それから何人もの関係者達がレオ達の元へ挨拶にきた。
そんな中、レオにとってライバーとして大勢に名前を知ってもらうきっかけとなった人物が現れた。
「司馬さん、由美子さん、ご結婚おめでとうございます」
「彩香さん、ご無沙汰してます」
「お久しぶりです!」
レオ達の前に現れたのは、Vtuberの中でも四天王と呼ばれている坂東イルカだった。
後ろには、カラオケ組である但野友世、七色和音、そして白夜もいた。
「なかなかスケジュール合わせるのが難しいですが、今日は意地でもスケジュール合わせてきましたよ」
「Vで結婚なんてホントすっごいよね!」
「改めてお二人共おめでとうございます」
思えば、レオがVtuber業界で頭角を現し始めていた頃、知名度にブーストをかけることができたのはカラオケ組あってのものだった。
「皆さんと出会えたこと、俺は本当に幸運だと思っています」
「もうやめてくださいよ。今生の別れでもあるまいし」
レオの心からの感謝の言葉に照れくさそうにイルカが笑う。
「私達もまだまだこれからです。Vtuberというコンテンツをより身近で自由な存在にするためにも、これからもお互い頑張っていきましょう」
「はい!」
カラオケ組は、複数の企業Vtuberと個人Vtuberが自由に配信を行う業界でも異質な存在だ。
だからこそ、この輪をもっと広げて行こうという思いが全員にあった。
「司馬さん、由美子さん、私は二人のおかげで今があると思っています」
「そんなことないよ。奈美ちゃんが伸びたのは奈美ちゃんが頑張ったからだって」
「それでも、きっかけをくれたのはお二人です。それに、そのご報告というか……」
和音は顔を赤くして俯くと近くにいたレオの友人である園山の腕を引っ張って連れてきた。
「私達も結婚することになりまして……」
「あっ、えっ、それここで言っちゃうのか。いや、まあ、なんだ。そういうことだ」
突然、連れてこられて友人夫婦へ結婚報告をすることになった園山は狼狽しながらも、自分達が結婚することを告げた。
「「えっ、マジで?」」
「ま、まあな。小説で大賞取れて作家デビューが決まったし、タイミング的にもちょうどいいかなって思ってな」
園山はようやく努力が身を結び、新人賞で大賞をとることに成功した。
園山の周りには、個性的な人間が増えたこともあり、今まで以上に個性あふれるキャラクターや独特のストーリーを書けるようになった。
主人公のモデルはもちろん、彼の唯一無二の親友である。
「司馬、ありがとな」
「何、礼を言うのはこっちの方だ。お前がいなかったら今、俺はここにはいない」
レオがVtuberを好きになったのは園山がきっかけだった。
その他にも学生時代から助けられてたこともあり、彼無くしてはにじライブの代表的なライバーである獅子島レオは存在していなかったと言ってもいいだろう。
「奈美ちゃんもおめでとう!」
「ありがとうございます。あ、母とも和解して結婚式には来てくれることになったんです」
「マジか! 翠さんともいろいろあっただろうに……」
「まあ、それは栄太君のおかげというか……」
「俺は何もしてねぇよ。翠さんが変わろうと努力して、奈美が受け入れようと歩み寄った結果だ」
園山は何てことないように告げる。
それを和音はどこか熱に浮かされたような眼差しで見つめていた。
「まさか結婚式で惚気られるとは……」
「でも、幸せのおすそ分けって感じで悪い気はしないね」
レオと夢美は苦笑しながらも、新たな夫婦の誕生を祝福した。
「それで、司君はいつ結婚するんだ」
「大変だねぇ。この後はアレが待ってるんだし」
ニヤニヤしながらレオと夢美は白夜を眺める。
「えっ、僕なんかしちゃいました?」
何のことを言われているのかわからずに、不穏な空気を感じた司は冷や汗をかいて一歩下がった。
「まったく、司は女心がわかってないよね」
そんな白夜の後ろから彼の姉であるまひるが姿を現した。
「拓哉君、由美ちゃん、結婚おめでとー!」
「潤佳さん、ありがとうございます」
「潤佳ちゃん、今日は来てくれてありがとね!」
「何言ってんの! 来るに決まってるじゃん!」
まひるは嬉しそうに笑うと、夢美へと抱き着いた。
「由美ちゃんが私を推しって言ってくれて本当に嬉しかった。司のこともそうだし、優菜先輩のこともそう。きっと由美ちゃんや拓哉君がいなかったら、どこかで心が折れてたかもしれない」
珍しく大人びた表情を浮かべた後、まひるはいつものように天真爛漫な笑みを浮かべた。
「だから、これからも私達姉弟と仲良くしてね!」
「あはは……どうかよろしくお願いします」
まひると白夜は姉弟揃ってよく似た笑顔を浮かべた。
その姿は、お互いに確執があったことなど忘れてしまうほどに仲の良い姉弟の姿だった。
まだ続きます。