Vの者!~挨拶はこんばん山月!~   作:サニキ リオ

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【Vtuber紅白歌合戦】大晦日での大一番 その1

 年末の一大イベント紅白歌合戦。

 この歌番組は年末に行われる男女対抗形式の歌番組である。

 テレビで放映されているものとは別に、Vtuberを集めて似たような企画をしようとということになったのだ。

 今回、にじライブを代表してレオ、つばさ、メロウが参加していた。

 男女対抗にするにはVtuberの男女比が偏ってしまうので、今回は運営元が歌唱力のバランスが均等になるように所属企業ごとにチームを振り分けていた。

 当然といえば当然だが、にじライブは紅組、Vacterは白組という風に分けられていた。

 

「うわぁ、有名Vがいっぱいだ。緊張するなぁ」

「いや、黎明期から活躍してたって意味じゃつばさも大概だろ」

「うーん、私の場合はグループで一つのチャンネルだったからなぁ。それに事務所の方針で全然絡んでなかったから、ほとんどみんな初対面なんだよ」

 

 にじライブ代表としてこの企画に参加しているつばさは、会場にいるVtuber達を眺めて緊張した面持ちになっていた。

 レオはテレビの方にも出演していたためか、いつも通りの自然体でスタジオを眺めていた。

 

「そういえば、メロウは?」

「トイレだって」

「広いスタジオだから迷ってないといいけどな」

「ただいま戻りましたー」

「おかえり」

 

 メロウが戻ってくると、三人は改めて流れを確認した。

 

「最初は俺とつばさのデュエット。その次にメロウのソロ。いきなりこんな大舞台でソロだけど、緊張とか大丈夫か?」

「はい、いつも歌枠で何万人の前で歌ってるので大丈夫です!」

「あはは、紅白を歌枠感覚とは恐れ入るよ」

 

 思いのほかリラックスしているメロウを見て、レオは安心したように苦笑する。

 今回の企画では、勝敗が視聴者投票で決まる。

 誰が何を歌っていたか。

 その印象を上書きしないようにレオ達は歌う順番や曲、組み合わせなど綿密に打ち合わせを行っていた。

 特にメロウは単体で大暴れした方が印象に残るため、レオとつばさという〝けもみ家〟の二人で場を盛り上げてメロウで勝負するという方法をとったのだ。

 

「あっ、和音ちゃんだ」

 

 改めて確認をしている中、つばさは有名Vtuberの中に紛れて和音がいるのを発見した。

 レオは和音の姿を見つけると、挨拶をしに彼女のもとに向かう。

 

「久しぶり、七色。この前のライブ――」

「ふぅぅぅ…………」

「っと、集中してるみたいだな」

 

 しかし、和音は目を瞑って深呼吸をしており、レオに全くと言っていいほど気がついていなかった。

 その気迫は他のVtuberが和音から距離をとるほどのものであり、あがり症で涙目になっていた昔の和音と同一人物とは思えない威圧感を放っていた。

 その姿から獰猛な虎が牙を向いているように感じ、レオは若干気圧された。

 

「七色の奴、あれはガチだな」

「和音さんって普段はおどおどしてるけど、歌うとめちゃくちゃかっこいいってイメージなんですけど、実際に見ているとすごいですね」

「……まるで現役の頃みたいだな」

 

 レオは和音が演歌を歌っていた頃の気迫を思い出して身震いをした。

 最近の和音は園山と付き合いだしてから、自信を取り戻したかのように勢いづいている。

 これは負けていられないと、レオも改めて気合を入れなおすのであった。

 

「やーやー、レオ君。お久しブリブリー!」

「あ、アダルティーナさん。ご無沙汰してます」

 

 気合を入れていたレオの背中をバシバシと叩きながらアダルティーナが声をかけてくる。

 声をかけたアダルティーナは最初こそへらへらとした笑みを浮かべていたが、次の瞬間には表情が引き締まり鋭い目つきへと変貌していた。

 

「今日は負けないよ。つばさちゃん、メロウちゃんも……挑ませてもらうから」

 

「「っ!」」

 

 バーチャル四天王からの宣戦布告。

 歌唱力という分野において優っているはずのつばさもメロウも、蛇に睨まれたカエルのように固まった。

 

「だから、白黒つけて年越ししたら一緒にお雑煮でも食べようねー!」

 

 表情を緩めてそう言うと、アダルティーナは和音の元へと歩いていった。

 

「やっぱ、原初のVの人ってすごいね……」

「びっくりしました……」

「俺達が歩いている道を切り拓いてきたきた人だからな。それにしても〝挑ませてもらう〟か……」

 

 バーチャル四天王は開拓者として有名だが、Vtuber業界で全員がトップを張っているかと言われると必ずしもそうではない。

 動画を作って投稿している〝動画勢〟は配信主体となった現在では勢いは下火となっている。

 その中でも生き残っていくには挑戦し続けなければならない。

 アダルティーナの心に強い挑戦心を感じたレオは、彼女がどうして今もVtuberの先駆者として尊敬されているかを痛感したのだった。

 

「あっ、しょ――つばささん!」

「ん、フィア?」

 

 アダルティーナが去った後、今度はバーチャルリンク改め〝Encourage〟に所属しているフィアとノームがやってきた。

 

「クリスマス以来ですね!」

「獅子島さん、つばさ先輩、メロウちゃん。どもどもー」

 

 魔王軍の転生騒動からいろいろあったが、こうして大型企画に姿を見せた二人の姿を見てレオは安堵と共に残念そうにため息をついた。

 

「そういえば、二人はこれが最後の仕事か……」

「はい、卒業配信は昨日の夜にしたので、魔王軍としてはこれが最後です!」

「少し寂しいけど、これで良かったんですよね? つばさ先輩」

「私には正解はわからないけど、さ……二人が笑顔でいられるならそれが一番じゃないかな」

 

 フィアとノームにそう告げると、つばさは優しく笑った。

 かつての魔王軍同士のやり取りを見ていると、レオとメロウはしみじみと呟く。

 

「あの二人、どうするんだろうな」

「せっかくだし、コラボしてみたかったなぁ」

「だな。特に今のフィアさんなんて配信者向きだと思うんだけどな」

 

 レオはフィアとノームがこのままVtuber業界から引退してしまうことにもったいなさを感じていた。

 そんなレオの内心をくみ取ったのか、二人と別れたつばさはレオに告げた。

 

「お兄ぃ、あの二人のことなら心配しないで」

「それって……」

「ふふふっ、今度は私達が助ける番だよ」

「私にも後輩ができるんですか……楽しみですねー!」

 

 つばさの言葉の意味を理解したレオは驚いた表情を浮かべ、メロウは嬉しそうに笑顔を浮かべた。

 

「さて、そろそろリハーサルの時間だ。気を引き締めていくぞ!」

 

「「おおー!」」

 

 こうして大晦日の大一番の幕が切って落とされる。

 今も事務所のスタジオで年末特番を頑張っていたり、各々で大晦日の配信を盛り上げようと尽力している仲間たちに吉報を持ち帰るため、三人は気を引き締めてリハーサルに臨むのであった。

 

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