カラオケ組やまひる達が去った後、今度はハンプとサーラがやってきた。
「よお、二人共!」
「結婚おめでとう」
「「ありがとうございます!」」
「それにしても、拓哉とバラ――由美子さんが結婚なんてビックリしたよ」
「そう? 私は時間の問題だと思ってたけど」
ハンプとサーラが並んでいると、まるで夫婦のような雰囲気が漂う。
彼らもレオ達と同様に家族コラボ〝朝昼夜亭〟として活動しているが、ハンプとサーラは特に男女の仲というわけではない。
それでも、ここまで夫婦のような空気感が出るのは、単純に二人の性格的な相性が良かったからである。
「二人は結婚とかしないんですか?」
夢美はそんなハンプとサーラを揶揄うように意地の悪い笑みを浮かべる。
「ま、まっさかぁ! あなた達と違って私達は家族役をやってるだけだから」
「そうそう、俺と智花がそんな関係になるわけないだろ」
照れながら否定するサーラに対して、ハンプは笑いながら夢美の言葉を否定した。
その瞬間、空気が凍るのをレオと夢美は感じた。
「……まあ、そうよね。私とハンプ君が夫婦になんてなるわけないものね」
鼻を鳴らしてサーラはそっぽを向く。
突然空気が変わったことだけは感じ取れたハンプは、怪訝な表情を浮かべて言った。
「あれ、俺なんかしちゃった?」
「はぁ……拓哉、人の振り見て我が振り直せ、だよ?」
「何で俺に流れ弾飛んできてんだよ」
夢美が半目で睨んできたため、レオは慌ててハンプとサーラのフォローに回るはめになった。
今日もダメ男三人衆は通常運転であった。
ハンプとサーラが去った後、レオはしみじみと呟く。
「それにしても、血がつながってないのに何でここまで似てるんだろうな」
「ケイティがあんたに影響受けてるのと同じでしょ。しかも悪影響」
「うっ……それは、ほら、学生時代の経験をだな」
「ダメ大学生の経験を活かしちゃダメでしょうが」
レオと夢美が、まるで子供の教育方針で揉めている夫婦のようなやり取りをしていると、レインとリーフェがやってきた。
「お二人共、結婚式でも夫婦喧嘩ですか?」
「かぁー、夫婦喧嘩なんて犬でも食いませんよ!」
「あ、日和ちゃんに美弥子ちゃん」
今ではすっかりにじライブに馴染んだ幼馴染同士のこの二人も、すっかりレオ達を慕っていた。
「そういえば、配信見ましたよ! 参考になったようで何よりです」
「ああ、日和ちゃんのおかげで盛り上がったし、ありがとうな」
「いえいえ!」
嬉しそうに二人と会話するレインに対して、リーフェは口を尖らせて不満を口にした。
「ねえ、何か最近私影薄くない?」
「そりゃあんたがバッカスさんや他の男性ライバー達にてぇてぇの当たり屋しているからでしょうが……」
「普通に雑談枠もしてるわ!」
「リーフェちゃんはソロ配信多いからね」
「ゲームも案件以外じゃあまりやらないし、私や翔子ちゃんいないと自分からやらないじゃん」
リーフェはソロの雑談枠が人気であり、他のライバーとも絡んだりはするものの、レオ達とはあまり絡みが少なかった。
陰キャでボッチなキャラが定着しているレインの方が、実はライバー関係での交流関係は深かったりするのだ。
「まあ、これからは御三家と配信でももっと絡んでいこうよ」
「そうだね、つばさちゃんとの絡みも増えるし!」
「いや、私は都合のいい女か!」
幼馴染組の四人がわいわい会話をしていると、そこにつばさがやってくる。
「やっほー、二人共。結婚おめでとう!」
「おっ、翔子か。ありがとな」
「翔子ちゃん、今日はありがとね!」
「ま、お似合いだとは思うよ」
夢美が立ち上がって抱き着こうとするのを躱して、つばさは鼻を鳴らして二人を祝福した。
「お兄ぃ、由美子泣かせたら許さないからね?」
「ははっ、当たり前だ」
「うん、心配はしてないけどね。それじゃ、日和、ミャーコ、長居してもあれだし、ご飯食べに戻ろ」
「ここのご飯おいしいもんね!」
「それじゃ、拓哉さん、由美子さん、私達はこれで!」
笑顔を浮かべると、御三家の三人は自分達の席へと戻っていく。
白夜もサーラも、この三人もにじライブへ来てからというもの笑顔が増えた。
本当に、あのとき手を差し伸べて良かった。
レオと夢美は、三人の後ろ姿を見て笑顔を浮かべた。
御三家の三人がレオ達の元を去るのと入れ替わりで、今度は赤哉、桃華、タマの三人が挨拶へとやってきた。
「拓哉君、由美子さん、結婚おめでとうございます」
「おめっとさん」
「二人共、おめでとう」
元二期生の同期である三人がこうして並んで立っている。
それは過去に起こったタマの過ちを考えれば奇跡のようなものだった。
「ほら、タマ」
「この二人に言うことあるんだろうが」
赤哉と桃華に促されるとタマは目を泳がせながらおずおずと感謝の言葉を口にした。
「その、二人共。ありがとね」
「えっ、俺達何かしましたっけ?」
「内海さんとのことなら、あたし達は何もしてないと思うんですけど」
レオも夢美も心当たりがないため、怪訝な表情を浮かべた。
それに苦笑を浮かべると、タマは自分の気持ちを吐露する。
「違うよ。あなた達と焼き林檎ちゃん。三人が楽しく活動しているのを見てると、デビューしたての頃、こいつらと何だかんだで楽しくやれてた頃を思い出してさ。炎上すらも乗り越えていくあんた達を見てると救われた気持ちになるんだ」
「けっ、あたしゃまだあんたのこと許しちゃいないけどね」
吐き捨てるようにそう言う桃華だったが、不思議と言葉に棘は感じられなかった。
かつて自分勝手な都合で事務所全体を混乱させ、乙姫を引退まで追い込んだタマのしたことは許されることではない。
それでも過去の罪と向き合い、逃げずに前を向いて歩み続けるタマに桃華も思うところはあったのだ。
赤哉も少しずつ昔のように三人で笑い合えた日が戻ってくることを待ち望んでいる。
「本当に、二人が周囲に与える影響はすごいと思いますよ」
「あはは、そう言っていただけると、これからも頑張ろうって思います」
「あたし達はただ自分達が精一杯楽しく活動してるだけなんですけどね」
「それでいいんですよ。人なんて変えようと思って変われるものじゃない。君達はただこれまで通り前を向いて走っていけばいいんです」
赤哉は眩しいものを見るようにそう告げると、桃華とタマを連れて去っていった。
「おい、智也、タマ。ヤニ行こうぜ!」
「この式場って喫煙所ありましたっけ?」
「アタシが知ってるよ」
「おっ、さすがタマ」
かつて人気を博した和装組。その再結成は不可能だ。
それでも、こうして関係を少しずつ修復していく三人を見たことで、過去から逃げずに向き合うことの大切さを改めて実感することができるのであった。
多分次回で結婚式はラストになるかと思います。