「じゃあねー!」
「おつまひー!」
最近、まひるとサーラのコラボが増えてきた。
サーラは配信中のフォローに定評があり、バーチャルリンクにいた頃よりもにじライブに馴染んできたため、すっかり曲者の多い二期生とのコラボで存在感を放っていた。
二期生達との自然なやり取りを見た視聴者からまるで最初から二期生として存在していたのではないかと言われるほどである。
その中でもまひるとは、親子のようなやり取りが評判となっていた。
二人とも動画編集が得意なこともあり趣味も気も合うため、配信外でもすっかり仲良くなっていたのだ。
「おつですぞ!」
「またな!」
それから、白夜とハンプもコラボが増えていた。
元々ハンプはプロゲーマーであり、白夜の憧れの存在だった。
ハンプもまた元サタンである白夜のことは、男性Vtuberとしての道を切り開いてくれた者として敬意を払っていた。
お互いに機会があればコラボしたいと思っていたところに、スケジュールが合ってコラボしてみればその相性は抜群だった。
お互いにゲームがうまく、打てば響くようなトークを展開する二人のやり取りは息子と一緒に全力で遊ぶ父親を彷彿とさせた。
またハンプとサーラの組み合わせも〝ハンサラ〟と呼ばれて話題になっていた。
お互いに機材周りに詳しく、年が近いこともあって気が合う。
まるで長年連れ添った夫婦のようなやり取りに、新たな沼が生まれたのだ。
ドラゴン化したサーラが卵であるハンプを温めるファンアートなども生まれ、新たなてぇてぇの波が起きていた。
それに加えてまひると白夜が本当の姉弟だということも知れ渡っており、まひるはあることを思いついた。
家族コラボである。
レオと夢美、ミコの〝夢星島〟で家族コラボの面白さは証明されている。
せっかく仲良くなれた以上、もっと楽しくコラボしたいと思うのは自然な流れだった。
「てなわけで、やろ! 家族コラボ」
「僕は別にいいけど、太一さんと智花さんはなんて言ってんの?」
「これから聞くとこだよー」
松本家の食卓では、まひるは今日も白夜が作った料理をおいしそうに頬張っていた。
「てか、姉ちゃん……やっぱ、いいや」
「何々? 気になるじゃん」
「いや、太一さんの方は姉ちゃんが誘っといて。智花さんには僕が声かけとくから」
「わかった!」
ふと姉の姿に違和感を持った白夜は目を泳がすと、話題を逸らした。
「そういえば、またカラオケ組でコラボできることになったんだ」
「えっ、モデル変わってるけど大丈夫なの?」
「今のサタンをやってくれてる日村君も協力してくれるみたいでさ。まあ、うまくやるよ」
白夜がバーチャルリンク改めEncourageを引退してからカラオケ組のコラボは一回も行われていない。
黒岩が全ての責任を被って退任したものの、社内の体制は大きく改善されたとは言いづらい。
いまだに二代目魔王軍が苦境の中戦っていることには白夜ももどかしさを感じていた。
白夜を含めた元魔王軍のメンバーは定期的に連絡を取ってはいるが、Encourageでの現状は苦しいものだった。
「二代目の人達も何とかしてあげたいよね……」
「大丈夫だよ。あの子達はいつか絶対に救い出す。今は耐えてもらうしかないけどね」
白夜は二代目魔王軍のメンバーの顔を思い浮かべて優しい笑みを浮かべた。
二代目サラの知念真理、二代目ウェンディの西畑夏帆、二代目フィアの髙地伊吹、二代目ノームの上田蓮歌、二代目サタンの日村紫耀。
全員がライバーとしての適性を持っていると白夜は踏んでいた。
事務所にも信用できる数少ない人間に想いを託した。
やるべきことは全てやった。あとは彼ら次第である。
「それにしても、何でこうフィアにはぶっ飛んだ魂が入るのか……」
二代目魔王軍の未来に想いを馳せている中、白夜はフィア役の伊吹との会話を思い出して苦笑する。
「姉ちゃん、月と太陽って別物だって知ってた?」
ふと、頭が弱いことで有名な姉に白夜はフィアとの会話で頭を抱えることになった質問をしてみる。
「何言ってんの司ー。そんなの常識だよ?」
「だよな――」
「太陽が沈んで月に変わってからお空に上がってくるんでしょ?」
「姉ちゃん……」
そして、返ってきたまひるのフィアと全く同じ答えに白夜は頭を抱えるのであった。
それから、打ち合わせはトントン拍子で進み、ハンプ、サーラ、まひる、白夜の四人でのコラボの日がやってきた。
事前にツウィッターで募集したところこの四人のコラボ名は〝
そんな朝昼夜亭の初コラボは、レオ達の〝夢星島〟と同様に、画面いっぱいに裕福な家庭と見受けられるリビングの背景が映し出された。
『ふぅ……今日も道場破りをちぎっては投げちぎっては投げ……なかなかに疲れましたぞ』
『あなたおかえりなさい。疲れているところ悪いんだけど、子供達の相手をしてくれないかしら?』
[何がはじまるんです?]
[ハンサラ夫婦てぇてぇ]
[まさかの家族コラボ]
[やっぱり茶番はじまって草]
出だしから夫婦のようなやり取りをする二人にコメント欄は盛り上がる。
『パパー! おかえり!』
「父さん、モンハンしようよ!」
『おいおい、こっちは今日も道場の仕事で疲れているんですぞ?』
『あら、私だって家事で疲れているんだけど?』
『まひるだってこう……何か疲れてるんですけど!』
「いや、姉ちゃんはずっとゲームしてたろ……」
[まひるちゃんだけ正当性なくて草]
[理由考えたけど思い浮かばなかったんだろうなw]
[白夜君の呆れ具合が自然すぎる]
[普段からこうなんだろうなぁ]
それから四人は緩いノリの茶番を続けると本題に入った。
『よーし、ゲームをするのは構わない。ですが、あまり長時間プレイするのもキツイ。だから、四人で協力してモンスターを狩るのですぞ』
『わかったわ。というわけで――』
『「一狩り行こうぜ!」』
子供役のまひると白夜がコールをすると、画面が切り替わってゲームのタイトル画面が表示された。
今回、四人が遊ぶのは国民的な狩猟ゲームだ。
誰しもが学生時代にファストフード店に寄り道して四人集まったであろう、有名なモンスターを狩猟するこのゲームのシリーズ。
ここ数年では携帯ゲーム機ではなく家庭用のゲーム機で出ており、遊ぶときもオンラインで遊ぶという方式が主流となっていた。
四人ともこのゲームはやったことがあったのと、一つのクエストには最大四人で臨めることもあって、四人は満場一致でこのゲームを選択したのだった。
『パパ助けて!』
『待ってろ、今粉塵飲むぞ!』
『さすがね! 攻撃しながらフォローできるなんて――いやぁぁぁ!? ピヨった! 死んじゃう! 助けて!』
「待ってろ母さん! オラァ、死ねコラ!」
『おっ、ひるんだよ!』
[男性陣のフォロー力が高い]
[てか、女性陣二人がポンコツw]
[白夜君、意外と口悪いなwww]
[昔からゲームに夢中になると口悪かったぞ]
ゲームスキルの高いハンプと白夜がサーラとまひるをカバーする。
まるで本当の家族のように楽しくワイワイとゲームをする姿に視聴者達は大いに盛り上がっていた。
『はあぁぁぁ!? 報酬ゴミですぞ!』
「こんなん最低保証レベルじゃん!」
『あっ、宝玉出た』
『まひるは三つ出たよ!』
『「嘘だろぉぉぉ!」』
[うーん、ギルティ]
[物欲センサー出てるなぁ]
[貢献度と運が反比例してやがる……]
モンスターを狩猟するのに貢献した男性陣は報酬がいまいちで、やられてばっかりだった女性陣はレアな素材が大量に報酬として出ていた。
そんなこのゲーム特有の現象に、男性陣は発狂し、女性陣は笑顔を浮かべていた。
こうして朝昼夜亭の初コラボは終始取れ高たっぷりのまま無事に終了するのであった。
ちなみに、この時期にはライズは出てないので、四人が遊んでいるのはワールドです。
モンハンってゲームとしも面白いけど、コミュニケーションツールとしても優秀だと思うの。
学生時代も友達でもなんでもない奴とも一緒にクエスト行ったりできましたからねぇ。
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一応期間は五月末くらいを想定しておりますが、票が集まらない可能性もあるので、様子を見て変えようと思います。
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