Vの者!~挨拶はこんばん山月!~   作:サニキ リオ

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【結婚式】今までの軌跡 その4

 レオと夢美のもとにはひっきりなしに、招待客が挨拶にきた。

 Vtuberや芸能人、事務所のスタッフなど、多くの人達が挨拶にくる。

 それは紛れもない二人の今まで歩んできた確かな軌跡だった。

 

「よお、拓哉! やっと結婚だな!」

「二人共、おめでとう!」

「……おめでとう」

 

 次にレオ達の元へ挨拶に来たのは、共にアイドル時代を駆け抜けてきたSTEPの元メンバー達だった。

 伝説のメンバー達に祝われたことで最初は笑顔を浮かべていた夢美だったが、次第に思案顔となり、自分の現状がとても通常ではあり得ない状況にいることに気がつき戦慄する。

 

「あれ、あたしSTEPの元メンバーに結婚祝われてる……?」

「お前の旦那はそのSTEPの元メンバーだってこと忘れるなよ」

 

 ブツブツと自分の現状に混乱している夢美に、レオは呆れたように嘆息した。

 

「お前ら……今日はありがとな」

「何言ってんだよ。俺達がお前の結婚を祝わねぇで、誰が祝うってんだ」

「そうそう!」

「……仲間の幸せを祝うのは当たり前」

 

 まるで当時に戻ったかのように良樹も、慎之介も、三郎も楽しそうに笑顔を浮かべている。

 かつて傲慢さ故に壊してしまった大切な仲間達との関係。

 それがこうして長い時を超えて再び築かれた。

 それは紛れもなく、レオの成長の証だった。

 

「そうだ、今日はお前に挨拶したいって奴らを連れてきたんだ」

「きっと驚くと思うよ」

「……僕達も驚いてる」

 

 三人が悪戯っぽい笑みを浮かべると、彼らの後ろから現在日本でもトップクラスに人気のアイドルグループ〝IDATEN〟のメンバーが姿を現した。

 

「ヒデ、コウ……」

「よ、久しぶりだな拓哉」

「幸せそうで安心したよ、司馬君」

 

 〝IDATEN〟のメンバーである大沢秀典、真堂光司は昔の確執などなかったかのように笑顔を浮かべている。

 レオとしては、二人は気まずい相手だった。

 何故なら彼らはアイドル時代の同期であり、レオ達が先に売れたときにバックダンサーをする彼らに向かって「ラッキーだったな」と煽りとも言える言葉をかけた者だったからだ。

 

「二人共、ごめんな……」

「何、謝ってんだよ」

「そうさ、僕らはあの言葉があったからこそここにいる」

 

 レオが落ち目だったときに再会した際、秀典はレオに意趣返しのように「……ラッキーだったな。そんなになっても仕事があるなんて」と言葉をかけた。

 それはかつて自分達がそうだったように、レオにも悔しさをバネに這い上がってきてほしいが故の言葉だったのだ。

 だからこそ、二人はレオの身バレ騒動のときも味方をした。

 秀典と光司は笑顔を浮かべると、レオに祝福の言葉をかけた。

 

「「ラッキーだったな。良い人と出会えて!」」

 

「ああ……本当に、ラッキーだったよ」

 

 それだけ告げると、秀典と光司は去っていった。

 

「良かったじゃない、拓哉君」

 

 すると、どこからともなくSTEPの元マネージャーである三島が現れた。

 

「三島さん、もしかして……」

「そ、私が橋渡し役! 招待状は由美子ちゃんから出してもらったわ」

「うぇーい、ドッキリ大成功!」

 

 いつの間に仲良くなっていたのか、夢美と三島は笑顔でハイタッチをしていた。

 

「本当に、おめでとう」

「ありがとうございます……マネージャー」

 

 レオは傲慢で周囲へ敵意を振りまいていた自分をここまで支えてくれた三島に心から感謝した。

 それから次にやってきたのは、四期生であるバッカスとメロウだった。

 

「拓哉君、由美子さん、結婚おめでとう」

「おめでとうございます!」

 

「「酒井さん、海荷ちゃん、ありがとうございます!」」

 

 後輩二人からの祝福の言葉に、レオも夢美も嬉しそうにはにかんだ。

 

「海荷ちゃん、今度のにじライブとVacterの合同ライブに出るんでしょ?」

「はい、おかげさまで和音さんやアダルティーナさん、奏ちゃんとも仲良くさせていただいてます!」

 

 夢美の言葉に海荷は満面の笑みを浮かべた。

 今や海荷は和音と肩を並べるバーチャル歌姫として名を轟かせている。

 自分の配信では奇っ怪な事ばかりしているところは相変わらずだが、彼女もまた立派ににじライブを代表するライバーとして成長していた。

 高い歌唱力と独特の発想力を持つ彼女は、まさににじライブを体現した存在なのだ。

 

「酒井さんもこの前の歌ってみためっちゃ良かったです」

「あはは……ありがとう。俺も出来ることは増やそうと思ってね」

 

 バッカスは推しからの褒め言葉に、嬉しそうに笑う。

 そして、どこか感慨深そうに言った。

 

「それにしても、君が結婚するとはね。初期から追ってた身としては感慨深いものがあるよ」

「まさか、山月記の朗読がこんな影響をもたらすとは思いませんでしたけどね」

 

 レオはそう言って苦笑する。

 バッカスがかつて参加したレオの10万人記念企画〝その声は我が友李徴子ではないかコンテスト〟。

 そこでレオから声を褒められ、ライバーにならないかと勧誘されたことで、バッカスはにじライブの門を叩いた。

 

「あの企画では優勝はできなかったけど、俺にとっては人生を変える大きな出来事だったよ」

「人生ってホント何がきっかけで変わるかわかりませんね」

「ははっ、まったくだ」

 

 バッカスと笑い合いながらも、レオの表情には影が落ちる。

 あの企画での優勝者であり、初期から自分を推してくれていた冷凍ミカンがもうこの世にはいないことを思い出したからだ。

 バッカス達が去った後、レオの異変に気がついた夢美はレオの背中を思いっきり叩いた。

 

「しゃきっとしな!」

「こふっ……由美子、いきなりなんだよ」

「結婚式まで暗い顔しないの。自分のせいで推しが曇ってるなんて知ったらミカンちゃんが悲しむでしょ」

「そうですよ、司馬さん。ミカのためにも笑ってください」

 

 夢美の言葉に乗っかるように一人の女性が現れる。

 

「あっ、慈理さん」

「メグちゃん、今日は来てくれてありがとね」

 

 それは冷凍ミカンの友人でもある才上慈理だった。

 

「この光景、ミカにも見せてあげたかったな」

「そう、ですね」

「大丈夫、あたし達の伝説は天国にも届かせてみせる。だから、メグちゃんはあたし達の光景を目に焼き付けておいて!」

「うん、ありがとう」

 

 慈理は心に誓った。

 この光景、いやレオ達の活躍を忘れないようにしっかり目に焼き付ける。

 そして、いつか天国で再会したときに冷凍ミカンに二人の活躍を語るのだ、と。

 慈理が去った後、レオと夢美はどこかしんみりとした空気になっていた。

 やはり亡くなった人間のことを考えるとどうしても、気分が落ち込んでしまう。

 そんな空気を吹き飛ばすように、満面の笑みを浮かべたミコが真礼の手を引いてやってきた。

 

「パパ、ママ、結婚おめでと!」

「ケイティ! ありがとな」

「外でパパママ呼びは……ま、いっか。あたし達にとっては娘みたいなものだし」

 

 夢美は苦笑しながらも、抱きついてくるミコを受け止めて頭を撫でた。

 

「二人共、改めて結婚おめでとう! この結婚式のためのウェディングケーキは人生で一番作りがいのあるお菓子だったわ」

 

 真礼は一仕事終えたという空気でやってきた。

 彼女はこの日のために渾身のウェディングケーキを作り上げた。

 ウェディングケーキは、今までの二人の配信のネタをふんだんに盛り込んだデザインとなっており、頂上には飴細工で作られたレオと夢美の人形も立っていた。

 

「ホント、あの頃からは考えられないわね」

「あの頃のあたし達ってギスギスしてたもんね」

「でも、真礼との出会いがあったからこそ、今の俺達がある。そうだろ?」

「だね!」

 

 レオと夢美は顔を見合わせて笑い合う。

 かつてそれぞれの抱えた事情が悪いように噛み合って関係が壊れた三人。

 その傷はもうどこにも存在していなかった。

 

「はぁ……てぇてぇ」

「ケイティもありがとな」

「うん、ケイティがいたからこそ、リスナーのみんなに結婚受け入れてもらえたところあるからね」

「そんなことないし、二人に幸せになってもらいたいのはみんなの総意だし!」

 

 ミコはそう言ってはじけるような笑みを見せる。

 視聴者達が二人の結婚を喜んで祝福できたのも、二人だけではなくミコという娘、そして夢星島という家族の存在が大きかったのだ。

 

「だから、これからも夫婦仲良くね!」

 

「「もちろん!」」

 

 それからも、止まることなく招待客からの挨拶が続き。

 やっと落ち着いた頃に、レオと夢美のマネージャーである飯田と四谷がやってきた。

 

「「お二人共、ご結婚おめでとうございます」」

 

「飯田さん!」

「よっちん!」

 

 レオと夢美は、自分達のマネージャーがやってきたことで、心から嬉しそうな笑みを浮かべた。

 思えば、レオと夢美の関係がこうして深くなったのは二人のおかげでもあるのだ。

 

「いやぁ、幼馴染みライバーとしてデビュー後から結婚までくるなんて思いもよりませんでしたよ」

「うぅ……マネージャー冥利に尽きる……!」

 

 飯田は最初に幼馴染み設定を勧めたものとして、感慨深そうに呟いた。四谷に至ってはもう泣いていた。

 

「バラレオの始まりを作ったのはあなた達ですもんね」

「カプ厨が夫婦のきっかけって何気にすごいね……」

 

 心から尊さを感じているマネージャー達に、レオも夢美も苦笑する。

 

「僕達もまだまだ全力でサポートしていきますので、宜しくお願いします!」

「結婚はゴールじゃありませんからね!」

「ええ、こちらこそよしくお願いします!」

「よっちんがいれば安心だね!」

 

 四人は改めてチームバラレオとして、これからも活躍していくことを硬く誓い合った。

 

「そういえば、亀ちゃんは?」

「ああ、彼女ならあそこで阿佐ヶ谷君と楽しそうに話してますから、後で挨拶に来ると思いますよ」

 

 亀戸がいないことを不思議に思ってレオが尋ねると、亀戸は阿佐ヶ谷と共に楽しげに会話を楽しんでいた。

 二人の間に漂う空気は、ただの職場の先輩後輩というだけのものではなかった。

 

「……ねえ、うちの事務所社内恋愛横行しすぎじゃない?」

「今更だろ」

「ふふっ、それもそっか」

 

 それから、しばらくして会場でアナウンスがされる。

 

『えー、皆様。ここで新郎新婦のご友人である手越優菜さんのピアノ演奏が始まります。どうかお楽しみください』

 

「それじゃ、てぇてぇ夫婦に最高の演奏を届けるよー!」

 

 林檎が紡ぐピアノの音色に耳を傾けながらも、レオと夢美は自分達が多くの人間に愛される幸せ者であることを実感するのであった。

 

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