Vの者!~挨拶はこんばん山月!~   作:サニキ リオ

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【真実】ファンレター

 

「ねえ、この箱どうしたの?」

「ファンレターだよ。誕生日配信の後に大量に届いたから読んでおこうと思って」

「……この量読むの?」

 

 レオは事務所に届いたファンレターを自宅へと郵送してもらっていた。

 その量はダンボールが何箱も積みあがるほどで、いつものように夕食を食べにきた夢美とミコは絶句していた。

 

「やっぱりパパは人気デスネー。ワタシはEN組なので、手紙は全然届きマセンヨー」

 

 ミコはいまだにレオ達の前で作った片言で話していた。

 何だかんだでレオも夢美も公式の仕事で忙しかったため、打ち明けるタイミングを逃してしまっていたのだ。

 

「手紙はもらえなくても、人気はダントツだけどな」

「新しいEN組のメンバーも人気なんでしょ?」

「後輩ちゃん達もみんないい子デスカラネ!」

 

 それから三人で楽しく談笑しながら夕食をとった後、夢美とミコはすぐに自分達の部屋へと戻っていった。

 レオがファンレターを読むことに集中できるように気を遣ったのだ。

 レオはその気遣いに感謝しながら、一通一通しっかりと目を通していく。

 

「ん? これって……」

 

 そんな中、レオはあるファンレターに目が行く。

 ファンレターの封筒には住所と名前が記載されている。

 

「古織実果……」

 

 初めて見る名前のはずだった。

 しかし、レオはどうしてもその手紙が気になってしょうがなかった。

 誕生日に送られたはずのファンレターだというのに、嫌な予感が止まらない。

 封を切って手紙を取り出す。

 そこには可愛らしい丸文字でレオへの祝いの言葉が書かれていた。

 

 

 

 レオ君、誕生日おめでとう!

 こうしてファンレターを送るのは初めてなので、下手な文章になっちゃうかもしれないけど許してね。

 レオ君はあたしの光だった。

 昔から周りとどこかズレてるところがあるおかしな子。

 そんな風に呼ばれていたあたしは友達ができなかった。

 面白がって笑って見てる子はたくさんいたけど、心から友達って呼べるのは一人だけだった。

 その子さえいればいい。

 そんな風に思ってた。

 でも、就職してからは違った。

 別に何かやりたいことがあるわけじゃない。

 成果をあげれば妬まれて、それが嫌で周りに合わせて愛想笑い。

 たまに会う友達と昔から好きだったゲームだけが拠り所だった。

 でも、段々と趣味や友達と会う時間ですら苦痛に感じるようになった。

 あたしにはそれしかない。

 だから、それを失ったら何もなくなっちゃう。

 そう思えば思うほど、苦しくなった。

 だから、U-tubeで配信者の配信を見るようになった。

 気軽に繋がれた気分になって、いつでも気軽に切れる。

 そんな関係が心地良かった。

 でも、レオ君に出会ってからは変わった。

 一生推せる! って、そんな風に初めて思った。

 あなたは何度も壁にぶつかっても夢美ちゃんやにじライブのみんなと乗り越えていった。

 10万人記念枠で最優秀袁傪になれたときは本当に嬉しかった。

 少しでもレオ君の配信を盛り上げる要因の一部になれたと思ったから。

 だから、レオ君が配信を頑張っていると思うと、自分も頑張ろうって思えた。

 心にも余裕ができて友達ともまた会えるようになったし、ゲームもレオ君や夢美ちゃんが楽しそうにプレイしてるのを見てまた楽しめるようになった。

 それに、レオ君に出会えたから夢美ちゃんとも仲良くなれた。

 配信もやっていたとはいえ、ただのファンでしかなかったあたしに夢美ちゃんは気さくに接してくれた。

 ツウィッターのリプもすぐに返してくれて、趣味も合ったし、気がつけばあたしは夢美ちゃんも大好きになってた。

 夢美ちゃんとは、これからも仲良くしてね?

 あと、あたしが今回慣れない手紙を送ったのは、仕事の都合で何ヶ月か海外に行っちゃうからなの。

 誕生日配信のときにはギリギリ戻れそうだけど、お祝いできるかわからないからこうして事前に手紙を送らせてもらったんだ。

 何か自分語りばっかりでごめんね!

 要するに、レオ君と出会えたことで夢美ちゃんとも出会えたし、あたしはまた人生を頑張ろうって思えたってこと!

 だから、生まれてきてくれてありがとう!

 いつまでもレオ君はあたしの推しだよ!

 ハッピーバースデー!

 

 P.S.もしよかったあたしの大好きなベスティアシリーズのゲームやってみてね! マジで神ゲーだから!

 

 冷凍ミカン@雌袁傪

 

 

 

 手紙を読み終えたレオは静かに手紙を封筒にしまうと、顔を俯かせた。

 

「どういうことだ……」

 

 手紙の差出人は冷凍ミカンこと古織実果だった。

 先日、冷凍ミカンは海外に転勤して忙しくなったため、配信者を実質引退したと聞かされた。

 レオや夢美の配信にもまったく現れずに、SNSの投稿もピタリと止まっていた。

 しかし、手紙の内容と食い違っているところがあった。

 冷凍ミカンはレオを一生推し続けると、この手紙を書いた時点で宣言している。それも、誕生日の数ヶ月前だ。

 さらに、海外からは誕生日配信前に戻ってこられるとも書いてある。

 

「……乙姫先輩やタマ先輩は教えてくれないんだろうな」

 

 もし真実と乙姫達から聞かされた情報が違うというのならば、それは自分達が真相を知らない方が良いと判断したからである。

 レオは改めて冷凍ミカンの配信のアーカイブを見てみることにした。

 夢美とコラボした際のガチャ動画しか見たことはなかったが、どうしても冷凍ミカンという配信者がどんな人間か知りたくなったのだ。

 U-tubeを立ち上げて冷凍ミカンのチャンネルへと飛ぶ。

 冷凍ミカンのアーカイブでは、様々なゲーム配信のアーカイブが並んでいたが、最も多かったのは乙女ゲームの配信だった。

 レオはアーカイブの中から最新のアーカイブである配信を選択する。

 

『どもどもー! 冷凍ミカンです! 今日はにじライブチップス開封やってきます』

 

「あったなぁ……」

 

 にじライブチップスとは、ポテトチップスの袋の中ににじライブのライバーのイラストが描かれたカードが封入されている商品のことである。

 レオをはじめとした人気ライバーの限定イラストが封入されており、この手の開封配信を行っている者は大勢いた。

 もちろん、その大半はにじライブのライバーだが。

 アーカイブ上で冷凍ミカンは慣れた手つきでどんどんにじライブチップスを開封していく。

 

『やばいよこれ。後で全部食べなきゃいけないから太るの確定なんだけど』

 

[それはそう]

[こんどリングフィットやって痩せようぜ]

[こんだけ開けてレオ君いなかったら発狂しそう]

 

 一つ開けるたびに叫び声をあげてレオが出ないことを嘆く冷凍ミカンの姿を見て、レオは自然と笑みをこぼす。

 

『シャァァァ! レオ君きちゃぁぁぁぁぁ!』

 

[おめ!]

[鼓膜ないなった]

[良かったな! ¥4,000円]

 

 レオを引き当てて喜びの叫び声をあげる冷凍ミカンを見てレオは確信する。

 これほどまでに自分達を推してくれる人間がSNSの更新も一切しないで、誕生日配信へのリアクションもないということは余程のことがあったのだ。

 

 杞憂ならばそれでいい。

 

 レオは真実を知る決意をすると、冷凍ミカンからのファンレターを別の場所へ保管して、他のファンレターに目を通し始めるのであった。

 

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