Vの者!~挨拶はこんばん山月!~   作:サニキ リオ

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【夢星島】娘ができました

 画面いっぱいに裕福な家庭と見受けられるリビングの背景が映し出される。

 時折聞こえてくるゲーム音は、世界的にも有名な髯と帽子がトレードマークの配管工が主人公のゲームのものだ。

 そんな画面の中心で、ゲームオーバーの音と共に金髪碧眼の少女は慟哭する。

 

 

 

「あ゛あ゛ゴミカスゥゥゥゥゥ! 死ねぇぇぇ!」

 

 

 

[草]

[Lol]

[誰かの悪影響を受けてますねぇ……]

[これは家族会議案件]

 

 コメント欄には日本語だけでなく海外からのコメントも多く見受けられた。

 今日のコラボは夢美のチャンネルで行われている。

 既にライブ配信の待機所を作成した時点で夢美の登録者数は爆発的に増加していた。

 ミコがそのままゲームを続けていると、モデルが表示されないままレオの声が入ってくる。

 

「ミコー! 夢美ー! いるのかー!」

「I’m here!」

「ほーい」

「……二人共ちょっと来てくれるか」

 

 レオの言葉と共に、レオと夢美も画面に表示された。

 画面に自分達が表示されたことを確認したレオは深刻そうな声音で話始めた。

 

「さて、二人共集まったな――家族会議を始めるぞ」

 

[本当に家族会議始まってて草]

[いきなりwww]

[ホントレオ君とバラギは茶番好きだな]

 

 バラレオコラボでは寸劇のような茶番がよく展開される。

 3Dコラボでも行われたそれはミコを巻き込んで行われたのであった。

 

「夢美、お前先週の桃華先輩とのコラボでエグい下ネタで盛り上がってたよな? ミコの教育に悪いだろ。さっきだって夢美の真似してゴミカスって叫んでたんだぞ」

「べ、別にそこまでエグくないしぃ?」

 

[いや、あれは酷かった]

[うーん、ギルティ]

[中学生レベルの下ネタで止まってればなぁ]

[お互いの相方の愚痴で盛り上がったからセーフっちゃセーフ]

 

 夢美は明後日の方向を向きながら、誤魔化すようにへたくそな口笛を吹いた。

 しかし、そこで夢美もレオへと反撃を始めた。

 

「そんなこと言ったらレオだってノームちゃんいじめてたでしょ。あれだって教育に悪いでしょ!」

「いや、あれは、ほら! そういうノリだったじゃん?」

「あーあ、他企業所属で同じママの子いじめるなんて最低だね!」

 

[完全に悪ガキだったなwww]

[ペットのBちゃん思い出した]

[あれはエロペットだろwww]

[Vとしては先輩だけど妹感が拭えないノームちゃん]

[ひぃひー↑がトレンド入りしたもんな]

[むしろあれはたすかった]

 

 夢美から先日ノームを赤哉と一緒にひたすら笑わせた件を指摘され、レオは狼狽え始める。

 そのまま流れでミコは自分の失敗談を語ろうとした。

 

「うーん……ワタシは――」

 

「「あっ、ミコはいいんだよ?」」

 

[娘にゲロ甘で草]

[親バカVの誕生である]

[朗報、バラレオ夫婦は娘に甘い]

 

 ミコが何かを言う前にレオと夢美はミコを制した。

 もちろん、この流れは全て台本が用意してあった。

 

「埒が明かないな……」

「クッソ、お互いに叩けばいくらでもホコリが出てくる」

 

[草]

[何だかんだで二人共問題児だからな]

[マネさん、強く生きて……]

 

 レオも夢美もデビューしてから今までいろいろと問題を起こしてきた。

 トラブル続きの二人がお互いの非を指摘したところで、だいたい同じくらいになるのだ。

 プライベートな話題を出せば軍配はレオに上がるだろうが。

 

「じゃあ、ゲームで白黒つけマショウ!」

 

[茶番終了のお知らせ]

[自然な導入]

[ああ、自然な導入だった]

[自然すぎて驚いたぜ]

 

 明らかに不自然な流れだったが、コメント欄は示し合せたかのように〝自然な流れ〟というコメントが流れていた。ここまでくればもうお約束である。

 

「今日やるのは山手線ゲーム、デス! パパ! ルール説明をお願いシマース!」

 

[まさかの山手線ゲーム]

[てか、ミコちゃんめっちゃ日本語うまいな!]

[ちょっと片言感あるけど、ずっと聞いてられるわ]

[むしろ片言感がいいわ]

 

 片言ながらもスムーズに進行するミコにコメント欄は大いに盛り上がっていた。

 ミコからの進行役のバトンを受け取たレオは山手線ゲームについて説明を始めた。

 

「了解! 山手線ゲームは……説明いるかこれ? みんな知ってると思うけどなぁ」

 

[知ってるけどやったことありません……]

[やる友達がいなかった]

[一人でやったことならありますけど(半ギレ)]

[コメント欄に猛者がいて草]

 

 レオが当然のような空気を出しながら説明を省略しようとしたことで、コメント欄に悲しみが溢れ出す。

 山手線ゲームは場の空気を盛り上げるためのゲームだ。

 私生活だけでなく、バラエティー番組でさんざんやったことがあるレオにはやったことがない人がいることが想像しづらかった。

 

「……何かごめん。ちゃんと説明するわ」

 

[謝られると辛い]

[空気悪くね?]

[この話やめない?]

 

 山手線ゲームとは、最初にお題を決めて該当する答えを一人ずつ順番に答えていくシンプルなゲームだ。

 答えは誰もがイメージできるものではなくてはいけないため、専門用語などは基本的にNGとなる。このお題によく山手線の駅名が用いられることで山手線ゲームと呼ばれているのだ。

 一度出た答えは二度目に答えることはできず、同じ答えを二回言ったり、回答に詰まったり、答えたものがお題にそぐわないものだった場合負けとなる。

 レオが一通り説明を終えると、夢美ががわざとらしく明るい声音で告げる。

 

「ちなみに、あたしはやったことあるぞ!」

 

[や め ろ]

[唐突にマウントとってくるな]

[そういう陽キャのノリ嫌いそうなのに意外]

 

「ははっ……懐かしいな。前職の飲み会で負けて罰ゲームで飲みまくってゲロ吐きながら帰ったっけな……うわぁぁぁぁぁん!」

 

[あっ]

[あかん]

[そういえば、バラギの前職は……]

 

 夢美がわざとらしく声のトーンを下げたことでコメント欄がお通夜ムードに変わる。

 泣き叫ぶ演技をしている夢美に対して、ミコは優しく声をかけた。

 

「ママ、元気ダシテ?」

「うぅ、ありがとね、ミコ……」

 

[バラミコてぇてぇ]

[夢星でもいい気がする]

[落ち込む母を慰める娘の図]

 

 一通り説明を含めた導入の流れも終わったことで、レオは早速ゲームを開始することにした。

 

「そんじゃ、早速最初のゲームをやっていこうか」

 

 今回、ゲーム内容が日本語メインのものになってしまうこともあり、海外ニキのために同時通訳で四谷がゲームの回答をすぐに画面に英語で打ち込んでいく方式をとっている。

 また、この山手線ゲームを行うのにあたり、映像があった方がわかりやすいため、二世代ほど前のゲームハードから山手線ゲームの入ったゲームを、現マネジメント部所属の元企画部のメンバーが引っ張り出してきた。

 こうした事務所の全面サポートを受けて、レオ達は山手線ゲームを始めた。

 

「それじゃ、リズムに合わせてお題を言ったらAボタンを押してくれ。そうすると画面の爆弾が次の人に回されるから」

「りょ!」

「I got it!」

 

 二人が元気良く頷いたことを確認すると、レオはゲームを開始した。

 

「俺、夢美、ミコの順で回してくぞ! 最初のお題は〝Vtuber〟だ!」

 

「「イェーイ!」」

 

「せーの!」

 

 レオの掛け声と共に全員がパンパンと手を叩く。

 

「アイノココロさん!」

 

[いきなり大御所に媚びていくスタイル]

[まあ、Vtuberといったらね]

[これ、下手したらプレミに繋がりそうw]

 

 レオがココロの名前を上げたことで、夢美は流れ的に答えるべき名前を答えた。

 

「板東イルカさん!」

 

[まあ、そうなるわな]

[ココちゃんと畜生イルカ仲良いしな]

[そしてカラオケ組の元締めである]

 

 夢美が答えたことで三番手はミコである。

 そのまま四天王の名前を上げるべきかミコは迷ったが、カラオケ組の名前を出すことにした。

 

「Satan Luciferana!」

 

[発音ネイティブで草]

[世界に轟く魔王軍の名]

[てか、日本語メインのゲームでミコちゃんフリじゃない?]

 

 ミコが回答を言ったことで順番が一巡する。

 

「但野友世さん!」

 

[完全にカラオケ組の流れ]

[友ちんって結構なペースであちこちとコラボしてるよな]

[早くカラオケ組のコラボ見たい]

 

「七色和音ちゃん!」

 

[そういえば、バラギと和音ちゃんは仲良いんだったわ]

[今度コラボするって言ってたぞ]

[楽しみ!]

 

「Adultina!」

 

[いや四天王だけども!]

[よりにもよって何でそいつをチョイスしたwww]

[アダルティーナを選ぶ辺りミコちゃんもにじライブ]

 

 アダルティーナ。元祖下ネタVtuberと言われる四天王の一人だ。

 元祖というだけで、そこまでエグイ下ネタは言ったりはしないが、メンバー限定配信では躊躇いなくエグ目の下ネタを披露しているということは有名な話だったりする。

 それからもVtuberの名前がどんどん出てきたが、全員自分の名前は最後の切り札としてとっておいたのだ。

 

「バーチャル美少女受肉おじさん!」

「サラ・マンドラちゃん!」

「Wendy Navel!」

「リズムミアさん!」

「フィア・シルル君!」

「Gnome Earthdy!」

「竹取かぐや先輩!」

「白鳥まひるちゃん!」

「Virtual SAMURAI」

 

「「急ににじライブ以外に行くじゃん」」

 

[草]

[よくこんなにポンポンVの名前出てくるなwww]

[レオ君は元々Vオタだしな]

[ミコちゃんもバラギがきっかけだけど、Vtuberの沼にどっぷり浸かってるから詳しいぞ]

[切り抜きの和訳で見たわ]

[最近リズムちゃん見てないな]

[ココちゃんもコラボのときしか最近は見てないわ]

[久しぶりに見に行くか]

 

 黎明期から現在まで大勢のVtuberの名前が挙がったことで、当時からVtuberを追い続けていた視聴者達は感慨深い気持ちになっていた。

 そんな中、着実に追い詰められている者がいた。

 

「えーと……茨木夢美!」

 

[とうとう自分の名前言ったよw]

[バラギはにじライブというか、まひるちゃんとバンチョー、一部の可愛い系しか見てなかったらしいからな]

[むしろ、よくここまで持った方]

 

 夢美はVtuber自体にはそこまで詳しいわけではなかった。

 仕事上、覚えなければならず覚えた者はいるが、基本興味がなければ名前など覚えられないのだ。

 レオとミコがにじライブのライバーを避けて回答していたこともあり、夢美は比較的答えを言うことができていたが、とうとう答えに詰まり始めていた。

 

「えーと、えーと……獅子島レオ!」

 

「はい、終了!」

[結局バラギだめじゃん!]

[やはりこうなったか]

[最後は潔く夫の名前で締める妻の鑑]

 

 夢美が二回目の回答をしたことでゲーム画面の爆弾が爆発する。

 負けて悔しがっている夢美の元へミコが近づくと、とても楽しそうな笑顔を浮かべて言った。

 

「ママ? ワタシ、にじライブのライバーはあんまり言いませんデシタ! ママはたくさん言ってマシタネ!」

「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛! 娘に煽られたぁぁぁ!」

 

[結局教育に悪くて草]

[やはりにじライブのライバーだったか……]

[にじライブという概念は世界を超える]

 

 ミコに煽られた夢美は地底のそこから響くような低い声で叫び声をあげた。

 そして、そのタイミングで二つのスーパーチャットが流れた。

 

[妹バラギ:叔母になりました! ¥210]

[姉ライオン:伯母になりました! ¥3,000]

 

「「ちょ、本物!? 何スパチャしてんの!?」」

 

「叔母サン達! 見てマスカー!」

 

[草]

[本物!?]

[前にもコメント欄に現れたことあるから本物だわ]

[家族大集合]

[夢星島てぇてぇ]

[夢星島いいな]

[響きが綺麗だわ]

 

 こうしてレオの姉である静香と夢美の妹である由紀もコメント欄に現れた配信は大いに盛り上がった。

 のちに夢美とレオで切り抜き動画を作成し、そこにミコが英訳をつけたまとめ動画がミコのチャンネルにも上がり、〝夢星島〟と名付けられたレオ達コラボは大成功を収めるのであった。

 

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