白夜の誕生日凸待ちには大勢のライバーが駆けつけた。
魔王軍時代にサタン・ルシファナと絡んだことのある者。
新しく白鳥白夜として絡んだことのある者。
たとえ姿が変わろうとも白夜が慕われる人間であることに変わりはない。
それほど、彼が今まで積み上げてきた信頼は大きいものだったのだ。
「おっ、また来た! 時間的にそろそろラストっぽいな」
[あっという間だった]
[さあ誰が来るか]
視聴者達が期待に胸を膨らませる中、白夜は表示された名前を見て瞬時に音量を最小限まで下げた。
『白夜君、お誕生日!』
『おめでとおおおおおおお!』
[鼓膜ないなった]
[安定の鼓膜破壊兵器]
[カラオケ組だ!]
凸待ちにやってきたのはカラオケ組だった。
カラオケ組はそのほとんどが別事務所の人間で構成されており、全員が案件や大型企画で引っ張りだこなこともあり、コラボ頻度は極めて低い。
今日も集まれたのは、坂東イルカ、但野友世の二名だけだった。
音量を元に戻した白夜は、すぐにイルカと友世の立ち絵を表示させる。
「ありがとうございます! レオさんと和音さんは歌謡ショーですよね?」
『ええ、残念ながら日程が被ってしまいましたから』
レオと和音は、つばさとサーラ同様にVtuber歌謡ショーの方に参加していたため、今日の凸待ちには来ることができなかった。
それを少し寂しく思いつつも、白夜はこうしてイルカと友世が来てくれたことを嬉しく思っていた。
『そこで、アタシ達全員揃えるために――ジャジャーン!』
「うっ、耳が……」
[頼むからもっとボリューム抑えて]
[鼓膜代 ¥10,000円]
[何故友ちんが鼓膜を破壊するたびにスパチャが飛ぶのか]
友世は事前にレオから受け取っていた動画ファイルを白夜へと送信した。
『二人にビデオメッセージ撮ってきてもらったよ!』
『うふふっ、楽しんでくださいね……ふ、くくっ』
[畜生イルカが笑っておられる]
[嫌な予感がする]
[一体何がはじまるんです?]
イルカが堪え切れずに笑っていることで、視聴者達は不安を感じ始める。
白夜はある程度予想がついていたため、真顔になっていた。
動画ファイルを再生すると、そこには一頭のガチライオンの姿があった。
『やあ』
「スゥッ――――…………」
[安定のガチライオン]
[レオ君のネタを挟まないと死んじゃう病が出たw]
[カラオケ組といえばガチライオン]
[一周回ってエモイ]
いきなり笑わせにかかってきたレオの演出に、白夜は表情筋に力を入れて何とか耐えることができた。
気持ちを落ち着けて再び画面を見る。
『あっ、私もいますよ』
「ふっ……くっ!」
[和音ちゃん何やってんのwww]
[責任取れよ、にじライブ]
[ガチライオンとガチタイガー]
[これは山月記]
[李徴しかいなくて草]
すると、そこにはリアルな3Dモデルの虎がいた。
中身はもちろん和音である。
『さて、茶番はこの辺にしようか』
『そうですね』
二人は自分達のモデルを元の姿に戻すと、お祝いの言葉を口にした。
『『白夜君、誕生日おめでとうございます!』』
「あ、ありがとうございます!」
[複雑そうで草]
[さっきの茶番のせいで感情がバグってるんだろ]
[どうしてレオ君は素直にエモくできないのか]
まだ何かあるのではないか。
警戒しっぱなしの白夜は表情を引き攣らせたままレオと和音のお祝いの言葉を聞いていた。
『白夜君とは事務所も同じだけど、最近はお互いいろいろ忙しくてコラボもあまり出来てないからね。こうして動画でのお祝いになって申し訳ないけど、今度一緒に飯でもいこう!』
『私も白夜君と絡む機会が最近ないので、本当はお祝いに行きたかったんですけど、スケジュール調整が難しくてこのような形になってしまい、すみませんでした。またいつかコラボしましょう!』
「レオさん、和音さん……」
先ほどまで引き締めていた表情筋が自然と緩む。
白夜にとってカラオケ組は魔王軍や朝昼夜亭と同じくらい大切な居場所だ。
こうしてスケジュールが合わなくても誕生日を祝うために、わざわざ動画を用意してくれた。
それが何よりも嬉しかった。
『まあ、そういうわけで、何かできないかなっと思ってこの動画を撮っているんだけど』
『ささやかですが、私達からバースデーソングをお届けしたいと思います』
「えっ、マジすか!」
[お歌たすかる]
[歌唱力お化けコンビのデュエットきちゃ!]
[これは期待]
[おかしい、嫌な予感が消えない]
二人が歌うと聞いて、白夜もコメント欄も湧き立つ。
Vtuber界でもトップクラスの歌唱力を持つ二人のデュエット。
それが白夜だけのために行われるというのだから、期待値は上がっていく。
『『それでは聞いてください!』』
そして、二人がそう言った瞬間、画面に再びライオンと虎の3Dモデルが現れた。
『『ホントにホントにホントにホントにラ~イオンだ~♪』』
「ぶふっ!?」
[サファリパークで草]
[こ れ は ひ ど い]
[こんなん耐えられるわけないやろ!]
レオはキレのあるダンスを踊りながら、和音は華麗な舞を舞いながら熱唱する。
二人共、外見は二足歩行で立っているライオンと虎である。
縦横無尽に画面内で動き回る姿と抜群の歌唱力。
その姿はシュールの一言に尽きた。
「おい! 待って、ちょっと待って!」
[これ単品で上げてくれwww]
[動きキレッキレで草]
[アホほど歌がうまいの笑う]
[これ高熱のときに見る夢だわ]
予測可能回避不可能。
レオと和音のビデオメッセージは配信を爆笑の渦に飲み込んだ。
イルカに関しては笑い過ぎて過呼吸になりかけているほどである。
『ふっ、くくくっ……という、わけ、で、ぶふっ……!』
『えー、ふっ……というわけでね! 誕生日おめでと! じゃね!』
「ちょっと、僕の感動を返してくださいよ!」
[嵐のように過ぎ去っていったな]
[イルカちゃん過呼吸のまま帰っていったwww]
[やはりカラオケ組しか勝たん]
こうして白夜の誕生日凸待ちは最高潮の盛り上がりを見せたまま終了した。
この後に大本命が控えているなど、満足感に浸っている白夜には知る由もなかった。