ついににじライブ最大規模のライブが開催される。
これまで何度でもライブは行われてきたが、にじライブ所属のライバーの大多数が出演するライブは初だった。
会場内の観客はもちろん、ネット配信上でもその期待感は大いに高まっていた。
コメント欄には待機の文字が並び、有料配信とは思えないほどに視聴者が集まっていた。
そして、聞き覚えのあるイントロが流れ出したのと同時にレオ達三期生の三人がステージに飛び出してきた。
「「「Welcome to ようこそジャパリパーク! 今日もドッタンバッタン大騒ぎ!」」」
『レオくぅぅぅぅぅん!』
『バラギィィィィィ!』
『焼き林檎ォォォォォ!』
[三期生きちゃ!]
[最初からクライマックスな件]
[マジでばけものフレンズやってて草]
[トップバッターにピッタリな三人]
[いきなりかましてくれるねぇ!]
[これは期待]
以前から三期生の三人は三期生という呼び名以外にも〝ばけものフレンズ〟とも呼ばれていた。
結局、三期生の方が呼びやすかったため、そちらはあまり定着しなかったが、三人は話し合った結果、元ネタとなったアニメの主題歌を選曲したのだ。
「「うー!」」
「GRRRRRRRRRRRRRR!!!」
[レオ君www]
[案の定大暴れしてて草]
[安定の初手咆哮]
がおー、という可愛らしく咆える部分で、レオは恒例となったライオンの咆哮を披露する。
ここは元々三人で打ち合わせしていた部分だ。
[!?!?!?]
[またライオンのモデル使ってるwww]
[綺麗にバク宙決めやがったw]
[本当に大騒ぎで草]
レオはスタッフに別の曲でやる予定だったライオンへの切り替えをこの曲で頼んでいた。
3Dスタッフもレオの動きを把握しており、どこでライオンに切り替えればいいか理解していた。
縦横無尽に獣と人型を切り替えて飛び跳ねる。
またその周囲では夢美がキレのあるダンスを披露したり、林檎がコミカルな動きで動き回っていた。
あらかじめ決めていた振付よりも大幅にアグレッシブな動きを披露しつつも、一体感のある動きを見せる三期生にスタッフ達は、もはや慣れたと言わんばかりの表情を浮かべていた。
それから、曲の間で登場キャラクター達の台詞がある部分でレオ達は観客に向かって挨拶をした。
「ここはにじライブ! 俺は三期生の獅子島レオだよ!」
「おはっぽー、頑張っていきますよー」
「よーしバラギさんにお任せなのだー!」
[再現してて草]
[あなたはお歌が得意なフレンズなんだね!]
[これがばけものフレンズか]
曲はCメロに差し掛かる。
歌詞に合わせて動き回ると、三人はステージ中央部分に戻ってきて再び綺麗に歌詞を歌い上げる。
「「世界中に~♪ 響けサファリメロディ~♪」」
「ホントにホントにホントにライオンだ~!」
[草]
[そっちじゃねぇよ!]
[本当にサファリメロディーで草]
レオは以前歌ったサファリパークのCMソングを挟んだ。
予想していた夢美と林檎は何とか笑いを堪えてそのまま歌い続ける。
「「「ララララ~♪ ララララ~♪ Oh, Welcome to the ジャパリパーク!」」」
「ちょっ!?」
『FOOOOOO!』
[あ゛っ(尊死)]
[お姫様抱っこ!?]
[初手から殺しにかかってくる]
[てぇてぇ……]
曲のラストでは、レオが夢美をお姫様抱っこし始めた。
そのままの体勢でぐるぐる回りだし、林檎も楽しそうに二人の周りを回りだした。
そして、最後は夢美を抱えたままレオが正面で止まり、林檎はその前で膝をついて両手を広げた。
「「「ようこそジャパリパーク!」」」
『うおおおおおおおおお!』
[888888888888888]
[888888888888888]
[888888888888888]
一曲目から会場もコメント欄も熱狂の渦に包まれる。
原曲をリスペクトし、そのうえでしっかりとネタも挟んでくる。
いつも通りで予想以上のクオリティをしっかりと見せつけたレオ達は、会場の反応に満足げに笑顔を浮かべた。
「みなさん、こんばん山月! 獅子島レオです!」
「こんゆみー! 茨木夢美です!」
「おはっぽー、白雪林檎でーす。やー、トップバッターは緊張したねー」
「「嘘つけ!」」
[こんな大舞台でも飄々としてて草]
[さす林]
[三期生が揃っているところをライブで見られて幸せ……]
林檎はいつもと変わらない調子で挨拶をしたことで、レオと夢美がツッコミを入れる。
カリューの件もあり、内心気が気でなかったが、最高よりもその先のクオリティを届けるため、林檎はいつも通りを心がけていたのだ。
「「「みんな盛り上がってるかぁぁぁ!」」」
『うおおおおおおお!』
[現地組が羨ましすぎる]
[クソッ、スパチャが投げられない!]
[有料配信だけど、さらに払わせてほしい]
控室で映像を確認していた出番を控えたライバー達は、会場の盛り上がりから三期生にトップバッターを任せて正解だったと実感していた。
出演者の中で一番の後輩はバッカスとメロウだが、話題性と盛り上げ役としては、三期生が一番の適任だったのだ。
ちなみに、シューベルト魔法学園のメンバーが不参加なのにはきちんと理由がある。
この五人は、魔王軍の騒動が起きてからスカウトという形でにじライブに所属したため、かなり前から企画されていたライブの枠には入れることができなかったのだ。
「さて、コメント欄では現地組を羨ましがる声もありますが、ご心配なく!」
「あたし達はバーチャルライバーだからね。画面の向こうにも変わらぬ感動をお届け!」
「そういうわけで、次の歌も期待しちゃってー!」
[ハードル爆上げしやがったw]
[にじライブならそれも超えてくる]
[次は誰だろうな]
それから軽くトークを挟んだ三人はステージからはけていく。
その際、ステージに出る準備をしていたまひる、ハンプ、朱雀の三人とすれ違う。
「頼みますよ、ハンプさん」
「おう、こちとら本命のドッキリまで最高の空気で繋ぎたいんだ。へまはしない」
ハンプはレオの言葉に強気な笑みを浮かべると、堂々とした姿でステージへと昇って行った。
「まひるちゃん、ファイト!」
「へへん! かっこいいとこ見せちゃうもんね!」
「シュッシュも頑張れー」
「オッケー! 任せてょ!」
この後、得意ではない歌を練習で磨き上げたハンプ、ダイエットの効果かキレのあるダンスを披露するまひる、舌足らずながらも可愛い歌声を披露する朱雀によるにわとり組の歌も最高の盛り上がりを見せ、同時視聴を行っていたサーラは感動のあまり配信上で涙を流すことになるのであった。