Vの者!~挨拶はこんばん山月!~   作:サニキ リオ

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【誕生日】獅子島レオ誕生会 その2

 次にレオお手製のくじ引きボックスからお題を引いたのは慎之介だった。

 

「一番ピンチだと思った経験、だって」

 

 慎之介が引いたお題は〝一番ピンチだと思った経験〟だ。

 STEPとして活動する中、ピンチに陥ったことは何度もあった。

 その中でも慎之介は自分が一番ピンチだと思った瞬間を語った。

 

「ピンチならいろいろあるけど、レオ君とレオ樹君が本番前のステージ裏で殴り合いの喧嘩を始めたことかな」

「いや、本当にレオ之介には特に迷惑をかけたと思う……」

「マジでごめんな……」

「……僕も結構迷惑したんだけど」

 

[ファッ!?]

[何してんのwww]

[そんなことあったのか……]

 

 今まで出たことのない情報が出てきたことで、コメント欄は驚きのコメントで溢れかえる。

 

「あのときはお互い頭に血が上ってたからな」

「血が上ってた癖にてめぇは執拗にボディ狙ってきたじゃねぇか!」

「アイドルが顔ボコボコなのはまずいだろ!」

「まず殴り合いがまずいことに気づいて」

「……間に割って入ったレオ之介も何発かもらってた」

「レオ三郎君はさりげなく距離とってたよね……」

 

[お労わしや、レオ之介君……]

[ライブ中にガチの殴り合いはヤバい]

[いつも仲裁役してたのか……]

 

 レオと良樹はたびたびアイドル活動中に衝突していた。

 まだ中学生ということもあり、意識の高い方であったレオですら良樹の殴り合いに応じることは多々あったのだ。

 その度に当時マネージャーだった三島は胃を痛めていたのだが。

 

「俺とレオ樹は拳で語り合うことも結構あったからな」

「殴りかかってたのはいつも俺だったけどな」

「……レオ樹は本当に反省すべき」

「まあ、さすがにもう殴り合うことは――うん、ないね」

 

[これあっただろwww]

[喧嘩するほど仲が良いってか]

[レオ君、男だけのときは割と悪ガキだからな]

 

 今はもう暴力沙汰になることはないと言おうとした慎之介だったが、楽屋で再会した際に一触即発の空気になったことを思い出し、言葉を濁した。

 

「えーと、次は……嫌いな芸能人か」

 

[ヤバいお題入ってて草]

[えっ、大丈夫な奴?]

[バイバイ、アーカイブ]

 

 次にお題を引いたのは良樹だったが、内容はかなり攻めたものだった。

 

「いや、俺これ入れてないよ!?」

「レオ君、スタッフさんがサムズアップしてるよ」

「……これはやられたね」

「スタッフゥゥゥ!」

 

[草]

[何やってんのwww]

[さすがにじライブ]

 

 実は、レオが用意したお題だけでなく、予想外のものがあると盛り上がると判断したスタッフが悪戯で攻めた質問を紛れ込ませていた。

 もちろん、実際に箱が映っているわけではないため、まずかったらその場の判断でお題を変えられるからこそできることでもある。

 しかし、良樹は悪戯っぽく笑うとお題について話し始めた。

 

「嫌いな芸能人か。昔バラエティーで――」

「わああああ! マジで言うなって! アーカイブなくなるから!」

「別にいいだろ。ちなみに今も――」

「だからやめろって言ってんだろ! いや、マジで!」

 

[ガチのやつで草]

[レオ樹君、容赦ないwww]

[レオ君が必死でガードしてるwww]

 

 もちろん、良樹は具体的な名前を言うつもりは微塵もなかった。

 彼が欲しかったのは慌てふためくレオのリアクションだった。

 

「あー、あの人かぁ」

「……レオ樹の気持ちはわかる」

「お前らもガチっぽい空気出すのやめて!」

 

[久しぶりにこんなに慌てるレオ君見た]

[レオ君の胃がマッハ]

[誰なのか気になる]

[メン限でこっそり教えて]

 

 良樹の意図を察した慎之介と三郎も悪ノリする。

 終始振り回されっぱなしのレオだったが、こういった楽屋裏のノリは久しぶりだったため、内心ではこのやり取りを楽しんでいた。

 

「と、とにかく次いこ次!」

「……じゃあ僕が」

 

 強制的に話題を打ち切り、次のお題へと進む。

 三郎がお題を引くと、そこに書いてあったお題は〝自分達の番組内で作った料理の中で一番印象に残っている料理〟だった。

 

「……自分達の番組内で作った料理の中で一番印象に残っている料理だって」

 

「あー、ビストロ企画の奴か」

「懐かしいな、おい!」

 

[なっつ]

[あったなwww]

[今もレオ三郎君、インスラで料理結構あげてるよね]

 

 昔、自分達の冠番組で行っていたゲストへと料理を振る舞う企画。

 レオを含めSTEPのメンバーが全員料理上手になったきっかけでもある。

 その企画において何が一番記憶に残っているか。

 三郎はじっくりと考えたあと、思い出の品について語った。

 

「……やっぱり韓国風パエリアかな」

「出た! ただの石焼ビビンバ!」

「パエリア風ビビンバだっけ?」

「いや、ビビンバ風ビビンバだろ」

 

[結局ただのビビンバで草]

[パエリアどこいったwww]

[伝説のビビンバ風ビビンバ]

[結論、韓国風パエリアはビビンバ]

 

 三郎が思い出の品としてあげたのは、韓国風パエリアだった。

 この韓国風パエリア、実はパエリアと言っておきながら味も作る過程も結局石焼ビビンバになってしまったことで、ネタにされた品だったのだ。

 作った三郎はかたくなにパエリアであることを主張していたのだが、全員から「それはビビンバだ」と言われ、最終的に〝ビビンバ風ビビンバ〟と言ったことで有名になったのだ。

 

「こういうアレンジした料理作ろうとして別の料理になったシリーズ結構あったよな」

「豆乳でパンナコッタ作ろうとして、ただの甘い豆腐になったとかか?」

「あったあった! ゲストの人絶句してたよな!」

「……甘い豆腐に比べればビビンバ風ビビンバはマシなはず」

 

[五十歩百歩で草]

[甘い豆腐でワロタ]

[おいしいけど失敗シリーズ好きだった]

 

 それからもトークは盛り上がり、ついにライブの時間が訪れた。

 3D化配信のときのように、画面はライブステージへと切り替わる。

 

「さあ、最初はこの曲〝Sun Gets Kick〟!」

 

[きちゃ!]

[何気にレオ三郎君が作曲した曲なんだよな]

[やはりこれがないと始まらない]

 

 レオは自分を象徴する持ち歌〝Sun Gets Kick〟を高らかに歌いあげる。

 それからレオは慎之介達と全力で様々な曲を歌い続けた。

 

 慎之介が出演したアニメのキャラクターソング。

 良樹が好きなラップ入りの曲。

 三郎が作曲した三人のバンドで出した曲。

 レオの誕生日の日付と同じタイトルの曲。

 

 久しぶりにSTEPのメンバーで集合して行ったライブは大いに盛り上がった。

 何せ、他の三人もボーカルに参加していたのだ。

 実質これはSTEPの再結成と言っても過言ではなかった。

 

「アンコールありがとな! 最後は俺の趣味でもあるけど、これからの決意を込めた曲を歌うぜ!」

「みんな! まだ僕達のパフォーマンスみたいよね!?」

「これで終わらせていいのか!?」

「……僕達はまだ歌い足りない!」

 

[ファッ!?]

[俺もまだまだ聞いていたい!]

[マジでSTEP再結成の流れくる?]

[俺達が声をあげて復活させるんだよ!]

 

 レオはコメントの反応を見てニヤリと笑う。

 そして、慎之介、良樹、三郎もレオと同様に笑っていた。

 

「さあ、最後の曲だ! ユメヲカケル!」

 

 レオ達は最近ハマっていた競馬の擬人化アニメの二期の主題歌を歌い始めた。

 パート分けを行い、全員でこれからの夢に向かって思いを込めて全力で歌う。

 

[ほら!]

[ほら!]

[ほら!]

 

「キミと夢を重ねて~る♪」

 

[ほら!]

[ほら!]

[ほら!]

 

「この胸に上る太陽!♪」

 

[ほら!]

[ほら!]

[ほら!]

 

「噛み締めてgo!♪」

 

「「「「キミと夢をかけ~るよ♪ いつまでも希望とともに~♪」」」」

 

[888888888888888]

[888888888888888]

[888888888888888]

[うおおおおおおおお!]

[これ単体で歌ってみた動画出してほしい]

[あれ、画面が霞んで見れない……]

 

 最後にピッタリと声を揃えて曲を歌い終えると、コメント欄は絶賛の嵐だった。

 ツウィッターでも〝STEP再結成〟がトレンド一位になり、誕生日ライブやレオの名前もトレンド入りした。

 こうしてレオの誕生日配信は新たな伝説を作り出したのであった。

 

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