Vの者!~挨拶はこんばん山月!~   作:サニキ リオ

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【清楚諸君】パーティしようぜ!

 

 レオは新しい組み合わせでコラボを行うことを計画していた。

 先日、レインが夢美とコラボをしたがっているという話を聞いて一肌脱ぐことにしたのだ。

 

「まさか、私に声がかかるとは思わなかったわ。今日はよろしくね」

 

 ライバーに復帰したからか、乙姫は今までのように一線を引いた感じではなく、すっかり砕けた口調になっていた。

 

「いえ、こちらこそ乙姫先輩がコラボしてくれて助かりました。いろいろと宜しくお願い致します」

「このくらいなんてことはないわ。あなた達にはそれ以上のものをもらってるから」

 

 今回、レオがコラボするのは夢美、レイン、そして乙姫だ。

 三人だけでコラボをすると収まりが悪くなる可能性があったため、レオは残りの一人を誰にするか悩んだ。

 まず思い浮かんだのはレインとは幼馴染でもあるリーフェだった。

 幼馴染組という形でコラボすれば収まりも良くなるが、これにはある問題があった。

 今回の目的は夢美とレインの仲を深めること。

 レインと深すぎる仲のリーフェを連れてくると人見知りなレインがリーフェとばかり会話し、夢美とうまく絡めない可能性があったのだ。

 そこで今度は林檎を誘ってみたが、これは林檎自身が断った。

 三期生とレイン一人という形ではレインがやりづらさを感じるからという理由だ。

 そして、レオが白羽の矢を立てたのがフォローに定評のある清楚なライバー、乙姫だった。

 

「あー、緊張してきた……」

「大丈夫大丈夫。レオも乙姫先輩もいるし、心配ないって」

「えっ、バラギさんは?」

「あたしは暴れる予定だからさ……それにレインちゃんなら大丈夫だよ」

「バラギさん……」

 

 ふと、レオが夢美とレインの様子を窺ってみると、二人はそれなりに仲良くやっていた。

 面倒見の良い夢美が緊張している後輩を放っておくはずがないのである。

 それからスタジオの準備も整い、四人によるコラボが開始された。

 

「というわけで始まりました! 清楚コラボ!」

 

「「「いぇーい!」」」

 

[きちゃ!]

[清楚コラボ、だと?]

[異物混入で草]

 

 今までにないメンバーでのコラボのため、コメント欄は早速盛り上がっていた。

 ちなみに、コメントにあった異物とは言うまでもなく夢美のことである。

 

「はじめましてぇ」

「おい、やめろやめろ!」

 

[草]

[初手レナちゃんたすかる]

[これは清楚]

 

 配信開始をしてすぐにレオが夢美の初配信のマネをしていじる。

 一笑い取れたところで、レオは改めて自己紹介を始めた。

 

「みなさん、こんばん山月! 獅子島レオです!」

「こんゆみー、茨木夢美でーす」

「おは竜宮~、竜宮乙姫です」

「ど、どうもー、レイン・サンライズでーす……」

 

[たどたどしいw]

[レイン様、声と見た目は清楚なんだけどね]

[清楚(男)清楚()清楚(真)清楚(陰)]

[一人空欄でワロタ]

 

 レインはまだ緊張しているようで、

 

「今回は一度は清楚と呼ばれたことがあるメンバーに声をかけさせていただきました。コラボ名は後で良さげなものを採用しまーす」

「でも、私で良かったのかしら。異物混入って書かれてたし……」

「いや、どう考えても乙姫先輩のことじゃないでしょ!」

 

[草]

[謙遜が過ぎる]

[真の清楚は清楚の自覚がない]

 

 乙姫の天然に夢美がツッコミを入れる。

 何だかんだで清楚の代表格として名を挙げられる乙姫だったが、清楚である自覚は一切なかった。

 

「さてさて、早速ですがこの四人で今日はこのゲームをやろうと思います!」

 

[マリパキタ――――!]

[これは期待]

[姫ちんゲーム下手だけど大丈夫か?]

 

 レオがそう言うと、画面が切り替わってゲームのスタート画面が表示された。

 今回、四人がプレイするのは国民的人気を誇る赤い服を着た配管工のキャラクターが登場するパーティゲームだった。

 

「ターンはどうします?」

「二十ターンでいいんじゃないかしら?」

「配信時間的にもちょうど良さそうだね」

「これくらいのターン数なら立ち回り次第では逆転もできそうですね!」

 

[目安二時間くらいだし、ちょうど良さそう]

[あんまり短いと物足りないしな]

[バラギ以外の運は普通だが、どうなることやら]

 

 レオはモグラのキャラクター、夢美はゴリラのキャラクター、乙姫はいつも攫われるお姫様のキャラクター、レインはキノコのキャラクターを選択してゲームを開始した。

 順番を決めるダイスロールの結果、レイン、乙姫、レオ、夢美の順番でプレイすることになった。

 

「よーし、私からですね! さんざんこのゲームはプレイしてきましたからね!」

 

「はえ?」

「ホア?」

「あら?」

 

「私がパーティゲーム一緒にやる相手いない前提のリアクションはやめろォ!」

 

[これは陰キャ]

[お労わしや、レイン様]

[これは陰キャ]

[俺らにも刺さる]

[やめてくれ……]

 

「いいですか! マリパは一人でもできるんですよ!」

 

「「「えぇ……」」」

 

[結局ボッチで草]

[みんなドン引きしてる……]

[かわいそうに……]

 

「大丈夫だよ、レインちゃん。あたしなんて働いてたときはゲーム自体やる暇なかったから!」

「それはそれで闇が深いわ……」

 

[バラギのたまにでる笑えない話すこ]

[姫ちん、さっきから困惑してるwww]

[住む世界が違う……]

 

「とにかく、私にこのゲームで勝とうなんて百年早いんですよ! 見せてやりますよ!」

 

 レインは気合いを入れてコントローラーを振る。

 すると、いきなり〝6〟が出る。

 

「よし、ガンガン進んでスターとっていきますよ!」

「じゃあ、次は私ね。それ!」

 

 乙姫がコントローラーを振ると〝4〟が出た。

 

「うん、悪くないわ。マイナスマスにも止まらなかったし」

 

 それからレオ、夢美がサイコロを振った結果、夢美だけがマイナスマスに止まることになった。

 一ターン目が終了し、ミニゲームの時間がやってくる。

 今回は、二チームに分かれてのミニゲームだった。

 

「おっ、ミニゲームは2on2か」

「シャア! ブチのめすぞレオ!」

「乙姫先輩、宜しくお願いします!」

「ええ、こちらこそ!」

 

[清楚どこいった]

[最初からないよ]

[むしろ初配信の途中で吹き飛んでる]

 

 組み合わせはレオと夢美、乙姫とレインだった。

 ミニゲームの内容は福笑いとクレーンゲームを合わせたようなものだった。

 クレーンで運ばれてくる顔のパーツを上下と左右でそれぞれ調節して、一番正しい位置に置けたチームが勝つ。

 

「夢美、もう少し右だ!」

「レオ、もうちょい下お願い!」

「乙姫先輩、右お願いします! ちがっ、右ィ!」

「あら?」

 

[バラレオ息ぴったりやんけ]

[レイン様の悲鳴がすごいw]

[姫ちん方向入力逆になってて草]

 

 こうして初戦はレオと夢美が勝利していったが、段々と流れは変わっていく。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! もう少しでスターだったのに!」

「残念でしたね、バラギさん! 金土管は最強アイテムなんですよ!」

 

 ゲームはレインの優勢で進んだ。

 レインは一人でこのゲームをやりこんでいたこともあり、スターの位置が決定した後の最適化した動きが理解できていた。

 

「あ、また仲間が増えた」

「乙姫先輩の仲間の数エグイですね……」

 

[姫ちんの後ろめっちゃ仲間ついてくるw]

[仲間もサイコロ振るから出目がエグイな]

[一回でめっちゃ進むな]

 

 乙姫の方は事あるごとに仲間マスに止まり、仲間キャラクターが増えていった。

 

「ちょ、レオさん! 私からスター取らないでくださいよ!」

「いや、取るでしょ」

 

[こすいルート使ってて草]

[レオ君、ミニゲーム強いからコインだけすごいことになってるもんな]

[ある意味、これでバランス良くなってる感]

 

 レオはミニゲームで毎回のごとく勝利しているため、所持しているコインの数が多かったため、他プレイヤーからスターをコインで奪うという作戦をとっていた。

 

「ね゛え゛え゛え゛え゛! またマイナスマス止まったんだけど!」

 

[草]

[圧倒的不憫]

[サイコロの出目も悪いし、止まるマスも悪い]

 

 この中で最下位になっていたのは夢美だった。

 ことあるごとにマイナスマスに止まりコインを引かれ、レオと一緒になったとき以外のミニゲームではボロ負け、サイコロ出目も悪くスターをなかなかとることができない。

 驚くほど、今日の夢美の運勢は最悪だった。

 

「おっ、2on2だ」

「レオ来い! レオ来い!」

「ミニゲームってこの形式が一番白熱するわ」

「あ、私とバラギさんだ!」

 

 ミニゲームの振り分けは夢美とレイン、レオと乙姫だった。

 

「よし、乙姫先輩。夢美をぶっ潰しましょう」

「はぁ? あたしが潰すが?」

「こらこら、痴話喧嘩しないの」

 

[姫ちんにも痴話喧嘩扱いされてて草]

[てぇてぇ]

[いいぞ、もっとやれ]

 

「あれ、レインちゃんと組むんだったらわざと足引っ張った方がいいのでは?」

「ちょっとォ! それはダメですよ!?」

 

[最低な発想で草]

[ありっちゃあり]

[とことん足を引っ張る作戦]

 

 結局、夢美はレインの足を引っ張るようなことはせず、素直にレインに協力して勝利を収めた。

 そして、ついに最終ターンがやってきた。

 

「ちくしょう……何個か取れたけど、この大差じゃキチィよ」

 

[ここからの逆転は厳しいな]

[仲間ゼロだしボーナスも厳しいな]

[むしろアイテムだけでよく健闘した方]

 

 夢美は他の三人が仲間を増やしていく中、なかなか仲間マスに止まれず手に入れたアイテムを使用して健闘していた。

 そんな夢美が最後の最後に留まったのはハッピーマス。

 ランダムで様々な効果を得られるマスだった。

 

「えっと……他のプレイヤーから仲間を奪う、か」

「あ゛あ゛!? 私の女寝取らないでくださいよ!」

 

[草]

[寝取られた]

[唯一の仲間奪われたwww]

 

 ラッキーマスの効果により、レインが連れていたオレンジ色のドレスを着た姫が夢美の仲間に変わった。

 最後の最後に仲間になったところで恩恵は受けにくいが、取れ高を考えれば陰キャボッチエピソードが多いレインの唯一の仲間を奪うというのは絵的に面白い。

 そうやって夢美が自分を納得させていると、結果発表の画面に切り替わる。

 結果発表の前に特定のボーナスが発生してスターがもらえる演出がある。

 今回はそのチャンスが三回発生した。

 

「おっ、一番ハプニングマスに止まった人か」

「茨木さんじゃないかしら?」

「ことあるごとにハプニング止まっててボム兵爆発してましたもんね」

「シャァァァ!」

 

[これはワンチャンあるのでは?]

[不憫が役に立ったか]

 

 最初のボーナススターは夢美が手に入れた。

 次にスターをもらえるのは一番マイナスマスに止まったプレイヤーだった。

 

「またあたしぃ!」

「おいおい、これ忖度入ってないか?」

「一番不憫だったし、そういう補正あるのかしら?」

「これはわからなくなってきましたねぇ……」

 

 またしてもボーナススターを手に入れたのは夢美だった。

 そして、最後のボーナススターは特定の仲間を連れているプレイヤーだった。

 

「仲間ボーナスだったら乙姫先輩が有利ですけど……」

「特定だからわからないわね」

「頼む頼む頼む!」

「これで、私が連れてた奴だったらブチギレる自信ありますよ」

 

 少しの間の後、ボーナススター取得者が表示される。

 ボーナススターを手に入れたのは、レインから奪った仲間を連れた夢美だった。

 

「はえ?」

「ホア?」

「あら?」

「ふぇ?」

 

[これはひどい]

[レイン様、唯一の仲間を奪われボーナススターも奪われる]

[大逆転で草]

 

 結果、全てのボーナススターを手に入れた夢美が優勝した。

 

「っしゃオラァァァ! 見たかァァァ!」

「おかしいでしょうがァ! 何でこの流れで負けるんだよォ!」

「ねえ、今どんな気持ち? 煽りまくってたビリに抜かされてどんな気持ち?」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」

 

[レイン様、メンタルやられてて草]

[壊れちゃった……]

[さんざんバラギ煽ってたから残当]

[切り抜き確定]

 

 こうして四人でのコラボは取れ高たっぷりの結果に終わった。

 コラボ終了後、レインと夢美は仲睦まじく話しており、レインが壁を感じている様子は一切感じられなかった。

 

「そういえば、バラギさん。次ってコラボの予定とかありますか?」

「んー……林檎ちゃんとのコラボがあるけど、それはまだ先だし、直近だとにじライブカフェの案件くらいかな? ミカンちゃんとのコラボも入れたかったけど、返信いまだにないし」

「で、でしたら、一緒にまたガチャ配信しませんか!?」

「おっ、いいねぇ! やろやろ!」

 

 ミカンちゃん。その名前が出た瞬間、乙姫の表情が一瞬だけ曇ったのをレオは見逃さなかった。

 夢美とレインがそのまま遊びに行く約束をしたため、スタジオに残ったレオは真剣な表情を浮かべて乙姫へと話しかけた。

 

「乙姫先輩、冷凍ミカンさんに何かあったんですか?」

「あはは……獅子島君は本当に鋭いのね」

 

 隠し事はできないか、と小さく呟くと乙姫は観念したように告げる。

 

「今度時間をもらえるかしら? あまり、公でする話じゃないから」

「わかりました」

 

 冷凍ミカンはレオにとっても思い入れの深いリスナーであり、コラボこそしていないが面白い配信者だと思っていた。

 雌袁傪ネキと呼ばれて親しまれている彼女がどうなっているのか心配ではあったが、その日はモヤモヤとした気持ちを抱えたまま帰宅するのであった。

 

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