今日はレオの誕生日だ。
誕生日ということもあり、レオはスタジオを借りていた。
以前のように3Dライブでまるまるライブを行うことも考えていたのだが、それでは面白みに欠けるとレオは感じていた。
そこでレオはゲストを呼んで対談を行った後にライブを行うことを思いついた。
「みなさん、こんばん山月! 本日は俺の誕生日配信にお越しくださりありがとうございます!」
[きちゃ!]
[こんばん山月!]
[誕生日おめでとう!]
コメント欄は、レオへの祝い言葉で溢れていた。
以前、レオは意図的な身バレ騒動の布石として誕生日を公開した。
それがこうして多くの袁傪達に祝ってもらえることに繋がった。
レオは応援してくれる袁傪達に深い感謝をしながら配信を始める。
「いやぁ、袁傪のみんな、ありがとうな! みんなの応援のおかげで、こうして無事に歳を一つ重ねることができました。早速ですが、まずは告知から!」
そう言うと、レオは配信画面を切り替えた。
そこにはレオの担当イラストレーターであるけもみが描いた誕生日イラストとグッズの詳細が表示されていた。
イラストはレオが笑顔で花束を抱えているイラストとなっており、背景には茨と林檎が描かれていた。
「というわけで、誕生日イラストをけもみ先生に描いていただきました!」
[けもみママ!]
[相変わらず最高のイラスト]
[さすがけもみママ]
[けもみ:誕生日おめでとう!]
[けもみママ!?]
[本人おるやんけ!]
コメント欄には今回の誕生日イラストを担当したけもみも現れた。
「あっ、けもみ先生! ありがとうございます!」
[けもみ:これで美味しいものでも食べな! ¥10,000円]
「ありがとうございます! この後登場するゲストの人達と飲みに行きます!」
けもみへ礼を述べたところで、レオは改めて誕生日グッズの告知を始めた。
「さて、今回期間限定で俺の誕生日グッズとボイスが販売されます。内容としてはけもみ先生描き下ろしイラストのB2タペストリー、アクリルキーホルダー、アクリルパネル、缶バッジとなっております。アクリルパネルの方は限定二千個になってしまいますが、直筆サイン入りのものなので、是非この機会にご購入ください!」
[うおおおおおお!]
[めっちゃ豪華!]
[直筆二千個はエグくて草]
豪華なグッズのラインナップに袁傪達は大いに沸いた。
けもみのイラストの素晴らしさもさることながら、レオが二千個も直筆でサインをしたというファンサービスに感動していたのだ。
「まあ、二千個くらい余裕だよ。アイドル時代なんてもっとたくさん書いたことあったし……」
[あっ]
[芸能界の闇]
[この話やめない?]
事あるごとにレオから語られるアイドル時代の闇の深い話に、袁傪はいつものように[この話やめない?]というコメントを返していた。
「それじゃ、告知も終わったから早速画面を切り替えるよ!」
[!?]
[ファッ!?]
[アイドル衣装やんけ!]
配信画面が切り替わると、そこにはレオがメジャーデビューした際に使用したアイドル衣装の3Dモデルの姿で立っていた。
「まあ、誕生日なんでね! こうしてアイドルとしての姿でみんなの前に立とうと思ってさ」
[顔がいい……]
[カメラさん、もっとアップで!]
[ライブ期待]
レオがアイドル衣装で登場したことで、袁傪達はライブが行われると期待している。
しかし、今日のメインはライブではない。
「ライブが見たいって人もいるけど、それはもうちょっと後でな。その前にゲストを呼ぶぞ! いでよ、ライオンバンド!」
レオの掛け声と共に画面上へと三匹のライオンが現れる。
「どうも、みなさんこんばん山月! ギター担当のレオ之介です!」
「こんばん山月! ドラム担当のレオ樹だ!」
「……こんばん山月。ベース担当のレオ三郎」
[草]
[いきなり無法地帯になったwww]
[誕生日だからってはっちゃけすぎwww]
[実質STEP再結成で草]
レオはこの日のスペシャルゲストとして慎之介、良樹、三郎の三人を呼んでいた。
「みんな来てくれてありがとな! やっぱ誕生日だから今までのこと振り返ろうと思って、今日はアイドル時代の話もいろいろしたくて呼んだぜ!」
「こういうのやりたかったんだよねぇ!」
「いいのか、ろくな話ないぞ?」
「……あの頃は苦労した」
[これは期待]
[伝説の裏話が聞けるのか]
[こんな配信するのレオ君くらいだろw]
STEP時代の裏話など、当時の彼らの活躍を知っている者からすればお宝どころの話ではない。
袁傪達は期待に胸を膨らませてトークが始まるのを待った。
「一応、会話デッキ用意してきたから一人ずつ箱から引いて話そうぜ」
「レオ君が用意したんだ」
「お前、こういう細かい準備意外と率先してやってたよな」
「……プロ意識の塊だった」
[裏話もう始まってるやんけ]
[態度は悪くてもプロ意識は高かったんだな]
[アイドルが準備まで自分でやるあたり闇要素]
早速四人はレオの用意したボックスに手を突っ込んでお題を引いた。
「それじゃ、最初は俺からだな……アイドルをしていて一番楽しかった瞬間、か」
「王道なやつきたね!」
レオが引いたお題は、レオが用意したお題の中で最も無難な話題だった。
「そうだな。やっぱりCDデビューが決まったときだな」
「超初期じゃねぇか! それ以降はそんなに嬉しくなかったのかよ!」
「……レオ樹、落ち着いて」
[いきなり空気悪くなったw]
[レオ君とレオ樹君、いつも喧嘩してたって噂だったからな]
[なお何だかんだで仲は良い模様]
CDデビュー時というSTEP時代でもかなり初期の頃の話をされ、良樹が苛立ち紛れに叫ぶ。
「いや、やっぱりCDデビュー前って活動も地味だし、これからアイドルとしての一歩が踏み出せるんだって思ったら嬉しかったんだよ。もちろん、その後の活動だって嬉しいことはたくさんあったぞ? でも、原点にして頂点というか、シリーズもののアニメも最初のオープニングが一番良いってなるじゃん」
「……レオ、見ない内にオタクっぽくなった」
「声優やってる僕としてはレオ君がアニオタになって嬉しい限りだけどねぇ」
[オタク特有の早口]
[例えが秀逸]
[こういうところが推せるんだよなぁ]
「まあ、気持ちはわかるぞ。俺もこれからアイドル活動が本格化するって思ってわくわくしててたし」
「だろ?」
「まあ、レオは調子こいてバックダンサーやってた同期に『俺達のバックダンサーやれてラッキーだったな』ってナチュラル煽りかましてたけどな」
「スゥッ――――…………」
[クソ野郎じゃねぇかwww]
[これはひどい]
[これは李徴]
さらっと良樹が当時の調子に乗っていたレオの話を暴露する。
レオはバツの悪そうな表情を浮かべた後、勢いよく頭を下げた。
「いや、まあ、うん……あのときはすみませんでしたぁぁぁぁぁ!」
[ガチ謝罪で草]
[あの頃のレオ君じゃそうなる]
[果たして和解できるのだろうか]
[身バレ騒動のときは支援動画出してたぞ]
レオの当時のひどいエピソードを絡めつつ、さりげなく裏での努力や苦労を織り交ぜながらも四人は語り合う。
こうして、かつてのトップアイドルSTEPのメンバーによる当時の裏話はどんどん盛り上がっていくのであった。