招待客のリストアップを終えたレオと夢美は、唐突に配信を開始した。
「皆さん、こんばん山月! 獅子島レオです!」
「みんな、こんゆみー! 茨木夢美でーす!」
「「ガチャの時間だぁぁぁ!」」
[こんばん山月!]
[こんゆみー]
[テンションおかしくね?w]
[レオ君まで何でガチャでテンション上がってんの]
[ゲリラでガチャ配信かよw]
[通知急に来たからビビった]
[グブオーはほら、ベスティアコラボしてるから……]
[あっ(察し)]
配信は告知なしで行われたが、アプリなどで通知が来たことにより、多くの視聴者が配信開始からいた。
「突然すみません。グブオーのガチャ更新でベスティアシリーズとのコラボがあったため、急遽ガチャ配信を行うことになりました」
「スタンきゅんとポンちゃん引くぞぉぉぉ!」
[結婚後、初のコラボがこれである]
[ガチャ狂い]
[初手からこのテンションである]
レオと夢美は結婚後バタバタしており、あまりコラボ配信が行えていなかった。
それでもスケジュールに自由の利く個人配信の頻度は落としていない辺り、彼らのプロ意識はもはや執念の域に達していた。
「あっ、あと今日は家に遊びに来てる人もいるので三人コラボになります」
「どうもー、バラレオの幼馴染でにじライブカフェの監修を行っているパティシエ系ユーチューバーのまーやでーす」
[うおおおおお!?]
[まーやぁぁぁぁぁ!]
[クソかわパティシエ幼馴染きちゃ!]
[まさかの幼馴染コラボ]
まーやが自己紹介したことで、コメント欄は一気に盛り上がる。
幼馴染という情報こそ出ていたが、こうして配信上でコラボするのは初めてだったのだ。
「さっきまでミコもいたんだけど、学校の課題があるから結婚式のリストアップ手伝ってくれた後、帰っちゃったんだよね」
「血の涙流しそうな勢いだったな……」
[両親の手伝いできてえらい]
[忙しいのにえらいな]
[親子てぇてぇ]
ミコは配信に参加したがっていたが、グループワークの課題があったため、なくなく自分の部屋へと帰っていった。
個人の課題と違ってグループワークでの課題では、一人がサボればグループ全体に迷惑がかかる。
そのため、いつものように適当にやり過ごすわけにもいかずに、ミコは課題に取り組むことにしたのだった。
「というか、私はガチャを見守るだけなんだけど意味あるの?」
「まあ、いいじゃないか。こうして雑談しながらやる緩い配信も悪くないだろ」
「そうそう、まーやはあたし達が推しを引く瞬間を見てればいいからさ!」
[これはフラグ]
[結婚式前に金を溶かすんじゃない]
[てか、案件で始めたのに普通にグブオーやってるんだな]
レオと夢美は林檎も含めた三人でグブオーの案件配信を行った。
それ以来、二人はゲームの面白さもあって定期的にこのゲームをプレイするようになっていた。
「ホア、ホアッ、ホー! 最初の十連引くぞぉぉぉ!」
「……………………」
[もう猿]
[恐ろしいことにまだ一回も引いていないという]
[まーやちゃんドン引きしてて草]
小学校のときの夢美を知っている真礼は狂ったようにガチャボタンをタップする夢美を見て絶句していた。
「そういや、生でこの状態の夢美を見るのは初めてだったか」
「配信はチラッと見させてもらってたけど、普段はテンション低めだからビックリしちゃって……」
「一瞬でスイッチ入るのすごいだろ? 俺も負けてらんないって思うよ」
「レオ、奥さんだからってだいぶフィルターかかってない?」
[てぇてぇ……のか?]
[猿でも愛せるライオン]
[さすが夫婦]
狂ったようにガチャを引く夢美を微笑まし気に見つめていたがレオに、真礼は呆れたようにため息をついた。
「おーし、くるぞくるぞ!」
夢美の画面に眩い光りが溢れ出す。
「シャァァァ! SSR確定じゃあぁぁぁ!」
「ねぇ、この薬物を投与された猿みたいなテンションずっと続くの?」
[薬物を投与された猿www]
[まーやちゃん容赦なくて笑う]
[お前の幼馴染だぞ]
[薬物を投与された猿とガチライオンが幼馴染のパティシエ]
夢美の画面には三つも虹色の光が表示されていた。これは三体もSSRキャラが排出されたことを意味する。
「さあ、こいスタンきゅん!」
『おいあんた、水夫をお探しじゃないかい。俺、結構使えるぜ?』
『おいあんた、水夫をお探しじゃないかい。俺、結構使えるぜ?』
『おいあんた、水夫をお探しじゃないかい。俺、結構使えるぜ?』
しかし、画面に表示されたのはゲーム内でも性能が高いおっさんキャラとして有名なキャラクターだった。
「お前じゃねぇぇぇぇぇ! お前はもう限凸してんだよ!」
[草]
[ジェットストリームおっさん再び]
[奇跡だろこれwww]
[切り抜き確定]
以前、案件配信でも同じことがあったため、視聴者は再び訪れた奇跡に爆笑していた。
夢美の番が終わったため、次はレオの番がやってくる。
「次は俺の番だな。こういうのは無心で引くのが一番だぞ、夢美」
レオはスマートフォンの画面を心を落ち着けてタップする。
表示された画面には、SSRキャラの光は一つもない。
「……物欲センサーは欺けなかったか」
「レオ、あんたも結構オタクっぽくなったよね……」
無心でいるように見えて、あからさまに落胆するレオを見て、真礼は呆れながらもどこか嬉しそうな表情を浮かべていた。
夢美やレオとは、小学校のときに自分の存在がきっかけとなって関係が壊れてしまった。
それがこうして、ありのまま楽しそうに過ごす二人の姿を見れたことがどこか嬉しかったのだ。
それからしばらく経ったが、お目当てのキャラクターであるポンデローザとスタンフォードは一向に出てこなかった。
「ちくしょう……林檎ちゃんがいれば」
「あいつがいるとむしろ運吸われるだろ」
[それはそう]
[白雪の豪運は自分の端末じゃないと発揮されないからなw]
[もうちょっと人に運を分けてもろて]
夢美はこの場ににじライブ一の豪運である林檎がいないことを悔やんだが、林檎の場合は人のガチャを引くと豪運が発揮されなかったりする。
最終手段として、夢美は真礼に自分のスマートフォンを託すことにした。
「こうなったら、まーやが引いて!」
「えぇっ!? それ夢美のお金でしょ?」
「出なかったところで責めないから! お願い!」
「俺のも頼む……!」
便乗するようにレオも自分の端末を真礼へと託す。
「わ、わかったよ……えい!」
人の金でガチャを引くことに抵抗はあったが、他ならぬ幼馴染の頼みのため、真礼は意を決してガチャを引いた。
「あっ、これSSR確定演出じゃない?」
「ま、まだだ……ここれでぬか喜びしたらジェットストリームおっさんにやられる……!」
[トラウマになってて草]
[おっさん、出番だぞ!]
[スパチャだ食え ¥2,000円]
画面には最初と同様に三つの虹色の光が表示される。
そして、光が収まると画面には、輝くような金色の髪に、宝石のように澄み切った碧色の瞳を持つ端正な容姿の少年が表示された。
『まったく、死んだと思ったらこんな訳のわからない世界に召喚されるとはね……それで、僕の力が必要なのかい?』
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! スタンきゅん!」
[きちゃあああ!]
[スタン先生だ!]
[これは神の一手]
ついに夢美はコラボキャラであるスタンフォードを引くことに成功した。
『まったく、死んだと思ったらこんな訳のわからない世界に召喚されるとはね……それで、僕の力が必要なのかい?』
『まったく、死んだと思ったらこんな訳のわからない世界に召喚されるとはね……それで、僕の力が必要なのかい?』
「必要ですぅぅぅぅぅ!」
[ヤバすぎだろwww]
[まさかのジェットストリームスタンきゅん]
[まーやちゃんは神の手を持っているな]
続けて二連続でスタンフォードが出来てたことで、夢美は狂喜乱舞する。
そして、真礼は続けてレオの端末の方もガチャを回した。
すると、SSR確定演出の後、渦巻くように巻かれた輝く白銀の髪に、知性を感じさせる切れ長のつり目と泣きぼくろが特徴的な少女が現れた。
『あら、水夫の手伝いをこのわたくしにしろと? いいでしょう! 完璧にこなしてみせますわ!』
『あら、水夫の手伝いをこのわたくしにしろと? いいでしょう! 完璧にこなしてみせますわ!』
『あら、水夫の手伝いをこのわたくしにしろと? いいでしょう! 完璧にこなしてみせますわ!』
「マジか!? お前の手どうなってんの!?」
「いや、私の手はおいしいお菓子を作るためにあるんだけど……」
[まっとうなツッコミで草]
[今度はジェットストリームポンちゃんwww]
[ガチャ配信するときは毎回まーやちゃん呼ぼう]
こうして、レオと夢美は真礼の協力もあり、無事にお目当てのキャラクターを引くことができた。
この配信の後、真礼のチャンネル登録者数が増加したのは言うまでもないことだろう。
スタンフォードとポンデローザのイラストは先日発表した作品の方でも確認できますので、どうか宜しくお願い致します!