最近、女性視聴者が増えて男性ライバーの勢いが増している。
勝輝が道を切り開いて赤哉やレオが舗装したことで、にじライブでは男性ライバーを爆発的に伸ばすことに成功していたのだ。
その影響もあり、白夜と五期生としてデビューしたギルベルトも例に漏れずに伸びていた。
この二人は元々サタン・ルシファナとして活動していたこともあり、実力に関しても申し分なかった。
要するに、実力がある者が波に乗れた結果、爆発的に伸びることに成功したのだ。
そして、三期生に追いすがる勢いで人気ライバーとなっている白夜は誕生日凸待ち配信を行っていた。
「はい、というわけでね。今日は誕生日凸待ちやってきまーす」
[緩くて草]
[誕生日おめでとう! ¥50,000円]
[誕生日おめでとう! ¥20,000円]
[誕生日おめでとう! ¥30,000円]
配信開始早々に高額のスーパーチャットが飛び交う。
それだけ白夜の誕生日を祝いたいと思う者は多く存在したのだ。
「おお! 赤スパセンキュー!」
スーパーチャットに礼を述べると、白夜は画面を切り替えて以前から準備していた誕生日グッズのお品書きを表示した。
「こうして無事に誕生日を迎えられたのも今日まで支えてくださったみなさんのおかげです。というわけで、これからもよろしくな!」
[露骨で草]
[これは買わざるを得ない]
[もう買いました]
露骨な販促だったが、それはある種のキャラとして捉えられていたため、視聴者はむしろ喜んでグッズを購入していた。
一通り販促が終わると、白夜は今回誕生日凸待ちを行った経緯を話し出した。
「今までこういう凸待ちってやってこなかったんだけどさ。いろんなライバーさんが凸待ちやってるの見て、こういう機会がないと絡みに来づらい人もいると思うから、やってみたんだよね」
[ほう]
[まあ、お祝いって名目があれば来やすいっちゃ来やすいな]
[陰キャ人望ゲキアツお嬢様とか大義名分がないと来ないからなw]
白夜はソロでの配信頻度が高く、配信時間も長時間に及ぶ。
それなりにコラボなどで様々なライバーと絡んでいるとはいえ、もっといろんなライバーと絡む機会を増やしたいと白夜は考えていたのだ。
「そんじゃ早速……おっ、きたきた!」
[一番手は誰だ]
[まひるちゃんと予想]
[同じ家なのにネットで凸るのか……]
『あっ、今って大丈夫すか?』
「おう、大丈夫だよ」
『ありがとうございます。どもー、ギルベルトでーす』
「自己紹介緩っ!」
『いや、白夜さんには言われたくないっすよ』
[ギルきちゃ!]
[ギルバルド]
[ギルガルド]
[ベロベルト]
[よお、ベルト]
[誰一人正しく呼んでなくて草]
ギルベルトは初ツウィートの際に本来ギルベルトという名前の箇所を〝ギルベルド〟と誤字ツウィートとしてしてしまったことが原因で、名前をわざと間違えるというネタが流行っていた。
当初こそただの身内ネタだったが、他のライバーもそれに乗っかってわざと名前を間違えてツウィッターのリプライを送るなどして盛り上がっていたのだった。
「今日は来てくれてありがとな、キルレート」
『いや、ギルベルトな! そのネタ割ともう擦られまくってますから』
「いいか、三期生からの教えだ。ガムは味がしなくなっても噛み続ければ味が出るってな」
『それ三期生ってかレオさんじゃないすか!』
[草]
[レオ君……]
[三期生で一番まともに見えて一番狂ってるライオンだからなぁ]
同じネタを何度も繰り返し飽きられても繰り返す。
それによってネタを定番化させて持ちネタにする。
それはレオの得意技だった。
レオのことを心から尊敬している白夜もまた、同じネタを擦ることが好きだった。
「それにしても、こうして誕生日凸待ちに来てくれるとは思わなかったよ」
『去年はバタバタしてましたから、こうしてちゃんとお祝いしたかったんすよ』
「いきなりぶっこんできたな」
[そういえばこの二人って……]
[ちゃっかり同じ事務所で再会してる]
[本当に良かった……]
白夜は以前カラオケ組のメンバー交代という名目でギルベルトに協力してもらったことがあった。
自分の後釜に座り、何とか崩壊する魔王軍を支えてくれたこともあり、白夜はギルベルトに心から感謝していた。
「ギルベルトも楽しそうで良かったよ」
『マジで白夜さんのおかげと言っても過言じゃないっすね』
ギルベルトはギルベルトで、バーチャルリンク炎上騒ぎが起こる中、二代目声優へのバッシングが起こるイベント会場を鶴の一声で収めた白夜の姿に憧れていた。
こうして同じ事務所のライバーとしての今があるのも、白夜がいたからこそ実現したことだったのだ。
ギルベルト達、二代目魔王軍のメンバー達は先代より改善したくらいで、事務所からの扱いの悪さは相変わらずだった。
そんな中、バーチャルリンクの白夜に味方をしてくれていた一部の社員達が白夜からの口添えで団結して彼らを守っていたのだ。
その社員達も今ではにじライブで働いていた。
『だから、こうして白夜さんの誕生日を祝えるのが素直に嬉しいんすよ』
「そっか。ありがとな!」
[泣きそう]
[二人共大変だったね……]
[いっそのことギルもカラオケ組と絡もうぜ!]
白夜とギルベルトの苦労を知っている古参の視聴者達は、二人がこうして報われたことに涙を流した。
「どうする。今度あぺの大会でも出るか?」
『マジすか!』
「一緒のチーム組もうぜ」
『いいっすね! だったら、もう一人誰にしますか?』
「そうだな……レイン、リーフェ、サーラ先生はFPS自体やらないし、つばさはゲームスキル的に論外だし」
[つばさちゃん……]
[論外は草]
[つばさちゃん、戦闘があるゲーム基本的に出来ないから……]
白夜はどうせ組むなら元魔王軍のメンバーから選ぼうとしたが、FPSをプレイできる者が一人もいなかった。
「レオさんもバラギさんもFPSはやらないし、ハンプさんと林檎さんは番組の都合で忙しくて大会出れなそうだしなぁ」
『五期生だと、辛うじてあおちゃんができますかね』
「じゃあ、誘うか」
もう一人はギルベルトと同じ五期生である新海あおいを誘うことになった。
よく舌を噛んだり、振る舞いが幼女のようなあおいだが、彼女はそれなりにゲームスキルを持っている人間だったため、人選としては最適だった。
『お姉さん誘わなくていいんですか?』
「あー、姉ちゃんは下手くそだからいいのいいの!」
[ライン越えやぞ]
[サラッとディスってて草]
[姉のディスになると容赦ないよなw]
白夜はいつものようにわざとらしくまひるの悪口を言う。
もはやまひるの話題が振られるということは、悪口を言うための振りのようになっていた。
「白夜ァァァ!」
「うおっ、急に入ってくんなよ! てか、ノックしろよ!」
「ドッキリだよ! 誕生日おめでと! はい、プレゼント!」
「あっ、サンキュ」
[姉フラwww]
[ブチギレながら祝ってて草]
[マジでこの姉弟仲良いなw]
勢いよくドアを開けてまひるが乱入してくる。
怒りながらもクラッカーを鳴らしてプレゼントを渡すというドッキリに、視聴者達も、ギルベルトも笑顔を浮かべていた。
『いやぁ、本当に楽しそうで良かったっす』
紆余曲折があったものの、白夜とギルベルトはカラオケ組の引継ぎを兼ねたコラボで言っていた〝再会〟を果たすことができたのであった。