや……」

 

 息を切らしながら事務所に駆け込んでいたレオと夢美を見て、呆れたようにため息をついた。

 

「二人共、遅刻はダメだよー。案件前にその調子じゃ先が思いやられるねー」

「あれ? 林檎ちゃんもまひるが電話しなかったらそのまま寝てたよね?」

「うぐっ」

 

 ニヤニヤしながらレオと夢美を揶揄おうとしていた林檎だったが、まひるの指摘に言葉を詰まらせた。

 林檎は事前に準備こそ終わらせていたものの、昼寝をしたままぐっすりと眠ってしまい、まひるの電話で目を覚ましたため、あまり人のことは言えなかった。

 

「今、飯田と亀ちゃんが車回しとるから、二人が着き次第出るで」

「かっちゃんさんは?」

「もうすぐ来ると思うで」

「待たせて悪いね。僕はいつでも出れるよ」

 

 かぐやがそう言うや否や、キャリーケースを持った勝輝が現れた。その後ろには、二期生である名板赤哉、吉備津桃華、ハンプ亭ダンプ、下桐朱雀がいた。

 

「あれ、赤哉先輩、桃華先輩」

「それにハンプやシュッシュまで。どうしたの?」

 

 二期生の代表的な面々がやってきたことで

 

「今日はオフコラボがありましてね。そのついでに見送りにきたんですよ」

「まったく、案件ついでにバカンスなんて羨ましいこったな」

「存分に楽しんできなよ」

「みんな、楽しんできてにぇ!」

 

 ちょうどオフコラボ配信があったため、事務所に寄っていた四人はレオ達が山梨まで行くと知って見送りに来ていたのだ。

 

「お土産期待してるぞ!」

「いきなりたかるのはやめましょうよ……」

「まあ、適当に見繕って買ってくるから期待しててねー」

 

 お土産を要求した桃華に対して、林檎は笑顔でそれを承諾した。それが口の悪い桃華なりの見送りの言葉だということを理解していたからだ。

 

「まひる、気をつけてな」

「写真とか、いっぱい取ってきてにぇ!」

「うん、もちろんだよ!」

 

 同期であるまひる、ハンプ、朱雀は楽し気に談笑し始める。

 二期生の中でも突出して人気のあるまひるだが、同期であるハンプや朱雀とは変わらず仲が良かった。

 

「獅子島君、茨木さん、存分に楽しんでくるといいですよ」

「な、何で俺達限定?」

「ははっ、言わなくてもわかるでしょう?」

 

 楽し気に笑うと、赤哉はギャーギャー騒ぎ始めた桃華の元へと戻っていった。

 以前、夢美とのことで赤哉に悩みを聞いてもらったことのあるレオは赤哉の言ったことの意味は理解していた。

 そして、雰囲気でそれとなく夢美との間に何があったのかも赤哉は察している様子だった。

 

「ねえ、レオ。あかやんの今の言葉どういう意味?」

「いや、何でもない。気にするな」

「えー、気になるじゃん」

 

 前までならばレオがはぐらかしたことはそこまで追及しない主義の夢美だったが、最近では割と重要そうな隠し事は追及するようになっていた。それに自分が関わっているのならばなおさらのことだった。

 

「教えて」

「教えない」

「いいじゃん、減るもんでもないし」

「俺の精神力が減るからダメだ」

 

 ふくれっ面で追及を続けると夢美と、どこか気まずそうにはぐらかすレオ。

 そんな二人のいつものやり取りを見ていた林檎は目を輝かせてはしゃいでいた。

 

「たぁー……! 出発前のてぇてぇ補給完了!」

「今日も林檎は平常運転やな……」

「良いことじゃないか。いつも通りっていうのは大事なことだよ」

「せやな……それなら乙姫にも来てもらいたいところやったけどな」

「あら、呼んだ?」

 

 かぐやがため息をついていると、彼女の背後から悪戯っぽい笑みを浮かべた内海が立っていた。

 

「おと――内海さん! 何でここに?」

「見送りよ。業務も一息ついたところだったから」

 

 凝った体をほぐすように伸びをすると、内海はかぐやと勝輝に告げた。

 

「私はここにいるけど、二人は頑張ってね」

 

 その言葉はこれから案件についての言葉だけではないように思えた。

 

「……わかった。バッチリ決めてくるわ」

「あとのことは任せてくれ」

 

 複雑そうな表情を浮かべるかぐやに対して、勝輝はニヤリと笑うと内海の後ろにいた品川にアイコンタクトを送った。

 

「皆さん、お待たせしました!」

「いつでも車だせますよ!」

 

 今回の運転係である飯田と亀戸がやってきたことで、全員は事務所を出た。

 荷物を積み込む前に、勝輝は車に乗る割り振りについて確認をした。

 

「ああ、そうだ。どっちの車に乗るかだけど、タバコの煙や匂いがダメな人はいるかな?」

「うーん、まひるはちょっと苦手かな」

「私もあんまりかなー」

「俺は大丈夫ですよ」

「あたしも前の職場が喫煙者だらけだったから慣れてるんで大丈夫です」

 

 勝輝と飯田は喫煙者のため、かぐやとタバコが苦手なまひると林檎が亀戸の運転する車に、飯田の運転する車にはレオ、夢美、勝輝が乗ることになった。

 

「それじゃあ、山梨まで――」

「出発!」

 

 こうして八人は意気揚々と山梨へ向けて出発するのであった。

 一緒に外へ出てきていた二期生の四人は、車が見えなくなるまでレオ達を見送っていた。

 

「さて、我々も解散しますかね」

「いやいや、せっかくだからこのあと飲みにでもいこうぜ」

 

 赤哉が解散するように促すと、ハンプが赤哉の肩に腕を回して飲み会の提案をした。それに対して赤哉は苦笑した。

 

「あの太一さん、酔って暴れる聖羅さんを誰が抑えると思ってるんですか?」

「あちしも太一に賛成! ぐっちゃんも行くっっしょ?」

「ったり前よ! 智也、おやっさんに連絡しといてー」

「松岡さんまで……」

 

 桃華は当然として、朱雀も賛成してしまい一対三。

 自分の味方がいないことを理解した赤哉はため息をつくと、笑顔を浮かべて言った。

 

「わかりました。今日は飲み明かしましょう!」

 

「「「イェーイ!」」」

 

 こうして二期生の四人は赤哉の知り合いの店で、出発したレオ達の安全祈願という名目で朝まで飲み明かすのであった。

 




おかしい、出発するだけで一話使ってしまった……。

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