Vの者!~挨拶はこんばん山月!~   作:サニキ リオ

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ついに200話まで来ました!
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【クリスマス】幼馴染から……

 Vacter主催のライブから帰宅し、レオは自分の部屋で丸鶏を調理していた。

 今日はクリスマス。

 あちこち周るよりも、レオと夢美は家でゆっくり過ごすことに決めていたのだ。

 

「奈美ちゃん、お母さんと仲直りできるのかな?」

 

 皿などの準備をしながら、夢美はふと和音のことを思い浮かべた。

 和音の母である翠との確執は夢美も聞いていた。

 子役時代に金稼ぎの道具のように使われていたこともあり、和音が翠と和解できるか心配していたのだ。

 

「宇多田は一度拒絶した人間はとことん拒絶するタイプだからな。難しいとは思うぞ」

「で、でもさ、反省してる感じだったじゃん?」

「一度染みついた考え方や価値観は変わるもんじゃない」

 

 レオはきっぱりと告げる。

 

「翠さんは娘に対してひどいことをしていたと自覚して反省した。そして、自分がいなくても立派に成長した娘の姿を見た。それだけだ」

 

 レオは翠に自分を重ねていた。

 レオはアイドルを引退した後、どん底に落ちた。

 それから園山をはじめとして多くの人に助けられて再び夢を追うことができるようになった。

 しかし、謙虚な心を持って歩み出した夢への第一歩でレオは躓いた。

 

 それは何故か。

 理由は簡単である。

 レオにはまだ傲慢な精神が根強く心の奥底にこびりついていたからだ。

 

「正直、一番の方法は二人が距離を置くことだ。そうじゃなきゃ宇多田が我慢するしかない」

「うーん……そっか。そういうもんなんだね」

 

 少し気落ちしたように夢美が呟くのを見て、レオは料理を皿に盛りつけながら夢美を心配そうに覗き込んだ。

 

「やっぱり心配か?」

「心配っていうか、モヤっとするっていうか……」

 

 夢美は自分の抱えている感情を吐露するか逡巡した後、苦笑しながら言った。

 

「こんなのあたしの押し付けでしかないけど、親が生きてるだけいいじゃんって思っちゃうんだ……」

「難しいところだな。生きているからこそ辛いなんて思う人もいるからなぁ」

 

 この世には親のことで悩んでいる人間はごまんといる。

 それは当人にしかわかりえないような感覚であるため、違う系統の親の下で育った人間には理解され難いものなのだ。

 

「優菜ちゃんが両親と和解できたから何とかなんないかなぁ」

「あの二人と翠さんじゃ、根本的に問題の方向性が違うからなぁ。タケさんも内藤さんも優菜のことを娘として愛してたけど、やり方が悪いせいで優菜と折り合いが悪くなったわけだし」

「行き過ぎた親バカと根本的に愛情がなかったのじゃ話が違うってことか……」

 

 やりきれない思いを抱えたまま、夢美は深いため息をついた。

 

「結局、行き過ぎた親バカも完全には直ってないって二人が自覚して、優菜とほどほどの距離感を保っているのもうまくいってる理由じゃないか?」

「あー、そういえば優菜ちゃんも、そんなに頻繁には実家に帰らないって言ってたもんね」

「まあ、園山がいたら大丈夫だろ」

「そうだね。頼れる彼氏君だもんね」

 

 レオと夢美はそう言って笑い合うと、料理をテーブルの上に並べた。

 

「あ、ケイティからRINEきた」

[Merry Christmas!!!]

 

 ちょうど料理を並べ終わった頃、夢星島のグループチャットに写真が投稿された。

 そこには両親と共に、満面の笑みを浮かべてクリスマスツリーの前で笑顔を浮かべているミコの姿があった。

 ミコはクリスマスということもあり、実家があるイギリスへと帰省していた。

 年末年始はそのまま家族と過ごし、配信はその間休むことになっていたのだ。

 

「おー、楽しそうだな」

「これぞ海外のクリスマスって感じだね」

 

 ミコの写真を微笑みながら眺めていた二人だったが、そこで夢美があることを思いついた。

 

「あたし達も写真撮ろうよ」

「ああ、せっかくのクリスマスだしな」

 

 夢美はスマートフォンをインカメラにすると、料理が映るようにレオと笑顔で写真を撮った。

 

「はい、チーズ!」

 

 余談だが、送られてきたこの写真を見た瞬間、ミコは奇声を上げてイスから転げ落ちることになった。

 それからレオの作った料理を食べながら、二人は穏やかな時間を楽しんだ。

 今日見たライブの話。

 配信中にあった面白かった話。

 小学校のときの話。

 大切な友人である真礼の話。

 そして、これからの話を始めた。

 

「なあ、夢美。〝決定打〟は足りたか?」

 

 レオの問いかけに対して、夢美は悪戯っぽく笑って答える。

 

「うん。少なくとも、あたし自身は納得できた」

「じゃあ、改めて――」

 

 レオは安心したように笑った後、表情を引き締めて夢美の目を真っ直ぐに見ながら告げた。

 

「中居由美子さん。俺と付き合ってくれませんか?」

「はい、喜んで」

 

 拓哉の告白に対して、由美子は笑顔で頷くのであった。

 

「これで恋人関係か」

「恋人って言っても、今までと変わらんと思うけどね」

 

 感慨深そうに幸せを噛み締めているレオとは対照的に、夢美はあっさりとした態度だった。

 そんな夢美に苦笑しながら、レオも彼女の意見に同意した。

 

「お互いの気持ちはわかってたし、一つの区切りみたいなものだからな」

「それな。お互いある程度は安定したラインにこれたからってとこあるもんね」

 

 ま、Vtuber業界に安定って言葉はないんだけど、と心の中で独り言ちると、夢美はワインを呷りながらおちゃらけたように言った。

 

「ぶっちゃけ貯金もあるし、最悪のときは両親頼れるからね」

「今はうちも夢美の実家も裕福だからなぁ。それに俺のアイドル時代に稼いだ金、父さんも母さんも全然手を付けてないらしい」

「えっ、あんたそれなのにイキってたの?」

「うぐっ……知らなかったんだよ。はぁ……」

 

 レオはアイドル時代、両親に酷い態度をとっていたことを思い出して呻き声をあげた。

 

「ちなみに、どのくらい稼いだの?」

「億単位で稼いではいたけど、税金で結構もってかれたからなぁ。まあ、俺と夢美が最悪路頭に迷っても余裕ではある」

「かーっ、元トップアイドルは違うねぇ!」

「俺の場合、活躍してた時期がそこまで長かったわけじゃないのは痛かったけどな」

 

 レオは現役時代かなりの額を稼いでいた。

 CM一本に出演するだけで、高給取りの社員の年収など軽く超える額をもらっていたこともある。

 

「芸能界にコネってまだあるの?」

「どうだろうな。お偉いさんの一部には嫌われたのが干された原因でもあるし、俺を嫌いな人間がみんな芸能界からいなくなったわけじゃないからなぁ」

 

 そう言うと、レオはかろうじて自分にとって繋がりがあると思える人物を思い浮かべた。

 

「タケさんに、三島さん、あとカリューさんもか……一応現場のADの人とか、STEPの番組プロデューサーとはうまくやれていたとは思う」

「いやいや、そんだけいれば十分でしょ」

 

 夢美は苦笑すると、改めてレオに告げた。

 

「少なくとも、金銭面であたし達が困ることはない。なら、Vtuberで好きなことをガンガンやってもっと稼ごっか」

「そうだな」

 

 それから夕飯を片付けた二人はサブスクリプションの動画サイトで映画を選んでみることにした。

 

「おっ、実写まだ見てなかったんだよねぇ! これにしよ!」

「いいな。昔の知り合いが声優として吹き替えに出てるから気になってたんだよ」

「高坂くんじゃなくて?」

「ああ、音楽関係の知り合いだよ。風の噂で声優になったって聞いて気にはなってたんだ」

 

 レオは昔を懐かしむようにそう告げると、世界中で大人気なアニメーション映画の実写版を見ることにした。

 

「よいしょっと」

「おいおい……」

「いいでしょ? 恋人なんだから」

 

 レオがテレビの前のソファーに腰かけると、夢美はそのままソファーに寝ころんでレオに頭を預けた。

 

「ひゅうぅぅ、彼氏に体重かけながら食うポテチは最高だぜ!」

「この野郎……!」

 

 何だかんだでじゃれ合いながらも二人は映画に見入っていく。

 お互いに惹かれ合っていく主人公とヒロインの姿を見ている内に、自然と二人の間は恋人らしい雰囲気になっていた。

 レオはそれとなく夢美に告げる。

 

「なあ、由美子。結婚って考えてるか?」

「そりゃ、まあ、ね……」

 

「「…………」」

 

 気まずい沈黙の後、夢美は耐え切れないといったようすで叫んだ。

 

「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛! 何かむず痒い! 違うって! あたし達って、もっとこう、自然体だったじゃん!」

「ふっ……それもそうだな」

 

 顔を真っ赤にして発狂している夢美を見て、レオは小さく吹き出すと夢美を安心させるように告げた。

 

「こういうのは焦るものでもないしな。俺は由美子が自然と受け入れられる状態になったらで大丈夫だ」

「ありがとね、拓哉。これから段々と慣らしていけば自然とそういう雰囲気になるだろうし、そのときはよろしくね!」

 

 二人はいつものように笑いながら、残ったワインで再び乾杯するのであった。

 

 

 

 ――翌朝

 

 

 

「「結局盛り上がって、やっちまったァァァァァ!?」」

 

 

 

 同じベッドで目を覚ました二人は顔を見合わせながら叫ぶことになるのであった。

 

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