Vの者!~挨拶はこんばん山月!~   作:サニキ リオ

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【BESTIA BRAVE】世界樹の巫女とかよく知らないけど、たぶん全員抱いたぜ その1

 レオのBESTIA HEARTの実況プレイが終了したため、夢美によるBESTIA BRAVEの実況プレイが開始される。

 夢美はゲーム開始と共に、早速主人公のデフォルトネームであるブレイブをバラたろうに変更してゲームを開始した。

 

「それにしても、続編は乙女ゲーじゃなくてギャルゲーなんだね」

「cre8さんは幅広くゲーム作ってるからな。BESTIA BRAVEも正確には続編じゃなくて、ハートの方のIFらしいぞ」

「どゆこと?」

「BESTIA HEARTの主人公が光魔法に覚醒しなくて王国に見つからない、もしくはそもそも生まれていない世界ってことらしい」

 

[光魔法使えるのはあくまでも一人ってことか]

[サラッと前作主人公いなかったことにされてる……]

[乙女ゲーとギャルゲー両方作ってるの珍しいよな]

 

 BESTIA BRAVEは所謂ギャルゲーと言われるもので、女性向けのBESTIA HEARTとは違って男性向けのゲームだ。

 システム面も大きく変わっており、こちらは戦闘パートが存在する。

 BESTIA HEARTがノベルゲームに近い形式だったのに対し、BESTIA BRAVEはRPG要素が強くなっている。

 その証拠にプロローグの時点で主人公の住んでいる領内で竜が暴れはじめ、主人公が領民を守るために剣を構えたことで戦闘パートが始まった。

 

『領のみんなは俺が守る!』

『グルォォォォォ!』

 

「いきなりモンハン始まったんだけど!?」

「チュートリアル戦闘的な奴か。雰囲気的にはモンハンよりルンファクって感じがするけどな」

 

[ドラゴン戦がチュートリアルなのかよw]

[最初からハードで草]

[レオ君、ルンファクもやってたのか]

 

 夢美はアクションゲームが得意というわけではないが、苦手というほどでもない。

 むしろ、こういった敵の行動パターンが一定のゲームならば、持ち前のリズム感でうまく立ち回れるため得意分野と言えるだろう。

 

『主人公は竜に大ダメージを与えることができる〝滅竜剣〟という光魔法を使用することができます。滅竜剣を使うためには滅竜ゲージを溜める必要があります。ここぞというときに使いましょう』

 

 要所要所で説明テキストが出てきて一通り戦闘を覚えた夢美は説明通りに滅竜ゲージが溜まったため、説明のままにボタンを押した。

 

『これで止めだ! 〝滅竜光刃!!!〟』

 

 

『QUEST CLEAR!!』

 

 

「ドラゴン弱っ!?」

「まあ、チュートリアルだからな」

 

[滅竜剣強すぎだろwww]

[体力半分消し飛んだぞ]

[でも、ゲージ溜まるのに時間かかるから一戦闘で一回だろうな]

 

 戦闘のカギにもなるであろう滅竜剣は、言わば必殺技みたいなものである。

 敵を攻撃したり、敵から攻撃を受けることで滅竜ゲージが溜まり、そこでやっと放てる大技なのだ。

 

「思ったんだけど、主人公何者だよ」

「いきなりこんなに強くていいの?」

 

[最初は敵が弱いだけやで]

[段々とキツくなってくる]

[ごり押し出来るのも序盤くらいだぞ]

 

 こういった大技はゲームの中盤から終盤にかけて使えるようになるパターンが多い。

 辺境伯の息子という生まれだとしても、世界で唯一光魔法を使えるという主人公の立場は少々異質だった。

 

「妹は普通に土魔法の使い手なんだろ? これ主人公が実は特殊な存在で辺境伯がカモフラージュのために息子として育ててるとかそんな感じだったりするんじゃないか」

「あー、ありそう。ところで妹ちゃんは攻略キャラかな」

 

[このゲーム考察するの楽しいよ]

[ハートの方でわからなかった謎がわかるからな]

[バラギヨスガる気満々で草]

[ニチャァ……]

[ニチャァ……]

[ニチャァ……]

[ニチャァ……]

[相変わらずコメント欄の粘度高いな]

 

 レオが主人公の正体について考察を始めたことで、既プレイの視聴者達は夢美の言った通りに[ニチャァ……]というコメントでネタバレ欲を抑える。

 このゲームでは、前作で回収されなかった〝ラスボスの正体〟〝王国の成り立ち〟〝世界樹の秘密〟についての伏線が回収される。

 前作で容量の都合で詰め込めなかった設定を担当ライターが今作に詰め込んだのだ。

 そのため、ファンの間では乙女ゲーで出して欲しいという声も少なくはなかった。

 しかし、結果的にアクション要素を足したことでベスティアシリーズは多くのファンを獲得することができたのだった。

 

『初めまして、私はセタリア・ヘラ・セルペンテと申します。あなたが噂の竜殺しですか?』

『一応、そういうことになるな』

 

「うわっ、めっちゃ清楚な子出てきた!」

「本当に清楚なのか? 猫被ってるだけじゃないのか」

「何こっち見てんだよ!」

「だって、なあ?」

 

[レオ君清楚に対して疑心暗鬼になってて草]

[清楚()]

[初手清楚は疑うべき]

[髪色まで被ってるからなw]

 

 王立魔法学園に入学した主人公はいきなり攻略対象の一人、緑の長髪が特徴的なセタリア・ヘラ・セルペンテに話しかけられる。

 セタリアはこのゲームのメインヒロインのような立ち位置で、分け隔てなく誰にでも優しく接する心優しき少女だ。

 そんなセタリアの無条件な優しさをレオは最初から疑って掛かり始めた。

 

『これから三年間、よろしくお願いします』

 

「あっ、かわいい!」

「パッケージでも一番前にいるし、この子がメインヒロインみたいだな」

 

[リア様はかわいいです]

[リア様かわいい]

[リア様は表裏のない素敵な人です]

 

 コメント欄にはリア様という単語が多く散見された。

 それを見てレオは改めて思った。

 

「やっぱこの子清楚()だろ」

「いや、あたしは絶対オタクの幻想を体現した女の子だと思うね!」

 

[幻想言うな]

[陰キャにも優しい女子はいる!]

[主人公がイケメンだから話しかけてくれるんだぞ]

 

 それからセタリアとの会話を進めていると、人を見下したような表情を浮かべた金髪の少年が登場した。

 

『リア、なんだいそいつは?』

 

「おっ、噂のスタンフォードが出てきたぞ」

「うおおお! めちゃめちゃ顔が良い!」

 

『スタンフォード殿下、彼が噂の竜殺しですよ』

『へぇ、こんなボンクラそうな見た目の奴が竜殺しねぇ? まったく、こんな奴に光魔法が宿るなんて世も末だよねぇ』

 

「えっ、待ってかっこいい! めっちゃかっこいい! やばい! あははっ、かっこいい! 世も末だよねぇ……あー、言い回しがすこ!」

「……お前、こういうキャラ好きなの?」

 

[スタン先生きちゃ!]

[私の最推し!]

[先生だあああ!]

[バラギ大興奮]

[レオ君ちょっと引いてて草]

 

 スタンフォードが登場したことで、コメント欄が一気に湧く。

 初登場から主人公を扱き下ろしてくる姿に、レオは怪訝な表情を浮かべて呟く。

 

「こういっちゃ何だけどめちゃくちゃ三下ムーブしてくるな……」

「でも、こういうクズキャラすこなんだよなぁ」

 

[バラギは好きそう]

[スタン先生は基本三下ムーブ]

[スタン先生の見せ場はこれからよ]

 

 それからストーリーは進み、主人公達が魔法演習の授業を受けている場面に差し掛かった。

 

『きゃあぁぁぁ!?』

 

 突然、モブらしき少女の悲鳴があがる。

 画面が切り替わると、そこには巨大な猪のような魔物がいた。

 

『ブルァァァァァ!』

『すぐに応援の教師を呼んできてくれ! こいつはシャレにならん!』

 

 猪の魔物ボアシディアン。

 通常ならばそこまで強くない魔物という設定だが、このボアシディアンは黒いオーラのようなものを纏っており、明らかに凶暴化している様子だった。

 

『ぐっ!?』

 

「いや、先生弱っ!?」

「めっちゃ強そうな見た目してるのにな……」

 

[引き立て役が過ぎる]

[ベスティアシリーズはモブに厳しい]

[筋骨隆々キャラの扱いよ]

 

 魔法演習の担当教師があっという間に吹っ飛ばされる。

 

『はっ、魔獣か。君達は下がってな。僕が守ってやるよ』

『待て、スタンフォード!』

『ボアシディアン如きなら楽勝さ! ぐふっ!?』

 

「嘘やん!? スタンフォード弱っ!」

「えぇ……本当にこのキャラ人気投票一位なのか?」

 

[即落ち二コマで草]

[サイステ先輩味を感じる]

[扱いが酷すぎるwww]

 

 果敢にボアシディアンに挑んだスタンフォードはあっさりと敗北した。

 もはやギャグのようなやられっぷりに、レオは本当にこのキャラクターが人気投票一位なのか疑問に思った。

 

「この後、ボロボロになったスタンきゅん慰めてあげたい……」

 

[いつの間にかスタンきゅん呼びに]

[バラギ陥落してて草]

[その前に猪を倒せw]

 

 この後、夢美はボアシディアンの攻撃を一撃も食らうこともなくあっさりと倒してみせるのであった。

 


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