Vの者!~挨拶はこんばん山月!~   作:サニキ リオ

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【ばけものフレンズ×御三家】

 

 レオのソロライブ、pretty thornのライブ、林檎のバーチャルピアノコンサート。

 三期生は勢いのままに活動の幅を広げ続けた。

 事務所自体の勢いも加速し、数々の番組が生まれ、多くのライバーが活発に活動を行った。

 そして、三期生がデビューしてから早一年が経とうとしている。

 

「あー……しんどい」

「疲れた……」

「もうダメポ……」

 

 デビュー一周年を前にバケモノと名高い三期生の三名は事務所の休憩スペースでテーブルに突っ伏していた。

 

「さすがに、張り切り過ぎたか」

「ここ最近、スケジュールキツキツで入れ過ぎたもんね」

「もうすぐ一周年だからって調子乗りすぎたわー」

 

 三人は音楽活動に力を入れ、ゲームなどの案件も片っ端から引き受けていた。

 かといって視聴者を蔑ろにしないように、配信なども今まで通りのスケジュールで行っていたせいもあり、かなり疲れていたのだ。

 

「てか、レオももうすぐ百万いくんでしょ。そんな調子で大丈夫なん?」

「夢美にだけは言われたくない。お前だって、九十万の大台に乗ったじゃん」

「林檎ちゃんだってそれは同じでしょ」

「まあねー」

 

 三期生の三人は一周年を前にとうとう登録者数が九十万台へと突入していた。

 ミコという例外はあるが、この三人の快挙は大いに注目されていた。

 

「気持ち的にはもっとやりたいことがいっぱいあるんだけどなぁ」

「それな」

「さすがに、そろそろ調整しなきゃダメだよねー。私も亀ちゃんの説教増えてきてるし、配信頻度減らさなきゃなー」

 

 このままでは近いうちに体調を崩してしまう。

 そんな予感があった三人は配信頻度を減らすことを検討していた。

 こればかりは仕方ないことである。

 

「案件優先の方が儲かるけど、袁傪のみんなに悪いしなぁ」

「むしろ、他のライバーに仕事回るから良しとしない?」

「そう思うしかないねー」

 

 勢いが収まらないこともあり、ワーカホリック気味な三人は渋々といった様子で仕事の調整をすることを決めた。

 

「あっ、お兄!」

「バラギさん、こんちゃーす!」

「り、林檎さん、こんにちは!」

 

 休憩スペースでレオ達がだらしなくくつろいでいると、ちょうどオフコラボ配信を終えたレイン、リーフェ、つばさの〝御三家〟の三人が笑顔を浮かべて駆け寄ってきた。

 

「つばさ、この前のソロライブ大盛況だったな」

「えっへへ、お兄ぃやレイン、リーフェのおかげだよ」

 

 つばさはメジャーデビューこそしていないが、先日ソロライブを行った。

 にじライブの中でも勢いのあるユニットとして人気を博し、バーチャルリンクのノームとして活動していた頃よりも磨きのかかった歌声は視聴者達を魅了した。

 そのため、メジャーデビューしていないのにも関わらずソロライブを開くことができたのだ。

 ふと、レオはこのまま話をするのなら御三家の三人とも、もっと積極的に交流を深めようと思い立った。

 

「せっかくだし、このまま飯でもいくか?」

「賛成!」

「おー、いいねー」

「ぜ、是非、ご一緒させてください!」

「もちのろん!」

「いくいくー!」

 

 御三家の三人もレオの提案を二つ返事で了承した。

 場所を移すことにした三人は、さっそくいつもの店へと向かった。

 

「で、今日はどういう組み合わせだ?」

「何、ただの後輩との交流だ」

 

 レオ達が向かったのはレオのかつてのバイト先である居酒屋だった。

 すっかりVtuberのたまり場となった居酒屋で働く友人である園山は、呆れたようにため息をついて奥の座敷へと案内した。

 

「司馬が生、由美子ちゃんが梅酒、優菜さんがモスコミュール、日和ちゃんと美弥子ちゃんがジンライム、翔子ちゃんがカシオレで大丈夫か?」

「ああ、みんないつものだな」

「えっ、園山さん。私達が飲む物、全部覚えてるんですか!?」

 

 全員の注文を覚えている園山にレインが驚きの声を上げる。

 

「いつも同じもの飲む人は覚えてるよ。それに、うちへの来店頻度も多いからな」

 

 当たり前のことのようにそう言うと、園山はそそくさとキッチンの方へと引っ込んでいった。

 

「すげえ、何あの『また俺何かやっちゃいました?』感……」

「なろう系主人公みたい」

「それ褒めてないだろ」

 

 つばさのどこかズレた感想にレオが苦笑する。

 そんな中、リーフェはキッチンに引っ込んでいく園山の背中を見ながらレオに問う。

 

「ねーねー、拓哉さん! 園山さんって彼女いるんですか?」

「いるぞ」

 

 園山には和音という彼女がいる。

 年末年始には一緒に石川県の和音の実家に行ったという報告も聞いているため、仲が良好なのは疑う余地もない。

 レオの言葉を聞いたリーフェは一瞬固まった後、力が抜けたようにテーブルに突っ伏した。

 

「ちくしょう……いい男には必ず彼女がいるんだ……!」

「相葉ちゃん、諦めな」

「何、笑ってんだよォ!」

 

 楽しそうに笑うレインをリーフェは恨みがましく睨みつける。

 そんな二人のやり取りを見て林檎は心底楽しそうに笑っていた。

 

「酔ってないのにテンション高いねー」

「この二人は昔から仲良いからね」

「そういえば、二宮さんと相葉さんも幼馴染だったか」

 

 レオと夢美はVtuberの中でも幼馴染という珍しい組み合わせだが、レインとリーフェもまたその珍しい組み合わせだった。

 

「まさかあたし達以外にもいるとは思わなかったなぁ」

「でも、意外と昔からの知り合いってパターンはあると思いますよ? 優菜さんと潤佳さん、司君だって高校のときの同窓生ですし」

「おー、言われてみれば確かに」

 

 幼馴染とは違うが、同じ高校に通っていたという意味では林檎、まひる、白夜も昔からの繋がりがあると言えるだろう。

 

「んー、あとバ美肉してるイラストレーターの斑先生とちづるちゃんも中学からの同級生らしいよ」

「あー、言ってたなぁ」

 

 漫画家であり、大ヒット恋愛漫画の作者である斑恋途(まだらこいと)と彼が立ち上げたVtuber事務所に所属する市川ちづる。

 彼らもVtuber界でいえば人気Vtuberにあたる存在で、この二人が同級生で仲が良いのは有名な話だった。

 

「噂じゃ、同棲してて将来的には結婚するかもしれないって話だよ」

「マジか」

 

 レオは直接的な絡みこそないものの、にじライブと接点の多いVtuberである彼らとはいずれコラボする可能性も考えていた。

 まさか、自分達以外でそこまでの関係性のVtuberがいるとは思わなかったレオの心の中に小さな焦りが生まれる。

 

「できれば結婚発表は俺達が先にしたいなぁ……」

 

「ホア?」

「ほ?」

「ふぇ?」

「へ?」

「……っ!?」

 

 レオの呟きにその場にいた全員が固まった。もちろん、夢美も例外ではない。

 全員が沈黙したことで、自分の失言に気がついたレオは慌てて話題を変えようとした。

 

「そういえば、今度六期生がデビューするよな」

「誤魔化すの下手くそか!」

 

 スパァーンと小気味よい音が鳴る。

 夢美に頭を引っ叩かれたレオは慌てて弁明する。

 

「いや、ほら、違うんだ。どうせするなら先にしたいと思ってな?」

「そういうことはプロポーズしてから言えやァ!」

 

 情けなく狼狽えるレオに噛みつくように夢美が説教を始める。

 

「うっ……!」

「ああ! 優菜さんが!」

 

 レオと夢美のいつものやり取りが始まったことで、林檎は胸を抑えて蹲った。いつものてぇてぇ発作である。

 

「いや、お二人マジで付き合ってたんですね……チッ、リア充が」

「こら、みゃーこ。先輩に舌打ちしない」

 

 すっかりリア充への憎しみに染まったリーフェを窘めると、つばさは真面目な表情を浮かべてレオと夢美に問う。

 

「で、真面目な話二人はいつ結婚するの?」

「と、言われてもなぁ」

「もうちょい落ち着かないとだし、そもそもこの李徴がプロポーズしてくれなきゃ始まんないんだよ。ほれ、はよ」

「同期や後輩の前でプロポーズせかしてくる女、初めて見たわ」

 

 毅然とした態度で手を差し出してくる夢美に、レオは呆れたように呟いた。

 実際、夢美の耳は赤く染まっており、照れ隠しにそういう態度をとっていることは理解していたため、そこには触れずに答えた。

 

「安心しろ。ちゃんとするから」

「お、おう……」

 

 レオの答えに満足した夢美は、口元を緩ませる。

 

「……かーっ、ぺっ」

「ちょ、つばさ? 人に注意しといてその態度なんなん?」

「別にぃ?」

 

 レオと夢美のやり取りを見ていたつばさはどこか不機嫌そうに鼻を鳴らした。

 つばさは特にレオに恋愛感情があるわけではないが、アイドル時代からの推しであるレオが目の前で彼女といちゃついているのを見るのは、どこか複雑だったのだ。

 それから酒が進み、酒に弱いメンバーが酔っ払い始めた。

 夢美の酒の量はレオが逐一注意して調整していたため、いつものように悪酔いはせず、正気を保つことに成功していた。

 

「きゅう……」

「もー、ニノはお酒弱いんだから日本酒には手を出すなって言ってんじゃん!」

 

 すっかり酔い潰れたレインをリーフェが介抱する。

 その姿は長年一緒にいた絆が感じられるほどに自然な姿だった。

 

「ねー、日和の顔にマジックで落書きしてもいいー?」

「やめたげてよぉ!」

 

 徐に油性ペンを取り出した林檎をリーフェが必死に止める。

 その光景を見て、レオは額に手を当ててため息をついた。

 

「どうして俺達が飲み会やるといつもこうなるんだ……」

「あんたがいくら飲んでも潰れないからでしょうが……」

 

 レオはハイペースで飲酒する割に、全くと言っていいほど酔わない。

 それこそ園山とスピリタスを呑むときくらいしか、酔い潰れたりはしないのだ。

 そんなレオがいることで、お酒に弱い人間が釣られてハイペースで飲んでしまうこともこの光景の原因の一つだった。

 

「ちょっと、お手洗い」

「あ、あたしも!」

 

 つばさがトイレに立ったタイミングで、夢美も彼女についていく。

 レオはこの状況で一人にするなと目で訴えていたが、夢美はそれを笑ってスルーした。

 

「ねえ、つばさちゃんってあたしのこと嫌い?」

「別にぃ?」

 

 手を洗うタイミングで、夢美はこれまで何かと絡みが少なかったつばさへと話しかけた。

 コラボする機会はあったが、その度に夢美はつばさにぞんざいに扱われていた。

 もちろん、視聴者達はエンターテインメントの一環として〝バラつば〟不仲説を楽しんでいたが、夢美はどこか違和感を感じていたのだ。

 

「だ、だって、この前ご飯誘ったときだって塩対応だったじゃん……」

「別に楽しかったよ」

「この前洋服買いに行ったときは?」

「まあまあ楽しかったよ」

 

 夢美の問いに、つばさは淡々と答える。

 

「やっぱり推しと誰かが結婚するのは嫌?」

「ううん、幸せになるのは嬉しいことだよ」

 

 夢美の核心に迫る質問を、つばさははっきりとした口調で否定した。

 

「お兄ぃのことは今も推しとして応援してる。バラギのことだって好――嫌いじゃない」

「今好きって――」

「嫌いじゃない……!」

「あっ、はい」

 

 夢美を睨みつけて黙らせると、どこか拗ねたように言った。

 

「私は歌でお兄ぃから元気をもらって、歌が好きになった。だから、お兄ぃがアイドルを辞めたとき有名になってお兄ぃに歌を届けて立ち上がって欲しかった。実際、ノーム・アースディとして活動してたときの歌はお兄ぃは見ててくれた。でも……」

 

 レオが再起できたのは夢美の力があったからだ。

 ライバーとして燻っていたレオが殻を破るきっかけになったのは、届いていた自分の歌ではなく幼馴染である夢美だった。

 それがつばさにとって複雑だったのだ。

 

「そっかー……まあ、確かにあたしがその状況だったら複雑だわ」

 

 つばさの気持ちを理解した夢美は、納得しながらも苦笑した。

 

「ごめん、何か感じ悪くて……」

「いいって、いいって! つばさちゃんはあたしが久しぶりに自分から仲良くなりたいって思えた子だし、これからもガンガン遊びに誘っていくから!」

 

「それはヤ」

 

「な゛ん゛て゛た゛よ゛!」

 

 少しだけ仲良くなれたと思ったら、相変わらずの塩対応。

 泣きそうな顔で喚く夢美を見て、つばさは舌を出して楽しそうに笑うのであった。

 

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